5月の連休に地方の140円旅行--その2・仙台近郊区間

その1・新潟近郊区間はこちら
今年の5月の連休に出かけた地方の140円旅行,その2として山形発の仙台近郊区間の旅を中心にお届けします。(2017年)5月4日(木),この日は仙台近郊区間の140円旅行として,山形から福島,仙台,新庄をぐるりと回って北山形までの正真正銘の140円旅行です。

奥羽本線1420M @山形
奥羽本線の福島~米沢の板谷峠は最大38パーミルというJRきっての急勾配もある難所ですが,列車が少なく,米沢8:07の422Mの後は5時間も列車がありません。このため2日連続の早起きで,7時前にはホテルを出て,山形7:11の奥羽本線上りの1420Mでスタートです。いつもは通勤通学列車のはずですが,連休の中日なので部活の高校生と連休のお出かけの旅行者が主な乗客です。

奥羽本線422M @米沢
小1時間で米沢に着くと10分の乗継ぎで,次は板谷峠越えの区間の422Mです。板谷峠は今では新幹線「つばさ」がすいすい走りますが,この区間専用形式のEF71,ED78が4駅連続のスイッチバックを登っていました。日本全国のJR線の中でもこの福米はとくに気に入っている区間で,山形新幹線開業前は随分,通ったものです。そんな思い出深い区間ですが,今日はジュニアと共に春の車窓を楽しみます。

峠駅の名物「峠の力餅」
板谷峠の名物の一つに峠の力餅がありますが,今でも最上屋さんはやっているのでしょうか。朝食をとったばかりですが,ここはお約束で1箱買ってしまいます。昔はスイッチバックの駅でのんびりしていましたが,今は勾配途中の棒線ホームの駅なのでかなりあわただしいですが,力餅もお店のおじさんも健在でちょっと安心です。この列車では多分2つしか売れていなかったと思いますが,「つばさ」の車内での売上げの方が大きいのではないでしょうか。以前は「最上屋」という屋号でしたが,今回は「峠の茶屋」になっていました。いつか時間を作って,お店に寄ってみたいと思います。

庭坂付近で。板谷峠のほうの山々を振返る
昔の難所でも,複線電化,しかも標準軌の線路を422Mは軽快に走ります。福島での乗継ぎがたった3分なので遅れないか心配でしたが,杞憂におわり,定時の8:53福島着です。福島では同一ホームでの乗換えなので,3分でも全く問題ありませんでした。福島からの「仙台シティラビット」という愛称のついた快速は連休の行楽客で着席は望むべくもなく,結局1時間半近く立ちんぼうでした。混雑慣れしていないせいか,途中で気分が悪くなったお客さんの救護もあり,15分くらい遅れて10:30頃仙台着です。

東北本線3571M,2537M。時刻表上は別の列車だが同じ編成 @仙台
仙台に着くと,福島からの「仙台シティラビット」の編成がそのまま小牛田ゆきになるとの案内,列車が遅れたためこの日限りの運用なのか,元々そのような車両運用なのかは分かりませんが,ちょっと楽ができました。尤も,今日は140円旅行なので,仙台のような大駅では食料の補充は欠かせません。階段を上がるとちょうどパン屋があったので,いくつか惣菜パンを仕入れ,早昼にします。

東北本線から見る松島。熱線吸収ガラスのため色がいまいち
仙台からは列車番号を2537Mに改め,小牛田を目指します。仙台からはほぼ座席定員程度の入りで,車窓もおちついて見ることができます。塩釜を出ると,仙石線の線路が絡みついてきて,一時は東北本線より山側を走り,このあたりからは東北本線からも日本三景の松島を見ることができます。小牛田では7分の乗継ぎで,11:34発の陸羽東線の毎日運転の臨時列車8731Dに乗換えます。小牛田は鉄道の要衝で大きな気動車基地がありますが,国道4号線から外れているため構内だけがやけに広い感じの駅です。

小牛田で。昼前の時間,各方面からの列車が集まる
8731Dは新幹線,鳴子温泉以降の定期列車との接続を考え,ダイヤの隙間を泳ぎながら走る列車で,古川では正午をはさみ30分の長時間停車があります。古川は新幹線との接続駅で在来線の改札の外には駅そば屋さんも見えるのですが,140円旅行では出場もできず,指をくわえて眺めるだけで帰ってきました。

古川で。駅そば屋さんは改札の外
8731Dは古川で新幹線からの乗継ぎのお客さんを僅かに加え,昼下がりの奥州路を江合川に沿って上ってゆきます。行政上は,古川から鳴子温泉まで全部大崎市で,市内交通とはいうものの車内の雰囲気はローカル線然としています。13:01定刻に鳴子温泉着,13:05発の新庄ゆきの729Dがすぐに接続しています。

陸羽東線の列車。8731Dと729D @鳴子温泉
鳴子温泉からの729Dは時間帯がよいせいか温泉協会の観光案内の人たちも乗込み,車内は多少賑やかです。隣の中山平温泉との間には鳴子峡があり,この列車は減速サービスをしてゆっくりと鉄橋を渡ってゆきます。陸羽東線というと紅葉の渓谷を行く気動車の写真が必ず出てきますが,この区間の写真です。実際に通ってみると,トンネルとトンネルに挟まれたとても短い区間なので,減速サービスでもしていないとうまく撮れないと思われます。

鳴子峡のお立ち台の鉄橋で。車内から渓谷を見る。紅葉の名所だが今日は新緑がきれい
中山平温泉の先も暫くは上りが続き,陸羽東線の分水嶺は境田駅です。この駅はかつては交換可能で副本線があったようですが,今は棒線で使われていないホームの鳥居が分水嶺の案内になっていました。

境田の案内板。最上で上り列車と交換
境田からは下り勾配になり,気動車は軽快に走ってゆきます。右手の車窓には栗駒高原につながる山の南西端が見え,のどかな高原状の景色が広がります。最上では上り列車との交換があり,上の写真のような雰囲気です。更に下って奥羽本線としばらく並走すると終点,新庄に着きます。

奥羽本線1440M @新庄

新庄駅の様子。頭端式ホーム4線の先に長いホームがある

新庄でお昼寝中の「とれいゆつばさ」
新庄は奥羽本線と陸羽東西線が交わる交通の要衝ですが,奥羽本線は南の標準軌の山形新幹線の区間と北の狭軌の区間に分断されています。新庄駅は,分断のデメリットを軽減するため駅構内の真ん中に通路を置き,その両側に頭端式のホームがあり,その先を貫通するホームがあるというとても変わった作りをしています。新庄では9分の接続で奥羽本線上りの1440Mに乗り換えです。

奥羽本線から月山のほうを望む。手前にはリンゴ畑。乱川あたりか
新庄からの1440Mは連休の行楽客でかなりの混雑,行違いの下りの新幹線の遅れもあり,徐々に遅れが増してゆきます。車窓はのどかで,ちょうど花をつけたリンゴ畑,遠くには月山などの山々が広がります。10数分遅れで,今日の140円旅行の終点,北山形に到着です。所定の時刻であれば,3分後に左沢線からの山形行きがあるのですが,既に行ってしまったようです。今日は時間もあるので,140円倹約で,歩いて山形に戻ることにします。気候もよく,お城や美術館などのある市中心部を通って30分ちょっとのお散歩コースでした。

帰りの154M~154B「つばさ154号」 @山形
山形に戻った後は早夕食を食べ,家への土産と車内の飲食料を買って,家路に着きます。エビスビールにはヘッドマークチャームのおまけがついており,これにつられてプレミアムビールを2本も買ってしまいました。山形から福島の区間は朝にも通ったので車窓の見どころはサーベイしてあり,余裕の行程です。

烏帽子山から米沢盆地・赤湯に下る。遠くに見えるのは吾妻山系の山々
ところで,今回の旅行のきっぷですがベースはJRダイナミックパッケージです。1人あたりJRの乗車券特急券で21,890円のところ山形のホテル代込みで24,800円だったので,10%強,ホテル代の半分を割引いてもらった計算です。前回,このパッケージを利用したときは30%以上の割引でしたが,最繁忙期かつ期近になってからの申込みではこんなものなのでしょう。

JRダイナミックパッケージで手配のきっぷ(契約乗車票)
「つばさ154号」の上野着は19:42,その後は上野東京ライン,京急線を乗継ぎ,1時間ちょっとで自宅最寄りの屏風浦着です。今回はかみさんもいないのでジュニアと一緒に鉄分の濃い旅行になりました。乗り慣れた東京近郊区間と違い,新潟も仙台も新鮮で,140円旅行とは思えない有意義な旅行をすることができました。東京からわざわざ乗りに行くようなものでもなさそうですが,域内にお住まいのかたにはお薦めだと思います。
ところで,この春に高校に進学したジュニアですが,入学前はやっと鉄道研究会のある学校に行けると楽しみにしていたのですが,いざ進学してみると鉄道研究会ではなくずっとハードな運動部に入部することになりました。男の子は元来,電車などののりもの好きですが,年をとるにつれ,運動,音楽,女などに好みが変わってゆくもので,大人になっても鉄道趣味を続けている人は純粋な人が多いというのが自分の理論です。この先のジュニアが頼もしいような,寂しいような,複雑な思いです。(2017.5.20記)

この日の140円旅行の行程,きっぷ,航跡
関連記事:大都市近郊区間と140円旅行
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5月の連休に地方の140円旅行--その1・新潟近郊区間

新潟色復刻塗装の115系と新鋭E129系 @吉田
今年の5月の連休は,ジュニアは高校に進学しカレンダーどおりの授業,かみさんの職場は連休が書き入れ時のため,大きな旅行はできません。このため,ジュニアと2人であまりお金のかからない方法での旅行となりました。東京近郊の140円旅行は随分行ったので,地方での140円旅行をすることにしました。ストアードフェアシステムやSuicaの進展に伴い,JR東日本では新潟(2004年)と仙台(2014年)に大都市近郊区間が設定されたので,東京近郊同様に140円旅行(大都市近郊区間と140円旅行の詳細についてはこちらを参照)が可能なのです。東京のように複雑なルートをあちこち巡るわけにはゆきませんが,地方のローカル線やジュニアにとっては初乗り線区などを旅行することができます。2回に分けて,全2日の旅行の様子を書きます。

仙台と新潟の大都市近郊区間
(2017年)5月3日(水),自宅最寄りの磯子駅を5:14の根岸線で出発し,上野からは春ダイヤ(3~6月)期間中で5/3のみ運転の「Maxとき355号」で新潟を目指します。もともとはもっと遅い時間に出発し,仙台近郊区間だけの計画だったのですが,段取りを始めたのが遅かったのでこの列車しか席が取れず,だったら新潟もということになりました。

出発は磯子5:14の522B。この旅行も滅茶苦茶朝が早い
「Maxとき355号」ですがE4系8両編成です。この電車に特段の思い入れはないのですが,最近,JR東日本から2018年度からの置換えが発表されたので,葬式鉄で混む前に乗っておきたいというジュニアの意見に賛同です。

Maxとき355号 @上野
今日だけ運転の臨時の「とき」は,大宮からは自由席では立ち客が出るほどでしたが,長岡で混雑も一段落し,新潟には定時に着きました。新潟からは信越本線の区間列車で隣の越後石山まで戻ります。この駅は,棒線の対向式ホームのそれぞれに改札口があって,上下線間の地下通路は改札の外,駅係員がいるのは下り側駅舎のみという変わったつくりをしています。新潟~越後石山間を清算,出場後,用意してきた越後石山~坂町のきっぷで入場のつもりでいたジュニアは想定と違う駅の構造に戸惑っていました。越後石山で1本おとしてブラブラしていると,「SLばんえつ物語」の回送列車が新潟へと走ってゆきました。

信越本線2524D。平日なら通勤通学列車なのでしょう。雑多な気動車の5両編成

「SLばんえつ物語」の回送。SLは後ろにぶら下がって走る
越後石山からは新潟近郊区間の140円旅行ですが,この日は米坂線経由で山形に行く予定なので,きっぷは坂町までの970円です。米坂線は新潟近郊区間の外なので,坂町で一旦きっぷを切らないと,140円旅行として成立しません。越後石山~坂町は新潟経由だと53.4km,新津経由でも59.1kmでいずれも970円で,好きなほうを回ってくださいというのが制度の趣旨ですが,全く逆方向の柏崎から越後線を回っても新潟近郊区間内なのでルール上はOKなのです。

信越本線432M @越後石山

E129系置換えのポスターと車内の見付け
越後石山からは新鋭のE129系の4両編成です。この電車は新津の車両工場で続々と製作,115系の置換えが進められています。クロスシートとロングシートの好みに対応した結果か,各車両ともそれぞれ半々という変わったシート配置になっています。広幅車体のため,JR世代のE125系などに比べても居住性がよくなっています。

信越本線1332M @柏崎
長岡では引続き信越本線の上りに乗継ぐのですが,54分もの待合わせ時間があります。ジュニアは駅そば,自分は上野で買ってきたパンで早昼食を摂って思い思いに過ごします。長岡から乗った1332Mは115系の3両編成で,E129系と比べると見劣りしますが,115系は各地で置換えが進行中なので,旅行中1回くらいは良いものです。

信越本線をゆく貨物列車。旧北斗星牽引機のEF510ですがずいぶん汚れています @長岡

安田駅風景。跨線橋も幹線の風格
信越本線はあちこちで3セク転換,一部は廃止で線路が分断されてしまいました。そろそろ信越本線という名前も考えたほうがよいのではと思います。しかし,この新潟から直江津にかけては日本海縦貫線の一部として機能し,貨物列車も多く駅施設などには幹線の風格を感じます。

柏崎駅で。米山がきれいに見えます
柏崎では33分の接続,12:13の越後線で新潟を目指します。この列車は途中の吉田でダイヤが切れていて,またまた34分の乗継ぎですが,同じ編成で運転と案内があり,直通列車と変わりありません。吉田での待ち時間には新潟色に復刻塗装された115系を見ることができ,ちょうどよい時間つぶしになりました(冒頭の写真参照)。

新潟地区ではE129系が勢力伸長中。越後線147M~153M,白新線~羽越本線1937M
新潟では表口の改札口近くに駅そば屋があるのを朝に確認済なので,時間は中途半端ですがそばを食べて腹ごしらえです。新潟駅は工事中で駅ナカが充実しているとはいえませんが,まん中ホームの売店が開いていたので,お菓子を仕入れ,140円旅行の不自由な旅に備えます。

遠くに飯豊の山々が見える。白新線佐々木あたりで
連休中の夕方,いろいろな外出のお客さんを乗せて,1937Mは16:48,定時に坂町に着きました。今日の新潟近郊区間の140円旅行は完了です。ここからは明日に備え,米坂線で山形へ移動です。坂町での接続は23分とちょうどよい時間ですが,きっぷの切れ目なので駅構外に出ることにします。坂町は交通の要衝,鉄道の町として発展した昔が偲ばれました。駅前にはコンビニが開店したばかりで,免許が未だなのか,酒類は6月からとの告知。やっとのことで酒屋を探して,晩酌のビールを仕入れます。

今の駅勢に対して妙に大きな坂町の駅舎とD51の動輪のモニュメント

米坂線1134D @坂町

坂町で見た828Dは4時間超えの架線下DC。今日は急行色のキハ47だ
米坂線は荒川の谷に沿って越後山地を越えますが,ここでも飯豊の山がきれいに見えます。米坂線は自分の中では日本3大積雪線区(残り2つは只見線と飯山線)ですが,春の景色もなかなかのものです。東北の春は始まりが遅いので,桃や桜が一斉に咲くのがまた美しいです。

米坂線から見る飯豊の山々。越後大島あたりで

米坂線沿いの大島桜(?)の並木。越後片貝あたりで
米坂線も2か月前に乗った磐越西線と同じで県境と分水嶺が一致せず,山形県に入っても荒川の景色は続き,赤芝峡をちらりと見て小国です。夕闇も迫った6時半過ぎ,山形鉄道フラワー長井線の線路と合流すると白川を渡り18:35に今泉に着きます。以前は米坂線・長井線は白川の手前の白川信号所で合流して鉄橋を共用する二重戸籍区間でしたが,随分前に白川信号所も長井の駅構内に併合されてしまったそうです。

フラワー永井線の気動車,YR887。鉄道むすめのラッピング車
今泉からはフラワー長井線に乗換え,ショートカットルートで赤湯を目指します。山形に着く時間は同じですが,ここは滅多に乗ることのない3セク鉄道に乗ってみます。賃率は随分高いですが,米坂線は大きく回り道をするので,運賃で比較しても長井線回りの方がちょっと安かったです。

今日のラストランナー,奥羽本線457M @かみのやま温泉
赤湯からは奥羽本線の列車に乗換え,山形を目指します。行程上は米沢に泊ったほうが便利なのですが,この日は上杉まつりのためホテルが取れず,やむなく山形泊りとなりました。山形では2人の好物の山形牛の焼き肉を堪能し,ゆっくり休んで明日に備えます。(2017.5.7記)

この日の140円(970円)旅行の行程,きっぷ,航跡
その2・仙台近郊区間はこちら