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2017-06

知って楽しいJRの旅客営業制度3--乗車券の経路と種類

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 旅客営業制度の解説の3回目は乗車券の経路についての決まりを中心にご紹介します。
 乗車券を買うときに起点のA駅から目的地のB駅までの間に同じ駅を通るような経路はNG,当り前のようなことではありますが,規則で決まっているのです。

1.乗車経路と運賃計算の経路(旅客営業規則(以下「規」)67条)
 乗車券を買うときA駅からB駅までのルートが複数あるとき,旅客営業規則のルールでは実際に乗車する経路どおりの乗車券を買うことになっています。連載1,2でも書いたとおり,大都市近郊区間では経路を特定して乗車券を売ることが実情にそぐわないためルートは自由に選べますが,規定の建付けからするとこれは例外です。この他にも多くの例外があるので,それらは追々説明してゆきます。

2.運賃計算のルートの構成(規68条)
 実際に乗る経路のとおりといっても,ルートの構成の仕方はいろいろあります。規定では「同一方向に連続する限り通算する」となっていて,途中で折り返すようなルートは認められません(復乗)。このようなときは折返しとなる駅で,運賃計算を切るルールになっています。
 なお,私鉄各社でもこの辺の考え方は同じですが,東京メトロだけは大都市の地下鉄という特殊性から大きく異なっていて興味深いです(詳細はこちら)。

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3.環状ルートの構成と運賃計算の打切り(規68条4(2))
 上の図の1のように経路が交差していてもそこに駅がなければ同一方向に連続とみなされ運賃計算は連続します。といっても,線路が交差しているのに駅がないのは川崎駅南方の東海道線と南武支線,大阪駅の周辺くらいのもので,全国的にも殆ど例はありません。通常は同じ駅に2回目に来て,一部が環状のルートになった時点で運賃計算の距離の通算は打切りになります。これは山手線のような純粋なループのほか,「の」の字になった時も同じです。これも後述しますが,乗車券は距離が長いほどお得なので,この「の」の字乗車券は使いでのあるルールです。

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 ちなみに大都市近郊区間の大回り乗車をするときの「一筆書き乗車に限る」とか「同じ駅を通ってはいけない」という制約は,このルールによるものです。

 これらは乗車券の種類でいうと普通(片道)乗車券であり,経路の面で普通でない乗車券には往復乗車券と連続乗車券の2種があります。

4.往復乗車券(規26条(2),90条(1))
 いわゆる往復乗車用の乗車券で,往きと帰りの起点と終点が同一です。有効期間は片道の2倍,値段も600km以下では2倍です。片道601km以上になると往復割引が適用になり,往き帰り共に1割引になりますが,次回に詳述します。

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最も単純な往復乗車券(山手線1周にも使えます)

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一般的な往復乗車券(往復割引あり,地紋が緑の旧様式)

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硬券の往復乗車券(京王線との競合から多少の割引があった)
小児断片が真ん中にあるので,小人のときは特殊な形のはさみで切り落としていた
(もちろん2操作でよければ,普通のはさみでも切れる)

 またまたJR以外の話題になりますが,京急の往復乗車券は変わっていて往き帰りの指定がなく,いうなれば2回回数券になっています。とくに割引がある訳ではないので合理的な発券法で,実際に2人で1回の片道に使うこともできました。

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京急の往復乗車券。どこにも年の表示がないですね...

5.連続乗車券(規26条(3),90条(2))
 連続乗車券は復乗の救済のような制度で,経路の一部に往復になる区間があるときに発売され,運賃は各区間の合計です。典型的な例は東京(A)から仙台(B)に行く途中に日光(C)に寄るようなケースです。連続乗車券は普通乗車券を2枚買うのと殆ど変わりはありませんが,有効期間が通算になるところが異なります。しかし,この有効期間の通算はメリットで,2枚目の有効期間の開始日が未確定の時などは使いでがあります。

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 上のような例の時,A~Bの片道乗車券とD~Cの往復乗車券とするか,A~CとC~Bの連続乗車券とするかは悩ましいです。一般に前者は乗車券の区間が3つなのに対し,後者は2つなので,連続乗車券の方が有利になりそうです。A~B間が601km以上で往復割引適用なら,前者の方が大抵は安くなると思われます。なお,A~Bが大都市近郊区間に収まるか100km以下の時は,前者の買い方はできません。
 この他,3.で書いた「の」の字乗車の後,起点の駅に戻る場合にも,連続乗車券は使えます。

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連続乗車券の例1

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連続乗車券の例2

6.その他の乗車券の種類
 ここまでは乗車券の経路による違いでしたが,他の乗車券の種類について触れておきます。一つは回数券で,10回分の運賃で11回乗車することができます。一部の私鉄では,使える時間を限定した12回分や使える曜日を限定した14回分回数券もあります。また,回数券の有効期間は3か月,大人用の回数券1枚を小人2人で使うこともできます。
 JRや私鉄の回数券は区間ごとに発売するのが一般的ですが,地下鉄などではバスの回数券のように発駅フリーで金額のみを指定した回数券としている事業者もあります。自分の知る限りでは,東急は金額式の回数券になっています。また,JR東日本は回数券に対して消極的で,時差券,ホリデー券の設定がないどころか,去年の2月10日から短距離の券売機での回数券の発売をやめてしまいました。効力に違いはないのですが,たかだか百数十円のきっぷに印刷発行機の大判サイズを使うのはエコでないと思っています。

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JR(東日本)の回数券。今は下の大判サイズしか売っていない

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昔は山手線内の各駅相互間で使える回数券もあった

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地下鉄の金額式回数券

 もう一つは定期券で,発売の区間については1,3,6か月間何度でも使えるものです。1か月の通勤定期運賃は概ね片道運賃30回分の5%引きです。また3,6か月の定期運賃は,1か月の運賃の3倍,6倍のそれぞれ5%,20%引きです。

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常備券のころの定期券(随分古いものですがあしからず)

知って楽しいJRの旅客営業制度バックナンバー
1.大都市近郊区間と140円旅行
2.きっぷの有効期間と途中下車

関連記事:日本海&新青森の旅に行ってきました(連続乗車券の例1の旅行記)
       「あけぼの」のお名残り乗車に行ってきました(連続乗車券の例2の旅行記)
(2017.6.3記)
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東海道徒歩き(かちあるき)(6)江尻宿~日坂宿

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 東海道徒歩き,去年の秋は雨で歩けなかったため,ちょうど1年ぶり,5月の連休に歩いた江尻宿から日坂(にっさか)宿をご報告します。今回も写真中心のレポートになり,かつ,街道歩きだか鉄ちゃん(鉄道写真撮り)しに行ったんだか分からない内容ですが,あしからず。

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磯子駅で。去年と同じ列車でスタート。

 ゴールデンウィーク前半は,ジュニアは学校があり,気候はよく街道歩きには絶好のシーズンなので,今年も2日間の休日をもらい東海道徒歩きに出かけます。(2017年)4月30日,この日も自宅最寄りの磯子駅5:47の根岸線で出発です。

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清水(行政上は静岡市)市内の路線バス。ちびまる子ちゃんの住む町の設定は清水らしい

 大船,熱海で乗換え8:30には清水に着き,駅で着替えや荷物の整理の後,前回のゴールの稚児橋へ向かいます。平成の大合併で清水は静岡市内になってしまいましたが,清水はもともと東海道の江尻の宿場町でした。昭和の時代にも町名の整理が行われたようで,新旧町名町界案内図(昭和63年1月設置)という看板が立っていました。これを見ると,江尻大手町とか江尻本宿町などの町名があり,江戸,明治の昔が偲ばれます。稚児橋に立つと空には一片の雲もなく,今日も良い天気になりそうです。天気が良いのは写真を撮るのには都合がよいのですが,歩くのには日焼けがきついのが難点です。

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新旧町名町界案内図。古い町名を大事にするのは好ましい

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稚児橋で。今日も良い天気だ

 東海道を歩き始め,追分(宿場のはずれ)のあたりで大きな踏切で東海道本線と静岡鉄道静岡清水線を渡ります。光線の加減は文句のない順光なので,早速ここで何枚か写真を撮ります。静鉄の電車は何年か計画で去年登場したA3000形に置き換えが計画されています。ヘンなラッピングのないオリジナルの電車が来たので,とりあえず満足です。

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静鉄1000形。ドア横にエンブレムがあるがこの角度ではほぼオリジナルに近い姿

 しばらく歩くと大きなイオンがあったので,ここで朝ご飯を食べて小休止です。その先の御門台駅の近くでは旧街道から少し外れますが,富士山をバックに写真が撮れるようなので,そこでも何枚か鉄ちゃんをします。冒頭の口絵写真はここで撮ったものです。静鉄の線路は県総合運動場駅の先で東海道本線,新幹線をオーバークロスしますが,このルートがほぼ旧街道ルートです。線路をくぐる細い道路の入り口のあたりには「旧東海道記念碑」という立派な碑が立っていました。

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旧東海道記念碑

 東海道本線の北側に出ると静鉄線は新静岡に向けてやや北寄りのルートをとりますが,旧東海道もほぼそれに近いルートです。途中,長沼駅の前にはこのブログでもよく扱うBトレインショーティーのバンダイナムコの工場があります。富士山をバックに写真が撮れるので,ここでも何枚か鉄ちゃんします。

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バンダイナムコの工場前で。うっすらと富士山が見える

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これはもう少し先の県護国神社の近くで。新鋭A3000系と富士山

 昼前には静岡(東海道の宿場は府中宿)に着いたのでここで昼食にします。適当に入っためし屋では,白魚,桜えび,マグロの駿河丼なるどんぶりがあったので,迷わずビールと共にこれをいただきます。

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駿河丼

 静岡を出ると東海道線は海岸に沿って焼津に向かいますが,東海道のルートは丸子~岡部と内陸を通ってゆきます。この2宿は鉄道ルートと離れているので閑静で昔の街道の風情が残るところも多いです。

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まずは安倍川を渡る。新幹線なら東京駅からここまで1時間そこそこだ

 丸子~岡部~藤枝の区間は国道1号線もバイパス化され,東海道はほぼ県道208号線沿いのルートになります。

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新静岡~丸子~岡部~藤枝間には30分間隔で静鉄ジャストラインのバスが走る

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丸子宿京方見附で

 丸子宿~岡部宿の間にはちょっと大袈裟ですが南アルプスがせり出してきていて,標高170mの宇津ノ谷峠の峠越えになっています。峠には平成の現役の国道1号線,県道208号線の昭和のトンネル,遊歩道になっている明治のトンネル,トンネルによらない旧街道の4ルートがあります。東海道徒歩きとしてどのルートをとるか悩ましいですが,国指定有形文化財になっている明治のトンネルを通ることにします。

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宇津ノ谷峠の丸子方登り口。昭和のたたずまいが残る。小さい写真は明治のトンネル

 岡部宿に着くと夕方5時ですが,まだ陽もあるし,バスは30分間隔で走っているので,藤枝宿目指してもう少し歩くことにします。 

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岡部宿大旅籠柏屋前を行く静鉄バス

 藤枝宿の域内に入り「志太温泉入口」まで来たところで7時になったので,バスを使うことにします。停留所を19:02のバスがあるので,藤枝駅までバスに乗り,駅前のホテル(東横イン)に投宿します。

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藤枝駅前。駅の規模が小さいので駅,バス停,ホテルが本当に目の前

 翌5月1日は6:30からのホテルの朝食(無料が嬉しい!)を済ませ,6:53のバスで昨日乗った志太温泉入口まで向かいます。歩いても大したことはないのですが,時間節約と体力温存です。バスを降りた後は,昨日の続きのルートへ歩を進めます。

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旧街道沿いの交番跡。役目を終えた交番ですが,東海道を旅する方への看板があり,水とトイレを提供していて,嬉しい心遣い。道路も旧街道の面影が残ります

 今日のルートでは藤枝~島田はほぼ東海道線の線路に沿っていますが,それ以外はまた別ルートです。線路に沿ううちに鉄ちゃんをしないといけないので,朝から道草です。

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たまたまホームライナーを撮ることができました

 貨物列車期待で50分くらいを踏切で粘りましたが,今日はゴールデンウィーク中の月曜日,見事に空振りになってしまいました。

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代わりに撮った東海道線電車。藤枝~六合で

 この辺りでは国道1号線は格下げされて県道381号線になっていますが,旧東海道はそれより若干南寄りのルートになったり,381号線に吸収されたりしながら西進しています。

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島田付近で。381号線に吸収された区間から左に分かれるのが旧街道。小さくてわからないけど国道1号線時代の日本橋起点207.6kmのキロポストも残る

 島田は大井川をはさんで東の島田市と西の金谷町が合併して今の島田市になりましたが,それって一体化して意味あるの?という感じがします。ともかく,大井川は江戸時代は架橋が禁止されていたので,旅人相手の商売が盛んで栄えていたそうです。

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島田市のコミュニティバス。これはリエッセだが,フルサイズのエルガもあり,多くの路線がある

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島田側の河原近くには川会所を中心に江戸時代の建築物が残りヒストピア島田となっている

 今は旧東海道の川越えルートは通れないので国道の橋を迂回しますが,この橋も土木学会選奨の土木遺産で1km以上あります。約10分かけて橋を渡ると金谷宿です。

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大井川は暴れ川で川幅が広い。遠くに見えるのが東海道線だが16連の長い鉄橋

 金谷といえば大井川鐡道ですが,新金谷駅の踏切を通るとほぼ毎日運転のSL列車がちょうど駅に入っています。慌てて時刻を確認するとあと15分くらいで出発なので,ここでも道草です。大井川の客車は一部がきかんしゃトーマスに合わせて明るい茶色になっていますが,ブドウ色の客車と混色で使うのはいかがと思います。

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新金谷駅出口の踏切近くで

 ちょうどお昼になりましたが手ごろな供食施設が見当たらないので,昨日(朝)に続きイオンBigに入り,適当に惣菜を買ってフードコートで食します。ゆっくり食事をして店を出ると,道路は雨の痕で濡れています。東海地方では雹が降ったところもあったそうで,今日,濡れずに済んだのは幸いでした。時間は1時前,今回の最低限の行程は消化したのですが,この先,日坂(にっさか)~掛川まで歩くと時間が足りなそうだし,このまま帰るのでは勿体ないです。日坂~掛川駅間には1日8便のバスがあることが分かったので,16:00の便に間に合うよう,日坂まで行くことにしました。

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金谷~日坂は茶畑のなかを行く。途中一部には石畳の区間もある

 掛川の駅裏の坂道を登ると先ずは牧之原台地への上り,一旦少し下って今度は小夜の中山峠を越える峠道になります。東海道3大難所の一つだそうで,結構息が切れます。金谷坂,菊川坂の一部は石畳の区間が残っていて風情もあり,のどかな茶畑のなかを行く道は東海道のなかでも屈指の区間とも思います。なお,石畳は明治以前の石畳が残っている区間と,平成の道普請と称して観光のために造った区間があります。

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日坂宿かえでや。今は休憩スペースになっている

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掛川バスサービスのバス。富士重工の短尺車

 15:20過ぎに日坂宿着。次の掛川宿までは8.6km,勾配はおおむね緩い下りです。日が暮れるまでには着きそうだし,16:00か17:20にここを出るバスに拾われる作戦もあるのですが,昨日から通算で60kmくらい歩いたので,今回の行程は日坂宿までとします。コンビニはありませんがバス停の前が酒屋だったので,陽のあるうちからビールで乾杯です。掛川からは節約のため在来線で家路につきます。

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熱海からの1644Eは上野東京ライン最長の268.1kmを走る黒磯ゆき(自分独自の集計では日本4位の長距離鈍行)

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(参考)今回の行程

 さて次回はこの日坂から浜松あたりとなりそうですが,ここまで来ると自宅との往来に新幹線を使いたくなります。そうなると費用もかかるし,せっかくだから3日くらいまとめて歩きたくなります。次回は秋かまた来年のゴールデンウィークか,焦らずゆっくり続けたいと思います。(2017.5.2記)

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>>>東海道徒歩き(かちあるき)(1)日本橋~川崎宿
>>>東海道徒歩き(かちあるき)(2)川崎宿~藤沢宿
>>>東海道徒歩き(かちあるき)(3)藤沢宿~小田原宿
>>>東海道徒歩き(かちあるき)(4)小田原宿~三島宿
>>>東海道徒歩き(かちあるき)(5)三島宿~江尻宿

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