分岐駅通過の区間外乗車と復路専用乗車券

先日,中央西線の大桑に出張に行った会社の同僚が,「『しなの』に乗換える時に名古屋で途中下車したら復路専用乗車券とかいうきっぷを買わされた」と大騒ぎしていました。復路専用乗車券?そんなのもの今でも売っているんですかと興味津々で見せてもらい,譲ってもらいました。

話題の復専。「金山~名古屋」
東京方面から新幹線に乗り,特急「しなの」で中津川方面へ向かう場合,順路では名古屋乗換えです。しかし,中央本(西)線は名古屋より1駅東京寄りの金山で分かれるので,運賃計算は東京方面~金山~中津川方面で計算します。このような経路の旅行者の便を図るため,JRの規則には分岐駅通過の区間外乗車という規定(旅客営業取扱基準規程(※)151条)があります。この例で,金山駅を通過する列車に乗り,名古屋で途中下車しない場合に限り,この区間の運賃はいただきませんというルールになっています。

これは名古屋に用事がなく,名古屋で単に乗換える便宜を図っての規定なので,名古屋に用事があって途中下車する場合は事情が変わります。途中下車するならシッカリ金山~名古屋間往復分の運賃をいただきますよ,というのが復路専用乗車券です。きっぷの注記にもあるように,既に乗ってしまった往路分の精算と,これから乗るであろう復路分の運賃を合算しているため,値段は340円と3.3km×2の距離に比べ随分割高な感じがします。

分岐駅通過の区間外乗車の特例区間の一覧(2016.1.30現在)
復路専用乗車券ですが,これは基本的に分岐駅通過の区間外乗車の認められた区間にしか存在しないので,「復専」といって僕はあるとき一生懸命集めていました。JRになって本来は復専を売るような場合でも,お客さまサービスのためか,便宜的に途中下車を認めるケースが増えていたようでした。以前,呉在勤時に広島駅で復専を買おうと駅員氏に尋ねたら,フクセン...?とポカンとされて,「復専」自体を知らないようでした。また,この広島~海田市間は特例中の特例で,151条ノ2という特別な条文まで用意しています。というのも,山陽新幹線と山陽本線は原則,同一の路線として扱いますが,在来線と接続しない東広島駅ができて原則どおりではない別線扱いになってしまったため,東京方面~東広島~広島~海田市~呉方面の経路が構成できてしまうのです。元々,海田市~広島間は151条の特例適用の区間だったので,ルールどおり計算すると東広島駅ができたばかりに値段が上がってしまいます。151条ノ2は,例外的に新幹線の東広島~広島間を在来線と同じとみなして,新幹線で来ても海田市における151条の取扱いを有効にしているのです。

ちなみに,広島駅で東京方面~呉方面の乗車券で途中下車しようとすると,「長時間はダメですよ」とクギをさされて,改札口を通してくれます。そのとき,乗車券にはひし形の特別下車印を押されます。このひし形の下車印は長野と広島で見たことがあり,鉄道管理局(今は支社)所在駅なのでか洒落たことをするなと思っていたのですが,本来途中下車できない駅で特別に下車したことを示すもので,普通の途中下車印とは意味が違うということを最近になって知りました。何にせよ,駅ナカが必ずしも充実しているとはいえない広島駅でのこの取扱いは,僕には嬉しい思い出です。

「広島」の特別下車印
最後に,古いきっぷを探してみたらいくつか復専が出てきたので,これらをお見せします。札幌は白石~札幌と桑園~札幌の2種があり,お金がなかった頃なので安いほうだけを買いました。周遊券を持っているので使うあてはなく,どっちにしますかと聞きながら無駄金を使わせて申し訳なさそうな駅員氏が思い出されます。消込みをしていた訳ではないので,長岡は5年の間に2回も買ってしまいました。並べてみたら様式が変わっているのが興味深いです。往路分は乗車,精算済なので,矢印は復路分の片方向が正しいのでしょうか。

古い復路専用乗車券
JRになって復専は死語になったと思っていたのですが,名古屋では日常的に売られているようだし,インターネットで検索すると福井などでも売っているようです。乗換え間合いの短時間の途中下車が便宜的に認められていたのが,シッカリ往復分の運賃をとるとは世知辛くなったものです。特殊なきっぷ収集の楽しみが増えるのはよいですが,こればかりはなんともです。
※ JRの旅客営業の規則は,営業規則そのものである「旅客営業規則」とその取扱いの詳細を部内向けに規定した「旅客営業取扱基準規程」の2つがあります。JR東日本の場合,前者はWebサイトでも開示されていますが,後者はこの特例のように旅客にも開示すべきと思われるポイントのみ「きっぷあれこれ」に説明があります。
(2016.1.30記)
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青春18きっぷ+トコトコきっぷで房総横断のショートトリップ

2015~2016年冬シーズン,年末に只見線に行った報告をしましたが,青春18きっぷの残りが3人日分あります。2人日分はたっぷり使ったので,たくさんの乗って使い倒そうというよりは,近場でゆっくり楽しみたいと思います。そんなことで検討するうち,千葉の房総半島の小湊鐡道・いすみ鉄道が割安なきっぷを売っていることが分かり,久しぶりに奥さんも一緒に家族でのショートトリップになりました。小湊鐡道の五井~上総中野1,410円,いすみ鉄道の上総中野~大原720円,計2,130円のところ「房総横断乗車券」は1,700円で,それだけでも2割引きですが,冬の閑散期は房総横断鉄道活性化連携事業のプレミアムクーポン券680円分を付け「房総横断鉄道トコトコきっぷ」として売っているので実質1,020円と半額以下です。僕も奥さんもそういうおまけとか割引には滅法弱いので,それに釣られた感もあります。

「房総横断鉄道トコトコきっぷ」。多分クーポン分は行政からの補助金
今シーズンの青春18きっぷの賞味期限もあと1日となった(2016年)1月9日(土),朝7:00過ぎ,今日もわが家最寄りの磯子駅へ。ところが今朝は根岸線が運転見合わせで朝のスタートからつまずき,仕方なく京急の屏風浦駅に歩きます。7:23の上り電車に乗れるとか乗れないとかでイザコザになり,結局,乗ったのは7:53の上り電車,品川に着いたのが9:00前でした。もともとの予定は五井9:25の小湊鐡道で下る予定でしたが,スタートが遅れたので,いくつか考えた案の一つで昼前の大原発から上るルートに変更です。千葉からの外房線電車は特急と快速に抜かれる妙に遅い列車ですが,ポカポカ暖かい電車でのんびりと下り11:32大原着です。

外房線の鈍行電車。房総地区は短時間の間に209系の天下になった。245M,茂原で
大原からは今日の目的の房総横断の列車旅,先ずはいすみ鉄道の大原駅で「房総横断鉄道トコトコきっぷ」を買います。いすみ鉄道の大原駅はカレーからキーホルダーまで所狭しといすみ鉄道グッズが並んでいて,一般の旅行者なら絶対何かお土産物を買わなければと思わせます。僕の場合は,眼が肥えていてというか,このようなものに鈍感になっていて,余程,アピーリングなものがない限り買いません。時刻表には「大原駅…外房線へのお乗り換えには時間がかかる場合がございます。(JR版)」とか「大原駅でのJR外房線との乗りかえは約6分かかります。(JTB版)」と注記が出ていますが,小湊鐡道の五井駅の乗換えと大差なく,お土産タイム確保のためかと,うがって読んでしまいます。いすみ鉄道はどこかから転職した社長がブログを書いたり,いろいろ知恵を出して増収に努めているのは有名な話ですが,僕にとってはやりすぎ感一杯の大原駅でした。そんな訳で大原では1円も無駄遣いしませんでしたが,こんな環境に育ったジュニアは実は買いたいものがあったかも知れず,ちょっと不憫だったりもします。奥さんのほうは駅前のケーキ屋さんで,あとちょっとで昼食だというのにケーキをお買い上げで,しっかり地域の消費に貢献していました。

キハ20-1303は2015年新潟トランシス製の新製車

キハ20-1303の車内。木目調の高級感ある内装だ
大原11:52の上総中野行は国鉄のディーゼルカーのリバイバルの2色塗装でやってきました。遠くから入線を眺めていた僕には普通のディーゼルカーにしか見えませんでしたが,乗ってみたらびっくり,2015年新潟トランシス製のピカピカの新車でした。内装は木目調でクロスシート,真空式の便所もついた仕様ながら,前面を中心とした外観は昭和30年代っぽく,大原駅の様子とは逆に好感の持てるディーゼルカーでした。大原で買ったケーキを食べながら進むと,列車は内陸に分け入って行きます。いすみ鉄道はムーミン谷をモチーフにしたイメージPRを展開していますが,西大原と上総東の間では,沿線の池の周りにムーミンたちの等身大キャラクターがいて,車窓を楽しませてくれます。

車窓に見えるムーミンたち。西大原~上総東
30分弱の乗車で12:25大多喜着,ここで上りの急行列車と交換です。この急行列車はキハ28+キハ52の2両編成で,もともとの行程ではこの車両の間合い使用の普通列車に乗れたのですが,今日は午前中の予定が狂ってしまったので写真だけで我慢です。この急行,時刻表上の愛称は「急行」ですが,今日は立派な「夷隅」のヘッドマークを掲げていました。

大きなヘッドマークを掲げて走る「急行」。時刻表上は急行「急行」を名乗る
また,大多喜では1本列車をおとして昼食です。トコトコきっぷのクーポン680円分があるのでこれを有効活用しなければなりませんが,昼食などに使えるお店は少なく,大多喜のそば屋と決めて予定を立てました。大多喜は徳川家康配下の武将,本多忠勝ゆかりの城で,城下町は小さいながらもよく整備されています。駅からそば屋までの数百mの間にも重文級の旧家があるなど,半日くらいをかけて観光すれば楽しめる街だと思います。

大多喜は沿線随一の駅
昼食後は大多喜発13:24の列車でいすみ鉄道の終点,上総中野を目指します。このディーゼルカーはいすみ352で,これも2014年度の新製車ながら,ロングシート,トイレなし,国鉄キハ20ライクな前面の車両です。大多喜からは先は山が深くなり,いかにも日本の里山の風情の景色の中を走り,20分で上総中野です。ここは小湊鐡道との接続ジャンクションですが,無人で,駅前の竹の形をしたトイレが妙に目立つ寂しいところです。歴史的には小湊鐡道の管理する駅のようですが,両社ともICカード未対応なので,会社を仕切るものは何もなく,昭和50年代と変わらぬ風情です。20分の接続で14:04の五井行に乗換え,旅行を続けます。

小湊鐡道のディーゼルカー キハ204(ステンレス切抜きの社名が製作当時の栄華を物語る)
小湊鐡道のディーゼルカーはキハ204ほかの2両編成。この車両は昭和38年製の日車標準タイプのディーゼルカーで,かつては各地の中小私鉄で見られた形式ですが,今では希少なオールドタイマーです。国鉄キハ20に準じた車体ですが,前面2灯なのがチャームポイントで,車内がオールロングシートなのが残念です。現在の小湊鐡道はこのキハ200型で形式統一されていますが,昭和36年から52年まで16年にわたって製作され,現在は13両が現役だそうです。また,ワンマン化されておらず,車掌さんが乗っているのも今となっては特徴といえます。積極的に車両の更新を進めるいすみ鉄道と,昭和のディーゼルカーを使い続ける小湊鐡道の対比も面白い,房総横断の鉄道でもあります。

小湊鐡道の車内券。最近の中小私鉄では車掌さんの乗る列車が減ったので希少だ
小湊鐡道の車窓は,最初の2駅くらいは房総半島の背骨の渓谷ですが,そこを抜けてしまえばいすみと変わらない里山風景です。天気も良く,暖房も心地よく,同行の奥さんとジュニアはお昼寝タイムです。14:48の上総牛久を過ぎると沿線は郊外の住宅も増えて,ベッドタウンの雰囲気となります。区間列車も増えるので,交換設備を持つ駅も多くなり,前面かぶりつきも楽しくなります。ジュニアもお目覚めなので,単線区間における信号システムやスプリングポイントなどの運転設備についてお勉強です。

五井に残る小湊鐡道のSLと旧型のディーゼルカー
15:14,上総中野から1時間14分で終点の五井に着きます。沿線案内によれば五井には小湊鐡道のSLが保管,展示されているそうで,時間もあるのでそれらを見学に行きます。SLの展示は大凡展示館とはいいがたい車両基地の端っこに風雨を避ける屋根を付けて並べただけのものですが,自社の歴史ある車両を保存し,それをPR資源として活用する姿勢は好ましいと感じました。なお,上の写真のディーゼルカー(キハ5800)は非公開扱いなので,SL見学のついでに蔵の中に置いてあるところを覗くのが限界です。小湊鐡道では五井駅の駅員の女性とSLを管理する運輸課のおじさんと言葉を交わしましたが,どちらも現代の運輸サービス業らしい応対で,一昔前の地方私鉄の殿様商売的なところが全くありませんでした。車両等のハードウェアは古いですが,ソフト面ではお隣のいすみ鉄道の影響もあるのか,大変好印象の小湊鐡道でした。

総武線快速~横須賀線でひとっとび
五井からは内房線から総武快速の直通電車を選んで乗って,横浜まで一直線です。普段だとグリーン車で一杯いきたいところですが,家族と一緒なので,クロスシートの車両を選びボックス占拠で寛ぎます。18:07頃には自宅最寄りの磯子着,わが家の青春18きっぷ1日分としてはかなり早めの旅行終了です。朝は京浜東北線の運転見合わせで散々でしたが,終わってみれば,房総半島の2私鉄の頑張りが楽しかったショートトリップでした。
ところで,この朝はJR京浜東北線の蒲田~川崎が運転見合わせで,振替輸送で京急で品川に上りました。青春18きっぷと振替輸送について別スレッドで考察してみました。興味のあるかたはこちらもどうぞ。(2016.1.23記)
青春18きっぷと振替輸送・代行輸送

先日,青春18きっぷで房総横断の旅行(その時の記事はこちら)に行く際,横浜・磯子の自宅から千葉に行く途中の京浜東北線が不通になっていました。青春18きっぷで振替輸送って使えるの?と思いながらの旅行だったので,今日は青春18きっぷと振替輸送について考察してみます。なお,このスレッドの記事は,2回の経験は事実ですが,以降の考察は全て私見です。
詳しい状況を書くと,元々の行程は磯子から横浜まで根岸線で上って,横浜からは総武快速と直通の横須賀線に乗る予定でした。7:12の根岸線に乗るべく磯子駅に行くと,日曜日の朝なのに改札口前に人だかりができていて,ただならぬ様子,京浜東北線の蒲田~川崎間で人身事故で不通になっているとの案内です。それでもなんとなく青春18きっぷの日付印の入鋏はもらっておきたいなと思って,日付印の印字を受けました。そうはいっても電車は来る気配がなく,駅員さんは京急の屏風浦(びょうぶがうら)からの振替乗車を案内しています。青春18きっぷで振替乗車ができるのか不安だったので,案内をしていた若い女性の駅員さんに聞くと,ちょっと待ってくださいと言って助役さんと思しき人に確認し,そのまま京急の駅係員に言ってくださいと振替乗車票も渡されませんでした。最近の首都圏では振替輸送も多く,お互いさまということなのかJR<=>民鉄間でも振替乗車票なしでも振替をするケースも多いようです。僕としては面倒な判断を先送りしたな...と思いつつも,先を急ぐので京急の屏風浦へ向かいました。京急の屏風浦駅では,振替受託について指令とやり取りしていたのか,改札口に駅員さんは不在でした。ちょうど電車も来たので,断る間もなく入場してしまいました。

(参考)磯子~屏風浦
屏風浦から京急電車に乗った僕らは振替でどこまで行こうか考えました。磯子では根岸線が動かないので手も足も出ませんが,横浜まで行けば,不通箇所が蒲田~川崎なので,品鶴線を通る横須賀線なら動いていると思われます。そうはいっても,いすみ鉄道の急行用ディーゼルカーの間合い使用の列車を選んだ行程はもう無理だし,小湊鐡道の列車が少ないので急いで千葉に行っても仕方ないしと,気力も萎えていました。そんな訳で上大岡から乗った京急の快速特急で品川まで上りました。京急品川駅ではJRとの連絡改札口を通りますが,青春18きっぷを見せて,JRが不通なので磯子~屏風浦から来たと申告し,何のお咎めもありませんでした。不通区間が蒲田~川崎だったので,横浜~品川(泉岳寺?)間も振替輸送を受託していたのでしょう。
そういえば去年の3月に青春18きっぷで磐越西線経由北陸に行った時もこんなことがありました。その日は大雪で磐越西線を会津若松まで行ったところで運転見合わせになりましたが,JRはタクシー代行を手配,僕は無事に新津まで辿り着くことができました。このときは,会津若松から喜多方方面行き,新津行き,新潟行きが手配され,僕の乗った新津行きは普通の乗車券のお客さんと青春18きっぷの僕と5名で相乗りでした。(このときの記事はこちら)
まず,青春18きっぷと同時に発券される案内スリップの記述を見てみましょう。これには,「○列車の運行不能・遅延等による払戻し及び有効期間の延長はいたしません。○災害等の理由により,利用予定の列車に接続しない為,当日の最終目的地に到着しない場合でも新幹線・特急等への乗車はできません。(一部区間を除く)」とあります。これは,運転見合わせも含む,列車が動かないときの対応について言及したものですが,払戻し,有効期間の延長,急行列車への乗車はできませんと明記していますが,振替や代行は利用できないとは書いてありません。

青春18きっぷの本券と案内スリップ2
続いて,列車に乗ることのそもそもから考えてみます。そもそも列車に乗る時には,A駅からB駅まで,あらかじめ契約した等級(普通,急行,特急...)の列車の設備(普通車,グリーン車...)で輸送する旅客運送契約を結んでいます。これを現した証憑がきっぷ(乗車券類)です。JRはこの契約により旅客を輸送する義務を負いますが,何らかの事情で不通区間が発生してこの義務が果たせなくなったとき,他の事業者に輸送を委託するのが振替輸送です。また,適切な事業者がないのでタクシー会社などに依頼して,当該区間の乗車券を持った旅客をJRの費用負担で輸送してもらうのが代行輸送です。これらは旅客とJRが結ぶ旅客運送契約の通則であり,青春18きっぷだからといってそれを制限する例外規定もないので,やはり青春18きっぷでも振替輸送や代行輸送は利用可能と思います。
代行輸送の時は旅客の乗車券を確認し,代行輸送の委託先にどこ駅からどこ駅まで何名という形で委託をするので,委託の内容も費用負担もはっきりしています。しかし,振替輸送の場合は,もともとあるサービスを利用するので,範囲を限定するのが難しくなります。JRの振替だといって不通区間とは関係ない受託先の遠くのほうまで行かれては困るので,どこからどこまでの区間と区切って委託(他事業者から見れば受託)するのです。また,振替輸送のときに渡される振替乗車票は,旅客が振替輸送で乗車中であることを証するほか,後日の事業者間の清算にも利用されるのだと思います。なので,これらの業務の円滑な遂行のためには,振替乗車票は貰っておいたほうが良いと思います。まとめると,以下が青春18きっぷで振替輸送利用の条件になるでしょう。
1.JR,旅客間で有効な旅客運送契約があること=青春18きっぷに利用日付が記入されていること
2.列車が運転できない区間があること
3.青春18きっぷを持つ旅客がその区間を乗る意思があること
4.振替で乗ろうとする区間が振替受託の区間であること
5.JRで発行した振替乗車票を持っていること(最近は必須ではない)
普通の乗車券を持つ旅客なら目的地や経由線区を特定するのは容易ですが,青春18きっぷの場合は「旅客鉄道会社線全線(JR全線)」としか書いていないので,目的地や経由線区を特定することができません。なので,鉄道事業者側では旅客の言うことを信用するしか手立てがありません。旅客側としては,振替や代行を利用する権利はあるので,その振替や代行を利用することが自分の旅行の行程上正当であることを理解してもらう必要があります。そのときのためという訳ではありませんが,その日の行程をメモでもよいので書いておけば,説得力も生まれるのではないかと思います。僕の場合は,青春18きっぷで旅行するときは大抵その日の乗継ぎを行程表にまとめ,旅行中はそれを見ながら行動するようにしているので,それを見せることができます。

(参考)当日の行程表
再度,当日の反省ですが,何の気なしに入れておいた磯子駅の入鋏ですが,実はこれが重要だったと思います。なぜならば,これがJRとの当日の旅客運送契約の存在を示す証憑になるからです。反対に,振替乗車票はしっかり貰っておくべきでした。最近はJR各社もサービスが良くなったので証拠を見せろなどということは少ないと思いますが,受託先の私鉄では「青春18きっぷで当社線を?」ということはありそうです。今回の場合,京急の品川の駅員さんはすんなり通してくれましたが,全ての駅員さんにこれを期待するのは難しそうです。
もう一度まとめると,青春18きっぷでも振替輸送や代行輸送は利用できる。当該区間を旅行する意思を証するものとして,当日の行程を書いたメモなどを持参するのがお薦めとなります。
なお,代行手配についての私見も併せて述べておきます。代行輸送をするかどうかは,駅長(今は旅客か輸送指令?)が判断するもので,JRには努力する義務はありますが,社会通念に照らして過剰なコストをかけて青春18きっぷの旅客のために代行手配をするmustの義務はないと思います。
時と場合にもよりますが,旅先で輸送障害になり,振替や代行に乗るのもあとから考えればよい思い出です。正しい権利を正しく主張して,ヘンにごねることなく,楽しい旅行を心掛けたいものです。(2016.1.24記)
追
この記事をアップ後に気になって,「青春18きっぷ 振替輸送」でインターネットを検索したら,振替で新幹線に乗せてもらいたいという記事が多く驚きました。そもそも新幹線はJRの路線なので,旅客の輸送を委託・受託するような関係ではなく,契約と異なる路線,等級の列車への便宜乗車です。そして,青春18きっぷは急行列車(急行,特急,新幹線をまとめて急行と言っています)以上の列車には乗らないことを条件にした格安きっぷです。上にも書いたとおり,案内スリップにも「災害等の理由で...」と念押しの案内も書かれています。ちなみに,手持ちのきっぷを調べたら,この記述は2010年夏シーズンから増えたようです。確かに輸送障害はいろいろな事由があり,案内の不手際などもあれば,同情すべき点も多いと思います。しかしながら,これは契約であり,青春18きっぷとはそういうものです。このリスクが取れないなら,初めから青春18きっぷは使わないほうがよいと思います。
追を起こしたついでですが,代行輸送といえば12月末に只見線の代行バスにも青春18きっぷで乗りました(その時の記事はこちら)。大雪などの緊急時だけではなく,線路が流されてしまった時のような長期間に及ぶ場合でも代行輸送は手配されます。なお,東日本大震災の津波の影響でBRTになっている大船渡線と気仙沼線は代行輸送や振替輸送ではなく,鉄道ではありませんがれっきとしたJR東日本の営業路線の扱いです。(2016.1.26記)

古い写真ですが美祢線の代行バス。行き先表示はたしか「鉄道代行」。2011.9.4
年の瀬に青春18きっぷで只見線へ雪見旅

2015年も年の瀬の12月30日(水)青春18きっぷで只見線へ雪見の旅に行ってきました。わが家の愚息は自分に似て雪を見るのが好きで,どこか雪のたっぷり見られるところに行きたいと言います。去年は飯山線に独りで雪見の旅(記事はこちら)でしたが,今年はジュニアを連れての2人旅です。只見線は豪雨によるバス代行区間があり鈍行乗継ぎでの日着は無理と考え,検討すらしていなかったのですが,ジュニアが小出から会津若松にに抜けるルートなら行ける言うので,早速行ってみたくなったのでした。高校生の頃の鉄研の友達の情報では,飯山線,只見線,米坂線が日本三大積雪線区なので,只見線なら雪見の旅として十分です。ところが今年は雪が少ないようで,何日か前までは只見のアメダス情報では積雪が0で,只見に行っても雪はないかと気を揉んでいました。雪国のかたには迷惑な話ですが,アメダス情報を見ていたら前日になって只見の積雪が30㎝となり,ちょっと安心なのでした。

①今日のトップランナー。根岸線704B。磯子:733→横浜:7:48
②上野東京ラインで一気に高崎へ。東海道本線~高崎線3920E 。横浜:7:59→高崎:10:15
出発は自宅最寄りの磯子駅7:33の根岸線です。横浜からは上野東京ラインの快速で一気に高崎を目指し,10:15着です。高崎からの上越線は急に列車の本数が減り,輸送力が落ちるのでいつも混んでいる印象ですが,青春18きっぷのシーズンかつ年末で今日も大変な混雑です。青春18きっぷはかつてはマニア向け商品でしたが,毎年の春夏冬に発売されるので今では定番商品となり,お安く帰省をする堅実家族にも人気のようで,上越線の731Mもいろいろな種類の旅行者が乗っています。高崎以北のローカル列車は各線とも湘南色の115系で運転される列車がほとんどですが,今や広島地区に227系電車が,新潟地区にE129系電車が投入されたので,最後まで国鉄型電車を使うのはここか,下関かという感じです。新前橋には遊休の211系が多数あるようで,長野のように整備のうえ,211系に置き換えればよかろうにと思います。ただし,シートはクロスシートの車両を優先的に使うか,改造するかして,クロスシート仕様での更新を望みたいところです。

③湘南色の115系。上越線731M。高崎:10:31→水上:11:35

④上越線北半分はクハ115-1001。上越線8737M~1737M。水上:11:40→小出:13:01
水上では冬の間は毎日運転の臨時列車8737Mに5分の接続で乗換え,只見線の起点,小出を目指します。この電車も115系ですが,水上までの4両から3両に減るので,社内の混雑は相変わらずです。こちらは新潟の115系電車ですが,1000番台のトップナンバー1001揃いの編成でしたが,いつまでもつかわかりません。なお,水上(高崎からの列車が着く1番線)も小出も乗換えは一番長岡寄りに階段があるので,多客期は前に乗るのがよいようです。僕は水上の階段位置を勘違いし,後ろのほうに乗っていたため,またしても立ん棒です。僕独自の列車のローカル度を測るバロメーターにどれだけ譲り合って着席しているかというのがありますが,目の前は1歳と3歳くらいの子供を連れた4人家族が何十人も立っている客がいる列車で1ボックスを占拠しています。東海道線や横須賀線の列車では無札のような子供は親が抱っこするので,こんな光景はまず見かけません。幸い,この家族が越後中里で降りたので,後半の行程は座って行けました。

⑤只見線のディーゼルカー。只見線2424D。小出:13:11→只見:14:28
小出の乗換え時間は10分,列車さえ定時で走っていればちょうどよい時間です。今日は列車は定時ですが,鉄道旅行風の人,帰省の人で混んでいるので,スタンプを押したりする余裕の時間はなく,とりあえず2両のディーゼルカーに収まります。同行のジュニアはまた混んでいるのではないかと心配していましたが,さすがに只見線に乗る人は少なく,僕らも2人でボックス席を占拠できる程度の「乗り」でした。列車は破間川に沿って遡り,雪を見たいと言ってきたジュニアは大喜びです。大白川からは,今はどうか知りませんが冬季は国道も閉ざされてしまう六十里越をいくつかの長いトンネルで越えて只見に着きます。途中の田子倉ダムの近くには以前は田子倉という駅がありましたが,廃駅になってしまい,現在は大白川~只見間は20.8km,30分間も止まらないという区間になっています。また,鉄道の六十里越トンネルは6km以上もあり,在来線としては5位の長さだそうです。

⑥只見線代行バス。只見:14:32→会津川口:15:22
只見線は2011年7月の水害で橋が流されて以来,只見~会津川口間がバス代行となっています。今回の乗継ぎで使う只見発14:32便の場合は只見4分,会津川口6分の接続ですが,時刻表には「列車との接続はいたしませんのでご注意ください。」との注記があり,只見線を冬季に全通して訪れる足を遠のかせています。興味本位の18きっぷ族(自分もその1人ですが)が押し寄せて,バスの定員を超えてしまうほうがリスクです。今日は年末の多客期なので小出からの2424Dで代行バス利用者の人員把握をしており,実際,中型の観光タイプのバスでしたが残席は2,3席しかありませんでした。不通区間の状況ですが会津川口の駅に着く少し前に,写真を撮ることはできませんでしたが,かなり高く長い鉄橋が落ちているようで,復旧作業もままならず,まだ当分バス代行は続きそうな感じでした。津波被害の気仙沼線もそうですが,JRは本気で復旧する意思はあるのかなといった感じです。今日は雪はちらついていますが,気候や視界は安定しており,代行バスは概ね時刻表どおり走って,会津川口からは南東北色のキハ40に乗換えです。

⑦只見線430D。会津川口:15:28→会津若松:17:36
会津川口からの430Dはキハ40-500と同-2000の2両編成です。キハ40は国鉄末期に開発された国鉄スタイルの重たい車体に220馬力のエンジンで鈍重な印象がぬぐえないディーゼルカーですが,今となっては少数派になってきました。500番台はエアサスにデッキ付きの寒地向け,2000番台はコイルばねにデッキなしの暖地向けという仕様ですが,製作時の仕様と関わりなく転配が繰り返された結果,なぜか暖地向けの2000番台が只見線のような豪雪線区に来てしまったようです。更に今日の2021番はロングシート化改造されていて,中央線辰野~塩尻間のクモハ123ミニエコーを彷彿させるような,デッキ間にわたる超ロングシートになっていました。これも使いようで,すいた車内でゆったり席に座って,反対側の窓3枚ぐらいを眺めながら只見川のパノラマを楽しむのも良いかなと思います。冬季の只見線は雪ダイヤで余裕時分を大きくとるのでしょうか,会津川口から会津坂本までの区間はたったの31kmですが,1時間16分もかかり,釧路湿原ノロッコ号のようです。車窓は雪を見たいの期待にたがわぬ雪景色で,水墨画のような趣です。只見川の蛇行に忠実に沿う景色は,四季を通じて美しく,新緑の春,紅葉の秋,そして真夏もきれいで,今度は違うシーズンに訪れてみたいです。

早戸付近で
会津坂下からは只見川と別れ,会津盆地の中を今度は線路自体が大きく蛇行しながら,会津盆地の中の集落を拾いながら17:36会津若松に着きます。会津川口から2時間,小出からなら4時間以上かかっての鈍行列車の旅でした。会津若松からはひたすら自宅を目指して帰途の旅になりますが,途中の接続がよすぎて食事がとれません。会津若松の36分が最大なので,何とか駅ナカのそば屋で夕食です。会津若松からの1238Mは719系電車ですが,只見線とはうって違い,よく整備された亜幹線の線路を快調に飛ばして走ります。ロングレール化された幹線の線路より,このクラスの線路のカタンコトンというレールの刻み音のほうが,いかにも列車で旅をしているようで僕は好きです。

⑧赤べこ柄の719系。磐越西線1238M。会津若松:18:12→郡山:19:29
郡山着19:29。鈍行を乗継いでもぎりぎり終電までに帰り着くのですが,門限の厳しいジュニアはここから新幹線で大宮までスキップし,22:30くらいには磯子着です。僕は翌日は大掃除以外やることもないので,ここは7000円倹約モードで,青春18きっぷの旅,継続です。黒磯7分,宇都宮4分と,これしかないという接続で東北本線を上ります。この乗継ぎは青春18きっぷ族の定番のようで,大きな荷物を持った人がたくさん乗っており,夜のローカル列車とはちょっと違う雰囲気が漂っていました。郡山で買ったビール2本は空いてしまったのですが,564Mは両毛線の接続をとるため小山で7分止まり,追加の1本を調達できました。いくら青春18きっぷ族が多いといっても15両編成の輸送力は絶大で,1号車は4つのボックスに4人にしか乗っていませんでした。なお,帰途の電車の写真は一括で掲載です。

⑨東北本線2152M。郡山:19:42→黒磯:20:45
⑩東北本線686M。黒磯:20:52→宇都宮:21:44
⑪東北本線564M。宇都宮:21:48→上野:23:38
⑫山手線2315G。上野:23:44→東京:23:52
⑬東海道本線743M。東京:23:54→横浜:0:21
⑭根岸線2307B。横浜:0:39→磯子:0:53
上野着23:38ですが,東京駅から23:54の東海道本線の最終電車に乗れるとよいのですが,この接続が悪く,検索ソフトなどで普通に乗ると接続しません。23:44の山手線に乗り,東京駅では2分の乗換えを敢行,何とか743Mに乗ることができました。便所のある東海道本線の最終列車は12月30日だというのに大混雑で,今日乗った列車で一番混んでいました。安堵したのも束の間,せっかく乗った743Mは品川で山手線からの接続をとるため数分停車,このため横浜着も遅れて,横浜0:23の根岸線には乗ることができませんでした。ここで15分待って最終の大船行に乗ることになり,上野から京浜東北線で来ても結果は変わりませんでした。
ジュニアも奥さんも寝静まった1時過ぎ,無事自宅着。今日の行程740.5km,青春18きっぷ1日分としては随分成果ある旅行でした。只見線は高校時代から何度も訪れたことのある路線で,滔々と流れる只見川を見ながらゆっくりと流れる景色を眺めるのが好きです。早期の全線復旧を願って筆をおきます。(2016.1.11記)