ダイヤ改正前日,青春18きっぷで国鉄形式のラストラン巡り

ここ2年,JRの全国ダイヤ改正の前日は,翌日の新幹線開業に備え富山,青森へ青春18きっぷでの鈍行旅行をしました。今年は,広島の可部線で1.6km2駅の延伸開業があったのですが,そのために900kmを往復するのは面倒なので,5月もしくは夏に持ち越しにしました。代わりにとジュニアが提案したのが,国鉄形式の485系電車と烏山線のキハ40に乗りに行く旅です。行程のベースはジュニアが作り,直江津まで夜行高速バスで行くところを糸魚川に前泊にアレンジしました。

全盛時代の485系 1978.7 @平泉
鉄道趣味のジャンルの一つに葬式鉄というのがあるようですが,自分は違うと主張しています。しかし,485系にせよキハ40にせよ鉄道で青春していた頃からのなじみの形式で,なくなると聞けば寂しく,もう一度乗っておきたいと思ってしまいます。485系に初めて乗ったのは中学の東北地方修学旅行の「やまびこ」で一関まででした。この頃の485系は北は「いしかり」から南は「にちりん」まで,東北本線ではグリーン車2両サシ組込みの8M5T13両編成で走る全盛期でした。昭和50年代前半は僕は高校生でしたが,当時は周遊券で乗れるのは急行までで,485系使用の特急は高嶺の花でした。代わってキハ40のほうは製造初年が昭和52年で,これまた僕が高校入学の年です。こちらも九州の指宿枕崎線から北海道の釧網本線まで日本中でお世話になった気動車です。重い車体に220PSの非力な機関で鈍重,暖地向けは未だにDT22系のコイルばね台車で,きれいなだけが取柄の印象の車両でした。

新製直後のキハ40-2000。非冷房で暑そう! 1979.8 @新見
(2017年)3月3日,金曜日ですが会社(ジュニアは学校)はお休みをいただき,朝は糸魚川からスタートです。糸魚川~新潟間の快速列車は485系で運転される最後の定期列車で,この列車の運転も今日が最後です。冬の日本海側らしい重たい雲がたれこめ,ポツリポツリ雨も降っていますが,今日は涙雨だと思ってあきらめです。僕らは発車の20分くらい前に駅に着きましたが,糸魚川駅は朝から485系の別れを惜しむたくさんの人で賑わっています。

8621M入線前の糸魚川駅
7:44発の直江津ゆき1635Dを送り出すと,いよいよ485系の快速電車の入線です。糸魚川駅の在来線ホームはえちごトキめき鉄道の管理ですが,この列車が485系使用の最後の定期列車である旨の案内をしています。一般には県都への用務客主体の列車のはずなので,一般のお客さんは一体どうしたことかと思うところですが,これで納得でしょう。今どきは誰でもカメラ機能付きのスマホを持っているので,にわか鉄道マニアも出現して,2番線ホームは大変な人混みです。

8621M糸魚川駅入線
入替え標識を点灯して,8621Mとなる485系の6両編成がしずしずと入線してきます。あまりの人混みで前側からは納得の写真が撮れませんでした。あわただしく乗り込み,座席は前のほうのモハの5号車の山側にジュニアと2人で1脚を確保できました。165系以来の国鉄標準のMT54モーターの音もこれが最後か(※)とモハに席を取りましたが,特急型電車の防音はよく,懐かしい唸りが静かに聞こえました。海側だと冬の日本海の荒々しい景色が楽しめるのですが,あいにく山側なので,車内の様子などを眺めて過ごします。カメラと同時に録音機材もお手軽になったので,そこここで案内放送を録音しているマニアの人たちがいます。鉄道事業者のほうもご愛顧の感謝,ファンサービスもあり,このような列車では秀逸な案内放送がされることが増えているようです。
直江津,長岡...と新潟県内の都市でお客さんを拾い,三条あたりではほぼ満席の乗りになりました。雪のほうは糸魚川は全く雪はありませんでしたが,長岡あたりでは一面の雪野原,新津まで来ると殆ど雪はなしと,新潟県の広さを感じます。新潟到着前には,485系の生い立ちから新潟周辺での活躍,お客さまへの感謝の放送があり,ちょっと目頭を熱くし終点到着です。この放送はYOU TUBEなどにたくさんアップされていますが,下に筆記したものを載せておきます。いかかがでしょうか。
(普通の新潟到着案内)...
なお本日をもちましてご乗車の電車,485系は定期運行から引退いたします。ここで只今ご乗車いただいております電車についてご紹介いたします。この電車は485系電車と申します。元は特急用の電車として今からおよそ50年前に誕生し,その数を増やしながら北は北海道,南は九州まで様々な地方で走り続けてまいりました。新潟県にゆかりのある列車としては,信越線や北陸線で日本海側を縦断したかつての特急「白鳥」,「雷鳥」号そして「北越」号,「はくたか」号,「いなほ」号をはじめ多くの列車で活躍していました。現在,毎日この系列の電車が走るのは全国でもここ新潟駅と糸魚川駅までの間のみとなってしまいました。そしてとうとうこの車両も今日をもって定期運行から引退することとなりました。別れは寂しいものです。春夏秋冬多くのお客さまと思い出を運び続け485系は一つの時代をつくりました。皆さまの思い出の1ページにこの電車が登場することがあれば幸いです。なお,上りの485系最後の定期運行列車は新潟駅を17時58分に8番線から発車いたします。長年にわたりご愛顧いただきまして誠にありがとうございました。
(新潟からの乗換え案内)...

新潟からの436Mは新鋭E129系
新潟では臨時ホーム然とした頭端式の9番線に到着です。運輸区へ引き上げるのを見届けて,名残を惜しみつつ,予定より1本後の新津ゆきに乗ります。多少時間があるので,駅外のコンビニまで足を運び,昼食,飲み物と家への土産の笹団子を調達します。新津からの磐越西線はキハ47+キハ40の2両編成で,期せずしてまた国鉄形式のディーゼルカーになりました。新潟地区のラッシュ時の混雑がどれほどなのか分かりませんが,後ろのキハ40はロングシート改造車です。両端の扉間は25人くらい掛けられそうな超ロングシートで,見るのは楽しいけどげんなりです。

磐越西線232Dはキハ47-514+キハ40-587の2両編成

磐越西線は阿賀野川の景色がきれい
平日の昼前とあってお客さんはまばらで新潟平野を淡々と走り,五泉からは阿賀野川に沿った谷あいの上りになります。東に進むにつれて雲は高くなり,青空も少しのぞくようになります。豊実~徳沢間に県境があるのですが,車内の雰囲気も,勾配も,景色も変わりません。地図で調べたら,川の名前は新潟県では阿賀野川,福島県では阿賀川だそうで,なんとも不思議な県境です。阿賀野川ラインなる渓流くだりもある川べりの景色は美しく,今度は「SLばんえつ物語」にでも乗るかという気になります。喜多方からは会津地方の中心部となり,お客さんも増えて,14:05定刻に会津若松に着きます。

会津若松で。磐越西線の列車たち

磐梯山は山裾しか見えない
会津若松からは電車の快速で郡山まで約1時間の旅です。電車は多少くたびれてはいますが,赤べえ柄の719系の4両編成です。この磐越西線の快速電車は,線路規格が低いせいかレールの刻み音が軽やか,磐梯山をはじめ車窓もきれいで,僕のお気に入りの列車です。今日はあいにくの曇り空で磐梯山は山裾しか見えませんが,電車はカタンコトンと快調に走ります。また,今日初めて気づいたのですが,磐梯町あたりから見下ろす会津盆地の景色もなかなかきれいです。ところが,喜久田の手前で非常発報が入り緊急停車,ほどなくして運転再開したものの喜久田まで進みまた抑止です。案内によれば,架線にビニールが絡んだとかで対向の列車が止まっていて,係員が現場に行って取り除いた後,その列車の到着を待って発車の見込みだそうです。郡山には15:17着,15:30発の東北本線上りに乗る予定で,もはや絶望的です。今日の行程を再検討すると,郡山15:39の「なすの」に乗れれば,新白河に先回りできてリカバリ可,東北本線~烏山線往復~帰りの電車すべてを1時間繰下げれば何とか乗継ぎが成立することが分かりました。こういう事もあるので,青春18きっぷの鉄道旅行に大判時刻表は必携です。ところが,今日は風が強く,係員の現場到着より前に支障していたビニールが飛んでいってしまったのか,15:30頃には下り列車が到着しました。

東北本線2146M @郡山 と 東北本線668M @黒磯
下り列車と交換で喜久田を出発,電車は再び快調に走り,大きく右にカーブし郡山駅に向かいます。郡山に着いたのは15:37頃で,頑張れば新幹線に乗れたかもしれませんが,1時間遅れでもなんとかなると分かっているので,諦めです。当初の予定では夕食の時間がなかったのですが,小1時間が確保できたので,郡山で早夕食にします。フードコートで食べた喜多方ラーメンは魚介だしの味だけが目立ったエキナカ価格の一品でした。黒磯では6分の乗継ぎで,668M宇都宮ゆきです。宇都宮以北の東北本線は205系を整備した4両編成が多いですが,夕方の下校時刻にあたるためか,この列車はE231系の5両編成でした。

烏山線 変341M。今年の増備車でピカピカの新車 @宝積寺
宝積寺からの烏山線は,日が暮れてしまいましたが,今日2つ目の目玉となる列車です。予定より1時間遅れのため18:32発の341Dを予定し,ホームで待っていると自動の案内は3つドア2両編成と流れています。既に案内装置は切換えてしまったのか???と思っていると,来たのは案内のとおりのaccumでした。Accum自体は新しい電車でよいのですが,今日はキハ40に乗りに来たので,ガッカリです。ジュニアいわく,大金で交換があるので,それがキハ40だといいねと。時刻表を調べると,こちらの大金着が18:53,上りは18:55発です。去年の夏に大金駅の様子は見ているので,2分あればなんとかなるでしょう。

大金で

引退イベントのポスター @宝積寺
大金に着くとホームはキハ40を惜しむ人でごった返しています。人をかき分けつつ,写真を撮って,上り列車に駆け込みます。幸い上り列車はキハ40で,実はこれがキハ40の最終運行の列車でした。Accumのほうが運行費用も安いだろうし,ダイヤ改正の前日から移り変わりダイヤで臨時の車両運用にするのも肯けます。後刻,2月号の時刻表も確認しましたが,運用変更が事前に開示されていた様子はなく,もっと遅くの列車に乗りに来た人は残念なことになってしまったようです。ここはワンマンなので車掌の流暢なさよなら放送はありませんでしたが,宝積寺到着前に「烏山線最後のキハ40定期列車です」との言及がありました。宝積寺に着くと,「だいすきだったキハ40」と書いたプラカードを持つご婦人も現れ,大勢の人がキハ40最終運行の名残を惜しんでいます。

宝積寺駅の賑わい

帰りの電車たち。東北本線~東海道本線1633E,根岸線2015B。東北本線676Mは写真は撮ったけど省略
すぐの接続の東北線をおとすと,役目を終えたキハ40は回送列車として宇都宮の運輸区に引上げて行きました。この列車を見送ると,僕らも今日のアクティビティ完了なので,家路につきます。宝積寺19:38の676Mで出発し,宇都宮,横浜で乗換え,約3時間の行程で22:36磯子着です。予定どおり信越線の最後の485系定期列車,列車の遅れや臨時の運用変更で半分しか乗れませんでしたが烏山線最後のキハ40使用列車にも乗り,満足の1日です。今日は日がな中学校3年生のジュニア同行ですが,いつまで親とこんな旅行をしてくれるのか,わが子の成長が嬉しいような寂しいような1日でもありました。

この日の行程。約618kmを青春18きっぷで乗車
※ 3/18に「はまかいじ」に乗って気づきました。MT54+DT32系の台車の走りは185系でも味わえます。準特急などといってコキおろしていた185系も,国鉄の香りを残す貴重な車両になってしまいました。(2017.3.19記)
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旅心をそそる長距離鈍行列車・長時間鈍行列車リスト/2017年3月4日改正ダイヤ
今年(2017年)も3月4日にJRグループのダイヤ改正が実施されました。一昨年,昨年は北陸新幹線,北海道新幹線の開業という目玉がありましたが,今年は比較的地味な全国ダイヤ改正でした。鈍行列車では長距離鈍行列車の1位が入替わるなど動きがありました。2017年版の長距離鈍行列車・長時間鈍行列車リストをお届けします。

拡大はこちら

長距離鈍行1位に返り咲いた2427Dと専用サボ(いずれも2429D時代のもの)
去年の1位だった山陽本線の岡山~下関間の369Mが糸崎でチョン切られて順位をおとし,去年2位だった根室本線の2427Dが1位に返り咲きました。以前は上下ペアの列車でしたが,2016年の改正から上りは同じ区間の列車がなくなってしまいました。現在,根室本線の東鹿越~新得間は去年の台風の被害でバス代行となっており,復旧されないまま恒久的にバス代行による営業になる可能性もあるようです。また,北海道では宗谷本線の稚内~旭川間の上り列車,もともと下りしかなかった石北本線の上川~網走間の列車がなくなってしまいました。旅客の減少と気動車の高齢化にあえぐJR北海道の厳しい経営を反映した形ですが,寂しい限りです。

広島地区で増備の続く227系電車(写真:ジュニア)
2位になった369Mのほうも,広島地区の227系の増備いかんでは広島や岩国で分断される可能性があり,来年以降も目が離せません。表のコメントのとおり,休日のみの運転ですが,2年ぶりに呉線にも長距離鈍行が復活しました。鈍行列車とは違う話題ですが,広島地区では可部線の可部~あき亀山間が開業しました。国鉄・JR全線完乗のタイトルがかかっているので夏休みにでも出掛けようと思います。

中央線446M。441Mの写真は間に合わないのであしからず
中央東線では2015年改正で以前の長野~甲府間列車と甲府~大月間列車がくっつき200km超の長距離鈍行446Mが誕生しました。下りは立川~松本間の197.9kmが最長でしたが,今改正で高尾~長野間の441Mが設定され,6位に躍進しました。走る時間帯も景色もよいので,ぜひ乗ってみたい列車の一つです。長野の211系のうち高尾口に運用される列車はロングシートの車両が多いので,そこだけが難点です。

上野東京ライン1586E。熱海~黒磯間268.1kmで4位にランクイン
上野東京ラインは運転系統が複雑で表の載せ方が悩ましいのですが,今年は少し念入りに調べ,10本を掲載しました。不思議と北行列車のほうが不作で,沼津,伊東から前橋,高崎への列車は平日の設定がありません。この他,関西のアーバンネットワークの列車も掲載数を増やしたので,表が冗長になってしまいました。

距離では11位だが時間では2位の飯田線544M
これで5年,このリストを作っています。乗ってみたい長距離・長時間鈍行列車を探すのが「はじまり」でしたが,最近はこのリストを作ることで新しい時刻表を満遍なく眺められるのもメリットと感じています。
最後にリストの掲載基準ですが,これまでと同じで,距離で200km以上,時間で4時間30分以上,掲載順は距離順です。対象は定期列車だけですが,土休日運休の列車は対象,土休日のみ運転の列車は対象外です。僕が時刻表を手繰って確認しただけなのでヌケやモレがあってもご容赦ください。また,写真が毎年同じで申し訳ありません。(2017.3.4記)
最新版はこちらから参照ください。
また,最新版の一番後ろに各年版へのリンクがあります。

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長距離鈍行1位に返り咲いた2427Dと専用サボ(いずれも2429D時代のもの)
去年の1位だった山陽本線の岡山~下関間の369Mが糸崎でチョン切られて順位をおとし,去年2位だった根室本線の2427Dが1位に返り咲きました。以前は上下ペアの列車でしたが,2016年の改正から上りは同じ区間の列車がなくなってしまいました。現在,根室本線の東鹿越~新得間は去年の台風の被害でバス代行となっており,復旧されないまま恒久的にバス代行による営業になる可能性もあるようです。また,北海道では宗谷本線の稚内~旭川間の上り列車,もともと下りしかなかった石北本線の上川~網走間の列車がなくなってしまいました。旅客の減少と気動車の高齢化にあえぐJR北海道の厳しい経営を反映した形ですが,寂しい限りです。

広島地区で増備の続く227系電車(写真:ジュニア)
2位になった369Mのほうも,広島地区の227系の増備いかんでは広島や岩国で分断される可能性があり,来年以降も目が離せません。表のコメントのとおり,休日のみの運転ですが,2年ぶりに呉線にも長距離鈍行が復活しました。鈍行列車とは違う話題ですが,広島地区では可部線の可部~あき亀山間が開業しました。国鉄・JR全線完乗のタイトルがかかっているので夏休みにでも出掛けようと思います。

中央線446M。441Mの写真は間に合わないのであしからず
中央東線では2015年改正で以前の長野~甲府間列車と甲府~大月間列車がくっつき200km超の長距離鈍行446Mが誕生しました。下りは立川~松本間の197.9kmが最長でしたが,今改正で高尾~長野間の441Mが設定され,6位に躍進しました。走る時間帯も景色もよいので,ぜひ乗ってみたい列車の一つです。長野の211系のうち高尾口に運用される列車はロングシートの車両が多いので,そこだけが難点です。

上野東京ライン1586E。熱海~黒磯間268.1kmで4位にランクイン
上野東京ラインは運転系統が複雑で表の載せ方が悩ましいのですが,今年は少し念入りに調べ,10本を掲載しました。不思議と北行列車のほうが不作で,沼津,伊東から前橋,高崎への列車は平日の設定がありません。この他,関西のアーバンネットワークの列車も掲載数を増やしたので,表が冗長になってしまいました。

距離では11位だが時間では2位の飯田線544M
これで5年,このリストを作っています。乗ってみたい長距離・長時間鈍行列車を探すのが「はじまり」でしたが,最近はこのリストを作ることで新しい時刻表を満遍なく眺められるのもメリットと感じています。
最後にリストの掲載基準ですが,これまでと同じで,距離で200km以上,時間で4時間30分以上,掲載順は距離順です。対象は定期列車だけですが,土休日運休の列車は対象,土休日のみ運転の列車は対象外です。僕が時刻表を手繰って確認しただけなのでヌケやモレがあってもご容赦ください。また,写真が毎年同じで申し訳ありません。(2017.3.4記)
最新版はこちらから参照ください。
また,最新版の一番後ろに各年版へのリンクがあります。