最近気になったきっぷの話題2つ/横浜駅での途中下車と東京大循環

今日は最近気になったきっぷと制度の話をいくつか書いてみます。制度として知ってはいても,なかなかその実例にあたるケースは少ないので,きっぷと共にご紹介します。
1.新横浜駅と横浜駅に関わる途中下車
東海道新幹線と在来線の東海道本線は多少場所が離れていても同じに扱います,ただし,在来線と離れた区間にある駅を発駅,着駅,接続駅とする場合は別ですというのが,幹在同一原則(旅客営業規則,(以下,規)16条の2)です。前から気になっていたのですが,大阪,名古屋方面から新横浜で新幹線を途中下車したきっぷで横浜で途中下車できるのでしょうか。答えを先に書きますが,これはNGです。新横浜と横浜を結ぶ横浜線が横浜から分岐していれば話は簡単ですが,一つ東京寄りの東神奈川から分岐するためとても厄介なことになるのです。以下の3つの取扱いがあるので注意が必要です。

周辺の線路図
(1)新横浜で途中下車したことにして,新横浜~横浜間を別途精算する場合
横浜駅で出場する際に下のきっぷを渡して,この場合は新横浜から,東神奈川からどちらになるのですか?と確認したところ,間髪入れず新横浜からですとの回答です。精算にSuicaを出したのでIC運賃で165円(10月の運賃改定前)を引去りされ,きっぷには「新横浜駅下車代 『横浜』」のハンコを押されました。このときは相生からたっぷり飲んで酔っていたので,そんなものかと思って帰ってきました。

(2)新横浜からさらに東京方向へ進み東神奈川まで来たことにして,東神奈川~横浜間を別途精算する場合
下のケースは東神奈川で途中下車して,Suicaで入場した場合です。当然,横浜で降りたときの引去り額は136円(現行運賃)です。不鮮明ですが「(幹)」と「乗変」の間の途中下車印が東神奈川のものです。

小田原~東神奈川間には下の選択乗車が設定されているので,小田原~新横浜~東神奈川~鶴見~品川のルートがとれ,東神奈川で途中下車することができます。

選択乗車の規定(規157条)
(1)の場合は,別途運賃を払ったり,地下鉄など他の手段で新横浜まで戻れば,引続きこのきっぷで旅行を続けることができます。一方,(2)の場合は新横浜から品川方向に進んでしまっているので,戻ることはできません。従って,以降の行程をどう乗るかで使い分けることができるのです。しかし,横浜駅の取扱いはどうやら明示的に(2)だと主張しないと(1)にされてしまうようで,ご丁寧にもそのためのゴム印まで用意しているので要注意です。旅客にとってはどちらでもよい話ですが,通常,これらの乗車券は新幹線経由(乗車券のタイトルの下の四角のうち左の4つが塗りつぶされている)が多いので,運賃収入はJR東海の取り分です。JR東日本としては横浜線の利用分を回収しようということでしょうか。
(3)横浜で下車後,きっぷを回収する場合
(1),(2)は途中下車の話ですが,きっぷは東京都区内ゆきだけど,横浜で降りた後はもう乗らない,というケースです。この場合は,(2)と考えて136円が必要だけど,前途の放棄を条件に便宜的に免除する場合があるようです。しかし厳密に考えると(2)として東神奈川まで来た後,東海道線を上る方向から下る方向に使用開始後の区間変更をし,残り100km以下のため払戻しはなし,ということのようです。このときのきっぷが往復割引適用の場合は,往復割引が成立しなくなるので一旦,無割引きで運賃計算のうえ区間変更の取扱いをするルール(旅客営業取扱基準規程279条)です。結果的にひどく割高になってしまうので,この取扱いはできず,(2)と同様の取扱いしかできません。
(おまけ)
12月になって再度,相生への出張があり,またまた(1)と同じ体験をしました。今度は時間があったので数日後に新横浜に行き,菊名,大口,東神奈川,新子安と降りてみました。知れば知るほどこの問題はグレーで,いつか情報を整理してまとめたいと思います。一つだけ事実を書くと,新子安駅では自動改札機が途中下車に対応していました。

このときのきっぷ。ハンコだらけになりました
(以下2023.4.9追記)
去る(2023年)3月20日,この問題に決着をつけるべく,関西方面に行った帰りに周到に準備して再度,小田原以西から東京方面のきっぷで横浜駅で途中下車--正確には東神奈川で途中下車したことにして,別途精算--しました。準備した内容は以下の2点です。
先ず1つは,きっぷの熱海~東京間を在来線経由にする,です。旅客営業規則(以下,規)--そもそもこのルールは国鉄の分割・民営化以前に制定されたものなので,会社別の収益の配分という概念はないはずです--157条(21)には単に小田原以遠(早川方面)としか書いていなくて,熱海方面が新幹線だろうと在来線だろうと関係ありません。そもそもこの2つの区間には幹在同一原則(規16条の2)があるので区別しないはずです。ところが横浜駅ではこの幹在同一原則を無視し,伊豆方面からの(在来線経由の)きっぷならよいけど,静岡,名古屋方面からの(新幹線経由の)きっぷはダメと案内していました。ご念のいったことに,この元記事を書いた2019年はこの違いを書いた説明図まで用意していました。
新幹線経由であればJR東海の収益になるし,在来線経由であればJR東日本の収益になるので,気持ちとしては理解できますが,そんなものはJR旅客会社間の内輪の都合で,旅客営業規則ベースの客の知ったことではありません。それでも最大限JR東日本の言い分に配慮し,今回は敢えて熱海~東京間を在来線経由を指定してきっぷを買いました。下のきっぷのタイトルの下の四角4つがそれを表します。上のきっぷ3つは四角4つが黒くて,これは新幹線経由を表します。ちなみに,その隣の4つの四角は米原~新大阪間の幹(黒い四角)在(白い四角)を表します。これなら,たまさか発駅が神戸市内でも,収益面では伊豆方面と何の違いがあるかというわけです。

2つ目は新横浜と東神奈川で途中下車です。新横浜は新幹線改札の自動改札で「出場」の印字を付けた後,外改札で一旦出場し,入場しました。余談ですが,この外改札からの再入場に自動改札機が対応していなくて,有人通路を通らざるを得ず,なぜかふつうの改札鋏のスタンプを押されました。そして東神奈川でも自動改札機で途中下車しました。部外者の僕にはそれが磁気的にどう記録されるか分からないので,念を入れて,改札の係のかたにハンコの途中下車印も押してもらいました。東神奈川で途中下車できたものが,東神奈川から精算できないなどいうことは考えられません。
一方,東神奈川で途中下車したなら,きっぷを買うか,Suicaで入場して横浜へ来ればよく,敢えてそのきっぷを出して精算するというのは合理的ではありません。誰何されたら,鶴見方面へ行くつもりで入場したけど,夜も遅くなってきたので止めた,と答えるつもりでした。ある面,なにか下心ありが見え見えなのですが,それは気にしないことにします。

ふつうなら米原から新横浜への新幹線では晩酌の一つもしてゆっくりするのですが,今日はこのためにコーヒーしか飲まずに来ました。今日こそは横浜駅にギャフンと言わせてやるとやる気満々で比較的すいている北改札の有人通路へ向かいます。ところがこの日のご担当は何ごともなく,ふつうに東神奈川からの精算でOKでした。このこと自体は誤った規則の運用が改まったことで善いことなのですが,3年越しで準備していたのに拍子抜けです。
改札氏と会話したついでに2,3伺うと,東神奈川からの精算とすると東神奈川へ戻るにも運賃が必要で割高になってしまう,ゆえに新横浜下車代を推奨しているとの説明でした。横浜から東京へ行くのにわざわざ新横浜に出て新幹線に乗るとも思えず,そのためには再度新横浜までの運賃が必要でよほど割高で,今ひとつ説得力がありません。3年前には規定を無視した説明図まであったはずですが,東神奈川からの精算も是とする取扱いは,氏が着任した2年前から変わっていないそうです。3年前にJR東日本のインターネットのお問合せにだいぶ噛みついたので,そのときの対応で改善されたのかもしれません。問合わせの回答としては適当にはぐらかされた印象ではあったのですが。
それでもなんでも,2023年現在は横浜駅の現場も(1)~(3)どれでも適用可能の考えになっているようです。会社のエゴで旅客営業規則を捻じ曲げていたととらえていたので,これが改善されたのは嬉しい限りです。
(2023.4.9の追記終わり)
2.70条特定区間の活用
旅客営業規則には東京大循環(規70条)というルールがあって,下の区間を通過する場合は経路を指定せず,旅客はどの経路でも選ぶことができます。この区間内は経路を特定して乗車券を発売すると,旅客,JRともに窮屈なため選択乗車を認めるものです。上の(2)の乗車券で,品川~東京間は有楽町経由で計算しますが,山手線を遠回りして池袋,田端経由も利用できるのです。

70条特定区間
このときはたまたま相生に行った翌日に高田馬場に行く用事があり,帰りの乗車券を東京都区内着とせず舞浜(東京都区内から1駅千葉県に入った駅)着としました。値段は東京駅(相生から665.0km)も舞浜(同677.7km)も同じで,ちょっときっぷの買い方を工夫するだけで,随分余計に乗車することができました。用事があったのは高田馬場ですが,調子に乗って大崎,五反田,目黒に赤羽や尾久でも途中下車ができました。どの駅でも何の問題もなく途中下車はでき,JR東日本では途中下車印押捺を強く指導しているようで,ほとんどの駅では頼まなくても下車印を押されました。
3.自動改札の話題
自動改札機はきっぷを入れると瞬時にOK,NGを判定して,磁気記録を残したり,回収したりをしてくれます。自動改札機のロジックには興味津々なのですが,一歩間違えば不正乗車になってしまうので,おいそれと試すことができません。2.の東京大循環で,最短の以外の経路を乗った場合,自動では途中下車の判定をしてくれないようです。というのも,大崎での入場時に自動改札は通ることができません--係員にお知らせくださいになる--でした。なお,出場時は,途中下車のつもりがきっぷを食われてしまうと厄介なので,はじめから有人通路を使ったので,未テストです。

反対にこちらはよくできている例です。上の3枚のきっぷを同時に熱海駅の新幹線改札の自動改札機に通したところ,無事に通ることができました。乗車券が焼津で切れているので,無理ではないかと思っていたのですが,幹在同一原則が判定ロジックに織込まれているようです。なお,この焼津切りにはわけがあり,興味があるかたはこちらの記事をご覧ください。
妙に細かい話で1回分の記事にしてしまいましたが,やっぱりJRの制度研究って面白いねと思っていただければ幸甚です。(2019.11.2記)
参考記事:
・幹在同一原則
・70条特定区間(東京大循環)
・特定市内駅と駅に関わる規則・追補(焼津切りのわけ)
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知って楽しいJRの旅客営業制度7--特定市内駅と駅に関わる規則・追補

先日,東海道徒歩きのために磐田・豊橋へ往復する際に,ちょっと変わったケースにあたりました。特定市内駅の制度が故の矛盾なので,「知って楽しいJRの旅客営業制度7--特定市内駅と駅に関わる規則」の追補としてあげておきます。
僕の家の最寄駅は根岸線の磯子駅,東海道線の小田原方面に出るときは大船へ出るのが順路です。小田原の先,熱海,沼津,静岡方面に行くときも,在来線利用であれば大船に出ます。ここで磐田までの運賃を検索すると面白いことになります。経路どおり直接,大船に出る運賃のほうが,遠回りの横浜経由の運賃より高くなってしまうのです。

スマホ版「乗換案内」の検索結果
どうしてこんなヘンなことになってしまうのでしょうか,理由は特定市内駅発着の場合は市の中心駅からの営業キロに拠ることにあります。
先ずは簡単な横浜経由の場合ですが,運賃計算は距離の短い戸塚経由で横浜~磐田の運賃計算を行い,磯子~横浜間はサービス(?)です。
次に本郷台経由で大船に出るときですが,運賃計算は横浜発遠回りの根岸線経由で横浜~磐田の運賃を計算します。実際の乗車経路どおりに運賃は計算するという通則に従うと,実際には乗らない横浜~磯子間も運賃計算に含められてしまうのです。なにかキツネにつままれたような話ですが,磯子ではなく,戸塚であっても横浜からの運賃になってしまうことを考えれば理解できます。

横浜市内~磐田の運賃計算の経路
かつて根岸線の磯子~大船間の列車が少なかったときには,藤沢,小田原方面と磯子に選択乗車の設定がされていました(旅客営業規則157条1項(12))。このルールがあれば戸塚経由横浜市内発着の乗車券であっても,選択乗車で本郷台経由のルートを使うことができます。この規定は2002年12月の改訂で削除されていますが,その頃からは根岸線磯子~大船間の列車も概ね10分に1本はあるので,このルールは役目を終えたと思っていました。この規定をよく見ると,選択乗車ができる範囲は磯子~桜木町間です。今回採りあげた矛盾の救済が目的ならば,大船に近い本郷台~新杉田も対象であるべきです。また,すぐ後の(12)-2項では磯子~本郷台の各駅に対して,横浜から東神奈川方面の選択乗車も設定されていました。これらから,この規定はあくまでも根岸線の末端区間の列車頻度の少ないことへの対応だったと考えられます。

かつて設定されていた根岸線の選択乗車(北海道旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 旅客営業取扱基準規程 中央書院 1991.4から)
JRとしては先の戸塚の例のように特定市内の市の中心駅と出口の途上にある場合は運賃計算上不利になるのは仕方がないことと割り切っているようです。「知って楽しいJRの旅客営業制度7--特定市内駅と駅に関わる規則」本編のなかでさいたま市を特定市内駅にしないのはよろしくないと書きました。しかし,この例を考えるとさいたま市を特定市内駅とすると出口が複数あるゆえの弊害が多数でてしまうので,敢えて指定しないのかもしれません。

今回の不利な運賃計算の回避策。160km区間で運賃計算を区切る
このような場合も100km超かつ200km以下の区間で乗車券を切ることで,特定市内駅のルールの弊害を避けることができます。駅ごとに条件が変わるので細かい検証はしていませんが,磯子からの場合は焼津で切ると159.8kmとなり,160kmまで2,590円にぎりぎり納まるのが有利なようです。今回の旅行は往路が磐田まで,復路が豊橋からでしたが,以下のような結果でした。豊橋はたまたま焼津まで99.9kmで,期せずしてとても有利なケースになりました。
往路 磯子~焼津 159.8km 2,590円 + 焼津~磐田 52.2km 970円 = 3,560円
横浜~磯子~磐田 221.5km 4,000円(440円の節約)
復路 豊橋~焼津 99.9km 1,660円 + 焼津~磯子 159.8km 2,590円 = 4,250円
豊橋~磯子~横浜 269.2km 4,750円(500円の節約)
往復で940円ともなると制度の弊害では済まないような気もしますが,ちょっと制度を勉強して知恵を働かせば,帰りの車内での晩酌代くらいにはなりそうです。
元の記事「知って楽しいJRの旅客営業制度7--特定市内駅と駅に関わる規則」へ
(2018.12.16記)
東京近郊区間大回り最長140円旅行・その4--追補・2日がかりの大回り乗車とサンプル行程

イメージ(このスレッドの写真は全てイメージです)
この(2018年)6月は3回に分けて4月28日~29日に実行した140円旅行の顛末をお届けしました。その2では,140円旅行の最長ルートや日をまたぐ大回り乗車の蘊蓄(うんちく)などを書きました。この記事をアップしてから,待てよ...と思ったことが何点かあるので,それを書いておきます。僕の思考の過程に沿って書いたので,若干,回りくどいですが,おつきあいください。
1.日またがりの大回り乗車について
(1)その2のおさらい
まず,その2のおさらいです。ここでは日またがりの大回り乗車について「これだけの距離になると1日で全てを乗りきることができず,どこかで夜明しをしなければなりません。インターネットでは,夜明しをする必要があるので終夜運転のある大晦日でないとこのルートは成立しないとの記事を見かけますが,これは違うと思います。140円旅行中に終電になると,ふつうの乗車券では有効期限が切れます。有効期限が切れても「継続乗車」(旅客営業規則155条)という決まりがあって,乗車券の行き先駅までは乗車する権利はあるのですが,「継続乗車」扱いになったら可及的速やかに目的地に行くのが常識で,大回りなどしていられない...」と書きました。

(2)継続乗車と大回り
継続乗車では大回り乗車などしていられないという考えに変わりはないのですが,実務を考えた時の取扱いは微妙です。下に継続乗車の規定の全文を掲げます。継続乗車では着駅までの旅行はできますが,「途中下車をしないでそのまま旅行を継続する場合に限って」とあります。そのうえ,接続駅において(駅を締切るなどの都合で,筆者補足)一時出場させるときは後続の乗継ぎ列車を指定することになっていて,詳細は省略しますが基準規程ではそのときの列車を指定するハンコの様式まで決めています。要は継続乗車の一時出場は極めて厳密に適用するということです。これらを考えると,継続乗車では度を越えた大回り乗車などはできず,可及的速やかに目的地へ向かうべきものと考えます。

旅客営業規則155条全文(出典が古いので継続乗車船というタイトルですが趣旨に変わりはありません)
北海道旅客鉄道旅客営業規則旅客営業取扱基準規程 1991年 中央書院~
仮に僕のケースで,持っているきっぷが「磯子から140円区間」の片道乗車券だとしたらどうなるでしょうか。僕の説では,翌日も使えるけど可及的速やかに根岸に向かわなければならない,しかし,千葉から総武線を戻ると復乗(1度通った区間や駅を再度通ること)になってしまうので,一旦,蘇我に出て京葉線で戻らないといけないという解釈です。千葉から根岸に戻るルートは比較的簡単ですが,最長140円旅行のルートは都心部が複雑なので,駅によっては復乗にならないように当初の目的地に行くのは容易ではなさそうです。したがって,理屈ではそうでも実際にそれを担保する術はなく,実現可能性は乏しいと言わざるを得ません。
実際に短距離の自動販売機で買った乗車券を見ると「発売当日限り有効 下車前途無効」と印字されます。深夜になれば最終電車になるのは自明であり,大回りをするといっても最終電車で辿り着く範囲でしかできないというのも,ある程度合理性があると思います。その場合は,僕の例で,千葉で乗車は打切り,磯子から千葉の区間変更として扱い,当然,翌日の乗車も「なし」です。しかし,今のJRがこんなことをしたら「継続乗車を認めないxx駅!」などとネットで炎上するかもしれず,お客さま第一を考えると,この策は採れません。
そんな訳で140円の乗車券で継続乗車になったら,大回り旅行の継続を認めるしかない...というのが現実的といえそうです。

ちなみにきっぷの有効期限についての記述はどこにもない
(3)大晦日の最終電車
次に,「大晦日に限り乗車券は翌日まで使える」ですが,これは大晦日に最長140円旅行をするための詭弁ではないでしょうか。大晦日は終夜運転があって最終電車がないから,結果的に1月1日の最終電車まで12月31日発行当日限り有効の乗車券が使えるという説をよく目にします。始発電車や最終電車は駅の時刻表に掲示されていて,終夜運転の列車はあくまでも1月1日限り運転の臨時列車で,乗車券の利用可能の判断は,定期列車でなされるものと思います。

鉄道趣味者にはなじみの深い「青春18きっぷ」の利用条件に「東京・大阪付近の電車特定区間内では最終電車まで有効です」と書いてありますが,これを普通の乗車券にまで拡大はできません。「青春18きっぷ」はJR全線が有効で具体的な着駅が表示されていないことと,利用者の便宜になるよう列車運転の実態に合わせるためにこのような条件になっているのだと思います。さらにこの説をとると,0時以降の列車が使えるのは電車特定区間に限定されるので,成田線などの電車特定区間以外に拡大することはできません。
(4)きっぷの有効期限
じゃあ,ふつうの社会生活で深夜23:00頃にきっぷを買って,着駅に着いたら日付が変わっていたというのはよくあることだが,これはどういうこと?という疑問が湧きます。これこそまさに継続乗車であって,有効期限の過ぎたきっぷでも,途中下車をせずに目的地に直行するのは何ら問題ありません。

改めて,規定集を読返してみましたが,きっぷの有効期限に関して,終電まで有効という規定はどこにもありません。したがって,140円旅行に使う普通乗車券はどんな場合でも有効日は日付をまたいだ次の停車駅までで,以降の乗車は継続乗車の規定によっているものと解釈しました。

(140円のきっぷを探したところこんなものしか見当たらなかった...)
(5)往復乗車券とのバランス
以上のことからふつうの140円の片道きっぷでは日付をまたぐ大回り乗車はできないというのが僕の理解です。しかしながら,ある2人連れが大回り乗車をして,最終電車になってしまった。たまたま,1人は手回しよく往復乗車券の片割れを持っているが,もう1人は時間がなくて140円の自販機のペラ券しか買えなかったとしましょう。前者はその2に引用した「接続駅で一時出場させる場合の取扱方」により出場できるが,後者は区間変更として精算して出場ではバランスを欠くのではないでしょうか。片道乗車券と往復乗車券の有効期間は確かに当日限りと2日ではありますが,駅の実務の場でこれほどまでに取扱いに差をつけるのは難しいと思います。

(6)まとめ
いろいろ書きましたが,「日またがりの大回り乗車は大晦日--終夜運転のある日--でないとできない」は俗説であって,どこにもそんな根拠はない,というのが僕の達した結論です。しかしながら,140円旅行で夜明しをするには,駅員さんとハードなネゴが必要になると思われ,いつどこの駅でも僕の応対をしてくださったようなかたとは限りません。無用のトラブルを避け,お正月・終夜運転のお祭りを楽しむという意味では,大晦日の実行を否定するものではありません。ゆえに,もし日またがりの140円旅行をするなら,往復乗車券を使えばいつでもできますが,大晦日にやるのがお薦めということになります。
なお,以上は私見であって,JR等の関係者への確認はしていません。また,ネット上で論戦を展開する気もありませんので,異論を持つかたはそんな説もあるのか程度にお読みいただければ結構です。また,この説に賛同いただくのも同様ですが,実行するときは自己責任でお願いします。
2.東京近郊区間を乗りたおすサンプル行程
さて,最長140円旅行ですが,本編のなかで,疲れるばかりでちっとも楽しいことはなく,日帰りで外縁部を旅行したほうが余程楽しいと書きました。今回そんなルートを考えてみたので,下にアップしておきます。

残念ながら,相模線,八高線から両毛線,水戸線経由で松岸,房総半島をまわるルートは成立しませんでした。八高線から両毛線(逆もしかり)の乗継ぎが悪く,両方向とも水戸線を諦めることになりました。水戸線は常磐線と共に交流区間,筑波山の景色もきれいなので,ここを生かすなら,八高線,相模線,松岸などのいずれかを捨てることになると思います。これは僕が小1時間時刻表を繰って調べただけなので,もっと念入りに調べれば成立するパターンがあるかもしれません。

サンプル1。反時計回りの行程
もう1ケース,時計回りのパターンも挑戦しましたが,こちらはスタートが品川始発の東海道線1番列車で,東京駅からスタートすることができませんでした。なお,根岸線の始発電車でも大船で721Mに乗れるので,京浜東北線東神奈川以南の各駅からでもスタートできます。

どちらのケースも日暮里~上野間が復乗になっていますが,「特定の分岐区間の区間外乗車(旅客営業取扱基準規程149条)」というルール(詳細はこちら)があり,大回り乗車中でも適用可能との考えにたっています。気持ちが悪ければ,武蔵野線経由でも常磐線を日暮里乗換えとして田端経由でも,少々厳しい乗換えになりますが行程は成立します。

サンプル2。時計回りの行程
自分としてはモデルルートなのですが,こんな始発から終電近くまでの旅行ではモデルとも言えないので,サンプルとしています。このほかにも,何通りか実際にやったときの旅行記(リンクはこちらの下の方)もアップしてあるので,興味があるかたはご参照ください。
実行したついでに最長140円旅行について論じだしたら,とんでもなく長い話になってしまいました。お付き合いいただき,どうもありがとうございます。(2018.6.23記)
旅行記本体へ その1,その2,その3
【関連記事】
知って楽しいJRの旅客営業制度1--大都市近郊区間と140円旅行
2017年夏,家族で中国地方へ・その3 旅行に使ったきっぷ

2017年夏の中国地方の家族旅行は「サンライズ出雲」で出発の4泊4日でした。このときのきっぷと旅行商品についてご紹介します。なお,下ではパッケージ商品について書いていますが,旅先での移動は4日中3日は青春18きっぷでした。
旅行のベースは日本旅行の「17春夏・宿コレクション山陽・山陰・四国」という商品です。最低1泊の宿泊と往復の足をセットにした商品で,基本的にはどこの旅行会社でも扱う定番商品です。結果的にはパッケージの価格38,000円/人に対し,往復のJRのきっぷの正規料金が39,470円/人で,ホテルの宿泊料が丸々ういた勘定になります。ホテルの宿泊料といっても,泊まったホテルは広島駅前のグランヴィア広島で,ふつうに泊まれば10,000~11,000円/人する部屋です。

使った商品(表紙)
もう少し詳細にみるとパッケージ代金のほうは,ホテル宿泊料から朝食代金を抜き,60日前の早割り適用でちょうど40,000円のところ,JAFの割引きで5%offしたものです。比較対象のJR正規料金は横浜市内~宍道の運賃,特急券,B寝台券+岡山~横浜市内の運賃+新幹線特急券です。また,ホテルの部屋は19階のプレミアムツインという部屋で,若干ですがただのツインより広くて良い部屋のようでした。
毎度書くことですがこの商品が特段安いわけでもなく,他社でも似たような商品はあります。また,きっぷは,「契約乗車票」というJRの印刷発行機で発券したきっぷと似たものですが,制度的には全く異なるものになります。「契約乗車票」は乗車券収集の見地からは殆ど無価値ですが,背に腹は代えられないといったところです。制度的にと書いたついでにちょっとだけ解説すると,通常のJRきっぷは利用者とJRが旅客運送契約を交わし,それを証憑するものです。ところが,このパッケージ旅行(主催旅行)では利用者と旅行会社が包括旅行契約を交わし,輸送業務の一部を旅行会社からJRに委託しているので,契約の相手方はあくまでも旅行会社です。なお,この他に手配旅行というのもあり,旅行会社は旅行の手配を利用者に代わって行うだけで,旅客運送契約自体は利用者とJRが直接結びます(この場合のきっぷはJRの正規乗車券類)。

今回の旅行のきっぷ一式。「契約乗車票」には値段は表示されない
話が旅行業の難しい話になってしまいましたが,このスレッドの目的はパッケージ利用の薦めと利用のポイントです。パッケージを利用する際は早くに旅程を決めて手配するのがポイントです。ブログ本文にも書いたように,今回の広島行きは春から決めていたことでした。実際に手配したのは6月末でしたが,これでホテルの早割り60で1,000円の節約となっています。また,後でも書きますが,このパッケージにはおまけに1,000円相当の駅弁がついていて,これも先着順です。
ここからがパッケージの厄介なところで,JRの運賃料金は時刻表のピンクページで値段が開示されていて,どこで買っても値段が変わることがありません。パッケージの値段は,旅行の条件や旅行会社の仕入れ力などで微妙に値段が違います。これがややこしくてパッケージ利用に踏み切れない人も多いと思います。今回僕は,大手3社のJTB,近畿日本ツーリスト(KNT),日本旅行のほか新幹線が関係するのでJR東海ツアーズの商品カタログを集めました。僕は意外と凝り性なので,集めたカタログをほぼ同条件となるよう比較しましたが,なかなか条件を合わせるのに難儀して,途中で放棄となりました。結局,JR西日本にエリアに旅行して,グランヴィア(ここもJR西日本グループ)に泊まるなら,日本旅行がよかろう程度の勢いで決めました。

パッケージといっても各社から似たような商品が出ている
次は旅行の条件についてです。宿泊+新幹線の旅行商品では,列車の利用条件に松竹梅があり,それが商品選択のポイントになります。先ず,一番安いのは列車の変更が全くできないタイプで,何らかの事情で乗り遅れた場合,きっぷは運賃・料金とも無効,新たに買いなおさなければいけません。また,具体的な席数は分かりませんが,発売される席数も限定です。会社によって違いますが,この「梅」の場合は概ね22,000円で東京~広島が往復できます。
次は,乗り遅れた場合,当日の後続列車の自由席に乗れるタイプで,一般のJRの指定席特急券とほぼ同等のポリシーです。この「竹」も席数限定で,概ね「梅」より片道あたり2,000円アップくらいの値段です。この商品は「ビジネス」というキーワードがつく場合が多いです。
最後は乗り遅れポリシーは「竹」と同等で,席数が限定されず,列車に席がある限り買えるタイプです。この「松」の場合,概ね「梅」より片道あたり4,500円アップくらいの値段になります。こうなるとJR部分だけで東京~広島往復が31,000円くらいになってしまうので,EX予約などのJRの特別運賃とあまり差がなくなってしまいます。また,気をつけないといけないのは,乗り遅れポリシーは一緒でも,パッケージの場合は発行箇所でないと変更ができないのに対し,正規JRきっぷはみどりの窓口さえあればどこでも変更ができることです。発行箇所に限るということは,旅行に出てしまったら変更できないと同義です。
また,列車に関する旅行の条件として,かつては列車を限定したものもありました。朝7:30~9:00東京発のような利用の多い時間帯の列車は使えない代わりに値段の安い商品です。JR,旅行会社,いずれの事情か分かりませんが,今回あたった中にはこの条件の商品はありませんでした。
なお,今回の旅行では帰りの新幹線は,念のため「竹」を選択しました。僕の理解では,仮に伯備線の列車が遅れて予定の新幹線に乗り遅れた場合,JRの正規のきっぷを持っていれば,列車が接続しなかったのはJRの責に負うところが大きいので,後続列車への案内(自由席への乗車)はJRの責任においてされますが,「梅」のパッケージの「契約乗車票」ではJRはそこまで面倒を見る責任はないとの理解です。

おまけも重要なファクターか
最後はパッケージのおまけについてです。上に書いたようにパッケージ商品は旅行会社での違いは少ないものです。そこで各社とも知恵を絞っておまけをつけています。今回選んだ商品では「サンライズ出雲」を使うと1,000円相当の駅弁がついてくるというものです。カタログ上は先着500名様限定と書いてありますが,カタログの販売期間全体なのか,日ごとなのか,クーポンの発券枚数なのか限定の内容も不明瞭ではあります。ともかく手配したのが早く,「サンライズ」を使う人も少ないだろうから,500名の中に入るだろうと思っていました。岡山は比較的良心的で,商品を限定せず,当該売店内の商品ならどれでも1,000円引きしますという設定でした。上ではJR西日本と関係の深い旅行だからと書きましたが,このおまけも選択のファクターだったことは確かです。
なお,このパンフレットの後ろのほうには呉の「大和ミュージアム」のクーポン100円というのがあり,ジュニアはしっかりこれを使って見学しました。また,足立美術館もパッケージ利用の割引きがありましたが,わが家は結局,2年パスを買ったうえで家族割引の適用を受けたので,損得は微妙です。
このブログで旅行パッケージ商品についてを取扱うのは3回目です。僕も結婚して奥と旅行をするまでは,パッケージを使ったことがありませんでした。「契約乗車票」の忌避に始まる喰わず嫌いの面が強かったです。このため,当サイトの訪問者の皆さまにはパッケージのメリット,デメリットを理解してもらって,うまく活用していただければと思います。(2017.9.24記)
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JR東日本ダイナミックレールパックで東北の世界遺産巡り

いささか古新聞の話題ですが,(2016年)3月20,21日の連休にダイヤ改正前の北東北に家族で行ってきました。このときJR東日本ダイナミックレールパック(以下,レールパック)なる旅行商品をかみさんが探してきました。さっそく使ってみたので,その使い勝手などもご報告します。
先ずはそのレールパックですが,好きな列車のJR券と好きなホテルの宿泊をセットにしてJR東日本が売るパッケージ商品です。使える列車,ホテルとも選択の幅が広いのでほぼフリーに使えるうえ,割引も大きいので活用できると思います。列車の指定席の発売前から予約できるのも魅力で,予約しておけばシステムが列車のきっぷの発売開始日に席を手配し,旅程が確定します。

JR東日本ダイナミックレールパックの最終行程表の一部
もう少し説明を加えると,ホテルは契約のあるホテルリストの中から選択しますが,一般の旅行会社―JTBや日本旅行,近畿日本ツーリストなど―と比べても遜色ありません。列車は,指定席券売機の要領で好きな列車を選ぶことができ,座席も指定できます。ただし,旅行先のエリアが北東北,南東北,北関東,首都圏,伊豆,甲信越・中部の6つからの選択になり,列車もそのエリアと出発地の往復になります。とはいっても,東京発で,一ノ関まで新幹線で行って平泉を観光し,秋田で泊まって,帰りは八戸から新幹線という行程でも北東北エリアで完結するのでOKです。なお,一ノ関~平泉~秋田~五能線~青森~八戸の移動は,別途,青春18きっぷを用意しました。

正規の運賃料金との価格比較
気になる値段のほうは上の表のとおりで,1か月と1日前に予約したのですが32%オフと,大きな割引です。なお,ダイナミックの名のとおり,航空券と同じで旅行出発日が近づくと,発売額は高くなるようです(予約の何日か後に操作したら300円くらい高くなっていました)。また,列車の予約の多寡,混雑度によって値段が変わるのかはわかりません。

JR東日本ダイナミックレールパックのきっぷ
レールパックのきっぷですが,駅にある指定席券売機で受取れるので,駅の窓口の営業時間の心配はありません。パッケージ商品に組込まれたものなので,「乗車票」というタイトルで,きっぷ収集趣味の僕としては一段格下に見えてしまいますが,一般人にとっては別に変わりありません。キャンセル(乗り遅れ)ポリシーは一般販売の指定席特急券と同等で,同日中の後続列車の自由席(立席)に限り乗車可です。蛇足ですが,僕は横浜に住んでいますが,東北新幹線に乗る時は上野駅利用です。あまり知られていませんが,東北新幹線の上野~東京間はトンネルを掘ったり,在来線のホームをすべて西にずらしたりで大変なお金がかかったため,東京までの新幹線特急料金は上野までの料金に一律210円上乗せです。今では上野東京ラインも開通し,東海道線の電車で上野まで行けるので,敢えて余計にお金を払って東京で乗換えることもありません。なお,レールパックの場合,東京発でこの行程を組むと300円アップになりました。
閑話休題,旅行のほうは以下のとおりでした。出発は3月20日(日),自宅を8時過ぎに出発し,上にも書いたマニアのこだわりで,上野乗換えで一ノ関を目指します。平泉・中尊寺はこのブログの20世紀の鉄道写真でも触れたように,中学,高校時代に訪れたことがありますが,世界遺産に認定されたあと平泉の駅が大変きれいになっていてビックリです。

世界遺産認定とともに新装された平泉駅
この日の天気はあいにく曇り時々小雨で,観光日和ではありません。取り急ぎ毛越寺(もうつじ)と中尊寺を岩手県交通のバスでつないで,そそくさと見て歩きます。

毛越寺--極楽浄土をイメージしたという庭園が見どころ
平泉地区は観光客も多いため,バスもきっぷも特別のものが用意され,平泉の観光地を巡回する「るんるん」という巡回バスと,専用の一日乗車券400円があります。バスは都バスの江東営業所からやってきたような中古ながらも,専用ラッピングのバスが使われていました。一日乗車券は「るんるん」専用で,中尊寺~平泉駅のような「るんるん」のエリア内でも一般路線バスは使用不可と案内され,この辺は改善を望みたいところです。

岩手県交通の平泉町巡回バス「るんるん」
毛越寺の後は世界遺産―「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―」の白眉の中尊寺の見学です。僕自身は金色堂を見るのは3回目なのでさらりと流し,むしろ今まで一度も見ていなかった本堂のほうが印象深かったです。また,中尊寺の駐車場はなかなか良い列車の撮影ポイントの記憶でしたが,衣川橋梁の架替えにあわせ高架化されて,景色が随分変わっていました。

中尊寺本堂。金色堂が有名なお寺ですが,本堂もなかなかのもの
駅に戻り,遅い昼食の後は,青春18きっぷで秋田まで移動です。北上線は田沢湖線の電化までは仙台~秋田の最短ルートで,急行「きたかみ」も走っていましたが,今では単行のディーゼルカーの走るローカル線です。僕も北上線の記憶は乏しく,大学生の頃に1度乗って以来の再訪になります。田沢湖線まわりを主張する家族を説得し,北上線での奥羽山脈越えですが,ちょっとの雪を見ながら談笑しているうちに県境を過ぎてしまいました。後で調べたら,並行するのは国道107号線,いちおう巣郷峠という峠があることになっていました。

北上線の単行ディーゼルカー
翌21日(月)は,秋田から青森まで「リゾートしらかみ」で五能線を楽しみます。五能線は東能代から川部まで日本海に沿って走る147.2kmの地方交通線です。線路の西は日本海,東は大自然の残る白神山地なので沿線人口は少なく,数あるローカル線の中でも別格の趣です。とくに冬の景色は,暗く重い雲がたれこめた日本海,線路敷を洗うがごとき荒波の見ごたえがあり,4時間の汽車旅でも飽きません。このローカル線自体を観光資源にしたのが「リゾートしらかみ」で,五能線の前後の奥羽本線も直通し,秋田から青森まで247.6kmを5時間半かけて走ります。

ハイブリッドの青池編成の「リゾートしらかみ1号」
五能線の東能代~川部間は運転系統が深浦で分断されていて,全区間をとおしで走る定期列車は下りの1本しかありません。「リゾートしらかみ」のほうは日によっても異なりますが,多い日では3往復の運転で,ローカル列車とリゾート列車でどっちが主だか分からない状況になっています。「リゾートしらかみ」用の車両は橅(ぶな),くまげら(いずれもキハ40系の改造車),青池(ハイブリッド気動車HB-E300系の新製車)の3編成が用意されています。今日の「リゾートしらかみ1号」はハイブリッドの青池編成でちょっと得した気分です。また,座席は発売初日に駅に行き,1号車1A,2A,2B席を確保しました。長年,鉄道趣味をやっていますが,なかなかxx1号の1号車1A席はお目にかかることが少ないものです(例えば東海道・山陽・九州新幹線は1号車が自由席なので1号車の指定券はありえない)。

「リゾートしらかみ」の指定席券
さて,「リゾートしらかみ」ですが,奥羽線区間はハイブリッドディーゼルカーなので電車のように快調に走ります。五能線区間に入ると線路規格が下がり,カーブも増えるので最高速度は下がりますが,快速列車でもあるのでそれなりに快調に走ってゆきます。八森を過ぎると左手の車窓に日本海が現れ,鯵ヶ沢あたりまで約2時間,海岸線の車窓が続きます。また,休日の車内では,津軽のかたりべ実演や津軽三味線の演奏などのアトラクションもあり,かみさんやジュニアも飽きることがありません。鯵ヶ沢を過ぎると津軽平野の区間になりますが,遠くに岩木山,近くにリンゴ畑を見ながら,これはこれでローカルなよい景色が続きます。

五能線の車窓。深浦あたり
12:38,川部着。これで五能線の旅は終わりですが,「リゾートしらかみ」はご丁寧に弘前まで足を延ばします。乗り疲れたし弘前の街も見たいと言うかみさんと別れ,弘前からはジュニアと2人で青森を目指します。途中,先ほど通った川部を通りますが,2回目は通過です。今日3月21日は,北海道新幹線の開業準備のため,在来線としての海峡線の旅客営業の最終日です。ジュニアは青春18きっぷで特急に乗れるので485系やJR北海道の789系に乗りたいというので,駅そばの昼食後,青森駅で別れ,こちらは新青森方向へ少し歩いて走りの鉄ちゃんをします。ジュニアのほうは青森~新青森間を2往復したそう,こちらは下の写真を撮り,それぞれ満足して青森駅で集合です。

青函特急「白鳥」。JR東日本もちは485系の更新車。

青函特急「スーパー白鳥」。こちらはJR北海道もちで789系
青森からは,なぜか青い森鉄道の青森~八戸間は通過乗車であれば青春18きっぷで乗れるので,この恩恵にあずかり,在来線で八戸まで上ります。夕陽の陸奥湾,野辺地の鉄道防雪林などを見ながら,17:40八戸着。あとは「はやぶさ」で3時間弱で上野着です。さて来週は北海道新幹線開業(その旅行の記事はこちら),それを楽しみにこの旅を終えました。(2016.6.5記)
分岐駅通過の区間外乗車と復路専用乗車券

先日,中央西線の大桑に出張に行った会社の同僚が,「『しなの』に乗換える時に名古屋で途中下車したら復路専用乗車券とかいうきっぷを買わされた」と大騒ぎしていました。復路専用乗車券?そんなのもの今でも売っているんですかと興味津々で見せてもらい,譲ってもらいました。

話題の復専。「金山~名古屋」
東京方面から新幹線に乗り,特急「しなの」で中津川方面へ向かう場合,順路では名古屋乗換えです。しかし,中央本(西)線は名古屋より1駅東京寄りの金山で分かれるので,運賃計算は東京方面~金山~中津川方面で計算します。このような経路の旅行者の便を図るため,JRの規則には分岐駅通過の区間外乗車という規定(旅客営業取扱基準規程(※)151条)があります。この例で,金山駅を通過する列車に乗り,名古屋で途中下車しない場合に限り,この区間の運賃はいただきませんというルールになっています。

これは名古屋に用事がなく,名古屋で単に乗換える便宜を図っての規定なので,名古屋に用事があって途中下車する場合は事情が変わります。途中下車するならシッカリ金山~名古屋間往復分の運賃をいただきますよ,というのが復路専用乗車券です。きっぷの注記にもあるように,既に乗ってしまった往路分の精算と,これから乗るであろう復路分の運賃を合算しているため,値段は340円と3.3km×2の距離に比べ随分割高な感じがします。

分岐駅通過の区間外乗車の特例区間の一覧(2016.1.30現在)
復路専用乗車券ですが,これは基本的に分岐駅通過の区間外乗車の認められた区間にしか存在しないので,「復専」といって僕はあるとき一生懸命集めていました。JRになって本来は復専を売るような場合でも,お客さまサービスのためか,便宜的に途中下車を認めるケースが増えていたようでした。以前,呉在勤時に広島駅で復専を買おうと駅員氏に尋ねたら,フクセン...?とポカンとされて,「復専」自体を知らないようでした。また,この広島~海田市間は特例中の特例で,151条ノ2という特別な条文まで用意しています。というのも,山陽新幹線と山陽本線は原則,同一の路線として扱いますが,在来線と接続しない東広島駅ができて原則どおりではない別線扱いになってしまったため,東京方面~東広島~広島~海田市~呉方面の経路が構成できてしまうのです。元々,海田市~広島間は151条の特例適用の区間だったので,ルールどおり計算すると東広島駅ができたばかりに値段が上がってしまいます。151条ノ2は,例外的に新幹線の東広島~広島間を在来線と同じとみなして,新幹線で来ても海田市における151条の取扱いを有効にしているのです。

ちなみに,広島駅で東京方面~呉方面の乗車券で途中下車しようとすると,「長時間はダメですよ」とクギをさされて,改札口を通してくれます。そのとき,乗車券にはひし形の特別下車印を押されます。このひし形の下車印は長野と広島で見たことがあり,鉄道管理局(今は支社)所在駅なのでか洒落たことをするなと思っていたのですが,本来途中下車できない駅で特別に下車したことを示すもので,普通の途中下車印とは意味が違うということを最近になって知りました。何にせよ,駅ナカが必ずしも充実しているとはいえない広島駅でのこの取扱いは,僕には嬉しい思い出です。

「広島」の特別下車印
最後に,古いきっぷを探してみたらいくつか復専が出てきたので,これらをお見せします。札幌は白石~札幌と桑園~札幌の2種があり,お金がなかった頃なので安いほうだけを買いました。周遊券を持っているので使うあてはなく,どっちにしますかと聞きながら無駄金を使わせて申し訳なさそうな駅員氏が思い出されます。消込みをしていた訳ではないので,長岡は5年の間に2回も買ってしまいました。並べてみたら様式が変わっているのが興味深いです。往路分は乗車,精算済なので,矢印は復路分の片方向が正しいのでしょうか。

古い復路専用乗車券
JRになって復専は死語になったと思っていたのですが,名古屋では日常的に売られているようだし,インターネットで検索すると福井などでも売っているようです。乗換え間合いの短時間の途中下車が便宜的に認められていたのが,シッカリ往復分の運賃をとるとは世知辛くなったものです。特殊なきっぷ収集の楽しみが増えるのはよいですが,こればかりはなんともです。
※ JRの旅客営業の規則は,営業規則そのものである「旅客営業規則」とその取扱いの詳細を部内向けに規定した「旅客営業取扱基準規程」の2つがあります。JR東日本の場合,前者はWebサイトでも開示されていますが,後者はこの特例のように旅客にも開示すべきと思われるポイントのみ「きっぷあれこれ」に説明があります。
(2016.1.30記)
青春18きっぷと振替輸送・代行輸送

先日,青春18きっぷで房総横断の旅行(その時の記事はこちら)に行く際,横浜・磯子の自宅から千葉に行く途中の京浜東北線が不通になっていました。青春18きっぷで振替輸送って使えるの?と思いながらの旅行だったので,今日は青春18きっぷと振替輸送について考察してみます。なお,このスレッドの記事は,2回の経験は事実ですが,以降の考察は全て私見です。
詳しい状況を書くと,元々の行程は磯子から横浜まで根岸線で上って,横浜からは総武快速と直通の横須賀線に乗る予定でした。7:12の根岸線に乗るべく磯子駅に行くと,日曜日の朝なのに改札口前に人だかりができていて,ただならぬ様子,京浜東北線の蒲田~川崎間で人身事故で不通になっているとの案内です。それでもなんとなく青春18きっぷの日付印の入鋏はもらっておきたいなと思って,日付印の印字を受けました。そうはいっても電車は来る気配がなく,駅員さんは京急の屏風浦(びょうぶがうら)からの振替乗車を案内しています。青春18きっぷで振替乗車ができるのか不安だったので,案内をしていた若い女性の駅員さんに聞くと,ちょっと待ってくださいと言って助役さんと思しき人に確認し,そのまま京急の駅係員に言ってくださいと振替乗車票も渡されませんでした。最近の首都圏では振替輸送も多く,お互いさまということなのかJR<=>民鉄間でも振替乗車票なしでも振替をするケースも多いようです。僕としては面倒な判断を先送りしたな...と思いつつも,先を急ぐので京急の屏風浦へ向かいました。京急の屏風浦駅では,振替受託について指令とやり取りしていたのか,改札口に駅員さんは不在でした。ちょうど電車も来たので,断る間もなく入場してしまいました。

(参考)磯子~屏風浦
屏風浦から京急電車に乗った僕らは振替でどこまで行こうか考えました。磯子では根岸線が動かないので手も足も出ませんが,横浜まで行けば,不通箇所が蒲田~川崎なので,品鶴線を通る横須賀線なら動いていると思われます。そうはいっても,いすみ鉄道の急行用ディーゼルカーの間合い使用の列車を選んだ行程はもう無理だし,小湊鐡道の列車が少ないので急いで千葉に行っても仕方ないしと,気力も萎えていました。そんな訳で上大岡から乗った京急の快速特急で品川まで上りました。京急品川駅ではJRとの連絡改札口を通りますが,青春18きっぷを見せて,JRが不通なので磯子~屏風浦から来たと申告し,何のお咎めもありませんでした。不通区間が蒲田~川崎だったので,横浜~品川(泉岳寺?)間も振替輸送を受託していたのでしょう。
そういえば去年の3月に青春18きっぷで磐越西線経由北陸に行った時もこんなことがありました。その日は大雪で磐越西線を会津若松まで行ったところで運転見合わせになりましたが,JRはタクシー代行を手配,僕は無事に新津まで辿り着くことができました。このときは,会津若松から喜多方方面行き,新津行き,新潟行きが手配され,僕の乗った新津行きは普通の乗車券のお客さんと青春18きっぷの僕と5名で相乗りでした。(このときの記事はこちら)
まず,青春18きっぷと同時に発券される案内スリップの記述を見てみましょう。これには,「○列車の運行不能・遅延等による払戻し及び有効期間の延長はいたしません。○災害等の理由により,利用予定の列車に接続しない為,当日の最終目的地に到着しない場合でも新幹線・特急等への乗車はできません。(一部区間を除く)」とあります。これは,運転見合わせも含む,列車が動かないときの対応について言及したものですが,払戻し,有効期間の延長,急行列車への乗車はできませんと明記していますが,振替や代行は利用できないとは書いてありません。

青春18きっぷの本券と案内スリップ2
続いて,列車に乗ることのそもそもから考えてみます。そもそも列車に乗る時には,A駅からB駅まで,あらかじめ契約した等級(普通,急行,特急...)の列車の設備(普通車,グリーン車...)で輸送する旅客運送契約を結んでいます。これを現した証憑がきっぷ(乗車券類)です。JRはこの契約により旅客を輸送する義務を負いますが,何らかの事情で不通区間が発生してこの義務が果たせなくなったとき,他の事業者に輸送を委託するのが振替輸送です。また,適切な事業者がないのでタクシー会社などに依頼して,当該区間の乗車券を持った旅客をJRの費用負担で輸送してもらうのが代行輸送です。これらは旅客とJRが結ぶ旅客運送契約の通則であり,青春18きっぷだからといってそれを制限する例外規定もないので,やはり青春18きっぷでも振替輸送や代行輸送は利用可能と思います。
代行輸送の時は旅客の乗車券を確認し,代行輸送の委託先にどこ駅からどこ駅まで何名という形で委託をするので,委託の内容も費用負担もはっきりしています。しかし,振替輸送の場合は,もともとあるサービスを利用するので,範囲を限定するのが難しくなります。JRの振替だといって不通区間とは関係ない受託先の遠くのほうまで行かれては困るので,どこからどこまでの区間と区切って委託(他事業者から見れば受託)するのです。また,振替輸送のときに渡される振替乗車票は,旅客が振替輸送で乗車中であることを証するほか,後日の事業者間の清算にも利用されるのだと思います。なので,これらの業務の円滑な遂行のためには,振替乗車票は貰っておいたほうが良いと思います。まとめると,以下が青春18きっぷで振替輸送利用の条件になるでしょう。
1.JR,旅客間で有効な旅客運送契約があること=青春18きっぷに利用日付が記入されていること
2.列車が運転できない区間があること
3.青春18きっぷを持つ旅客がその区間を乗る意思があること
4.振替で乗ろうとする区間が振替受託の区間であること
5.JRで発行した振替乗車票を持っていること(最近は必須ではない)
普通の乗車券を持つ旅客なら目的地や経由線区を特定するのは容易ですが,青春18きっぷの場合は「旅客鉄道会社線全線(JR全線)」としか書いていないので,目的地や経由線区を特定することができません。なので,鉄道事業者側では旅客の言うことを信用するしか手立てがありません。旅客側としては,振替や代行を利用する権利はあるので,その振替や代行を利用することが自分の旅行の行程上正当であることを理解してもらう必要があります。そのときのためという訳ではありませんが,その日の行程をメモでもよいので書いておけば,説得力も生まれるのではないかと思います。僕の場合は,青春18きっぷで旅行するときは大抵その日の乗継ぎを行程表にまとめ,旅行中はそれを見ながら行動するようにしているので,それを見せることができます。

(参考)当日の行程表
再度,当日の反省ですが,何の気なしに入れておいた磯子駅の入鋏ですが,実はこれが重要だったと思います。なぜならば,これがJRとの当日の旅客運送契約の存在を示す証憑になるからです。反対に,振替乗車票はしっかり貰っておくべきでした。最近はJR各社もサービスが良くなったので証拠を見せろなどということは少ないと思いますが,受託先の私鉄では「青春18きっぷで当社線を?」ということはありそうです。今回の場合,京急の品川の駅員さんはすんなり通してくれましたが,全ての駅員さんにこれを期待するのは難しそうです。
もう一度まとめると,青春18きっぷでも振替輸送や代行輸送は利用できる。当該区間を旅行する意思を証するものとして,当日の行程を書いたメモなどを持参するのがお薦めとなります。
なお,代行手配についての私見も併せて述べておきます。代行輸送をするかどうかは,駅長(今は旅客か輸送指令?)が判断するもので,JRには努力する義務はありますが,社会通念に照らして過剰なコストをかけて青春18きっぷの旅客のために代行手配をするmustの義務はないと思います。
時と場合にもよりますが,旅先で輸送障害になり,振替や代行に乗るのもあとから考えればよい思い出です。正しい権利を正しく主張して,ヘンにごねることなく,楽しい旅行を心掛けたいものです。(2016.1.24記)
追
この記事をアップ後に気になって,「青春18きっぷ 振替輸送」でインターネットを検索したら,振替で新幹線に乗せてもらいたいという記事が多く驚きました。そもそも新幹線はJRの路線なので,旅客の輸送を委託・受託するような関係ではなく,契約と異なる路線,等級の列車への便宜乗車です。そして,青春18きっぷは急行列車(急行,特急,新幹線をまとめて急行と言っています)以上の列車には乗らないことを条件にした格安きっぷです。上にも書いたとおり,案内スリップにも「災害等の理由で...」と念押しの案内も書かれています。ちなみに,手持ちのきっぷを調べたら,この記述は2010年夏シーズンから増えたようです。確かに輸送障害はいろいろな事由があり,案内の不手際などもあれば,同情すべき点も多いと思います。しかしながら,これは契約であり,青春18きっぷとはそういうものです。このリスクが取れないなら,初めから青春18きっぷは使わないほうがよいと思います。
追を起こしたついでですが,代行輸送といえば12月末に只見線の代行バスにも青春18きっぷで乗りました(その時の記事はこちら)。大雪などの緊急時だけではなく,線路が流されてしまった時のような長期間に及ぶ場合でも代行輸送は手配されます。なお,東日本大震災の津波の影響でBRTになっている大船渡線と気仙沼線は代行輸送や振替輸送ではなく,鉄道ではありませんがれっきとしたJR東日本の営業路線の扱いです。(2016.1.26記)

古い写真ですが美祢線の代行バス。行き先表示はたしか「鉄道代行」。2011.9.4
新発見--東京メトロの旅客営業規程

先般,東京メトロの旅客営業規程をじっくり見る機会があり,いろいろな新発見がありました。机の上のお遊びの感もありますが,制度研究としては興味深い点も多かったので,幾点かご紹介したいと思います。東京メトロの路線は一般の鉄道路線よりも稠密で,駅も,名前が違っていても連絡していて乗換えられたり,同じ名前でも途中に改札があったりと複雑です。これらの特殊性もあるなか,利用者の利便や利用実態に合うように考えられた規則になっています。言葉を換えると善意の利用者が不正乗車にならないようによく工夫されています。今日はその中でもとくに片道乗車券の運賃計算経路を中心に書いてみたいと思います。なお,東京メトロの「旅客営業規程」はWebでも全文が開示されているので,興味があるかたはこれも参照ください(検索「東京メトロ 旅客営業規程」)。
地下鉄の路線は稠密,かつ乗換え接続駅といっても途中に階段や長い通路を介するケースも少なくありません。このため,片道乗車券の運賃計算経路について路線単位で判断するような考え方になっています。JRなどの場合は路線には関係なく同じ駅を2度通ってはいけないルールで,一度通った駅に来た時点で運賃計算は打切りです。ところが,東京メトロでは路線が異なれば,同じ駅間を2度通ってもよいのです。

規定では21条「普通乗車券の発売」の1項「片道乗車券」の項で「旅客が普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車(以下『片道乗車』という。)する場合に発売する。ただし,その経路が折返しとなる場合を除く。」,44条「旅客運賃計算上のキロ程の計算方」の項で「キロ程を使用して旅客運賃を計算する場合は,別に定める場合を除いて,当社線が同一方向に連続する場合に限り,これを通算する。」と書かれています。この「折り返し」と「同一方向に連続する」いうのがクセ物で,同一路線を折り返すのでなければよいようです。また,東京メトロの規定には,45条「片道普通旅客運賃計算方の特例」という項があって「第43条の規定にかかわらず,次の区間内各駅発着の場合,又は,同区間を通過する場合の片道普通旅客運賃は,最も短い経路のキロ程によって計算する。」となっています。これはJRの大都市近郊区間内は最短経路で運賃計算する特例--140円旅行の根拠になっている--と類似の規定ですが,適用の範囲,乗換え駅を制限して,濫用を防いでいます。
例えば,銀座線の虎ノ門から半蔵門線の半蔵門に行くことを考えます。運賃計算は赤坂見附~構内連絡~永田町経由で計算しますが,この面倒な乗換えを嫌って青山一丁目で乗換えるのはよくあることです。このとき赤坂見附~青山一丁目間はJR等の一般的な片道乗車券のルールでは複乗になってしまってNGですが,東京メトロではこれが認められます。
この乗換えを青山一丁目ではなく表参道や渋谷で乗換えた場合はどうでしょうか。実態としては時間の無駄だけで,利用者に何のメリットもなければ,メトロ側でチェックする術もありませんが,規定上はこれもOKです。しかし,これが虎ノ門発でなく銀座発になると,渋谷の銀座線~半蔵門線の乗換えには改札が介在するため,銀座~渋谷間の運賃が必要になります(82条)。また,この時の乗換え時間が30分に制限されるのは,駅に掲示が出ているとおりです。規定を逆手にとって,渋谷駅周辺で長時間用事をするのはできないようにしているのです。
・虎ノ門~(銀座線1.5km)赤坂見附/永田町~(半蔵門線1.0km)~半蔵門 2.5km 170円
・虎ノ門~(銀座線2.8km)~青山一丁目~(半蔵門線2.4km)~半蔵門 5.2kmだが45条により最短経路2.5kmでよい 170円
・虎ノ門~(銀座線5.5km)~渋谷~(半蔵門線5.1km)~半蔵門 10.6kmだが45条により最短経路2.5kmでよい 170円
・銀座~(銀座線7.2km)~渋谷~(半蔵門線5.1km)~半蔵門 12.3km,45条による最短経路は3.6kmだが,一旦渋谷駅で改札を出るために7.2km相当の200円が必要

もう一つの例として有楽町線の東池袋から副都心線の雑司ヶ谷に行くことを考えます。この区間も170円ですが,池袋駅での面倒な乗換えを嫌って,小竹向原までを往復することもできます。この場合は,東池袋も雑司ヶ谷も45条の地図の中ですが,乗換えをする小竹向原は乗換え駅リストにありませんので最短経路では計算できず,実際に乗った距離の8.9km相当の200円となるのでしょう。尤も,実際にこの区間を移動するなら,歩くか都電のほうが早いと思われます。
ここの地下鉄路線図で面白いことに気づきます。池袋~和光市は有楽町線と副都心線の重複路線です。とくに,小竹向原以東ではこれらの2つの路線は別の線路を走りますが,小竹向原以西では同じ線路の上を走ります。池袋からお隣の要町までの乗車券で,和光市まで行って戻ってきたらどうなるのでしょう。往きと帰りに乗った列車によって値段が変わり,有楽町線でも副都心線でも同じ路線で往復したら440円,たまたま別の路線の列車に乗ったら280円(45条の地図の外なので最短経路にはならない)というのが正解のようです。いろいろと興味は尽きませんが,実態としてはチェックのしようがありません。また,JRの140円旅行のような応用ができるかというと,改札から出ることができないので,せいぜい和光市で回収された忘れ物を池袋から取りに行くくらいがよいところです。
・最短経路 池袋~要町 (有楽町線:1.2km,副都心線:0.9km) 170円
・JR式に往復で計算 池袋~(240円)~和光市~(200円)~要町 440円
・東京メトロ式に距離通算 池袋~和光市~要町 280円

ところで,いくつかの会社で提供している乗換え検索ソフトですが,この東京メトロ独特の複乗に対応していたのは,試した4社のうちの1社だけでした。その1社も複乗には対応するものの,45条の区間外乗車の制限には対応できておらず,結局,全滅でした。また,上の記述のうちの前半の銀座線,半蔵門線に関する部分は,東京メトロのお客さまセンターにも確認したものですが,後半の有楽町線,副都心線に関する部分は未確認で,僕の解釈です。このほか東京メトロの旅客営業規程には3条「定義」の2項に「列車 電車をいう。」なんていう規定があったりして面白く,時間があったらもっと深く研究してみたいものです。(2015.10.18記,2017.4.2誤記修正)
北海道旅行とパッケージ商品
2015年の5月連休の北海道旅行はJTBの「サンキューチョイス北海道」なるパッケージ商品を使って行ってきました。僕は普段の旅行はきっぷは一般販売のJRきっぷ,宿は自分で手配するのが常でしたが,最近はかみさんの影響もあって,パッケージ商品を活用することが増えています。JRの場合,丸に「契」と書かれた契約乗車票(マル契乗車票)は,乗車変更等に制約もあり,全くの偏見ですが僕としては一段格下に見ていたものです。今回は以下にパッケージのメリット,デメリット,パッケージ選択のポイントなどを書いてみます。

今回の商品,JTBの「サンキューチョイス北海道」パンフ
メリットの第1は何といっても安いこと,今回は都区内発で往路は「はやぶさ」+「白鳥」利用で函館までの運賃料金,復路のANAの航空運賃,2泊の札幌のホテル(1泊は朝食を食べたのみですが),JRの北海道フリーパス(特急指定席まで利用可)が全部セットで1人あたり59,300円でした。いちいち検算はしませんが,バラで買うよりは随分安いと思います。
メリットの第2は,実はこれが決定的だったのですが,ゴールデンウィーク期間中でも北海道フリーパスが使えることです。JR北海道の一般販売の北海道フリーきっぷは超繁忙期のゴールデンウィーク期間中は利用不可なので,これについては比較のしようがありません。しかしながら,一般販売の北海道フリーきっぷと違い,海峡線(木古内~中小国)が使いえないとか,本州直通列車が使えないというという制約があります。反対に,指定券の発行枚数がJRの一般販売では6枚(以前はこんな制限はなかった)なのに対し,パッケージのオプションでは無制限という違いもあります。
デメリットとしてはやはり指定席の変更の制限です。今回の場合でも,本来は9:36の「はやぶさ11号」に乗ればよかったのですが,手配した時点で6:56の「はやぶさ63号」しか空きがなく,やむなくこの列車を使うことにしました。尤もこのおかげで,三内丸山遺跡や青森の市場を見ることができた訳ですが。一般販売なら,新幹線なら前日の朝作戦ででも3席確保できたと思うし,最悪でも仙台と盛岡で席を切る技を使えば,何とかなったと思います。しかしながら,パッケージでは変更は原則,発券営業所の営業時間に限られるので,こんな芸当はできません。今回の乗車票の場合,乗り遅れたら「はやぶさ」より格下の「やまびこ」も含め,自由席または立席が利用可なので,確信犯で乗り遅れることも考えましたが,朝の苦手なジュニアも頑張って早起きして,杞憂に終わりました。なお,パッケージによっては指定列車以外は全く変更不可の乗車票の場合もあり,この場合は乗り遅れたらその分のお金はパー,自分できっぷを買い直さなければいけないので,パッケージを選択するときに注意が必要です。
もう一つのデメリットは,上述のように本州直通列車は使えないことですが,今回の僕のように「はまなす」に乗りたいなどというのはレア中のレアなケースでしょうから諦めるしかありません。ちなみに「ご利用できる列車及び設備:特別急行列車の普通車指定席・自由席,普通・快速列車の指定席・自由席」となっていて,「はまなす」は今や唯一となった定期急行列車なので,狙い撃ちされた如くNGなのです。東京での出発前にはフリーパス交換用のクーポンしか渡されず,道内の駅でクーポンと交換でパスを渡されるので,パス入手前に無札状態で本州からの直通列車で北海道内を乗られるのは困るという意図と思われます。今回のように,一旦,函館に来て,クーポン引き換え後に木古内~青森の往復運賃を払って,青森に戻るケースは想定外なのでしょう。無駄遣い感たっぷりですが,北海道フリーパスがあるのに木古内~札幌の運賃も払って,「はまなす」に乗ったのでした。

今回の旅行の契約乗車票一式
こんなレアなケースはおくとして,もう少し一般的なパッケージのお話を続けます。今回はJTBの商品を使いましたが,JTB以外でも日本旅行や近畿日本ツーリスト(KNT)などでも似たような商品はあります。仕入力やブランド力の違いで各社微妙に値段が違います。また,同じ旅行会社でも,フリータイプの北海道旅行に何種類かの商品があって,これまた微妙に値段が違います。例えば,上に書いたような列車乗り遅れ時の条件や,航空や新幹線利用時の時間帯別の条件が違うのです。今回のJTB「サンキューチョイス北海道」の場合,ベースで北海道滞在中のレンタカー代が含まれているので少々高めですが,レンタカーの代わりにJRの北海道フリーパスをつけても8,500円アップというのが魅力です。旅行の本文で書いたような行程なら,道東フリーパスでほぼまかなえるので,これだとたったの3,500円でした。
また,パッケージ商品は列車・航空の席や宿泊施設の需給と密接に関連するので,出発日によって値段が変わります。これが一般販売のJRきっぷと違って一物一価でないので,何か不透明感があり,馴染めなかったのかもしれません。経験的に,類似の商品の中で廉価版にあたる商品は出発日による価格変動が大きく,比較的オプションが豪勢で高価な商品は出発日による価格変動が少ないように感じています。この点は,あくまでも僕の感覚なので,あたっているかどうかは分かりません。
いずれにしても,パッケージ商品は種類が多く,内容も微妙に違うので,パンフレットを集めて詳細にサーベイして決めることが大事だと思います。今回の北海道旅行を元に書きましたが,九州でも山陽山陰四国でも状況は大体同じです。今までパッケージ商品を使ったことのなかったかたに少しでも参考になれば幸いです。(2015.5.6記)
もともとの旅行記はこちら

今回の商品,JTBの「サンキューチョイス北海道」パンフ
メリットの第1は何といっても安いこと,今回は都区内発で往路は「はやぶさ」+「白鳥」利用で函館までの運賃料金,復路のANAの航空運賃,2泊の札幌のホテル(1泊は朝食を食べたのみですが),JRの北海道フリーパス(特急指定席まで利用可)が全部セットで1人あたり59,300円でした。いちいち検算はしませんが,バラで買うよりは随分安いと思います。
メリットの第2は,実はこれが決定的だったのですが,ゴールデンウィーク期間中でも北海道フリーパスが使えることです。JR北海道の一般販売の北海道フリーきっぷは超繁忙期のゴールデンウィーク期間中は利用不可なので,これについては比較のしようがありません。しかしながら,一般販売の北海道フリーきっぷと違い,海峡線(木古内~中小国)が使いえないとか,本州直通列車が使えないというという制約があります。反対に,指定券の発行枚数がJRの一般販売では6枚(以前はこんな制限はなかった)なのに対し,パッケージのオプションでは無制限という違いもあります。
デメリットとしてはやはり指定席の変更の制限です。今回の場合でも,本来は9:36の「はやぶさ11号」に乗ればよかったのですが,手配した時点で6:56の「はやぶさ63号」しか空きがなく,やむなくこの列車を使うことにしました。尤もこのおかげで,三内丸山遺跡や青森の市場を見ることができた訳ですが。一般販売なら,新幹線なら前日の朝作戦ででも3席確保できたと思うし,最悪でも仙台と盛岡で席を切る技を使えば,何とかなったと思います。しかしながら,パッケージでは変更は原則,発券営業所の営業時間に限られるので,こんな芸当はできません。今回の乗車票の場合,乗り遅れたら「はやぶさ」より格下の「やまびこ」も含め,自由席または立席が利用可なので,確信犯で乗り遅れることも考えましたが,朝の苦手なジュニアも頑張って早起きして,杞憂に終わりました。なお,パッケージによっては指定列車以外は全く変更不可の乗車票の場合もあり,この場合は乗り遅れたらその分のお金はパー,自分できっぷを買い直さなければいけないので,パッケージを選択するときに注意が必要です。
もう一つのデメリットは,上述のように本州直通列車は使えないことですが,今回の僕のように「はまなす」に乗りたいなどというのはレア中のレアなケースでしょうから諦めるしかありません。ちなみに「ご利用できる列車及び設備:特別急行列車の普通車指定席・自由席,普通・快速列車の指定席・自由席」となっていて,「はまなす」は今や唯一となった定期急行列車なので,狙い撃ちされた如くNGなのです。東京での出発前にはフリーパス交換用のクーポンしか渡されず,道内の駅でクーポンと交換でパスを渡されるので,パス入手前に無札状態で本州からの直通列車で北海道内を乗られるのは困るという意図と思われます。今回のように,一旦,函館に来て,クーポン引き換え後に木古内~青森の往復運賃を払って,青森に戻るケースは想定外なのでしょう。無駄遣い感たっぷりですが,北海道フリーパスがあるのに木古内~札幌の運賃も払って,「はまなす」に乗ったのでした。

今回の旅行の契約乗車票一式
こんなレアなケースはおくとして,もう少し一般的なパッケージのお話を続けます。今回はJTBの商品を使いましたが,JTB以外でも日本旅行や近畿日本ツーリスト(KNT)などでも似たような商品はあります。仕入力やブランド力の違いで各社微妙に値段が違います。また,同じ旅行会社でも,フリータイプの北海道旅行に何種類かの商品があって,これまた微妙に値段が違います。例えば,上に書いたような列車乗り遅れ時の条件や,航空や新幹線利用時の時間帯別の条件が違うのです。今回のJTB「サンキューチョイス北海道」の場合,ベースで北海道滞在中のレンタカー代が含まれているので少々高めですが,レンタカーの代わりにJRの北海道フリーパスをつけても8,500円アップというのが魅力です。旅行の本文で書いたような行程なら,道東フリーパスでほぼまかなえるので,これだとたったの3,500円でした。
また,パッケージ商品は列車・航空の席や宿泊施設の需給と密接に関連するので,出発日によって値段が変わります。これが一般販売のJRきっぷと違って一物一価でないので,何か不透明感があり,馴染めなかったのかもしれません。経験的に,類似の商品の中で廉価版にあたる商品は出発日による価格変動が大きく,比較的オプションが豪勢で高価な商品は出発日による価格変動が少ないように感じています。この点は,あくまでも僕の感覚なので,あたっているかどうかは分かりません。
いずれにしても,パッケージ商品は種類が多く,内容も微妙に違うので,パンフレットを集めて詳細にサーベイして決めることが大事だと思います。今回の北海道旅行を元に書きましたが,九州でも山陽山陰四国でも状況は大体同じです。今までパッケージ商品を使ったことのなかったかたに少しでも参考になれば幸いです。(2015.5.6記)
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JRの旅客営業制度~大都市近郊区間(東京近郊区間)の内と外 ほか

以前から何度かこのブログで採りあげているけれど,JRの乗車券の取り扱いは大都市近郊区間の内と外では異なる。先日,その典型的な例にあたったので,ご紹介してみたい。わが家は横浜市磯子区,そしてわが家の墓所は甲府駅の東側,甲府の寺町のようなエリアのJR東海・身延線の金手(かねんて)駅の近くにある。例年どおりお彼岸を前に墓参りに行くのだが,JRのE351系も置き換え時期が近づいているので,今回の往路は奮発して「スーパーあずさ」で行くことにした。問題はこの場合の乗車券の買い方だ。
先ず,普通の乗車券と大都市(東京)近郊区間内相互発着の乗車券の違いをおさらいしておこう。
ポイント | 普通の乗車券 | 大都市近郊区間 相互発着の乗車券 |
運賃の計算方法と 大回り(※1)の可否 | 実際に乗車する経路 大回りはできない | 最短経路 大回りができる |
有効期間 | 距離による 100kmまで1日,200kmまで2日, 以降200km増えるごとに1日 | 距離にかかわらず1日 |
途中下車(※2) | できる | できない (途中下車したら前途無効) |
Suicaでの乗車 | できない | できる |
目にする頻度 | 長距離の旅行の時ぐらい | 圧倒的に頻繁 |
次に今回の旅程のポイントは墓所の最寄り駅が金手であることだ。金手駅は甲府を出た身延線がまだ中央本線と寄り添って走っている3線区間にある中央本線と一体のような駅だが,JR東海の営業エリアに属し,東京近郊区間には含まれていない。したがって,乗車券を根岸から買う場合,甲府行きとすれば東京近郊区間相互発着で,金手行きとすればそうではない普通の乗車券になるのだ。
墓参りの実際では,お寺に行くのに①歩く,②市内バス(特定運賃で100円),③市内の商店街循環無料バス(レトボン),④身延線の電車(本数少ない),⑤タクシーといろいろな移動手段があるので,甲府~金手間の乗車券を買うかはどうでもよいのだが,この違いは理解しておくべきと思う。
金手までとして普通の乗車券とすると,横浜線経由と経路が限定されるが,途中下車ができる。これにより,最近,桜木町にできたCIALに寄ってお弁当を調達したり,甲府で一旦降りて駅前のバスターミナルで帰りのバスを手配したりすることができる。
反対に甲府までとして東京近郊区間相互発着とすると,途中下車ができない代わりに,新宿回りや南武線回りといった経路を通っても,最短の横浜線回りで運賃計算をする。八王子からだとせっかくの「スーパーあずさ」にたった1駅1時間弱しか乗れない。特急料金は高くなっても新宿から乗るとなったらこの方がお得だ。因みに,根岸から甲府は横浜線経由だと138.2km2,270円だが,新宿経由だと163.5kmあり3,020円かかるところだが最短経路で計算するルールなので2,270円でOKなのだ。
この辺のきっぷのルールはJRの制度としてはイロハのイなのだが,意外と知られていない。JRのルールを正しく理解して適切な使い分けができるようにしたいものだ。

ところで,この話にはおまけが2つある。一つは運賃の切れ目についてだ。僕の家は根岸線の磯子駅が最寄りだが,今回はバスで隣の根岸に出ることにした。図のとおり,根岸~金手は139.5kmでぎりぎり140kmまでの2,270円に収まっているが,磯子からにすると140kmを超えてしまい160kmまでの2,590円になり,320円も跳ね上がるのだ。JRの運賃は11~50kmまでは5km,51~100kmは10km,101~600kmは20km,601km以上は40kmと刻み幅が決まっていて,101km以上の場合はちょっと出っ張っただけなのにど~んと運賃が跳ね上がるので,そんなときはむしろ乗り越して精算したほうが得になる。磯子~金手の場合は,磯子~酒折(2,270円)に酒折~金手(190円)を乗り越して,2,460円となるので,まともに買った2,590円より130円の節約となる。それなら磯子から130円のきっぷを買って,根岸~金手分2,270円を精算すればよいではないかと思うかもしれないが,原券控除といって,もともとの乗車券が100km未満の場合は全区間の運賃(磯子~金手:2,590円)から130円を引いて2,460円を精算するルールだから,手間がかかるばかりで何の得にもならない。キツネにつままれたように思うかたも居るかもしれないが,精算額のブレを少なくする公平性,利用者,駅係員の手間を総合的に考えた結果でそういう制度設計になっているのだ。
もう一つのおまけは大した話ではない。根岸から甲府に行く運賃についての話だが,今回の旅程では帰りは,この夏から週末のみの定期運行を始めた甲府~横浜のバスに乗ることにしていた。週末に往復するなら「休日お出かけパス」を買って,はみ出る大月~金手往復を買うと4,350円になり190円ばかり安くなる。念のため。(2014.9.28記)

当日のきっぷ
八王子では駅員氏が手をすべらせて印鑑箱で隣にあった四角いハンコを捺してしまったので,上から本来の楕円形のハンコを捺してある。因みに前者を駅名小印といい,何かの処理をした時の証明をするもの,後者は(途中)下車印といって,その名のとおり途中下車(=その駅まで使用済)を証明するものだ。なお,このきっぷの写真は,金手は無人駅で無効印は期待できないので,甲府駅で途中下車した際に撮影したもの。
※1 大都市(東京)近郊区間と大回り乗車についてはこちらを参照
※2 ここでいう途中下車は,旅行の途中で列車を降りるだけでなく,改札口の外まで出ること