2015年夏休み青春18きっぷ旅行①--青春18きっぷで北陸新幹線に乗りに行ってきました(その2)

今年の夏休みは後半に大旅行が控えているので,その他の休日は青春18きっぷを使っての日帰り旅行を楽しみました。今日から何回かでその成果を報告します。7月の3連休の最終日の(2015年)7月20日(月),この日から夏シーズンの青春18きっぷが使えるので早速ジュニアと北陸新幹線に乗りに行ってきました。僕は既報のとおり開業初日に乗っているのですが,3月14日に広島に遊びに行っていたジュニアがやっぱり北陸新幹線に乗りたいというのでこの旅行になりました。とは言っても無尽蔵にお小遣いがある訳ではないので,新幹線以外は鈍行で青春18きっぷでの旅行です。
また,ジュニアは中学生なのに全国あちこちに行っていて,足跡をしるしたことのない県が岐阜,滋賀,福井,佐賀だけになっています。なお,足跡をしるすとは途中下車をして駅から出ないとダメだそうです。この機会に佐賀以外の3県を制覇するのも旅行の目的になりました。僕のほうはインターネットで情報収集していたら,青春18きっぷの常備券(マルスの端末で発券するのではないきっぷ。マニアは赤券というらしい)を北陸の一部の駅(委託駅)で売っていることが分かり,これを買うのも目的としました。

今朝も朝6時台の根岸線で出発
さて出発は自宅最寄りの磯子駅6:09の大船ゆき電車です。大船からは東海道線を乗継ぎながら米原まで下ります。この区間は新幹線を使えない貧乏旅行が常だったので40年来通い慣れたルートですが,当時は西行は大垣夜行を使うことが多かったので,日中に西下することは珍しいです。その昔,JR発足直後は,JR東海がトイレのない211系を大量に導入し,新車はよいけど用足しすることもできないのに閉口したものでした。これにはJR東海も懲りたようで,近年はトイレ付きの313系を導入し,編成内に1カ所はトイレが来るよう211系+313系の編成で運用しているようです。大船からは323M沼津ゆき,沼津では3分の乗継ぎで741M浜松ゆきです。JTBの時刻表で旅程をたてた僕は,ごく自然にこの3分の乗継ぎは問題ないものと思っていました。しかし,JRの時刻表ではこの323M~741Mの乗継ぎはNGのようです。時刻表によってこんなに見え方が違うものかとびっくりしました(詳細はこちら)。

JR東海区間の電車たち。どこも313系シリーズ
浜松からは4分の接続で927M豊橋ゆきですが,この区間が実はきらいな区間です。前述のように貧乏旅行で東上すると,大体この区間は午後の遅くから夕方の混雑時,短い4両編成,弁天島や新居町のギャンブル帰りでガラの悪い人が多いと三拍子揃った悪いイメージでした。改めて時刻表を見ると,10分ヘッドを基本とする静岡地区と15分ヘッドを軸とする名古屋地区の間にあって,ダイヤ編成上もネックになっているようです。今日の927Mもやはり混雑していて,やっぱり...な浜松~豊橋間でした。

金谷峠付近,伊吹山の東海道線からの車窓風景
豊橋では多少ゆっくりな乗継ぎだったので飲食物を買込む余裕もありました。列車も名古屋圏の快速ネットワークになり,休日の今日の5119Fは特別快速です。尤も,時刻表をよく見ると,平日のただの快速と同じスジで,単にいくつかの駅に止まらないだけのヘンな特別快速でした。大垣ゆきのこの列車を岐阜で捨て,どうせだったら県庁所在地駅でと岐阜駅の周辺を10分ほど観察しました。大垣では昼食を買って,次の3219Fの陣取りをします。大垣~米原間は関ヶ原越え,中部と近畿,JR東海とJR西日本の境界域になります。この区間の列車もJR東海の4両編成が主体ですが,混んではいても立たされた憶えは少なく,伊吹山をはじめとした車窓風景もきれいで,日本の原風景などと気に入っている区間でもあります。

JR西日本223系電車
ジュニアは米原駅で滋賀県にも足跡をしるした後,いよいよJR西日本,北陸本線に歩を進めます。先ずは米原14:01の3256M近江塩津ゆき,近江塩津から敦賀ゆきと小刻みに乗継いで敦賀を目指します。ここから電車もJR西日本223系になりますが,今まで見てきたJR東海の電車より落ち着いた色づかいの車内が好ましいです。近江塩津までは琵琶湖の東岸の長浜廻りと湖西線経由の2ルートがありますが,両方を敦賀ゆきとすると輸送力過剰になってしまうのでしょう。近江塩津は湖西線を引っぱってきたらたまたまそこで北陸本線とぶつかったという感じで,鉄道のジャンクションである以外は何もない静かなところです。近江塩津からの3162Mは僕独自のランキングで堂々6位の長距離鈍行列車です。しかし,今日のように末端区間のみ乗る場合はそんな感慨はなく,ちゃんと定時で来るかな...と心配になります。3162Mは時間どおり走って,15:15敦賀着。ここから交流区間,電車は521系になります。521系は223系譲りの落ち着いた車内はよいのですが,本線なのにたったの2両の短編成であるのと,先頭車にエラのように突き出した転落防止幌がうっとうしいのが減点?です。

JR西日本521系電車
さて,僕の今回の旅行の目的の青春18きっぷの常備券ですが,インターネットの情報によれば,福井~芦原温泉間の森田,春江,丸岡の3駅いずれでも扱っているようですが,祝日の夕方なので委託販売の営業時間終了後だとアウトです。いろいろ考えた結果,もしNGでも森田に戻ることができる春江に行くことにしました。幸い春江は委託のおねえさんが在駅で,念願のきっぷを難なく手に入れることができました。インターネットのオークションサイトではこの券が1万3千数百円で取引きされているようです。高くても買う人がいて,こういう取引きが成立っていることは分かります。腹が立つので少し余計に買って帰って,定価+送料で売り出してみようかと考えましたが,そんなことをしている時間のほうがもったいないので1枚だけを買って帰りました。乗換えの敦賀と春江でたっぷり歩いたので,ジュニアの福井県の足跡も達成,あとは北陸新幹線に乗るだけです。

春江駅と青春18きっぷの常備券
夕食は富山の「ますのすし」と決めており,金沢では先ず留守番のかみさんへの土産のお菓子を調達です。新幹線効果か県境を越えた金沢でも「ますのすし」を売っていた痕跡はそこここにあるのですが,「ますのすし」に限らずどこも駅弁は完売です。仕方がないので19:03のつるぎ722号で富山まで先行して,本場富山で再チャレンジです。車内から見ていると,新幹線の上りホームに駅弁売店があるようで,先ずはここに駆込みます。幸い2段の大1つ,1段の小2つがあり,最後の小2つをゲットできたのでした。富山からは予定のかがやき534号に乗り,念願の「ますのすし」の夕食をとって寛ぎます。本来,初乗り区間とは,各駅停車で景色の見える昼間に乗るものですが,ジュニアはそんなことには頓着しないようです。ところで,長野で降りる段になって,何か荷物が少ないことに気づきました。富山で「ますのすし」最後の2つをゲットに喜んだあまり,金沢で買った土産1袋を富山の売店に忘れてきたのでした。なお,忘れ物は翌日,駅弁屋さんに連絡し,送っていただいて回収することができました。

つるぎ772号とあさま628号(かがやき534号は口絵)

富山名物ますのすし

帰りの電車
北陸新幹線に乗るのが目的なら長野からは在来線でよいのですが,しなの鉄道は高いし,そもそも軽井沢~横川間が切れているので,前回同様長野以東も新幹線です。青春18きっぷが泣くので,今日は特急料金が変わらない熊谷までをあさまとし,熊谷からは湘南新宿ラインの最終で横浜を目指します。横浜着23:30,23:33の大船ゆきをつかまえ,磯子着23:48,今日もお疲れさま,青春18きっぷで行く北陸新幹線の旅2回目も無事到着です。締めてみると,今日乗った距離1087km,うち701.2km青春18きっぷ,385.8km新幹線でした。さてこの夏休み,青春18きっぷを2セット買ってしまったので,1回は仙石東北ライン乗りつぶしの旅,もう1回は甲府に墓参り(家族で3枚消化)と決まっているのですが,あとを何に使うか楽しみです。(2015.8.30記)
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エアセクション内停車とATCについて

さる(2015年)8月4日,JR東日本(以下,JR)根岸線横浜~桜木町間でエアセクション内に電車が止まり,起動後の大電流で架線が切断,同区間が終電まで不通になるという事故が起きた。エアセクションとは変電所から電気を電車線に送る際の継ぎ目にあたり,隣接する饋電区間でどうしても電位差が生じるために,両系統の架線とパンタグラフが接触した状態で長時間停車したり,起動,低速走行すると架線が溶断することもあるらしい。事故の概要や影響は多数報道されているのでそれらに委ねたいが,報道の論調の中でATCに関するところが気になったので,僕の考えを書いておきたい。

当夜の様子(僕も迷惑した35万人の1人)
先ずATCとは運転士の操縦操作に万が一の誤りがあったときのバックアップシステムだと僕は思っている。最近はデジタル化などでATCの機能も高度化し,運転支援機能が充実したり,車内信号の現示などで主体的な役割も果たすが,現段階では運転するのは運転士との考えは変わっていないはずだ。
報道によれば,当該列車の運転士は前方に先行列車を認めたので,エアセクションの存在を知らずに,ATCブレーキによらずに手動で70m手前で列車を止めたとのことだ。一部の報道では,これが誤りであるかのごとく書かれていたが,これこそATCの意義を取り違える危険な誤りを含んでいると思う。

当夜の横浜は花火大会だったよし
そもそも列車の運転は運転する線路のことを知るのが基本で,プロの運転士なら駅や速度制限,勾配から踏切やブレーキの目印など運転台から目に入るあらゆるものを覚えている。エアセクション内停車がそんなに重大な問題を引き起こすなら,それを知らない方がおかしい。JRの乗務員教育としてエアセクションの存在箇所を教えていなかったのなら,その教育システムがおかしいと思う。先行列車を視認したとき,ATCブレーキによらずに自分でブレーキをかけて停車するのは運転士ならば普通の行動で,列車間の安全距離,ブレーキ扱いの際の乗り心地などを考慮して停車したところがその地点だったのであろう。また,エアセクションを示す標識もその区間には設置されていなかったようだ。したがって,エアセクションの存在を教育されておらず,標識等で知る術もなかったのであれば,運転士は責められないと思う。

エアセクションの様子
ところで,JRは一般の線区ではエアセクションの存在を示す標識を整備済だったが,ATC整備区間ではATCによってセクション内停車は避けられるので,標識の整備をしなかったという。多分,同様の理由で運転士への場所の教育もしていなかったのだろう。ここにはバックアップシステムであるべきATCの位置づけを取り違えて,ATCを中心に考える思想が見え隠れする。運転の現場を知らない頭でっかちのシステム屋が考えそうなことで,とても危険だと思う。
そんなことを考えつつ情報収集していたら,たまたま面白いブログ記事を見つけた。去年の4月のある朝,東海道線の東京駅付近を走っていた電車が中央線の非常発報を受けて緊急停車した。並行する山手線や京浜東北線はすぐに運転再開できたが,東海道線の上り電車は運悪くエアセクション内に停車してしまった。普通の起動ができないので,15両編成のうちの基本10両のパンタを降ろしユニットカットして,付属編成の動力のみで運転を再開,事なきを得たらしい。セクション内停車は100%避けられるものではなく,適切に処置すれば大きな輸送障害になることのない好例であろう。

エアセクション標(右上はその区間終了標)
また,数年前だが桜木町行きの横浜線電車に乗ったとき,たまたま最前部だったので運転士の操作を見ていた。この列車は高島貨物線をオーバークロスして坂を下って,桜木町駅の中線に入るのだが,ブレーキを操作せず,ATCブレーキに任せて坂を下っていた。その時はなんと横着な運転をするものかと思って見ていたが,今思うとそれが推奨される取り扱いなのだろうか。

桜木町駅中線進入
報道によれば,JRは今回の事故の対策として,乗務員への教育と,ATCを改修しエアセクション内停車になりそうなときは音声で運転士にアラームを出すようにするという。後者はATCはバックアップという思想に合致するものであり,的を射た対策だが,なんで最初からそうしておかなかったのかとも思う。
先の東海道線の例のような取り扱い教育とバックアップとしてのATCの機能変更をすれば今後はあのような事故は減るだろう。JRは事故の原因に関し,組織の問題とも述べていたが,本論のような見地での表明であれば,JRも捨てたものではないと思う。
航空の世界では,星を見ながら(天測航法)五感を研ぎ澄まして旅客機を飛ばしていた,まさにパロットから,FMS(フライトマネジメントシステム)を中心とした航法コンピュータのオペレータに仕事の質が変化してきた。鉄道の世界ではまだまだ人が主役の度合いが強いと思うが,この関わりを取り違えると大きな事故につながりかねない。今回の事故は電力系のトラブルだったが,ATCとは何かを考えさせられる事故だったとも思う。(写真や図はイメージ)(2015.8.9記)