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2015-10

大船発「EL&SLみなかみ」号に乗ってきました

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 僕は列車の旅行のなかでも客車列車に乗るのがとりわけ好きなのですが,「北斗星」がなくなり,「はまなす」,「カシオペア」の運転終了も秒読みとなると,いよいよもって客車列車に乗る機会はなくなりそうです。この秋,群馬のデスティネーションキャンペーンの一環で,(2015年)10月17日と24日の2回,高崎のSL列車が大船まで延長運転されました。10月24日土曜日,とくにSL列車に興味があった訳ではありませんが,客車列車にまとまった時間に乗りたい!の一心でこの列車に乗ってきました。そんなわけなので,乗車券は140円旅行(実際は550円の大都市近郊区間大回り乗車)で,乗車区間は大船~新前橋です。

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びゅう商品の案内チラシ(実際には使っていない)

 まず,旅行前のきっぷ手配ですがこれが難問で,12系客車5両編成なので約400席が発売初日の夕方の時点で売切れでした。往復9,800円のびゅう商品のパッケージも同時に発売され,一般販売とどのような枠取りになっていたのかは分かりません。しかし,発売の翌日から毎朝の通勤時に照会しましたが,座席が取れず,諦めモードで,どこに写真を撮りに行こうかなど会話を始めていました。オークションに売りに出されているのも確認しましたが,これを買う気にもならず,結局,3日前の21日にやっと高崎までの指定席が確保できたのでした。そして,2日前の22日になってようやく新前橋まで,それも同じボックスで2席を入手することができました。

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当日のきっぷ一式(最近,連続乗車券にハマッています)

 10月24日朝6時20分,例によって我が家最寄りの磯子駅からスタートです。大船には余裕をもって15分前に着き,ゆっくり写真を撮るつもりでしたが,入線は発車時刻の3分前くらいでとても慌ただしいスタートでした。牽引機はEF65-501,昭和40年代に東京口の寝台特急の牽引機として活躍した機関車です。昭和50年代のブルートレインブームの時は同じEF65でも1000番台のPF型に交代した後でした。500番台のP型F型が活躍したのはそのちょっと前ですが,個人的には貫通扉なし,ちょっと鼻筋の通ったお顔の500番台のほうが格好いいと思っています。

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大船駅入線。この写真を撮って,当の列車に乗るのは結構度胸が要る?

 入線がぎりぎりだったこともあり,乗客の乗り込みとホームの整理などもあり,定刻の6:51を1,2分遅れて発車。久々の客車列車に機関士さんも気合を入れたのでしょうか,全く衝動のないスムーズな発車でした。先週17日にもこの列車は走りましたが,その時はあまり天気が良くなかったですが,今日は良い天気で,沿線のここはというポイントには数名の鉄ちゃんが写真を撮っていました。

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懐かしい車室端のアイテム。JNRマーク入りの温度計など

 客車は電車や気動車(ディーゼルカー)と違い自らは動力を持たないので,牽引する機関車さえ交換すればどこへでも行ける自由さと,カタンコトンというレールを刻む音以外に余計な音がしないのが魅力です。ただこの12系客車の場合は,両端のスハフに発電用のディーゼルエンジンを積んでいるので,その音が耳障りですが。また,12系は1970年の大阪万博の輸送需要に応えるべく製作された急行型の客車ですが,晩年は,十和田(2,5号),八甲田,かいもん,日南などの長距離列車に運用され,大変お世話になりました。最晩年は短編成化,普通列車格下げ改造を施され,山陰地区や北東北の鈍行列車に使われました。この頃になると客車列車の鈍行列車が減っていたので,わざわざこれらの線区まで乗りに行ったものです。そんな訳で久しぶりに12系客車に乗れるなら,区間はどこでもよいのです。

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EF65-501。高崎で(撮影:ジュニア)

 この高崎の12系客車ですが,12系の中では比較的後年に製造された300番台の車号の車両で,SL列車として運転されることが多いためか,手入れも行き届いていました。座席モケットもきれいだし,トイレはシックな石材調の内装で便器も洋式に取り換えられていました。

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よく手の入れられた便洗面所まわり。洗面所はエアタオル付

 列車は通勤に行楽に通い慣れた東海道線,横須賀線(品鶴線)を適度な速さで上ってゆきます。加速の鈍い客車列車ですが,トップスピードになればそこそこの速度は出るので,性能のよい電車に追い抜かれることもなく高崎を目指します。大船からは横浜,新宿,浦和,大宮と特急並みの停車駅ですが,さすがに高崎線内は快速らしい停車駅に止まって9:41高崎に着きます。また,大船発車後に車内改札がありましたが,指定席券とともに磯子→品川の乗車券を見せて,何の質問をされることなくパスでした。このときは東京の車掌さんでしたが,大宮から乗った高崎の車掌さんはSL列車の車内改札用の改鋏スタンプをお持ちだったので,こちらも押してもらいました。

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高崎駅で。横断幕で歓迎する社員のかた達

 高崎では機関車の交換のため15分の停車です。高崎駅のホームはデスティネーションキャンペーンの最中とあって,駅や支社の社員が多数出て,歓迎や整理にあたっていました。とくに興味はなくても,周りの人がこれだけ盛り上がっていれば,自分にも伝播してきてちょっとワクワク気分の13分の乗車で新前橋に到着です。せっかくのSL列車を13分で捨ててしまう人は少なく,新前橋では出て行く列車の動画をゆっくり撮ることができました。

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D51+12系新前橋発車

 費用節約のために遠回りをしますが,基本的にここからはただの帰り道です。次に乗った列車は両毛線の小山ゆきですが,湘南色の115系が懐かしい電車です。東北地区は701系やE721系などの交流専用電車,松本や新潟地区でもE127,9系電車が投入され,JR東日本ではローカル電車もJR形式の電車が増えてきましたが,高崎地区は115系の最後の牙城になってしまいました。新前橋ではホームでの動画撮影ですっかり煙を浴びてしまいましたが,週末は沿線のおうちでは布団も干せず迷惑しているだろうとは,うちのジュニアの言です。SLも走りレトロな車両もたまに見るには良いですが,日頃の沿線の利用者へのサービスとしては改善が望まれるところです。

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両毛線の115系電車。1000番台のなかでも後年の製造車ではあるが...

 約1時間半の乗車で12:17小山着。1年半前の140円旅行の時もそうでしたが,小山での両毛線~水戸線は全く接続が考慮されておらず,46分も時間があります。ジュニアは最近,駅そばに凝っていて,あちこちの駅で駅そばを食べ歩いており,今日も東北本線の上りホームの駅そばになりました。小山は生姜が名産のようで,かき揚げてんぷらは桜えびではなく紅生姜でした。きつねを食べたジュニアの評価は高かったですが,僕はそばよりは,気配りのよい店員さんのほうが評価が高かったです。一とおりの腹ごしらえの後,エキナカのお店でおやつ,土産,ビール,肴を買い込みます。水戸線の電車は531系のセミクロスシートとロングシートが混ざった5両編成です。前回はオールロングの415系だったので,随分よくなった感じがします。お客さんは休日の昼下がりとあってまばらで,それぞれ好みのシートに座っています。去年は雨模様の天気でしたが,今日は天気もよく裏から見る筑波山がきれいでした。

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今日は筑波山がきれいだ

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E531系。友部~土浦間の558Mは上野・東京ライン開業用か,去年の新製車

 友部からは常磐線を上りますが,水戸線のクロスシート--幸いジュニアと2人で1ボックスを占拠できた--があまりに快適だったので,グリーン車はやめて,普通車としました。乗った列車は土浦でスジが切れていたので,ここで乗り換え特別快速で品川を目指します。日暮里で急病人救護とかで3分くらい遅れ,16:17頃品川着。乗車券のうえでは品川が終着なので,一旦改札を出て,2券片目を改札機に通して入場し直します。16:19の東京始発の横須賀線に乗れればよかったのですが間に合わず,16:27の1891E伊東ゆきになってしまいました。ちなみにこの1891Eは14:24に高崎を出た列車で,かれこれ4時間半も遠回りしていたことになります。また,この列車は夕方の下り列車にも拘らず10両編成で,座るなど夢のまた夢,友部から横浜までのグリーン券にしておけばよかったと後悔の18分でした。

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土浦でひたち16号に道を譲る

 京急線上大岡経由歩いて帰宅して17:45ごろ自宅着。朝は早かったものの,概ね12時間の客車列車を楽しむショートトリップでした。ちなみにかかった費用はかみさんへの土産,自分の飲み代も含め,2人分で\6,400とびゅうのパッケージよりは随分安めにあがりました。SLみなかみ号はdinks(Double Income No Kids)のときとジュニアが3歳の2005年の正月の2回乗っているのですが,今度は水上に用事を作ってゆっくり乗りに行きたいと思います。(2015.10.25記)

関連記事:大都市近郊区間と山手線1周の運賃
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新発見--東京メトロの旅客営業規程

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 先般,東京メトロの旅客営業規程をじっくり見る機会があり,いろいろな新発見がありました。机の上のお遊びの感もありますが,制度研究としては興味深い点も多かったので,幾点かご紹介したいと思います。東京メトロの路線は一般の鉄道路線よりも稠密で,駅も,名前が違っていても連絡していて乗換えられたり,同じ名前でも途中に改札があったりと複雑です。これらの特殊性もあるなか,利用者の利便や利用実態に合うように考えられた規則になっています。言葉を換えると善意の利用者が不正乗車にならないようによく工夫されています。今日はその中でもとくに片道乗車券の運賃計算経路を中心に書いてみたいと思います。なお,東京メトロの「旅客営業規程」はWebでも全文が開示されているので,興味があるかたはこれも参照ください(検索「東京メトロ 旅客営業規程」)。

 地下鉄の路線は稠密,かつ乗換え接続駅といっても途中に階段や長い通路を介するケースも少なくありません。このため,片道乗車券の運賃計算経路について路線単位で判断するような考え方になっています。JRなどの場合は路線には関係なく同じ駅を2度通ってはいけないルールで,一度通った駅に来た時点で運賃計算は打切りです。ところが,東京メトロでは路線が異なれば,同じ駅間を2度通ってもよいのです。

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 規定では21条「普通乗車券の発売」の1項「片道乗車券」の項で「旅客が普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車(以下『片道乗車』という。)する場合に発売する。ただし,その経路が折返しとなる場合を除く。」,44条「旅客運賃計算上のキロ程の計算方」の項で「キロ程を使用して旅客運賃を計算する場合は,別に定める場合を除いて,当社線が同一方向に連続する場合に限り,これを通算する。」と書かれています。この「折り返し」と「同一方向に連続する」いうのがクセ物で,同一路線を折り返すのでなければよいようです。また,東京メトロの規定には,45条「片道普通旅客運賃計算方の特例」という項があって「第43条の規定にかかわらず,次の区間内各駅発着の場合,又は,同区間を通過する場合の片道普通旅客運賃は,最も短い経路のキロ程によって計算する。」となっています。これはJRの大都市近郊区間内は最短経路で運賃計算する特例--140円旅行の根拠になっている--と類似の規定ですが,適用の範囲,乗換え駅を制限して,濫用を防いでいます。

 例えば,銀座線の虎ノ門から半蔵門線の半蔵門に行くことを考えます。運賃計算は赤坂見附~構内連絡~永田町経由で計算しますが,この面倒な乗換えを嫌って青山一丁目で乗換えるのはよくあることです。このとき赤坂見附~青山一丁目間はJR等の一般的な片道乗車券のルールでは複乗になってしまってNGですが,東京メトロではこれが認められます。

 この乗換えを青山一丁目ではなく表参道や渋谷で乗換えた場合はどうでしょうか。実態としては時間の無駄だけで,利用者に何のメリットもなければ,メトロ側でチェックする術もありませんが,規定上はこれもOKです。しかし,これが虎ノ門発でなく銀座発になると,渋谷の銀座線~半蔵門線の乗換えには改札が介在するため,銀座~渋谷間の運賃が必要になります(82条)。また,この時の乗換え時間が30分に制限されるのは,駅に掲示が出ているとおりです。規定を逆手にとって,渋谷駅周辺で長時間用事をするのはできないようにしているのです。

・虎ノ門~(銀座線1.5km)赤坂見附/永田町~(半蔵門線1.0km)~半蔵門 2.5km 170円
・虎ノ門~(銀座線2.8km)~青山一丁目~(半蔵門線2.4km)~半蔵門 5.2kmだが45条により最短経路2.5kmでよい 170円
・虎ノ門~(銀座線5.5km)~渋谷~(半蔵門線5.1km)~半蔵門 10.6kmだが45条により最短経路2.5kmでよい 170円
・銀座~(銀座線7.2km)~渋谷~(半蔵門線5.1km)~半蔵門 12.3km,45条による最短経路は3.6kmだが,一旦渋谷駅で改札を出るために7.2km相当の200円が必要

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 もう一つの例として有楽町線の東池袋から副都心線の雑司ヶ谷に行くことを考えます。この区間も170円ですが,池袋駅での面倒な乗換えを嫌って,小竹向原までを往復することもできます。この場合は,東池袋も雑司ヶ谷も45条の地図の中ですが,乗換えをする小竹向原は乗換え駅リストにありませんので最短経路では計算できず,実際に乗った距離の8.9km相当の200円となるのでしょう。尤も,実際にこの区間を移動するなら,歩くか都電のほうが早いと思われます。

 ここの地下鉄路線図で面白いことに気づきます。池袋~和光市は有楽町線と副都心線の重複路線です。とくに,小竹向原以東ではこれらの2つの路線は別の線路を走りますが,小竹向原以西では同じ線路の上を走ります。池袋からお隣の要町までの乗車券で,和光市まで行って戻ってきたらどうなるのでしょう。往きと帰りに乗った列車によって値段が変わり,有楽町線でも副都心線でも同じ路線で往復したら440円,たまたま別の路線の列車に乗ったら280円(45条の地図の外なので最短経路にはならない)というのが正解のようです。いろいろと興味は尽きませんが,実態としてはチェックのしようがありません。また,JRの140円旅行のような応用ができるかというと,改札から出ることができないので,せいぜい和光市で回収された忘れ物を池袋から取りに行くくらいがよいところです。

・最短経路        池袋~要町 (有楽町線:1.2km,副都心線:0.9km) 170円
・JR式に往復で計算   池袋~(240円)~和光市~(200円)~要町 440円
・東京メトロ式に距離通算 池袋~和光市~要町 280円

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 ところで,いくつかの会社で提供している乗換え検索ソフトですが,この東京メトロ独特の複乗に対応していたのは,試した4社のうちの1社だけでした。その1社も複乗には対応するものの,45条の区間外乗車の制限には対応できておらず,結局,全滅でした。また,上の記述のうちの前半の銀座線,半蔵門線に関する部分は,東京メトロのお客さまセンターにも確認したものですが,後半の有楽町線,副都心線に関する部分は未確認で,僕の解釈です。このほか東京メトロの旅客営業規程には3条「定義」の2項に「列車 電車をいう。」なんていう規定があったりして面白く,時間があったらもっと深く研究してみたいものです。(2015.10.18記,2017.4.2誤記修正)

2015年夏休み青春18きっぷ旅行③--仙石東北ライン乗りつぶし

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 今年の夏休みの青春18きっぷ旅行3回目は,メインイベントで仙石東北ライン乗りつぶしの旅です。仙石東北ラインは,今年(2015年)5月30日に開業した新しいJR線で,正式には東北本線の名なし支線,営業キロは300mです。たった300mでも,JR線の営業キロにカウントされる線区であれば全線完乗のタイトルに係ってくるので,乗らない訳にゆきません。そうはいってもお金も時間も限られるので,青春18きっぷのシーズンを待っての乗りつぶし行となりました。せっかく石巻まで行くのだから,仙石線の線路の付替えが行われた区間,線路が短縮され新駅が開業した女川,ついでに全部ではありませんがBRTのバスにも乗ってみたいので,例によって朝から深夜までの強行軍になりました。

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往路の電車/①根岸線502C/②東海道本線~東北本線3620E

 7月31日(金)朝,出発は自宅最寄りの磯子駅5:53の根岸線です。この日は朝の苦手なジュニアも頑張り,予定の電車に乗ることができました。横浜に着き東海道線の上りホームに行くと,副本線の8番ホームには秋田の583系が止まっていました。この電車は2か月前にもY156記念号で写真を撮ったばかりですが,今では本当に貴重になった編成で,思わぬ収穫です。

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秋田の583系。波動用としての活躍はいつまで続くのか。横浜で

 横浜からは6:15の東北本線内快速の宇都宮ゆきで北を目指します。ときどき通勤で使う東京駅からの東海道線が座れなくなったため,僕の周囲の東海道線族の間では上野東京ライン開業は不評ですが,こういう時ばかりは便利です。宇都宮からは本来ならば黒磯,郡山,福島と乗り継いで北上するのですが,今日はメニューが盛り沢山なので宇都宮~仙台間を新幹線利用でスキップです。また,仙台駅の東北本線福島方面からの仙石東北ラインへの接続がおそろしく悪いのも新幹線利用にした理由です。福島からの快速3573Mの仙台着12:16,仙石東北ラインの5531Dの仙台発12:17で,仙台で接続するのか心許ありません。とくに5531Dは旅程の中でキモになる列車なので,ここで危険な賭けをする訳にもゆきません。

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一部区間を新幹線でスキップ/③やまびこ125号。福島でこまち・はやぶさを待避。速っ

 仙台からは,仙石東北ラインに乗りたくはやる気持ちを抑え,小牛田経由で前谷地に向かいます。小牛田は幹線国道からはずれた小さな町ですが,鉄道が十字に交わる鉄道の要衝で,キハ110をはじめとする新世代気動車と国鉄形式のキハ40が混じりながら,たくさんの気動車が休んでいました。小牛田からはちょうど気仙沼線直通の列車があり,11:21柳津着です。

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④東北本線2535M(エンド交換後に撮影)

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広々した構内にたくさんの気動車の集う小牛田運輸区

 気仙沼線の歴史は意外と新しく,以前は柳津線といってここ柳津と気仙沼側は本吉まででしたが,昭和52年12月に全線が開通しました。僕は開通直後の昭和53年夏に高校の鉄道研究会の合宿で訪れていますが,その後は1度も乗ったことがなく,38年ぶりの再訪です。

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柳津駅前の風景--何もないところだ--と乗った車両たち
⑤石巻線~気仙沼線2927D(これも折り返しの列車),⑥気仙沼線代行BRT

 今回の旅行ではBRTに乗るのも目的ですが,前谷地~柳津間はもともと列車が運転されていた区間なので,柳津より先までなんとか行けないか考え,志津川までを往復することにしました。柳津から乗ったBRTは暫くの間は線路に沿った国道を走ります。キハ10には似合わないと映った鉄道建設公団製の立派な線路があちこちで破壊され,列車が通らなくなり雑草が伸びるにまかせた線路は言葉になりません。陸前戸倉からは運行ルートが旧線路敷になり,一般車は締切り,行違いも決められた箇所となって,いよいよBRTらしくなります。車窓は,津波対策で地盤のかさ上げをしている工事現場,仮設住宅などが続き,地震と津波の傷跡は癒えていないことを実感します。僕は会社の研修で名取市の津波被害の見学にも参加し,多少の知識はありましたが,ジュニアにはどう映ったでしょうか。毎日温かい家で起きて,家族も食べ物も何一つ困ることがないということの有難さが分かるとよいのですが。

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津波で路盤が流されてしまった気仙沼線の線路の状況
右下:昔の写真をひっぱり出してみました--1978年の海水浴臨,南三陸シーサイド号

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志津川の仮設商店街

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BRT志津川駅と⑦観光型BRT「旅」

 志津川は南三陸町の玄関でもあり,BRTの志津川駅は仮設の商店街も併設したターミナルになっていました。15分の乗換えの合間に周囲を見てまわります。いろいろな消費でお金を使うのもまわり回って復興支援と,ジュニアは最近発売されたBRT用の交通系ICカード「おでか」,僕は地元産の笹かまぼこを買いました。帰りのBRTは「観光型BRT『旅』」で,子供向けに飾付けられた車内が楽しいバスです。この便は5月末から延長された前谷地直通便ですが,柳津~前谷地間は乗換えの不便解消のために無理矢理作ったルートのようで,強烈に細い道や農道みたいなバスマニアが喜びそうな道を走ります。本当のBRTに乗れたのは僅かな区間でしたが,見るところも多く行って良かった志津川行(こう)でした。

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軌道敷を走るBRT。数百mごとに待避場所があり,2現示の信号もつく

 前谷地では駅前のよろず屋が1軒開いていたので昼食になるものを買い,次は女川を目指します。僕らが乗った1637Dは石巻で13分止まります。石巻は翌8月1日が復興を祝う川開き祭りで,前日の今日は花火大会もあり,浴衣姿のお嬢さんもいて賑わっています。空を見ると自衛隊機が白煙を吐きながら空を舞い,デモンストレーション飛行をやっています。確か自衛隊のブルーインパルスは松島航空隊の所属で,地元のお祭りに花を添えているのでしょう。飛行機の轟音に気づいた僕は下の写真を撮ることができましたが,ジュニアは気づかなかったそうで。とんだ拾い物をしました。

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ブルーインパルス。石巻駅前で。近影もほぼ同じ場所で

 石巻~女川間はリアス式海岸の入り組んだ海岸線を縫うように進んでゆきます。38年前に乗ったときにはそんな印象はなかったのですが,石巻線ってこんなに海が近かったかなと思う景色です。当然津波の被害も大きく,そこかしこに津波のつめ跡が残り,終点の女川は冒頭に書いたとおり駅自体も移転して再出発したばかりです。女川は町長がリーダーシップを発揮し,復興の進捗が早いと讃えられている町なので,ゆっくり見ればみどころも多いのでしょうが,今日は8分の折り返しなので新しい駅舎の前で写真を撮るだけで引揚げです。

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⑧⑨石巻線1637D~640D。女川で

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石巻線末端部の車窓

 石巻に戻り,ようやく仙石東北ライン経由の列車に乗って仙台に向かいます。まず車両ですが直流1500V電化の仙石線と交流20000V電化の東北本線を短絡する仙石東北ラインは非電化で,車両としては気動車に分類されるハイブリッド車両HB-E210系での運転です。もともと仙石線と東北本線は松島駅の近くで2回交差しており,両線を短絡する構想は以前からもあったそうです。しかし,高価な交直流車両を造ったり,交直セクションを設置したりする予算もなく実現できずにいましたが,昨今のハイブリッド車両の技術が安価な直通車両を可能にしました。走行自体はモーターによって走るので,電車のような軽やかな走りです。(HB-E210系の写真は冒頭の写真参照)

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仙石線から東北本線に進入する部分の線路。⑩5536Dから

 途中の陸前大塚~陸前小野間は今回の復旧に際して線路が付替えられた区間です。集落のある海岸沿いを離れて山の中を進むので,防災上は有利ですが,利用者には不便になったと思われます。元の線路と合流し高城町を出ると,いよいよ仙石東北ラインの短絡線です。気動車なので電車線は関係ありませんが,この2線は信号システム,無線(周波数?)等も異なるようで,新設のスイッチ(ポイント)をそろりそろりと渡ってゆきます。300mの短絡線区間を終わると定義上は松島駅構内ですがホーム等はなく,そのまま塩釜まで行って止まります。ここぞとばかりじっくり見ていましたが,300mは300m,あっけなくJR線初乗り区間を踏破し,全線完乗のタイトル防衛です。

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郡山で。期せずしてカシオペア,E3系こまちと遭遇

 仙台からは磯子を目指して,ひたすら帰る旅です。被災地で昼間からの飲酒は気が引けるので,今日初めてビールを買いますが,福島ゆき588Mはあいにくの満席。それでも喉が渇くので立呑みで一杯です。電車は夕暮れの蔵王,吾妻の山々を見ながら複線電化の幹線を快調に走ります。毎度のことですが,列車の速度,走ってる感,対向列車の数などから,乗って楽しいのはちんたらしたローカル線より幹線だと思います。福島で乗換え,郡山に着くと向こうから三つ目の列車がやってきます。貨物かと思って待っていたらカシオペアでした。なにか得した気になって写真を撮ります。更に新幹線ホームに上がるとE3系のこまちが。ジュニアいわく,これもあと残り数本らしいので大喜びです。

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帰りの電車⑪東北本線588M,⑫1160M,⑬つばさ156号,⑭1635E,⑮根岸線2117C 

 青春18きっぷの旅というタイトルの割に新幹線を多用して申し訳ありませんが,郡山~宇都宮間はまたまた新幹線でスキップです。その甲斐あって,宇都宮からは横浜までの直通列車に乗れ,磯子着23:10です。また,磯子からわが家もこの時間なら23:14の最終バスにぎりぎり間に合いました。これだけの速達効果があれば,朝の苦手なジュニアの早寝にも貢献できるので新幹線特急券+運賃4530円も安いものです。なお,帰路の区間は新幹線を使わなくても終電までに帰ることも可能です。

 今回の旅行では新幹線を多用してしまいましたが,乗った距離は980.1kmうち青春18きっぷ(普通列車)620.6km,新幹線359.5kmという結果でした。何度か旅行しているうちに分かってきた経験値ですが,1日に700km乗れば十分楽しんだ感じがします。2か月来の懸案だった仙石東北ラインにも乗れたし,今日も楽しい日帰り行でした。(2015.8.31記)

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