知って楽しいJRの旅客営業制度7--特定市内駅と駅に関わる規則

東京駅で。右肩の「山」と「区」が東京山手線内と東京都区内を表す 2018.1.17
JRの旅客営業制度の解説7回目は特定市内駅とその周辺を中心に駅に関わる制度についてみてみます。こうして整理してみると,意外といろいろなルールがあることに驚きです。
1.特定市内駅発着の乗車券(旅客営業規則(以下,規)86条)
特定市内駅のルールは,旅客営業規則で指定された全国11の特定の市については,各々の市の中心駅から201km以上の乗車券はその中心駅からの距離で計算するというものです。長距離のきっぷで目にする「東京都区内」発のきっぷなどがこれにあたります。例えば,東京都区内の場合,東海道線では蒲田,中央線では西荻窪までが東京都区内の駅です。昔は乗車券はあらかじめ印刷された常備券だったのでたくさんの種類を用意するのは事業者側の負担が大きかっただろうし,200kmを超える長距離では個々の駅ではなく,大雑把に大阪とか広島といえばその周辺の市内駅も含まれるのは利用者から見ても理にかなっています。

東京都区内の駅(JTB時刻表2017年10月から調製)
ちなみに,西荻窪(東京起点20.6km)が最寄り駅の人が中央線方面に行く場合は随分損をしたような感じがしますが,東海道線方面に行く場合は随分お得な計算になります。西荻窪は極端な例で,多少の損得があっても,長い目で見ればプラスマイナスゼロのようでもあります。上に書いたようなメリットもあるので,合理的なルールと考えます。
2.特定市内駅の定義
現在,東京市というのはないので東京は東京23区内の駅を東京都区内といっていますが,規86条ではその他に北から札幌,仙台,横浜,名古屋,京都,大阪,神戸,広島,北九州,福岡の10市が指定されています。概ね100万人都市ですが,現在11ある100万人都市とは微妙に異なります。川崎市は人口150万人の大都市ですが,市の中心部の川崎区と幸区の一部が横浜市内に組み込まれているだけで,特定市内には指定されていません。さいたま市も120万人都市ですが特定市内に指定されておらず,反対に北九州は人口95万程度ですが特定市内です。浦和,大宮,与野の3市が合併してさいたま市になったのは2001年(その後,岩槻市も編入)です。また,北九州は現在は人口が減少しているので,以前は100万人都市だったのでしょう。人口の増減の度に特定市内の指定を見直ししていたのでは,規則としての安定を欠くのでやむを得ないこととも思います。

日本の市の人口ランキング
3.特定市内駅の範囲
特定市内駅はあくまでもJRの規則上の設定なので,実際の市域とは異なるケースもあります。2.にも書いたように,横浜市内には川崎市の中心部が含まれます。実は南武線の矢向駅は横浜市内にあるため,厳密に市域どおりの設定とすると矢向駅の扱いに困ります。また,川崎市は多摩川に沿って細長い形をしているので,川崎駅を中心駅として特定市内としても,JRとしてはただで乗られる区間が増えるばかりでメリットがないのかもしれません。同様の例が神戸市の道場駅で,市の北のはずれをかすめて通る福知山線にある道場駅は神戸市内から除かれています。この他,大阪の新加美と福岡の姪浜~周船寺の各駅も,行政上は市内にありながら,特定市内駅からは除かれています。これらはいずれも市の中心駅から市域を出ずにJR線で行くことができない駅です。

川崎市の地図
また,広島には周囲を広島市に取り囲まれた府中町や海田町があり,その中にある向洋,海田市の2駅も特定市内駅のルール上は広島市内になっています。更に市町村の合併で市域が広がった市もあり,それらについては小まめに市内駅に取り込まれています。仙台市は昭和の末期に泉市,宮城町,秋保町を併合しましたが,その結果,山形県と接する仙山線の奥新川まで33.8kmが仙台市内になりました。

市内駅の範囲が広がった仙台市内(JTB時刻表2017年10月から調製)
3-1.200kmにちょっと足りないときは要注意(この項2018.6.15追記)
先日,静岡県の掛川に行ったときに珍しいケースに遭遇したので追記します。自宅最寄りの磯子~掛川は新幹線を使わずに大船経由で195.4kmですが,対キロの運賃表にあてはめた3,350円ではなく,3,670円がふつうに乗車券を買ったときの運賃です。これは,掛川~横浜間が200.5kmあり,横浜市内の中心駅から200kmを超えるため,市内発となってしまうからです。この場合,200km以下の120,140,160,180,200㎞のいずれかで切れば特定市内駅適用の弊害を防ぐことができます。今回は磯子~焼津159.8km2,590円,焼津~掛川35.6km670円で合計3,260円としました。みみっちい話ではありますが,それだけの距離を乗った訳でもないのに,妙に高額の運賃を払うのは避けたいです。

200kmぎりぎりの時は乗車券を分けると有利になるときがある
なお,事前にきっぷを買わずに精算する場合,このケースはJR東海エリアにかかっていたので別途方式での精算ができますが,JR東日本の東京近郊区間内の場合は原券控除方式での精算なので,結局支払額は3,670円になります。私見ですが,大都市近郊区間であっても原券が101km以上なら別途方式で精算するか,大都市近郊区間内の場合は特定市内駅を適用しない,というルールとしてもよいと思います。
更に200kmを超えるケースでも,場合によって不利なケースがあるので,追補を起こしました。こちらも参照ください。
4.東京山手線内(規87条)
特定市内駅と似たルールに東京山手線内があります。201km以上だと東京都区内発着になるので,東京山手線内は101km~200kmの乗車券が対象です。山手線内の範囲は簡単で,山手線電車の路線の内側です。ちなみに,高崎(東京起点105.0km),宇都宮(同109.5km)からの帰りですが,東京山手線内ゆきとすれば山手線内で最初に降りた駅で旅行終了,きっぷは回収ですが,大井町ゆきとすれば同じ値段で東京大循環のルールが使え,山手線内(反対まわりも可)の各駅で途中下車ができます(ただし,今は200km圏内のほとんどが東京近郊区間になってしまったので,新幹線経由の場合に限ります)。
5.大阪駅周辺のルール――新大阪(規88条)と北新地(規89条)
東京が101km超の区間に対して東京山手線内発着というルールを設けているのに対し,大阪には大阪駅と新大阪を同じにみなすというルールがあります。具体的には,新大阪から姫路以遠の200km以下の各駅への運賃は大阪起点で計算するというものです。多分,1964年に東海道新幹線,新大阪駅が開業した時,新大阪駅は大阪駅より3.8㎞東にあるので,姫路方面に西下するお客さんが割を食うのを救済するために設けられたルールだと思います。そもそも姫路駅自身が大阪駅から87.9kmで,新大阪起点とすると90kmを超え運賃帯が変わってしまう,こんな事情もあるようです。
そのような環境にありながら,1997年3月にはJR東西線が開業しました。北新地駅は大阪駅至近にありながら,線路が遠回りするため尼崎までの距離は東西線のほうが1.2km長くなっています。この差を吸収し,大阪でも北新地でも同じ運賃で構いませんというルールです。上(88条)は姫路以遠であるのに対し,こちら(89条)は方向は加島まわりで尼崎方面と規定されていますが,距離の制約はありません。尤も,201km以上では大阪市内発になるので,変わりありません。この規定はあってもなくてもあまり変わらないと思いますが,88条とのバランスを考慮したのだと思います。

規88,89条関係の路線図

大阪駅風景。最近改装されて,とてもきれいで賑やかになりました 2017.12.14
6.特定市内発着の乗車券での乗継ぎのための復乗(旅客営業取扱基準規程(以下,基)150条)
ところで,東京都区内の大森や蒲田から東海道新幹線を利用するとき,新横浜に出るのは面倒なので,品川や始発の東京駅に出ることはふつうに考えられることです。しかし,規定を厳密に解釈するとこれらの駅から品川や東京までの乗車は往復乗車(復乗)となってしまい,別途の運賃が必要になります。別途の運賃を収受してもお客さんのメリットでないしチェックも難しいため,新幹線などで長距離を旅行するお客さんなので大目に見ようというルールがあります。この規定は「旅客営業規則」の規定ではないため開示されていませんが,たまたまインターネットで勉強し,近所の駅に行って確認させてもらったものです。
「特定都区市内発着又は東京山手線内発着となる普通乗車券を所持する旅客が列車に乗り継ぐため,同区間内の一部が復乗となる場合は,別に旅客運賃を収受しないで,当該区間について乗車の取扱いをすることができる(基150条)」
旅客営業規則の規定と違い,かなりアバウトな規定ですが,どう転んでも市内駅の範囲からは出ないので,至当な内容だとは思います。しかしながら,自分の手許にある1993年版の規定集では150条は「削除」となっており,この150条は1993年以降に設けられたようです。いつ新設の条文なのか分からないのですが,グレーなものを白と明確化する方向であり,歓迎です。

浜松町で。新幹線に乗るための復乗はふつうにある 2018.1.17
7.特定市内駅で途中下車した場合の扱い(規166条)
特定市内駅発着のきっぷには「券面表示の都区市内各駅下車前途無効」と書かれて,発着地の市内では途中下車ができないルールです。しかし,何かの事情でどうしても下車しなければならないこともあり,とくに発地の場合は何百㎞あるか分からない長距離のきっぷで前途無効は困ります。実際に北海道旅行に行こうと都区内発のきっぷで入場した後で,上野駅に着いたらアメ横で雪靴を買おうと思いたったことがありました。このような場合に,乗車駅から下車駅までの運賃を支払えば,その長距離のきっぷは使わなかったことにする取扱いです。この場合は,きっぷに入れられた鋏(今は日付スタンプ)をなかったことにするという意味で「誤入鋏」という印を押します。なお,この場合で入鋏は取消されても,払戻し等の手続きも含めきっぷ自体は使用開始後とみなすルールです。

「誤入鋏」印の例。自動改札に通した後で,旅行をやめたケース(京急)
8.臨時乗降場発着の運賃(規71条)
JRの規則では駅と駅の中間に臨時に乗降設備を作った時のルールも作ってあります。このような所を臨時駅とか臨時乗降場といいますが,早春の観梅のシーズンだけ営業する水戸の近くの偕楽園などが有名です。手許のJTB時刻表2017年10月号の索引地図を紐解くと下の各駅が臨時駅として掲載されていました。
原生花園 (JR北海道 釧網本線)
ラベンダー畑 (JR北海道 富良野線)
猪苗代湖畔 (JR東日本 磐越西線)
ヤナバスキー場前(JR東日本 大糸線)
偕楽園 (JR東日本 常磐線)
池の浦シーサイド(JR東海 参宮線)
バルーンさが (JR九州 長崎本線)

ヤナバスキー場前駅 2008.2.9
これらの臨時駅には営業キロが設定されておらず,運賃計算をするときはその外側の駅を基準に計算することになっています。外側とは,例えば赤塚~水戸間にある偕楽園駅の場合,東京方面から偕楽園までの運賃は偕楽園の先の水戸まで,偕楽園から水戸方面への運賃は偕楽園の手前の赤塚からの運賃になります。

1925年開設のしにせ,偕楽園(臨)駅。最近リニューアルされたようです 2018.3.25(3.26,写真追加)
民営化前の北海道には各地の鉄道管理局が設置した臨時乗降場がたくさんありましたが,これらの乗降場の多くは分割民営化の前後に正規の駅に昇格し営業キロが設定されました。しかし,過疎化による利用者の減少とJR北海道のコスト削減策のため,最近は駅が廃止されたり,運転上の設備は活かしたまま客扱いを止め信号場になったところもあります。また,北海道以外でも仙山線の面白山高原や五能線の千畳敷など分割民営化前からの臨時駅は駅に昇格などで整理され,現在の臨時駅はJR化以降設置のものが多いです。最初に出した偕楽園は国鉄~JR一貫して臨時駅ですが,ホームが下り線にしかないので,駅に昇格させることができない事情があるのでしょう。

天塩川温泉駅 2017.8.3
9.最近のJR東日本の新設駅(根拠規定なし)(これは誤り)
6.でJRの制度ご担当を褒めたばかりですが,今度は困ったルールをひとつ。2016年3月26日のダイヤ改正で南武線浜川崎支線に小田栄という駅が開業しました。この駅発着の運賃はお隣の川崎新町の運賃を適用するというものです。根拠となる規定はなく,適用期間も当面の間ということです。この特例は運賃を片側に寄せるので川崎新町と反対の浜川崎側では一部の駅で割高になる弊害が出ます。当ブログとしては繰返しになるので詳述は割愛しますが,興味のあるかたは開業初日に訪問したときの記事(こちらの一番最後のほうです)をご覧ください。

開業初日の小田栄駅 2016.3.26
困ったルールだと思っていたところ,今度はこの4月1日に両毛線に開業するあしかがフラワーパーク駅も同様の扱いとなるようです。あしかがフラワーパークの場合は0.9kmしか離れていない隣の富田駅の運賃を適用,期間は当面も同じです。小田栄の場合は,割高になる浜川崎側の線路網が殆どないし,200kmを超えたら横浜市内発着なので実害はしれています。しかし,あしかがフラワーパークのほうは深刻で,影響は大袈裟にいえば全国に及び,この0.9kmの間に運賃の境がおちると正規運賃と差が出てしまいます。下に両毛線(一部,上越線含む)各駅からあしかがフラワーパークへの営業キロをまとめてみました。偶然ではありますが,小山方の利用者にとって得になる駅は1駅もなく,損になるサイドでは高崎,前橋という需要の大きそうな駅が両方とも該当になりました。

小田栄駅は「戦略的新駅」という触込みで,従来の100%地元負担の請願駅と違い,JRと地元が折半の負担だそうです。その「戦略的新駅」との関係で地元の顔でも立てたのかと穿ってみていました。しかし,あしかがフラワーパークの場合は「戦略的新駅」というフレーズはお目にかかりません。上の表を作っていて感じたのですが,新駅が開業すると当該駅までの運賃(営業キロ)を確認し,各駅からの運賃一覧表を更新する作業が発生します。ところが,この特例を設けておけば,隣と同じと一言で済みます。この作業を全国規模で行わなければならず,その実務が大変なので,その作業を先延ばししたのではないでしょうか。いつか時間のあるとき,JRにこの特例の設定の理由を問合わせてみたいものです。
(2018.3.26追記)
小田栄とあしかがフラワーパークに関して根拠規定なしとしていますが,これは間違いで,規71条(1)に以下のただし書きが追加されていました。「ただし、別に定める場合は、その乗降場の内方にある駅発又は着の営業キロによる」。いつ追加されたのかは分かりませんが,小田栄を念頭においたルールです。また,具体的なケースについては,「別に定める場合は」となっていて,インターネットなどの情報では基110条の2も新設されたそうですが,確かめる術がありません。また,JR東日本高崎支社のあしかがフラワーパーク新設のプレス(2017.12.7付)では戦略的新駅という言葉を使っていませんが,地元の下野新聞の記事によればこの駅も戦略的新駅だそうです。いずれにしても,付け焼刃的な条文新設で逃げるのではなく,早々に本則どおりになるのを期待します。
(2020.3.1追記)
2020年3月のダイヤ改正に合わせ,小田栄駅とあしかがフラワーパーク(以降,あしかがFP)駅に関する特別な取扱いが終了し,当駅から/への営業キロによる通常の取扱いになることがリリースされました(小田栄:1/28横浜支社,あしかがFP:1/31高崎支社)。横浜支社の小田栄については「本設」(今までは仮?)という言葉を使っているのに対し,あしかがFPはこの言葉は使っていなくて,支社による微妙な違いも面白いです。どうせなら,先般の運賃改定のときにやった方が手数がかからなかったと思いますが,喜ばしいことです。どちらのリリースにも差額が発生する区間の一例という表が付され,今後値上げになる分の案内だけでなく,とり過ぎていた分の白状もあるのは透明でよいと思います。自分も気づきませんでしたが鶴見から小田栄までの営業キロは3月13日までの特例と3月14日以降の本則で最短ルートが異なり,その差は0.1kmです。また,小田栄は横浜市内駅の扱いなので営業キロ200km超ではこの差は意味を持ちません。この0.1kmがインパクトのある駅は極めて少ないと思われますが,たまたま熱海が該当で90.1kmが90.0kmになり,170円も安くなるそうです。制度の改訂で高くなる駅に対しては,戦略的新駅の開業サービスで安くしていたのを本則どおりに戻しますで済みますが,今までとり過ぎていた分については説明が難しいです。いずれにせよこの悪しきルールが解消されるのを喜ぶと共に,JRもこれに懲りて以降,このようなしょうもない制度を作らぬことを期します。また,規71条「営業キロを定めていない区間の旅客運賃・料金の計算方」にもこの取扱いの根拠となる「言い訳」のただし書きが付されましたが,これが削除されることを期します。

(2020.5.24追記)
気になるので規71条(1)ただし書きの今後についてJR東日本に聞いてみましたが,この条文を削除する考えはないそうです。(1)本文で,外方と決めておきながら,ただし書きで「別に定める場合はその内方による」では,何でもありでルールになっていないと思うのですが。昔ならJRの担当は縁遠い存在でしたが,今はネットで問合せができるので,便利かつオープンな世の中になったものです。
(追記おわり)
10.無人駅ときっぷの丸ムマーク
駅に関するルールをおさらいしたついでにきっぷに書いてある丸にムの印について触れておきます。これは駅員無配置の駅で買ったきっぷであることの表示です。とくに旅客営業規則や旅客営業取扱基準規程に規定されている訳でもなく,必須のものでもないようですが,以前このムって何だろう?と思ったので書いておきます。なお,駅員無配置駅には無人駅のほか簡易委託駅――JRの社員の配置はなく,駅業務の委託先の人がきっぷの販売などを行う駅――も含まれます。丸ムマークがあってもきっぷの効力に特段の違いはありませんが,以下の2点から駅員無配置駅発を明示しているのでしょう。
・発売される券種が限られることから,着駅や車内で精算になることが多いですが,乗客としては目的地までのきっぷを買う術がなかったことを示す。
・規定の解釈や取り扱いについて疑義を生じたときは,発駅の社員>着駅の社員>乗務員(車掌やワンマン列車の運転士)の順に優先されます(基4条,この規定については後日,詳述しようと思います)が,最も優越的な発駅の社員は該当なしであることを示す。

丸ムマークのついた乗車券。硬券の常備券,やわらかいペラ券,いろいろある
11.これからの特定市内駅
市内駅の制度は発券業務の効率化への寄与が一番大きかったと思いますが,印刷発行機が主流になった今ではそのメリットはあまり感じられません。しかし,JR側も乗客側もある程度の範囲の駅をひとまとめに扱うことには一定のメリットがあります。例えば,一つの街の5km圏内に住む友人同士が長距離の旅行をするとき,それぞれの最寄り駅発着のきっぷをいちいち用意するのでは利用者も駅係員も煩わしいです。このためこのルールはしばらくは変わらないと思います。
ただ,さいたま市のような例はあまりよいことではなく,行政の区割りの変更があったときは速やかに追随するのがよいと思います。時間が経ってしまうと設定によって不利益となる駅の利用者のクレームが多くなって調整に骨が折れそうです。尤も,さいたまの場合は,市の代表駅の浦和が市域の出口の近くにあるのでJRにとってデメリットが多い,市域から出る順路が東北本線と埼京線の2ルートあるなど,特定市内駅にしづらいことも窺えます。最後に9.に書いた小田栄,あしかがフラワーパークの当面のルールの早期撤廃を望みます。(2018.2.17記)
知って楽しいJRの旅客営業制度バックナンバー
1.大都市近郊区間と140円旅行
2.きっぷの有効期間と途中下車
3.乗車券の経路と種類
4.運賃計算の基本と割引き,加算
5.区間外乗車のいろいろ・その1
6.区間外乗車のいろいろ・その2
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旅心をそそる長距離鈍行列車・長時間鈍行列車リスト/2018年3月17日改正ダイヤ
今年(2018年)も3月17日にJRグループのダイヤ改正が実施されます。今年は新線の開業もなく,昨年にもまして地味なダイヤ改正です。長距離鈍行列車の1,2位を長年争ってきた北海道の根室本線の2427Dが台風被害の影響で運転区間を短縮,距離は130kmながらも時間のほうでランクインしていた三江線は線区自体が3月31日限りで廃止と寂しいニュースがありました。一部の線区では掲載基準の4時間30分をクリアしませんが,何本か新しい列車が設定されました。明るいニュースなので,今年はそれらの列車も※を付けて載せました。それでは,2018年版の長距離鈍行列車・長時間鈍行列車リストをお届けします。また,今年は関連の旅行記のリンクもつけたので,興味のあるかたはご参照ください。

拡大はこちら
昨年の1位だったJR北海道の名物列車の根室本線2427Dは,ダイヤ上は不通区間も含む滝川~釧路間で設定されて「幻の最長鈍行」でしたが,今年は不通区間より西の部分がちょん切られて走行距離172.1㎞に短縮されました。幸い上下とも時間のほうでランクインしていますが,今年の順位は16位です。なお,今年も2427Dは残っていますが,2529Dのほうが所要時間が長いので表はそちらで書いてあります。運転区間が同じなのに百番台が異なるのはなぜでしょうか,興味は尽きません。

根室本線の長距離鈍行と専用サボ(いずれも2429D時代のもの)@落合 2015.5.3
1位になった369Mのほうも元々は岡山~下関384.7㎞の運転だったものが,去年から糸崎からに短縮されたものなので,どうも残念な列車です。広島地区の227系の増備いかんでは広島や岩国で分断される可能性があり,今後も目が離せません。こうしてみると山陽本線は長距離鈍行のメッカで早朝と深夜に似たような列車が設定されています。これらは運転区間が微妙に異なるので,まとめるのに苦労します。

広島地区で増備の続く227系電車(写真:ジュニア)
そして2,3,6,7位と上位は首都圏と関西の近郊電車が顔を並べます。これらの電車は日ごろ目にしているので,旅心という面ではちょっとです。JR東日本では普通列車用グリーン券が51㎞以上青天井なので,もし乗るならグリーン車がお薦めです。これらの列車は本数が多く運転区間や経路が複雑なので,表をまとめるのはたいへん苦労します。

上野東京ライン1586E。熱海~黒磯間268.1kmで今年は3位 @東京 2017.7.31
今年は北海道の宗谷本線を全通する鈍行が1つ順位を上げて4位になりました。この列車は途中で2回も列車番号が変わりますが,サボの表示も「稚内~旭川」で,実態としては一つの列車です。2014年までは石北本線や函館本線にも妙に長時間停車する長距離というか長時間鈍行がありました。それらの運転区間が短縮されてしまった今では,この列車が道内で唯一の200㎞超えの長距離鈍行です。乗りにくさでもピカ一なので,今後はJR北海道の看板列車,乗り鉄のあこがれの列車になるかもしれません。

宗谷本線の4323D~4325Dとサボ @幌延 2017.8.3
昨年1位だった2427Dは時間でも1位でしたが,今年は時間の1位は飯田線の544Mになりました。飯田線は200㎞に満たないですが駿遠三にまたがる秘境地域をのんびり日がな1日かけて走るのは,鈍行列車の醍醐味の味わえる列車です。

距離では9位だが時間では1位になった飯田線544M(旅行記は519M) @伊那市(?) 2010.8.15
5位は東京からも程近い中央東線で,去年設定された高尾~長野間の441Mです。この列車は走る時間帯も景色もよいので,ぜひ乗ってみたい列車の一つです。長野の211系のうち高尾口に運用される列車はロングシートの車両が多いので,そこだけが難点です。

中央線441M。東京からの鈍行列車を楽しむにはお薦めの1本 @高尾 2018.3.10
17位の三江線ですが,去年に予告したとおり,3月31日で線区自体が廃止です。廃止を前に乗り納めのお客さん救済のためか,2017年ダイヤでは切れていた中間部分に日中の列車が増発され実質4往復になりました。また,その増発列車は山陰本線益田始発となり,距離も40㎞強伸びました。

三江線の普通列車。残念ながらこれは線内でクローズする429D @江津 2017.8.31
冒頭にも書きましたが,今回の改正ではいくつかの線で4時間超の長距離列車がいくつか設定されました。五能線では去年までは東能代~弘前を全通する列車は「リゾートしらかみ」を除くと片道1本でしたが,下りにもう1本と上りには快速が増えました。また,日豊本線でも延岡~鹿児島中央間を走る列車は上りのみの片道1本でしたが,上りにもう1本と下りが設定されました。日豊本線のこれらの列車は殆どが夜間なので,景色を見ることができないのが残念です。
長距離・長時間鈍行とは少し変わりますが,日豊本線のこの少し北の県境に跨る重岡~延岡間は1日に下り1本,上り2本しか普通列車の設定がなくなりました。その昔の石北本線白滝シリーズのような鈍行で行きづらい区間が九州にできたのは驚きです。


五能線と日豊本線は写真がないので恐ろしく古い写真ですが悪しからず
五能線の混合列車 場所不詳 1978.7 と日南くずれの鈍行列車 @門石(信) 1980.9.16
最後にリストの掲載基準ですが,これまでと同じで,距離で200km以上,時間で4時間30分以上,掲載順は距離順です。対象は定期列車だけですが,土休日運休の列車は対象,土休日のみ運転の列車は対象外です。今年は五能線や日豊本線で基準に満たない惜しい列車が増えたので,ペアになる列車が条件を満たせば,運転時間4時間30分未満でも載せています。僕が時刻表を手繰って確認しただけなのでヌケやモレがあってもご容赦ください。また,写真が毎年同じで申し訳ありません。
追:根室本線の2427Dについて
僕は時刻表はJTB党ですが,今年のリストはJR版を使って編集しました。昨年の1位から16位になった根室本線の2427Dですが,JR版では東鹿越以西は9627Dと別の列車扱いですが,JTB版では未だに2427Dで掲載されています。一体どうなっているのでしょう。なお,滝川から9627Dに乗った場合,富良野から一部の駅を通過する直行便の代行バスに乗ると新得で2427Dに接続します。9627Dに東鹿越まで乗って接続する各駅停車便の代行バスは新得からの2427Dには接続しないので要注意です。(2018.3.3記)
JTBの時刻表ですが,4月号はJRと同じように代行バス時刻が掲載されています。どうして1か月遅れになってしまったのか理由は分かりませんが,時刻表は正しいダイヤが命ですので奮起を期待します。(2018.3.22追記)(2018.4.8 441Mの写真差替え)
最新版はこちらから参照ください。
また,最新版の一番後ろに各年版へのリンクがあります。

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昨年の1位だったJR北海道の名物列車の根室本線2427Dは,ダイヤ上は不通区間も含む滝川~釧路間で設定されて「幻の最長鈍行」でしたが,今年は不通区間より西の部分がちょん切られて走行距離172.1㎞に短縮されました。幸い上下とも時間のほうでランクインしていますが,今年の順位は16位です。なお,今年も2427Dは残っていますが,2529Dのほうが所要時間が長いので表はそちらで書いてあります。運転区間が同じなのに百番台が異なるのはなぜでしょうか,興味は尽きません。

根室本線の長距離鈍行と専用サボ(いずれも2429D時代のもの)@落合 2015.5.3
1位になった369Mのほうも元々は岡山~下関384.7㎞の運転だったものが,去年から糸崎からに短縮されたものなので,どうも残念な列車です。広島地区の227系の増備いかんでは広島や岩国で分断される可能性があり,今後も目が離せません。こうしてみると山陽本線は長距離鈍行のメッカで早朝と深夜に似たような列車が設定されています。これらは運転区間が微妙に異なるので,まとめるのに苦労します。

広島地区で増備の続く227系電車(写真:ジュニア)
そして2,3,6,7位と上位は首都圏と関西の近郊電車が顔を並べます。これらの電車は日ごろ目にしているので,旅心という面ではちょっとです。JR東日本では普通列車用グリーン券が51㎞以上青天井なので,もし乗るならグリーン車がお薦めです。これらの列車は本数が多く運転区間や経路が複雑なので,表をまとめるのはたいへん苦労します。

上野東京ライン1586E。熱海~黒磯間268.1kmで今年は3位 @東京 2017.7.31
今年は北海道の宗谷本線を全通する鈍行が1つ順位を上げて4位になりました。この列車は途中で2回も列車番号が変わりますが,サボの表示も「稚内~旭川」で,実態としては一つの列車です。2014年までは石北本線や函館本線にも妙に長時間停車する長距離というか長時間鈍行がありました。それらの運転区間が短縮されてしまった今では,この列車が道内で唯一の200㎞超えの長距離鈍行です。乗りにくさでもピカ一なので,今後はJR北海道の看板列車,乗り鉄のあこがれの列車になるかもしれません。

宗谷本線の4323D~4325Dとサボ @幌延 2017.8.3
昨年1位だった2427Dは時間でも1位でしたが,今年は時間の1位は飯田線の544Mになりました。飯田線は200㎞に満たないですが駿遠三にまたがる秘境地域をのんびり日がな1日かけて走るのは,鈍行列車の醍醐味の味わえる列車です。

距離では9位だが時間では1位になった飯田線544M(旅行記は519M) @伊那市(?) 2010.8.15
5位は東京からも程近い中央東線で,去年設定された高尾~長野間の441Mです。この列車は走る時間帯も景色もよいので,ぜひ乗ってみたい列車の一つです。長野の211系のうち高尾口に運用される列車はロングシートの車両が多いので,そこだけが難点です。

中央線441M。東京からの鈍行列車を楽しむにはお薦めの1本 @高尾 2018.3.10
17位の三江線ですが,去年に予告したとおり,3月31日で線区自体が廃止です。廃止を前に乗り納めのお客さん救済のためか,2017年ダイヤでは切れていた中間部分に日中の列車が増発され実質4往復になりました。また,その増発列車は山陰本線益田始発となり,距離も40㎞強伸びました。

三江線の普通列車。残念ながらこれは線内でクローズする429D @江津 2017.8.31
冒頭にも書きましたが,今回の改正ではいくつかの線で4時間超の長距離列車がいくつか設定されました。五能線では去年までは東能代~弘前を全通する列車は「リゾートしらかみ」を除くと片道1本でしたが,下りにもう1本と上りには快速が増えました。また,日豊本線でも延岡~鹿児島中央間を走る列車は上りのみの片道1本でしたが,上りにもう1本と下りが設定されました。日豊本線のこれらの列車は殆どが夜間なので,景色を見ることができないのが残念です。
長距離・長時間鈍行とは少し変わりますが,日豊本線のこの少し北の県境に跨る重岡~延岡間は1日に下り1本,上り2本しか普通列車の設定がなくなりました。その昔の石北本線白滝シリーズのような鈍行で行きづらい区間が九州にできたのは驚きです。


五能線と日豊本線は写真がないので恐ろしく古い写真ですが悪しからず
五能線の混合列車 場所不詳 1978.7 と日南くずれの鈍行列車 @門石(信) 1980.9.16
最後にリストの掲載基準ですが,これまでと同じで,距離で200km以上,時間で4時間30分以上,掲載順は距離順です。対象は定期列車だけですが,土休日運休の列車は対象,土休日のみ運転の列車は対象外です。今年は五能線や日豊本線で基準に満たない惜しい列車が増えたので,ペアになる列車が条件を満たせば,運転時間4時間30分未満でも載せています。僕が時刻表を手繰って確認しただけなのでヌケやモレがあってもご容赦ください。また,写真が毎年同じで申し訳ありません。
追:根室本線の2427Dについて
僕は時刻表はJTB党ですが,今年のリストはJR版を使って編集しました。昨年の1位から16位になった根室本線の2427Dですが,JR版では東鹿越以西は9627Dと別の列車扱いですが,JTB版では未だに2427Dで掲載されています。一体どうなっているのでしょう。なお,滝川から9627Dに乗った場合,富良野から一部の駅を通過する直行便の代行バスに乗ると新得で2427Dに接続します。9627Dに東鹿越まで乗って接続する各駅停車便の代行バスは新得からの2427Dには接続しないので要注意です。(2018.3.3記)
JTBの時刻表ですが,4月号はJRと同じように代行バス時刻が掲載されています。どうして1か月遅れになってしまったのか理由は分かりませんが,時刻表は正しいダイヤが命ですので奮起を期待します。(2018.3.22追記)(2018.4.8 441Mの写真差替え)
最新版はこちらから参照ください。
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