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2023-09

鉄道のイロハ(4)--鉄道の信号と標識

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 今日は久しぶりに鉄道のイロハ,鉄道の閉塞システムと信号,少しの標識などについて書きます。僕は鉄道工学の専門家ではないので,子供の頃から積み上げてきた知識などを元に書きます。これらを知っていると,線路の周囲を見ながらの列車の旅が一層面白くなるに違いありません。

1.鉄道の原理原則--閉塞
 鉄道でも自動車でも航空機でもぶつかれば事故になり,乗客や乗務員が怪我をしたり,最悪の場合は死者が出ます。鉄道の世界で列車同士がぶつからないようにするための基本が閉塞です。鉄道では線路を一定の区間ごとに区切って,1つの区間には1つの列車しかいないようにコントロールします。これを閉塞,区切られた1つ1つの区間を閉塞区間と言います。そして鉄道の信号は閉塞区間に入ってよいか,また,入ってよい場合の最高速度を示します。黄色のときの取扱いが道路の信号とは異なります。

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タブレット閉塞器(鉄道博物館・大宮),左上はタブレット(音威子府駅・資料展示室)

2.単線区間の閉塞システム
 単線区間では原則として駅単位に閉塞区間は構成されています。昔はタブレットやスタフを使って閉塞を確保していましたが特殊自動閉塞の普及で,今ではほとんど見られなくなりました。閉塞の方式に関わらず,単線区間の信号機は,駅の出発可を示す出発信号機と駅への進入可を示す場内信号機が基本になります。また,必要に応じ場内信号機には遠方信号機が併設され,段階的に減速しながら駅にに進入する場合もあります。

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 タブレット閉塞は1870年頃に英国で開発されたもので,100年以上にわたり鉄道輸送の安全の要です。今ではほとんど見られませんが,少しの紙幅を割いてタブレット閉塞について触れておきます。タブレット閉塞は電気的に接続され,同時には1つしかタブレットが取り出せない仕掛けの箱--タブレット閉塞器--を閉塞区間の両端の駅に置きます。下の図で,まずA駅の駅長はB駅の駅長と電話で連絡を取り,AB間に列車がいないことを確認のうえAB間のタブレットを取り出します。列車1はA駅の駅長からタブレットを受取るとB駅までの進行が可能になります。

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 B駅に着くと列車1の運転士はAB間のタブレットをB駅の駅長に渡します。B駅の駅長はAB間のタブレットを受取ると,直ぐにA駅に向かう列車(列車2)がある場合はその列車の運転士に渡します。直ぐにA駅に向かう列車がない場合は,タブレットを閉塞器に返します。併せて,A駅に列車1の到着と要すれば列車2の出発を連絡します。

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 タブレット閉塞はこのようなタブレット閉塞装置と駅長の作業によって列車の安全の基本である閉塞が確保される仕組みでした。なお説明では駅長といいますが,実際は駅長以外でも運転取扱いの資格を持つ駅員が赤い帯の入った運転取扱い助役の帽子をかぶって業務にあたっていました。また,閉塞の証にタブレットを使うのでタブレット閉塞と書きましたが,国鉄~JRでは通票閉塞と呼んでいました。

 また,単線区間の末端で終端駅の線路が1本しかない場合は,タブレット閉塞による運転と取扱いが不要です。物理的に1こしかないタブレットを持った列車は,終端駅で折返した後,その閉塞区間の出口の駅に戻ってくるしかないからです。このような場合には,正確にはタブレット閉塞ではなく,スタフ閉塞といいます。なお,スタフ閉塞では閉塞の証として列車が携行するものは棒状のスタフ(英語のstaff:杖)ですが,JRや多くの私鉄ではタブレットで代用しているので,閉塞器を見ないと見分けはつきません。なお,スタフ閉塞とタブレット閉塞の間の仕組みで票券閉塞もありますが,ここでは省略します。

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 タブレット閉塞区間では先に着いた列車が後に出るのがふつうになっていました。これは先着列車から預かったタブレットを後着の列車に渡して出発させ,その後に後着列車から預かったタブレットを先着列車に渡すという駅長の作業に合わせたものです。駅に止まる列車では駅長と運転士の間の授受作業が確実にできますが,通過列車ではそうはゆきません。駅長は先ず出発側のタブレットを授け器にセットします。列車には助士が乗務し,到着側のタブレットを駅の受け器に投げ込みます。その後すかさず,授け器からタブレットを走りながら受取ります。

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タブレット授け器からタブレットを受取る急行「砂丘」 @美作河井

 なお,タブレットは直径10cm位のズシリと重い砲金製の円盤です。円盤には中央に四角,三角,円,楕円などの穴があいていて,隣りあった駅間では同じ形にならないように割当てます。馴染みのある直径40cmぐらいある駅長さんが肩にかけている輪っかは,正確にはタブレットキャリアで,下の方についている頑丈な革製の袋にタブレットをしまいます。

 特殊自動閉塞はタブレット閉塞の閉塞器や信号連動装置を電子化したものです。車両には車載器を,駅の線路には列車の在線を検知するための軌道回路を設け,通信によって閉塞を確保する装置です。国鉄末期に開発されCTC化とともにローカル線の近代化,省人化,効率運営に寄与しました。近年では機器の老朽化や部品調達難もあり,更新が問題になっているそうです(Wikipediaの記事:閉塞による)。

3.複線区間の閉塞システム
 複線区間では線路ごとに列車の走る方向が決まっているので,対向列車のことは考慮せず,適切に列車の間隔が保持できればよいことになります。もちろん終端駅や分岐部で線路が交差する際の支障は考慮しなければなりませんが。複線区間では適切な長さの閉塞区間を設け,1つの閉塞区間には1列車しかいないようにします。なお,閉塞区間の長さは列車の頻度によって決まり,過密な線区では数100m,地方の線区では数kmの場合もあります。

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 列車のいる閉塞区間に続行列車を入らせないため,その閉塞区間の信号は赤信号になります。一つ手前の閉塞区間は注意が点灯,青の進行で走れるのは2つ手前の閉塞区間までです。これが原則ですが,停止,注意,進行だけでは粗いので,列車の速度,頻度に応じて閉塞区間をより短く区分し,警戒や減速信号を設ける区間も多いです。

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 更に特殊な例として京浜急行の品川~横浜間や北総鉄道では抑速(Y+Gの点滅,105km/h)や成田アクセス線には高速(G+G,160km/h)信号などもあります。

 このように単線と複線では「閉塞=1つの閉塞区間に列車は1つしか入れない」仕組みのほかは,考え方が随分異なります。このため輸送力という点では複線は単線の2倍ではなく,3倍あるいはそれ以上の輸送力を発揮することができます。また,海外では2つの線路がある区間で単線が2つあるような信号回路を構成し,双単線といってフレキシブルに運用することも行われています(徳島線と高徳線の佐古~徳島も双単線)。

4.運転保安装置とATS,ATC,ATO
 ここまで閉塞システムと信号について見てきましたが,輸送量が増大し,列車ダイヤが密になると運転士が信号の現示に従うだけのシステムでは事故が防ぎきれないことが分かってきました。国鉄では1960年代に三河島事故(1962年),鶴見事故(1963年)という死者約160名を出す重大事故が続いたのを受けて,ATS(Automatic Train Stop)を開発,全線区に設置しました。これは注意信号の閉塞に列車が進入する際,運転士が制限速度内に減速し確認ボタンを押す操作をしないと,非常ブレーキがかかって列車を止めるシステムです。ローカル線で交換や終着駅に着く際に,キンコンキンコンと警報音の鳴るあれです。確認ボタンを押した後は,45km/h以下の速度で運転を続けることができるため,故意,過失などの理由はともあれ,先行列車に追突する事故を完全になくすことはできませんでした。なお,ATSには主に国電区間で使われ軌道回路を用いるATS-Bと国電区間以外で使われ地上子を置くATS-Sがありました。

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ATSの識別標示は運転台入口横に記すルール。南武線用E233系とEH500

 一方,1964年に開業した東海道新幹線では210km/hというそれ迄にない高速運転のため,地上の信号機の現示を見て運転士が運転することは不可能とされました。このため,運転台に閉塞信号を現示し,速度超過があった場合は現示の速度まで自動で減速する仕組みが導入されました。これをATC(Automatic Train Control)といい,信号は3種類の0と30,70,110,160,210km/hがありました。

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新幹線は初代0系からATCを設備 @徳山 2008.8.24

 在来線でも過密な線区の保安度の向上のためATCの導入は進められ,国鉄では総武快速線~横須賀線の地下区間を嚆矢として,山手線や京浜東北線などに導入されました。国電区間向けのATCは刻みが細かく,0,15,25,45,55,65,75,90,100,110,120km/hの現示がありました。なお,国鉄よりも早く営団地下鉄ではATCを実用化しており,1961年開業の日比谷線が日本初のATCとされています。機器の更新等によりATCも進化し,現在は指示速度の刻みを5km/hピッチなどに細かくして,指示速度ごとに必要な余裕の排除,乗り心地の向上が図られています。

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ATCを使い始めた頃の京浜東北線電車 @赤羽 1982.5.9

 ATCはあくまでも保安装置で,駅出発時の起動や加速,駅停車時のブレーキなどの運転操作は運転士が行います。これに対し,電車の起動,加速,停車の操作も自動で行うものがATO(Automatic Train Operation)です。ATOの歴史は古く1960年代から主に地下鉄で研究が進められ,日本初のATC路線の日比谷線でも3編成の電車にATO装置を搭載し,長期の試運転を行いました。しかし,ATOが全面的に採用されたのは1976開業の札幌市営地下鉄東西線でした。この後は福岡市営地下鉄や営団地下鉄南北線など地下鉄のワンマン運転化,運転士の負担軽減のための導入が多いです。近年はホームドアの採用により,定位置停止のニーズが高まり,多くの地下鉄路線がATO運転となっています。これらの線区では運転士も乗務し,技量維持のため手動操作での運転も一定の割合で行なわれることが多いです。2021年3月からJRでも,地下鉄千代田線と相互乗り入れを行う常磐線緩行線でATOの使用を始めました。JR東日本のプレスによれば,ここでの知見を蓄積し,将来のドライバレス運転を目指してATOの開発を進めるそうです。また,新交通システムではATOの採用は一般的で,ATOを使った無人運転が日常的に行われています。

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常磐線緩行線を走るATO制御の列車。車両は東京メトロ16000系 2021.4.4

 ATSの欠点は補いたい,ATCを導入するコストもかけられないという線区のために,1980年代にATS-P(速度照査式ATS)が開発されました。1988年開業の京葉線で初めて全線の信号機に導入され,その後もJR各社や主要な私鉄で導入されています。ATS-Pにもいろいろな方式がありますが,基本的には列車を停止させるべき基準点を基に自列車の速度,減速性能,勾配などの線路の条件から刻々と変わる限界速度を車上で演算し,実際の速度と照査して超過があれば自動でブレーキをかけるシステムです。ATS-Pは優れたシステムとして導入が進み,総武線~横須賀線の地下区間ではATCが設備されていましたが2004年に他の地上部に合わせてATS-Pに更新されました。なお,在来のATSも改良が加えられ,現在は保安度の高まったATS-SNやATS-STに進化しています。

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在来ATCなどの多段式ブレーキ制御とATS-PやデジタルATCの1段式ブレーキ制御のブレーキ動作のグラフ図
右の方が乗り心地の向上,列車間隔の短縮の効果が見て取れる(Wikipedia:自動列車制御装置の項から)

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ATS-Pの車内表示器(最近の車両はインパネ埋め込みが多く独立の機器は少ない。他の表示器で隠れていますが,悪しからず)

5.これまでの運転保安装置と一線を画すデジタルATC
 ATS-Pは刻々と変化する運転条件のなかで最適な速度をとることが可能で,列車の間隔を詰め輸送力の増強にも寄与し,段階的ブレーキがないため乗り心地も向上します。自列車のとるべき速度を自列車内で演算して求める機能を発展し,列車の存在を地上装置を介して後続列車と共有し,列車の間隔を適切に保つように制御するのがデジタルATCです。デジタルATCにおいては先行列車との間隔を動的に演算するので,「閉塞」という考え方が存在しません。このため国土交通省の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」でも閉塞方式には含まれず,「列車間の間隔を確保する装置による方法」です。今後デジタルATCの設置線区は増えると思われますが,現時点では全国の新幹線と山手線,京浜東北・根岸線だけです。デジタルATCの仕組みを簡単に描くと下のようになります。

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デジタルATCの仕組み(出典:鉄道・運輸機構(JRTT)ウェブサイト)

 デジタルATCの導入された線区では,信号はATCと同様に制限速度と共に運転台に表示されます。この他,先行列車の位置情報と自動ブレーキがかかる減速のパターンに近づくと「パターン接近」のアラームが点灯するそうです。デジタルATCはは知れば知るほど,列車の保安装置というよりは精緻なコンピュータシステムです。SL時代の機関士は石炭を上手に火室にくべることから始まり,まさに男の体力仕事でした。今どきの列車の運転士はコンピュータのオペレータとしての素養が大事で,むしろ女性の方が向いているようにも思えます。以前,航空の世界では天測航法からFMSのオペレータにパイロットの仕事は変わったけど鉄道では未だと書きましたが,いよいよ鉄道の分野でも動力車操縦の仕事の変質は進んでいるようです。

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デジタルATCで制御中の運転台。左の青い表示が先行列車との間隔を示す

6.その他の信号と標識
 ここまで鉄道の閉塞と保安システムについて簡単に説明しましたが,かぶりつきで前を見ているとよく目に止まる信号や標識の一部を紹介します。
(1)臨時信号機
 線路の工事や災害による不良箇所など一時的に速度制限が必要なときに,原則として進行方向の左側に設置されます。いきなりの速度制限では減速が間に合わないので,予告信号機が400m手前に設置されます。

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(2)中継信号機
 カーブなどで信号機が見づらい場合などに設置される従属信号機で,現示は主信号機と同じです。

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(3)誘導信号機
 鉄道では1つの閉塞には1つの列車しか入れません。とすると,2方向からの列車を併結したり,車両を増結することができません。このような場合に後から来る列車の運転を誘導といい,誘導信号が点灯していれば15km/h以下で他の列車のいる線路に進入できます。

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誘導信号機。赤信号の下の斜めの2灯。線路の先には先着した併結相手の電車が見える @拝島 2020.6.27

(4)入換信号機
 車両基地や駅の構内などで入換え作業を行うための信号機です。入換信号機には軌道回路があって防護区間もありますが,防護区間がない場合は入換標識になります。これらは見た目が同じなので,入換信号機の場合は入換信号機識別標識が付加されます。なお,事業者によっては下のような灯列式ではなく,ふつうの信号機と似た色灯式を用いています。

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灯列式入換信号機(入換信号機識別標識つき。この信号柱には誘導信号もついている) @金沢文庫 2020.6.6

(5)踏切動作反応灯
 踏切の遮断機が下りて安全に通過できることを示す標識です。1956年の踏切遮断機の構造基準で公営,民営の鉄道事業者に設置義務が課されましたが,今は義務ではなく,この経緯からJRの路線では設置されていません。

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踏切動作反応灯。踏切の手前にある×印 @京成千葉線 2020.8.9

(6)自動発光信号機
 こちらは反対に踏切の障害検知装置が障害物を検知したことを知らせるものです。踏切のほかがけ崩れや落石の危険区間などにも設置されていて,赤い灯火が回転して点灯するのでクルクルパーなどと呼ばれたりします。事業者や設置個所により,信号と連動しているものもあります。

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JRの自動発光信号機 @川崎~鶴見 2020.6.6

(7)出発反応標識
 出発合図を行う係員や車掌に出発信号機や閉塞信号機の開通を知らせる標識で,事業者によってはレピーターと呼ぶこともあります。駅でホームに出て物を買ったり写真を撮ったりするとき,反応信号が点灯していなければ列車が出ることはありません。

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出発反応標識 @鶴見線鶴見駅 2020.9.22

 主に信号と信号に近い標識を少しだけ書きましたが,標識には勾配標やキロポストなど多くの種類があります。これらを書き出すときりがなくなるので,今日の記事はここまでに留めます。実地にこれらの仕組みの使われ方を見るのも楽しいものです。列車に乗ったら,かぶりつきをして確かめてみてください。(2020.4.19,2021.5.1記)
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鉄道のイロハ(3)--JRの路線の名前,線路名称公告と線路の戸籍(追補)

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 以前,3年くらい前に「線路名称公告」について書きましたが,今日はその続きで現在の「線路名称」について書きます。
 僕の勤める会社は製造業で,夏の一番暑い時期は屋外作業がきついので毎年1週間の夏休みがありますが,今年はオリンピック対策もあり超特大の11連休の日程が組まれていました。しかし,このコロナ禍でオリンピックは中止,旅行もできず巣ごもりの毎日です。以前から気になっていて,ちょっと時間のかかる仕事をしようと,最新の「線路名称」を集めることに取組みました。

 JR各社はしっかりとしたwebの問合せページを持っているので,以前はここからリクエストしようと考えていました。今回は時間もあったので,他者にモノの送付を頼むのにwebでは失礼だろうと,敢えて文書での依頼にしました。コピー代だってかかるので,返信用封筒のほかコピー代相当の切手も入れて,自分なりにできる限りの準備をしたつもりです。ところが,自分の会社でも在宅勤務が増え会社に行くのは週に2回程度なので,JR各社の背広組も同様と思われ,この時期に文書でお願いをしたのは却って迷惑だったかもしれません。11連休中に回収など夢のまた夢,約1か月を要してしまいましたが,6つのJR旅客鉄道会社とも大変丁寧な回答が返ってきました。こんな場ではありますが,お礼いたします。
 そういえば,添付した切手も6社ともそのまま返ってきました。JR程度の規模の会社になると,へんに手間賃として受け取っても,コンプライアンスや会計処理に困るのでしょう。ちょっと気遣い過剰だったと思われ,勉強になりました。

 さて,各社の「線路名称」ですが,「線路名称」そのものを入手できたのは6社中3社でした。JR東日本を除く上場会社は,有価証券報告書(有報)や事業報告で開示しているので,これを参照くださいとの回答でした。厳密には「線路名称」ではないのですが,各社から正式に得た回答なので,実際は多少違っていても,この記事では「線路名称」と等価として扱います。「線路名称」と似た情報として,国土交通省鉄道局監修の「鉄道要覧」(電気車研究会 年次刊)という資料がありますが,起点と終点が逆のケースがあります。有報を参照しても「線路名称」と一致しているかは分からず,同一事業者でも有報と事業報告で不一致だった例もありました。
 有報や事業報告は通常は決算期ごとに作られますが,「線路名称」は新線の開業や路線の廃止などにより変更されるものなので,その差の期間はどうするつもりなのでしょうか。「線路名称」を出したがらない理由は何なのか,今一つ理解できません。一方,「線路名称」は基本的には線路の名称と区間(起点と終点)の情報ですが,有報などでは営業キロ,駅数,電化方式などの情報も載っていて,「鉄道要覧」に近い情報も開示されています。出せば出したでヒマなマニアからここが不一致だと指摘されたり面倒なのがおちなので,消極的になるのも分からないではありません。

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国鉄時代の「線路名称」の幹線

 次に今の「線路名称」の特徴ですが,会社ごとに変えてきていることがあります。原スレッドで書いたとおり,国鉄時代の「線路名称」は全国の路線を34の幹線グループに分けていましたが,そのグループ分けを踏襲しているのは,JR北海道とJR東日本,JR四国のようです。他の3社は幹線と傘下の支線という区分をなくしてしまったようです。更に,JR西日本とJR四国は線路の名称自体でも本線をやめてしまって,単に山陽線とか予讃線という名称を使っています。残りのJR東海とJR九州は中間で,グループの考えはありませんが線路の名称には本線が残っていて,東海道本線,鹿児島本線という名称です。なお,JR四国は線路名称に「本」は付けませんが,一覧表は昔の幹線グループごとに区切られていて扱いはグレー,JR東海,JR西日本,JR九州は厳密には「線路名称」以外の文書なので,これらも正確なところは分かりません。

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直近の「線路名称」の改訂のあった北海道医療大学駅 2019.12.30

 以下は簡単に会社ごとの感想になります。先ずJR北海道ですが,ここは直近の「線路名称」の改訂があったばかりのせいか対応も早く,1番に3/25付の「北海道旅客鉄道株式会社線路名称の一部改正について」という文書を受け取りました。札沼線の末端区間を5/6付で廃止する計画をたてたが,4/17にコロナ禍の緊急事態宣言を受けての廃止繰上げ(4/18以降は運休扱い)となってしまったのは記憶に新しいです。また,JR北海道の「線路名称」を手にした時の実感は,随分寂しくなってしまったな...でした。僕が道内の国鉄線を完乗した時は確か3,900kmあったと思うので,今はその6割くらいになってしまいました。

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代々木~新宿は誰のもの?「線路名称」上は山手線の区間 2017.11.3

 JR東日本は回答の到着が最後で気を揉みましたが,「線路名称」自体の送付でした。それ以外の点も含めて,僕の依頼内容に一番忠実な回答内容で,さすがJR東日本というところでした。JTBの時刻表では趣味者のための情報か「営業キロと駅数データ」という情報がありますが,僕が「線路名称」から集計した会社合計と0.7km合いませんでした。「線路名称」では代々木~新宿(0.7㎞)を山手線と定義していますが,時刻表の集計はここを中央本線でもカウントしているのではと睨んでますが,正しいところは分かりません(時刻表の会社計は合計しか出ていないため)。

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JR東海の身延線はなぜか甲府を起点側に書いている @甲府 2019.11.24

 JR東海は2番目の回答到着でしたが,有報に記載しているのでこれを参照くださいとの案内でした。2番目の到着だったこともあり,やっぱりJR東海はドライだな...が感想でした。ドライでも何でも情報が得られれば問題はありません。有報の記述ではなぜか左側(起点側)が甲府で,おやっと思います。身延線は東海道線グループの線区だし,JR東海から見ても富士側が起点と考えられます。

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おおさか東線は鴫野~放出間は片町線の扱いで「線路名称」上は切れている @放出 2019.3.23

 JR西日本は,回答は電子でも構いません(むしろ歓迎)として依頼したのに対して,電子で回答をくれた唯一の会社です。別途,切手の返却の郵送もあり,早くの回答を意識してのことで好感度抜群です。この会社は有報のほかに「データで見るJR西日本」という事業報告も開示していて,これを案内されました。一方,有報にも線路ごとの区間や営業キロ,駅数,電化方式などの記載がありますが,これは五十音順の並びで,「データで見る...」と有報で微妙に内容が異なっています。

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内子ルート開業直後の急行「うわじま」 1986.7~8月

 JR四国は非上場なので有報はなく,「線路名称」での回答です。しかし,四国地区は動きが少ないので,随分古い資料のコピーを送ってくれたようです。ざらついたコピーと共に,送付案内状で「四国旅客鉄道株式会社公告第11号」と相違ないとのことで,念の入った対応です。四国では,土讃本線の末端部を土讃本線にせず中村線としていたばかりに収支係数が振るわず土佐くろしお鉄道に転換することになったこと,予讃線の内子ルートは実態として予讃線のメインルートであるにも拘わらず地方交通線の内子線のままであることなど,「線路名称」に翻弄された会社ともいえます。地方交通線に関する法律的な制約もあって簡単ではないそうですが,早くの整理が望まれます。

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肥薩線の急行「えびの」 1987.7~8月

 JR九州は回答の送り方がとても丁寧だったという印象です。有報にも記載はあるのですが,営業データ/線区別ご利用状況での案内でした。この情報は線路名称より細かい区間,例えば篠栗線ならば吉塚~篠栗,篠栗~桂川に分かれているので,線区計にあたる行を明示するなど手の込んだ回答でした。その他,文書の出し方などでも一番手がかかっているのがJR九州でした。「線路名称」自体に関してはとくにコメントする事項は見当たりませんでした。九州は今般の大雨被害が深刻で,球磨川の車窓が美しい肥薩線も大変なことになっていることと思います。随分古い写真ですが,早くの復旧をお祈りして在りし日の急行「えびの」の写真を載せておきます。

 3年越しになってしまいましたが,ようやく現時点のJR6社の「線路名称」をまとめることができました。最近は「乗り鉄」も趣味として認知され,乗りつぶしのための消込み表やガイドブックも書店に多数並んでいます。今更ではありますが,6社分の情報を1表にまとめたので,その一覧もアップしておきます。本来,「線路名称」とは名称と区間だけのものですが,定量的なものがないと乗りつぶしの励みにならないので営業キロをつけてあります。

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JR旅客鉄道会社6社の線路名称(全体はこちら。右クリックで「名前を付けてリンク先を保存」後,接尾辞を.PDFにリネームしてから開いてください)

 新線の開業や路線の廃止はニュースになるし,時刻表にも載るのでフォローできますが,線形改良による営業キロの変更などは全てをフォローするのが大変です。どこまで続けられるか分かりませんが,今後も逐次更新したいと今は思っています。(2020.8.29記)

追補の追です。
 身延線の起点(甲府)と終点(富士)について「おやっ」と書きましたが,その後の情報収集で以下が分かりました。JRの路線の名前の情報源として,鉄道院時代から脈々と続く「線路名称」のほか鉄道要覧について触れましたが,もう一つ大事なものがありました。鉄道事業法に基づいて,鉄道事業者が監督官庁たる国土交通省に提出する「鉄道事業基本計画」という文書があります。この文書では営業線区は単に五十音順に並び,盲腸線以外では東京に近いほうを起点,遠いほうを終点に書くそうです。中央官庁の霞が関至上主義が垣間見える気がします。そのルールによれば,甲府:東京起点134.1km,富士:同146.2kmなので,甲府が起点になるようです。似たような例は他にもあり,田沢湖線(盛岡:535.3km,大曲:奥羽本線経由で519.8km,ゆえに大曲が起点,有報は逆の表示)なども「事業基本計画」と「線路名称」で起終点がが逆転しているそうです。JR西日本は事業報告の「データで見る西日本」は「線路名称」を踏襲するJR西日本改良版,有報は「鉄道事業基本計画」の順のようで,きちんと使い分けているようです。逆に言えば,線路の名前ごときことで,こんな使い分けをしなければならないのは事業者には迷惑な話です。役所が何と言おうが,「線路名称」はコレとJR各社が積極的に開示すれば,徐々に馴染むようになると考えるのは自分だけでしょうか。(2020.9.10記)

更に追です。
 JTBの大判時刻表には黄色のお知らせページの最後に「営業キロと駅数データ」という情報があり,僕が各社の線路名称等から集計した会社別合計とJR東日本で0.7km,JR西日本で1.6km一致しませんでした。とても気持ちが悪いので,勇気を出して版元のJTBパブリッシングに照会してみました。ご担当者はとても真摯に対応してくださり,JR東日本分は上に書いた代々木~新宿ではなく,他の線区での集計間違いであることが判りました。単純なミスがたまたま0.7kmだったのでとんだ勘違いをして,ご迷惑をおかけしてしまいました。
 一方,JR西日本分は,僕はJR西日本の開示情報をもとに鴫野~放出間を片町線だけでカウントしているのに対し,JTB時刻表は鉄道要覧をもとに片町線,おおさか東線の二重戸籍としてカウントしている(注記にも明示)からです。差異の理由がハッキリしたのはよいのですが,ポリシーの違いなのでこの差の解消は難しいです。国土交通省が二重戸籍を容認しJR西日本が追随するか,鉄道要覧--これも国土交通省監修--がポリシーを改め二重戸籍を解消するか,面倒な話です。知れば知るほど線路名称の周囲には厄介も多いですが,興味も尽きません。
 なお,ページの下の方にリンクをおいている一覧表はJTB時刻表とは1.6kmの差をもったままですが修正済です。(2020.9.17記)

もとの記事:鉄道のイロハ(3)--JRの路線の名前,線路名称公告と線路の戸籍

鉄道のイロハ(3)--JRの路線の名前,線路名称公告と線路の戸籍

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1.JRの線路名称とは
 鉄道のイロハ,3回目は路線の正式な名前--線路名称--について考えます。JRの路線には名前がついていて,旅客への案内や運転の計画など様々な場面で用いられますが,時として正式な名称は馴染みのある路線の名前とはちょっと違うケースもあります。国鉄時代は明治42年の鉄道院の時代に告示された「国有鉄道線路名称」を適時に改訂しながら維持されてきましたが,JRの時代になってからは各社の「線路名称」として引継がれています(JR東日本の場合,昭和62年公告1号)。

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山手線は「線路名称」では品川~新宿~田端だけ @有楽町 2017.11.3

 例えば,東京の都心を環状運転する山手線は,旅客案内上は東京~品川~新宿~池袋~田端~上野~東京(時刻表では大崎や品川が起点)を一周する路線ですが,「線路名称」では品川~新宿~田端だけが山手線で,東京~品川は東海道本線,田端~東京は東北本線です。山手線は多少なりとも言及されていますが,京浜東北線に至っては大宮~東京は東北本線,東京~横浜は東海道本線なので,「線路名称」にその名はありません。そんなわけで「線路名称」を深く探求してもあまり実はないのですが,複数の路線が並行して走っていてもその区間は何線?と決めることができ,鉄道会社の経営や資産管理上は意味があり,鉄道趣味としての興味は尽きません。インターネットのある記事には,国鉄末期の一時期,国鉄線の完乗(踏破といった)を競う「チャレンジ2万キロ」というキャンペーンがあったとき,一部の乗り鉄がこだわっていたと書かれていましたが,もう少し価値のあるものだと思います。JR30年の現代でも,全線完乗を目指す人やいわゆる「乗り鉄」の人達はやはり気にかけるのではないでしょうか。

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京浜東北線という線名は「線路名称」にはない @新子安~鶴見 2016.1.17

2.線路名称の構成
 現在の線路名称は分割民営化により会社ごとに分割されてしまって分かりづらいので,分割前の国鉄時代の線路名称で説明をします。線路名称は,全国の鉄道路線を34の本線とその他の支線にグループ分けし,支線はどこかの本線に属するようグループ分けしました。下の一覧がその34の本線です。
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 本線は東海道線や東北線のように誰が見ても幹線と考えるものもありますが,陸羽線のように実態としては陸羽東線と陸羽西線のみから構成される東北の肋骨線や,釧網本線のような1日数本しか列車が走らないローカル線も,路線網として「幹」と捉えられたのか本線に分類されています。また,名寄本線に至っては,80年代末のローカル線廃止のなかで,本線自体が廃止されてしまいました。

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ワンマンの単行ディーゼルの釧網線も本線 @塘路 2017.8.2

3.本線と支線
 本線以外の線区は支線とされ,どこかのグループに属することになります。例えば,東海道線グループでは東海道本線(東京~神戸)を先頭に,山手線(品川~池袋~田端),赤羽線(池袋~赤羽),南武線(川崎~立川,尻手~浜川崎)の順に福知山線(尼崎~福知山)までが並んでいます。また,東海道本線には名なしの支線があり,品川~新川崎~鶴見(通称,品鶴線),鶴見~横浜羽沢~東戸塚(通称,羽沢貨物線),大垣~新垂井(現在廃止)~関ケ原(通称,新垂井線),大垣~美濃赤坂(通称,美濃赤坂線)は全て,正式な線路名称は東海道本線です。ここで赤羽線ですが,東海道本線から見ると山手線を子供とすると,孫線区にあたりますが,元々は品川~赤羽を短絡するルートが先で池袋~田端間は環状運転のために後からできた経緯から,東海道線グループに属します(山手線,赤羽線とも東北線グループだった時期もある)。

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上越線は東北線グループの孫線区 @水上 2016.12.30

 また,東北線は大家族で,日暮里~岩沼を結ぶ常磐線は東北線グループの支線扱いだし,更には高崎~宮内の上越線も途中に高崎線をはさむ孫線区ながら東北線グループに属しています。最近の話題としては信越本線ですが,長野までの新幹線開業により横川~軽井沢が廃止,軽井沢~篠ノ井が第3セクターに転換,一昨年の北陸新幹線開業で長野~直江津も第3セクターに転換されてしまいました。今では高崎~横川,篠ノ井~長野と直江津~宮内~新潟と3つに分断されてしまいました。高崎線もひっくるめて上越本線,大宮~高崎~長岡~新潟とし,直江津~宮内は北陸本線,残りの篠ノ井~長野は篠ノ井線に編入してしまったほうが実態とあっていると思います。なお,ここでいう本線,支線は運賃計算上の幹線,地方交通線とは別のものです。

4.国鉄分割民営化のとき
 さて2.,3.と国鉄の分割民営化を無視して記述しましたが,最初にも書いたとおり,現在は「線路名称」はJRの旅客鉄道会社ごとに維持されています。例えば,上の東海道本線は,東京~熱海と品鶴線,羽沢貨物線はJR東日本,熱海~米原と大垣周辺の2つの支線はJR東海,米原~神戸はJR西日本に分割されました。基本的には会社境界がはっきりしたというだけで,線路名称という意味では大きな変化ではありません。
 もう一つ,分割民営化の時には,路線の帰属をはっきりさせるために二重戸籍(5.で詳述)を排除しました。例えば,以前は中央本線は東京~塩尻~名古屋とされていて,東京~神田は東北本線と,代々木~新宿は山手線との二重戸籍区間とされていました。ところが,分割民営化を前に二重戸籍はまかりならぬとのお達しが出て,JR東日本はこれに従い,中央本線は神田~代々木と新宿~塩尻(他に岡谷~辰野~塩尻・善知鳥越えルート)と改めました。旧国鉄の資産を適切に評価して分割する前提なのかもしれませんが,お役所仕事的な話で,少なくも代々木~新宿などは二重戸籍でもよいじゃないかと思います。

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中央線電車も代々木~新宿は山手線を走る 2017.11.3

5.二重戸籍区間
 順序がアトサキになりましたが,線路名称の話をするとき避けて通れないのが「二重戸籍」区間です。上のような二重戸籍区間は全国レベルで見るといくつもあって,下の一覧表がその主なものです。大体全部のつもりですが,そもそも全てを確定することが難しいので,主なとしています。出典は種村直樹著「鉄道旅行術」(日本交通公社1984年2月)と同じ種村直樹著「鉄道旅行術」(自由国民社2014年4月)で,前者に収録の区間は国鉄,後者はJRの欄に〇◎をつけてあります。両端が駅の場合は4.に書いたように国鉄分割民営化を前に随分整理されたので,新たな二重戸籍区間は金山や新今宮のように分割民営化後に分岐駅の内側に駅やホームが新設されたケースが主です。

二重戸籍区間
全国の主な二重戸籍区間(◎は分割民営化のときに解消された区間)

 二重戸籍区間の一端が信号場の場合は,カウントが難しいので無視してもよさそうですが,北海道の1項などは距離が24.1kmもあるため,ちょっと気になる存在です。気にするならば,根室本線の列車と石勝線の列車のそれぞれに乗らないとダメとなりそうですが,現在,根室本線のほうは台風の被害で長期運休中です。先般,現地にも行きました(旅行記はこちら)が上落合信号場が駅に昇格となれば晴れて二重戸籍も解消されますが,この際,根室本線は現在の石勝線ルートとして,滝川~富良野~旭川を富良野線,富良野~東鹿越は富良野線の名なし支線でそのうち廃止,などということになると怖いです。また,5項の今泉の例は,実際の線路は何も変わっていませんが,二重戸籍廃止令のためか,白川信号場まで全部今泉駅の構内として,二重戸籍でなくしてしまいました(実際の構内の信号配線をどうしたのかは分かりません)。この他も信号場がらみの二重戸籍区間は,途中に長大トンネルや鉄橋など高価な施設が存在し,列車の頻度が低い区間なので1本の線路を共用しているケースが多いです。

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信越本線のローカル電車 @柏崎 2017.5.3

6.線路名称の今後
 さて,線路名称の今後ですが,実態とあったように整理されるべきとは思いますが,これがなかなか難しいようです。実際には山手線のような旅客案内上の路線名と線路名称が一致しないケースは少なく,線路名称は利用者にもなじんでいます。上にも書いたように信越本線をやめて上越本線にしてしまえとはいっても,長年親しんだ線路の名前が変わるのは,現地の利用者は驚くでしょう。石勝線の例のように,線路名称の設定を恣意的に操作することで,路線の経営数値をいじれてしまうのは困ります。また,二重戸籍については,JR発足前後に整理したのに,駅やホームの新設により新たな区間ができてしまいました。これを考えると,二重戸籍は絶対に許さないというのは硬すぎで,代々木~新宿の例なども含めて容認したほうが,結果として分かりやすいと思います。また,内子線と予讃本線の例--現在の内子線は予讃本線と一体で運用されていますが,地方交通線に指定されたばかりに内子線を予讃本線に編入できない由--なども,線路名称の硬直化です。気安く変えるのはいけませんが,そろそろ整理見直しのときではないかと思います。

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予讃本線~内子線を走る特急「宇和海」 @松山(?) 2006.7.23

7.JRにとっての線路名称と開示
 JRにとって本業の旅客輸送の面では,「宇都宮線」や「神戸線」などの愛称がつけられ,線路名称に規定された名前に固執する必然性は少なくなっています。しかし,「乗り鉄」趣味だけではなく,鉄道業の経営的にももう少しこだわってよいと思います。4年位前のことですが,思いたってふらりと訪ねた都心のびゅうプラザ窓口では若い女性の係が応対してくれ,二つ返事で規定綴りの中から公告を見せてくださり,自発的にコピーをしてくれました。その経験があったので,今般,「線路名称」を見せてもらおうといくつかの駅や旅行センターを訪ねましたが,惨憺たるものでした。半年くらい前に行った品川駅のびゅうプラザでは,線路名称公告自体を知らず,説明すると駅事務室から持ってきて開示してくれ,不勉強でした...との弁でした。同じ品川駅のJR東海ツアーズでは,そんなものは知らないし,駅に行ってくれと体よく断られました。今年の夏に行ったJR北海道のかなり大きな駅のツインクルプラザもほぼ似たような対応でした。

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東京駅の駅長事務室。こんなことで訪問するのは少々度胸が要る 2017.11.1

 先日は「発見!てくてくきっぷ旅」のイベントのついでに,JR東日本とJR東海の東京駅の駅長事務室に行ってみました。両社とも「線路名称」は存じあげませんが,探しておきますとのことで,再訪を促されました。東京駅の駅長といえばJRの現場の最高の職位であり,窓口のご担当の対応も文句ないのですが,「線路名称」を知らないようでした。「公告」がJRのなかでどういう位置づけなのか知りませんが,字面(じづら)からは「旅客営業規則」のごとく駅に常備され,旅客から申し出があればすぐ開示されるものと思っています。今どきのインターネットの時代,JR各社とも「旅客営業規則」はウェブサイトに開示しているので,その横にあればよいというのが希望です。

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蒐集したスタンプも線路名称順に整理。すべからく線路名称は鉄道趣味には欠かせない 筆者所蔵
(2017.11.18記,2020.2.22一部修正)

鉄道のイロハ(2)--列車番号のあれこれ

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2レ「北斗星」 @上野 2015.2.22

 前回のイロハの記事で,列車番号がなければ電車や気動車は列車でなく,ハードウェアとしてのただのハコで,列車ではないと書きました。今回はその列車番号について書いてみたいと思います。
 列車番号は1本1本の列車を識別するとても大事な番号ですが,どのように付番されているのでしょうか。ここでは主にJRの列車番号についてみてみます。列車番号は4桁までの数字と,ものによっては1文字のアルファベットでできています。

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工場公開での1シーン。列車番号表示はお遊びの7777Y @東京総合車両センター 2016.8.27

 まず千位の数字ですが,これは大括りな列車の区分を示します。
  0,1,2,5:とくに大きな意味はなく列車群のような感じで使われる。
        例:1001M~1025M:ひたち1~25号
          1057M~1095M:ときわ57~95号(品川始発の列車)
          2051M~2093M:ときわ51~93号(上野始発の列車)
  3:快速列車に使われることが多い
  4:0,1,2,5と変わらないが分割・併合列車の子側に使われることが多い。
        例:4031M:サンライズ出雲
  6,7:季節列車:予め運転期日の決まった不定期列車。
  8,9:臨時列車:運転を計画するごとにダイヤを設定する不定期列車。

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4031M「サンライズ出雲」@出雲市 2010.7.30

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9086M~9061M「はまかいじ」@横浜 2016.11.23

 6000番台は昔の教科書では予めダイヤ上に設定された臨時列車に使われていましたが,最近はあまり使われなくなっています。JR東日本では毎シーズン運転される「はまかいじ」や「ホリデー山梨」のような列車でも8,9000番台を使います。JR九州に至っては6000番台は定期列車に使い,「ゆふいんの森」のような予定臨に7000番台を使うようです。

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7003D「ゆふいんの森3号」2009.3.1

 次に百位の数字ですが,基本的には線区あるいは区間ごとに決まっています。
 例えば,東海道本線の東京口では下のようになっています。
  1:東海道本線の長距離列車。かつての大阪行き「銀河」が101列車だった。
  3:JR東海への乗入れ列車。321M:東京~沼津など
  5:伊東線への乗入れ列車。520M:伊東~品川(2017.3ダイヤではこの1本だけ)
  7:熱海以東までの列車。721M:品川~熱海など
    (上野東京ライン開業以前は8,9も使っていた)
 もう1例,上野駅に乗入れる列車では下のようになっています。
  3:常磐線の列車:321M:上野~勝田
  5:東北本線の列車:521M:上野~宇都宮
  8:高崎線の列車:821M:上野~高崎
  (上野には乗入れないが関連のある区間)
  6:東北本線小山以北の列車:623M:宇都宮~黒磯
  7:上越線の列車:721M:高崎~水上
  (そういえば昔は...)
  1:東北本線の長距離列車。「八甲田」が101列車だった
  2:常磐線の長距離列車。「十和田1号」が201列車だった

 次に十位以下ですが,次のような使い分けの原則があります。
  00~19:優等列車(特急,かつての急行)
  20~49:普通旅客列車(快速を含む)
  50~99:貨物列車
 前述の東海道線のように列車頻度が高い線区では50以降も旅客列車に使われます。

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3050レ。札幌貨タ~隅田川の高速貨物列車。いかにもえらそうな列車番号です。2016.8.1

 数字の最後は奇数,偶数ですが,原則として下り列車に奇数,上り列車に偶数が使われます。北海道の千歳線は線区としては苗穂が起点で,札幌発苫小牧方面が下りですが,函館本線,室蘭本線などとの整合から,下り列車に偶数を使っています。このような例は全国には多数あります。

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千歳線の快速列車。@長都 2015.2.21

 次は英字の部分です。かつては以下のように決まっていました。
  英字なし:機関車牽引の客車列車,貨物列車
       英字がつかない列車のとき,便宜的に9521レのように片仮名のレをつけて表記することもあります。
  M:電車で運転する列車
  D:気動車で運転する列車
  A~C,E:新幹線(東海道・山陽・九州,東北・北海道,上越,北陸)
 最近はF,G,K,S,Tなどいろいろな英字のつく列車が増えています。なお,JR東日本のハイブリッド気動車はD,蓄電池電車はMを名乗ります。今はなくなってしまいましたが,客車列車の仲間には荷物列車,(客貨)混合列車というのもあり,どちらも客車の列車番号を名乗っていました。

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山陽本線を行く荷物列車。@戸田? 1980.9

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肥薩線の混合列車。これにDD51を連結して組成する。客車はオハユニ61の半両だけ @人吉 1980.9

 この辺でここまでのおさらいです。3721Mは東海道線の湘南ライナー1号ですが,熱海以東の快速電車と想像がつけばここまでの内容は理解できています。

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1レ「さくら」@浜松町 1978.5頃

 ところで,列車番号に重複はあるのでしょうか。答えは「ある」です。たった4桁で全国の列車を表すので,同じ番号の列車は多数存在します。しかし,運転の整理のための番号なので混乱を生じないよう,同じ駅や同じ線区に同じ番号の列車は走らないようになっています。かなり昔のことですが,名古屋駅には1レ「さくら」,1M「しらさぎ1号」,1D「南紀1号」が乗入れていたので,英字が違えば列車番号は別のものとみるようです。

 ここまでは一般的な列車の列車番号ですが,運転頻度の高い電車区間では別の体系で列車番号を組立てています。4桁の数字の上2桁は始発駅の発時間,下2桁は運行番号を表します。また,英字部分は線区や運用の担当区所を表します。この場合も下りが奇数,上りが偶数ですが,上りは-1した数字になります。また,下2桁は運行番号なので,横浜線の447K~546K~647K...のようにトレースしていくとその日の電車の運用が追うことができます。下がこのような列車番号の例です。
  632B:磯子駅を6時台に出る33運行の根岸線の上り列車。
  4251K:桜木町駅を12時台に出る51運行の横浜線の下り快速列車
     快速なので12に30をかぶせて42xxとしている
 なお,京浜東北・根岸線の列車番号は変わっていて,今は全ての列車が埼玉区の電車で運用されますが,昔,沿線の浦和,下十条,蒲田の電車区で分担していた名残りで,A,B,Cを使い分けています。電車が83本あり,2桁では番号が足りないこともあり,当日のスタートが旧浦和,旧下十条の運用がA,旧蒲田のものがC,大船,磯子,東神奈川などその他のものがBを使うそうです。

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横浜線4251K @横浜 2016.11.23

 下りは奇数,上りは偶数と書きましたが,総武快速~横須賀線は東京駅を境に上り下りが入れ替わります。このため1本の列車が2156F~2157Sのように列車番号を変えながら走ります。また,なぜか千葉以遠からの列車は更に1000,2000,3000をかぶせて3156Fのような列車番号になります。更に付属編成が鹿島線に入るような列車は,ふつうに2545Mを名乗って佐倉以東を走ります。こうしてみると単に列車番号といっても,それぞれに意味があり楽しいものです。

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内房~総武快速~横須賀線3156F~2156F~2157S @千葉 2014.5.5

 最後に新しいところで上野東京ラインと湘南新宿ラインの列車番号を見てみましょう。これらの運転系統では線区にまたがって走る列車が多数走るのでちょっと変わった番号体系になっています。
(千位)
  1:上野東京ラインの普通列車(英字はE)
  2:湘南新宿ラインの普通列車(英字はY)
  3:上野東京ラインの快速列車(英字はE)
  4:湘南新宿ラインの快速列車(英字はY)
  2000をかぶせる快速列車:アクティ,ラビット,アーバン,この他名無しの快速や特別快速があるが,高崎~東海道線系統の湘南新宿ラインの区間内のみの快速は2000番台のまま

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上野東京ラインの快速3620E @東京 2015.7.31

(百位)
  5,6:宇都宮線(横須賀線)系統の列車
  8,9:高崎線系統の列車
  それぞれ500,800台だけでは足りないので,あふれた分が600,900台
(十位以下)
  20~99を使用

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湘南新宿ラインの普通2849Y @高崎 2015.3.14

 下りが奇数で21~99,上りが偶数で20~98,時刻の早い列車から付番してゆくのは一般の線区と同じです。上り下りは東海道線基準で付番し,総武快速~横須賀線のように途中で変わることはありません。したがって,東北本線,高崎線では奇遇逆転になります。東海道線からの上野行き電車の場合,その先の回送先で百位が決まるそうで,芸の細かいことになっています。また,優等列車用の00~19を使わないあたりも,列車番号の原則に意外と忠実です。この2系統の列車番号ですが,千位を見れば上野東京ラインか湘南新宿ラインか識別できるので,英字のE,Yはおまけとなってしまい,いまいち美しい付番体系ではない感じがします。

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京浜東北線1000B @新子安~鶴見 2016.1.17

 列車番号はたった4桁の数字ですが,それぞれ1本1本の列車の個性を表しているので,意外と奥が深いです。付番の仕組みを理解すると,時刻表や電車の表示を見るのも楽しくなると思います。(2016.11.26記)

鉄道のイロハ(1)--列車・電車・汽車の言葉遊び

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 列車・電車・汽車--言葉のお遊びみたいですが,今日はこんなテーマにお付合いください。
 先ず列車,これはハードウェアたる電車や気動車にソフトウェアたる運転計画が組合さった概念だと思っています。列車はお客さまの乗る車両に運転士さんや車掌さんという乗務員が乗って,起点・終点があって,列車番号が付されたものです。尤も,最近はワンマンの列車や,新交通システムでは無人運転のものもありますが。

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横浜新交通の列車。運転装置はありますが蓋が閉まっていて無人運転です @八景島 2015.7.11

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車両基地公開の会場で。7777Yとお遊びの列車番号が出ています。ただの電車であって列車ではない @東京総合車両センター 2016.8.27

 これに対し,電車や気動車などのハコもの(ハードウェア)が鉄道車両です。鉄道車両には動力や運ぶものによって,電車,気動車,客車,貨車などがあります。電車によって運転される列車は電車列車,客車で運転される列車は客車列車というような使い方をします。電車はこれらのうちの一つで,電気で走るもののことです。しかしながら日本においては,列車のうちの圧倒的多数が電車列車なので,今どきは列車と電車が同義に使われることがしばしばです。機会があれば確認したいのですが,JR東日本の全列車キロ--列車の本数に走行距離を掛け合わせたもので,輸送の総量を表す--でみたときの電車列車の割合は90%以上なのではないでしょうか。一部のマニアは列車のことを電車というのは間違いだという論調もありますが,数字で見る限りあながち間違いとも言えないと思います。

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新幹線も電車列車 @米原駅 2012.12.29

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列車といえば電車の時代です @横浜線 2014.6.13

 気動車は本来,電車と並立の概念で,車両に積んだ内燃機関を動力源にしたものです。気動車と似た言葉でディーゼルカーという言葉もよく耳にしますが,厳密に考えるとディーゼルエンジンとはディーゼル博士が発明した,点火プラグなしで軽油で廻すエンジンなので,気動車の一部といえます。現代ではディーゼルカー=気動車ですが,太平洋戦争前後の気動車の黎明期にはガソリンカーというのも存在しました。

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国鉄時代はDMH17機関を搭載した気動車が全国を駆け巡った。キハ82 @大沼公園 1979.3

 また,気動車には動力伝達方式によって機械式,液体式,電気式があります。機械式はマニュアルシフトの自動車のようにトランスミッションを介して動力を伝達するもので,レールバスなどの一部を除いて,早くにすたれてしまいました。

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南部縦貫鉄道のレールバス。機械式のトランスミッションだった @七戸 1978.8

 液体式は気動車,ディーゼルカーの主流で,液体変速機(トルクコンバーター)を介して動力を伝達するものです。日本では国鉄が強力に標準化を推し進めた時期と液体式ディーゼルの技術が成熟した時期が一致したため,世界的にも液体式ディーゼルカー王国になりました。電気式は,内燃機関の動力で発電機を回して,モーターの力で走る気動車です。モーターで走る=電車ではない所がややこしい所です。
 
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リゾートしらかみのハイブリッドディーゼルカー。HB-E300系を名乗る @東能代 2016.3.21

 近年はメカトロニクスの技術が発達し,これらの特徴を兼ね備えたハイブリッドなシステムを持つ車両も増えてきました。その一つがJR東日本のHB-E300系などのハイブリッド気動車です。これらはハイブリッドカー同様に,ただの電気式ディーゼルカーではなく,ブレーキによる発生電力を回収して蓄電池に蓄電できます。低燃費であるばかりか,モーター駆動による静粛性も兼ね備えた,新世代の車両といえます。

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烏山線に運用されるaccum。こちらは蓄電池電車でEV-E300系を名乗る @烏山 2016.8.1

 これと似たものに蓄電池電車,JR東日本のaccumもあります。これはハイブリッドディーゼルカーから発電用エンジンを取除いたようなもので,蓄電池への充電は専ら架線からパンタグラフ経由と回生ブレーキで行います。大容量蓄電池技術の賜物で,電化区間で蓄電しておいて,少々の距離ならバッテリーの電力のみで走ることができます。JR東日本の烏山線だけの運用でしたが,この10月からはJR九州で交流版のDENCHAが筑豊本線でも運用を始めました。ちなみに,JRの区分ではハイブリッドは内燃機関を持つので気動車,accumは電車の仲間になっています。

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最後の客車寝台急行だった「はまなす」 @青森 2015.5.2

 最後に客車ですが,電車,気動車が編成内に分散配置された動力によって走るのに対し,自車には動力を持たず,他車(機関車)によって牽引されるのみの車両を客車といいます。客車は動力を持たないので静粛性に優れ,昭和20年代までは長距離列車は専ら客車列車でした。しかし,起終点駅での機関車付替えの手間,加減速性能に劣ること,電車の乗り心地の向上により,日本ではすたれてしまい,この(2016年)3月末を最後にJRの定期列車から絶滅してしまったのは残念です。

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1979頃の写真。客車列車に気動車をぶら下げて回送していた。多分定期列車だと思う @鳥取 1979.8

 ところで,電車や気動車にも動力を持たずに編成中の仲間と一緒に走るサハやキサハといった付随車もあります。海外では客車としても電車の付随車としても使える車両もあると聞いたことがありますが,日本では電車,気動車,客車の区分は厳然としていて例外的なケースを除いては相互乗入れはできません。これは制御回路の引通しが異なるからですが,そもそも連結器からして違うので,普通には連結することすらできません。最近では気動車も電車と同じ密着連結器を備えるものが増えたし,制御回路の電子化が進んだので,今後はどうなるか分かりません。JR東海の313系電車とキハ25形気動車など外見が瓜2つだし,4編成12両の稀少車ですがJR北海道のキハ201系は電車との協調運転ができるようになっています。

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一般的な貨物列車 @松島 2016.3.25

 貨車は動力的には客車と同じで,専ら牽引されるのみですが,貨物を運ぶ車両です。貨車を連ねて機関車で牽引するのが貨物列車で,長大なものでは26両,1300tもの列車もあります。JR貨物は,貨物なのに貨車でなく電車という変わり種を往復1本だけ運転していて,スーパーレールカーゴ(SRC)という愛称がついています。一般には電気機関車の機関士と電車の運転士は違うので(動力車操縦免許証自体は甲種電気車で同じ),どういう資格のかたが運転するのか興味深いところです。

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スーパーレールカーゴ @鶴見 2019.5.26

 客車,貨車に話が及んだので,機関車の話をしておきましょう。電車や気動車はそれらだけで編成を組んで走りますが,客車,貨車は自走することができません。これらの車両を牽引するのが機関車で,華やかな寝台特急や長大な貨物列車の先頭にたち,いかにも力強そうな車両です。機関車も動力によって,電気機関車,ディーゼル機関車があります。後者には液体式と電気式があるのも同じです。日本では国鉄時代に液体式のDD51,DE10が勢力を伸ばしましたが,JR貨物になって,北海道にDF200という強力な電気式ディーゼル機関車が登場しました。DF200は1800馬力機関を2基搭載しますが,その轟音もすごいです。

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国内の現役では唯一の電気式ディーゼル機関車DF200 @長都 2015.2.21

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各地に走る復活SL列車。D51-498EL&SLみなかみ号 @新前橋 2015.10.24

 定期列車の牽引はありませんが,蒸気機関を動力とする蒸気機関車は機関車の代名詞です。JR山口線で長年,SLやまぐち号として運転を続けているC57-1のほか,D51,C61などの保存機関車もあり,博物館だけでなく,本線上でその勇姿が見られるのはありがたいものです。

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フランスのTGV-POS。編成両端のみが動力車(写真:Wikipediaから)

 ところで,海外では日本より遅れて動力分散化(客車列車から電車列車への移行)が進んでいるようで,機関車牽引の客車列車はまだまだ健在です。とくに次の2つの形態は日本にはないので紹介しておきます。準動力集中方式は,フランスの高速列車TGVに代表される方式で,編成両端に機関車並みの強力な動力車を配し,中間車は全て付随車で編成します。もう一つはプッシュプルトレインで,ドイツやオーストリアなどのインターシティ(IC,都市間特急)などに見られ,客車列車の最後尾に運転台の付いた客車を連結し,終端駅での折返しの不便を解消したものです。後尾の機関車で列車を押すことを推進運転といって,日本では上野~尾久間などの限られた区間で45km/h制限で行っていますが,これらの国では本線上を160km/hもの速度で走っています。なお,欧州で高速のプッシュプル運転が可能なのは,旧式なピンリンク式連結器とバッファーを使っているため,レール方向の大きな荷重にも耐えることができるからです。

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プッシュプルトレインの例。オーストリアの近郊列車(写真:Wikipediaから)

 言葉遊びの最後に汽車ですが,列車と同義の通俗語と思っています。100年前は列車=蒸気機関車牽引の客車列車しかなかったので,人々はこの言葉を使ったのでしょう。今ではほとんど死語ですが,何とも旅情のある響きです(2016.10.30記)

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広島のセノハチを行く貨物列車とEF67 @瀬野 2012.8.26

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