2018年夏のアクティビティ4--家族で北近畿・城崎温泉へ

ご多聞にもれず我が家も子供の夏休みには家族で旅行に行きます。今年(2018年)はなぜか関西では有名な温泉地の城崎温泉に行くことになりました。お風呂でも読めるタオルカバー付の万城目学作「城崎裁判」が話題になったのと,海外からの観光客も含め最近人気ということです。東京人のわが家族にとって北近畿地方は縁がなく,泊りは城崎温泉と決めても,その他のアクテビティは何をしたらよいのか分かりません。ゆきあたりばったりの旅行ですが,日ごろは綿密な分単位の乗継ぎの旅行が多いので,たまにはこういう旅行もよいものです。

はしだて3号 @福知山 2018.8.2
8月2日(木)新横浜8:09の「のぞみ13号」を予約したので,出発はそれに合わせて自宅最寄りの磯子7:21の根岸線です。京都では,17分の接続の間にお弁当を買込み,10:25の「はしだて3号」に乗換えです。京都駅は新幹線改札の中に大きな弁当売り場があるほか,在来線エリアの新幹線乗換え口近くにも大きな駅弁売り場があります。今日は後者の存在を知らなかったので,新幹線改札内で立派なお弁当になりました。

胡麻~下山の車窓 2018.8.3
「はしだて3号」は真夏の陽射しの中を快適に走り,10:54発の園部から11:31着の綾部まで37分の無停車で特急らしいダイヤです。この間の胡麻~下山間に胡麻川と由良川の分水界がありますが,いまいちハッキリしない峠だと思っていると,谷中分水界といって珍しい地形だそうです。これはネットで調べたこと,車窓は京都とはいっても日本のふつうの里山の田んぼの景色が続きます。園部では4分止まって付属編成の「まいづる3号」を開放し,続く福知山でも9分止まって「こうのとり5号」と離合します。特急のくせにとんでもない長時間停車ですが,京都から来た「まいづる3号」と新大阪から来た「こうのとり5号」が同じホームに停車し,天橋立ゆきと城崎温泉ゆきのお客さんが相互に乗換えできます。特急券は乗換えがあっても通算され,制度面も含めてよく工夫されています。「まいづる」は「こうのとり」とは別の線路を走るのに,同時発車はできずに7分も後に発車します。信号設備の関係か,他の列車とのダイヤ上のとり合いで仕方ないのか分かりませんが,もう少し短縮が望まれます。

京都丹後鉄道の気動車 @宮津 2018.8.2(以降,特記あるまで同じ)
福知山からは京都丹後鉄道に入り,約30分で宮津です。福知山~宮津間は宮守線(のちに宮福線)という名で鉄道建設公団によって建設された路線です。1988年の開業直後に1度乗ったことがありますが,久々の訪問です。線路設備は格段に新しいですが,車窓自体は日本の里山風景で山陰本線とあまり変わりません。また,京都丹後鉄道は第3セクター鉄道で最大の赤字会社だった北近畿タンゴ鉄道を上下分離方式で再生し,高速バスのウィラーエクスプレスで知られるウィラーアライアンスグループが経営する異色の鉄道でもあります。いろいろ研究してみたいのですが,今日は家族旅行なので,写真もそこそこに駅レンタカーに急ぎます。

天橋立の入口。手前は海水浴場になっている
宮津でレンタカーを借り,鉄道で1駅先の天橋立駅近くの知恩寺の駐車場に駐車します。知恩寺にお参りし,今度はレンタサイクルを借りて,天橋立のなかを走ります。天橋立といっても,橋立の中はただの松林越しに海が見えるだけです。途中休み休み約30分で対岸の府中に着き,丹後の国一の宮の籠(こも)神社,眞名井神社に参ります。更に,笠松ケーブルで笠松公園に登ります。笠松公園からの眺めはまさに天橋立なのですが,どうしてこんな地形になったのか本当に不思議です。この他に駅や知恩寺のある側の天橋立ビューランドにも登るのが橋立観光の王道のようですが,今夜は早めに温泉に着きたいので割愛です。

笠松公園からの天橋立の眺め。股覗きをして反対向きに眺めるらしい
本当はレンタカーで丹後半島や伊根の舟屋などに行こうと思っていたのですが,どうもわが家の家族はドライブ観光が嫌いのようです。レンタカーは宮津から豊岡までの移動だけです。知恩寺を出たところで豊岡駅をナビにセットしたところ,府道651号線大内峠を指示されます。対向車との行違いにも難儀するような峠道を走らされ,心の内でナビ子のバカ!と叫びます。記事を書きながら復習したところ,野田川大宮道路・与謝天橋立~京丹後大宮間の開通は2016年10月末だったのでナビの地図に収録されていなかったのでしょう。野田川大宮道路は緩いカーブを描きながらトンネルで一直線で,短縮メリットも大きいことから山陰近畿自動車道の一部を先行開業したようです。

大内峠周辺の地図。不鮮明ですみません
大内峠以外は快適なドライブで,17:10過ぎ豊岡着です。クルマを返して駅に着くと,次の下り列車は17:30の城崎温泉(以降,城崎)ゆきで程よい待ち時間です。広い構内には除雪車がたたずみ,発車待ちのローカル列車は113系,懐かしい鉄道風景を楽しみます。ただ,この地域のローカル電車は濃い緑の一色塗装,湘南色の黄柑色がなくなったともいえそうですが,どうもぞっとしません。

豊岡駅構内。DE15,キヤ143が憩う

山陰本線439M。オリジナルのボックス座席,短編成化改造の先頭車の113系(電車の写真:ジュニア)
豊岡から城崎は間に玄武洞を挟み,2駅11分の行程,円山川の景色が続きます。17:41,時刻表どおり城崎着,今夜の泊りは西村屋なる老舗旅館です。ここはミシュランガイドの4つ星プラス,JR西日本の「瑞風」のツアーでも利用する旅館です。わが家の旅行で使う宿としては破格ですが,今年は旅行期間が短いこと,下手にケチって後悔するよりは最高の選択をとの考えです。今日は木曜日なので,宿直販のWeb限定,平日限定のプランですが,中居さんたちの上質な対応,料理もお湯もおいしく最上の滞在でした。

城崎温泉外湯めぐりスタンプ帳

土産はお風呂でも読めるタオルカバー付の万城目学作「城崎裁判」
城崎温泉は地域が一体となって町興しをしていて,景観維持にも取組み,外湯めぐりや花火大会などのイベントも盛んです。有名な温泉地というと団体旅行頼みの大規模ホテルが建ち並び,今は寂れたイメージを想起しますが,ここはそんなことはありません。ゆっくりご馳走の後は,15分と短いながらも花火を見て,いくつか外湯(そとゆ)にも浸かって温泉地滞在を楽しみます。スタンプ帳を見るとモクモクと完押意欲が湧いてくるのですが,外湯は1軒行くと20分はかかるので,翌朝の分も含め4つどまりでした。

城崎駅前の街並み。木質材料の茶色が多く落着いている 2018.8.3(以降全て同じ)
翌8月3日(金)は,昨日行けなかった御所の湯で一風呂浴びたり,旅館のなかの展示室で明治の文豪を偲んだりでゆっくりします。せっかく丹後地方に行ったのだからこの界隈を観光したかったのですが,家族いわく見る所がないので午後は京都で過ごすことにします。昼前11:33の「こうのとり14号」新大阪ゆきで城崎を後にし,福知山では城崎まで来ない?「きのさき14号」に乗換えます。

こうのとり14号。特急はやはり非貫通のほうがよい @城崎
14:07京都着。さて,京都で何をするかですが,夏なので涼を求めて鞍馬,貴船に行くことになりました。京都中心部のホテルに一旦チェックイン後,出町柳に赴き,16:20の叡電で出発です。来た電車はちょうど900系「きらら」です。この電車は1997年製の20年選手ですが,肩の窓が明るい観光向けの車両です。今日は夏の陽射しが強く暑いくらいでしたが,クロスシートでもありよい電車です。28分の乗車で貴船口着,ここから貴船神社まではバスに乗換えです。夏の期間,神社では七夕飾りのライトアップがあり,バスも臨時便が運行されます。

叡電900系「きらら」 @貴船口

貴船神社の七夕飾り
お目当ての貴船神社を詣で,17:36のバスで帰途につきます。貴船口の駅で時間があったので下り電車の写真を撮ろうとすると下の光景に出会いました。貴船は京都でも山深い地域ですが,鹿にお目にかかるとは思いませんでした。土地柄から餌付けでもしているのでしょうか。

電車の写真を撮ろうと構えていたら鹿が。急な出来事に本番は失敗作です @貴船口
北近畿と京都・貴船観光とあまり脈絡はありませんが,とりあえず満足して旅行2日目も終わりです。ちなみに今夜の宿は京都中心部のスーパーホテルで3人で1万円,昨晩との落差が大きいです。同一フロア確約,家族連れ向け2部屋プランですが,この値段なら諦めもつきます。翌日は奥は昼から東京に所用があり,ジュニアは京都で行きたいところがあり,僕はちょっと近江鉄道に行ってみたくなり,ホテルをチェックアウトしたところで解散です。高校生にもなると親と旅行になど行かなくなるのかもしれませんが,今年は家族3人で短かくも楽しい京都stay(厳密には城崎は兵庫県ですが)を楽しみました。

レール&レンタカーきっぷのチラシ
ところで今回の旅行ですが,使ったきっぷは「レール&レンタカーきっぷ」です。この商品はJRグループ各社で使えて,細かい条件は省略しますが,駅レンタカーを使うことにより同行者全員の列車の運賃が2割引き,料金が1割引きになるものです。6,150円のレンタカーを付けることにより,家族全員がこのメリットを受けられるので,ふつうにJRのきっぷを手配するより安いのです。ただし,「レール&レンタカーきっぷ」では新幹線の「のぞみ」は割引きにならないので,新幹線特急券はEX-IC予約のe特急券を使いました。JR東海は「レール&レンタカー」や「フルムーングリーンパス」などのJRグループ共通商品で「のぞみ」利用を認めませんが,大いに異議ありです。運転を始めた当初は「のぞみ」は特別な列車だったと思いますが,現在の10-2-2ダイヤでは「ひかり」を探して乗るほうがよほど難しく,利用者を馬鹿にした時代錯誤も甚だしいです(参考はこちら)。e特急券を使うと今度は「はしだて」や「きのさき」の乗継ぎ割引が使えない,「レール&レンタカーきっぷ」で行程どおりとすると乗車券が往復割引にならないと,あっちをたてればこっちがたたずで悩ましいです。

レール&レンタカーきっぷ。この他往路の京都~宮津(福知山)の自由席特急券も割引きを受けた
このほか城崎の旅館は有名旅館なのでどの旅行会社もJR+旅館のパッケージの取扱いがあり,京都市内ゆきのパッケージにはみだし分を付けることも考えられます。検討した限りでは,足は「レール&レンタカーきっぷ」,宿はWebで予約が最も経済的だったようです。僕にとっては,このきっぷや宿の検討や手配から旅行は始まっており,ここも結構楽しいのです。(2018.9.16記)
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知って楽しいJRの旅客営業制度8--新幹線と周辺の乗車券の規則

新幹線は日本の誇る鉄道技術の賜物ですが,新幹線に関連していくつかの乗車券のルールがあります。JRの旅客営業制度の考察8回目はこれらについて見てみます。
1.幹在同一原則(旅客営業規則(以下,規)16条の2)
いきなり難しいタイトルから始まりますが,これは旅客営業制度上は新幹線と在来線を同じものとして取扱いますよ,ということです。新幹線の線路は速度向上のためにカーブは原則として半径2,500m(東海道新幹線)とか半径4,000m(それ以外)以上とし,まっすぐに山をトンネルで貫き,谷を長大橋で跨ぎ敷かれています。これに対し,在来線は多かれ少なかれ,急勾配を避け,街を縫い(とても昔は蒸気機関車の煙を忌避され街外れを迂回し?)敷かれていました。このため一般に新幹線の線路は都市間で見ると短くなっています。例えば,東海道新幹線では東京~新大阪間は在来線の552.6㎞に対し新幹線では515.4㎞(率にすると6.7%短い)です。しかし,東海道新幹線ができたとき,旅客営業制度上はこれらを区別せず同じものとして扱うことに決めたのです。

随分古い写真ですが...100系試作車登場の頃 @東京第2運転所 1980.4頃
例えば,東京~品川間は東海道本線のほかに京浜東北線,山手線,横須賀線の電車もそれぞれ複線の線路を持ちますが,建前上は全て東海道本線です。場所によってはちょっと違った場所を通っても,これと似たような考えで同じとみなすわけです。

いろいろな電車が並ぶが全て東海道本線 @浜松町 2018.1.17
上に書いたように,新幹線のルートは短いので,新幹線経由の旅客は余計な運賃を支払わされている勘定になります。しかしながら,お客さまにどちらのルートで行くかを訊ねながらきっぷを売るのは駅の発券業務に馴染みません。新幹線を予定していたけど遅くなったので在来線の「銀河」で,とか,節約のため在来線でという変更の可能性もあります。また,別の経路とした場合,往復割引はどうするのかといった問題もあります。総じていえば,幹在同一原則は理にかなったものと思います。

北海道新幹線も整備新幹線の一つ @新函館北斗 2016.3.29
2.幹在同一原則の範囲と整備新幹線(規16条の2,規16条の4)
幹在同一といっても,最近開業した新幹線では並行在来線は第三セクター化されてしまって,在来線はJRの営業線区でありません。そのため,主に国鉄時代に開業した新幹線が幹在同一原則の範囲で,通称で整備新幹線と呼ばれるJRになってから開業した新幹線では,規16条の4で「それぞれ単一の線路として旅客の取扱いをする」と定められています。九州新幹線には例外の区間もあり,まとめると下の表と図のようになります。


3.幹在同一原則の例外(1)--在来線駅と離れた新幹線駅を含む区間(規16条の2の2項)
幹在同一といっても新横浜や新神戸のように物理的に離れた所に新幹線の駅がある場合は,別の線路として扱わなければいけないこともあります。このため,規16条の2の2項ではこれらの駅を発駅若しくは着駅又は接続駅とする場合は、線路が異なるものとして旅客の取扱いをすることとしています。規定ではこれらは区間で表されて(1)品川・小田原間(筆者注:新横浜を指す,以降も同じ),(2)三島・静岡間(新富士を指す)と区間で示して,(16)筑後船小屋・熊本間(新大牟田,新玉名を指す)まで16の区間が定められています。

第5回「区間外乗車のいろいろ」のうち4.選択乗車(規157条)から
これらの区間には第5回で紹介した選択乗車が設定されていて,実態としてはきっぷの表示に拘わらず,新幹線でも在来線でも選択して乗れることになっています。そればかりか,新幹線で来て新神戸で途中下車後,在来線の神戸から続きを乗車するケースも認められるようになっています。詳細は第5回の4.選択乗車を参照ください。なお,このようなときの新幹線駅~在来線駅間の移動に関しては何も言及されておらず,素直に解釈すればその分の費用は旅客の負担と考えられます。
4.幹在同一原則の例外(2)--新下関~博多間(規16条の3)
これも第4回の4.往復割引の項で少し触れましたが,新下関~博多間は新幹線はJR西日本の営業する山陽新幹線ですが,在来線はJR西日本の山陽本線とJR九州の鹿児島本線です。この2社の間では賃率が異なるため,運賃も異なります。このため,新幹線と在来線を別の線路として運賃計算をしますが,往復割引の適用や運賃計算をするときの営業キロの考え方--環状1周になったら計算打切り--などは,同一のものとして扱うという規定です。

新下関~博多間を含む往復乗車券(往路は新幹線経由,復路は在来線経由)
試みに博多~小倉の往復乗車券(上段)を都内のある駅で買ったところ,連続乗車券でないと発券できないとの由でした。興味が興味を呼びそれならば往復割引適用ならどうなるかと博多~大阪(下段)も買ってみました。普通の往復乗車券にはない注記がたくさんあって興味深いです。220円でこれだけ楽しめれば安いものですが,応対してくださった駅のご担当には申し訳ないことをしました...
5.幹在同一原則の例外の例外--東広島~広島~呉線へ乗継ぐケース(旅客営業取扱基準規程(以下,基)151条ノ2)
これも既に1度触れたものですが,第6回の2.分岐駅通過列車の区間外乗車(基151条)の特例です。元々,広島駅と呉線の分岐する海田市駅の間には分岐駅通過列車の区間外乗車の特例が設定され,幹在同一原則により,広島へ新幹線で来ても適用されました。しかし,1988年に在来線と接続しない東広島駅ができ別線扱いになってしまったため,東広島~新幹線~広島~海田市~呉方面の経路が構成できるようになりました。ルールどおり計算すると東広島駅ができたばかりに値段が上がってしまいます。基151条ノ2は,例外的に新幹線の東広島~広島間を在来線と同じとみなして,新幹線で来ても海田市における分岐駅通過列車の区間外乗車の特例の取扱いを有効にしているのです。

当ブログ「分岐駅通過の区間外乗車と復路専用乗車券(2016.1.30)」から
分岐駅通過列車の区間外乗車特例が設定され,かつ関連の新幹線の駅が在来線と別の場合にこういうケースが発生しますが,敢えて例外の例外の規定を設けているのはここだけです。呉線への乗継ぎ需要が大きく,東広島が後発の新設駅ゆえの特別な規定なのでしょう。
6.ミニ新幹線(新在直通運転)
山形新幹線と秋田新幹線は一般に新幹線と案内されますが,法律上も旅客営業制度上も新幹線ではありません。在来線でありながら軌間(線路の幅)を新幹線と同じ標準軌として,新幹線車両が直通できるだけです。対東京の輸送に関しては便利になった反面,域内の輸送では乗換えが増えたり,貨物列車が運転できなくなったりの弊害もあります。フル規格の新幹線は当分実現しそうにないので,ミニでも早くに新幹線を実現させたこの2線の後はあまりミニ新幹線の話は聞きません。

新庄駅。新幹線と在来線の乗換えが便利なように工夫されている 2017.5.4
7.その他の新幹線車両が走る区間
下の2つの区間も新幹線電車で運転されますが,営業制度上は在来線です。走る列車は全て特急扱い,かつ石勝線のような救済措置もないので青春18きっぷでは乗れません。また,電車は全て新幹線電車なので,運転士さんの免許は「新幹線電車」の動力車操縦者運転免許が必要だそうです。重箱の隅をつつくような話ですが,いろいろな例外があって面白いです。
博多南線 博多~博多南 (JR西日本)
上越線 越後湯沢~ガーラ湯沢 (JR東日本)(季節営業)

博多南線開業直後の福岡・唐津ミニ周遊券
改訂が間に合わず,見逃してしまいそうですが小さく手書きしてあります。

ガーラ湯沢駅開業初日のきっぷ
他の件できっぷ箱を見ていたらたまたま出てきたもの。忘れていましたが,初日に行っていたんですね
8.新幹線経由の乗車券の表示
1987年の分割民営化により,上の4.のように新幹線と在来線の事業者が異なる区間ができました。これらの区間は,幹在同一原則がありながら,JR会社間での運賃収入配分のために新幹線と在来線を区別する必要があります。このため乗車券の経由欄には「新幹線」の表示がされるようになりました。旅客にとっては選択乗車のルールがあるのでどちらでもよいのですが,JRにとっては正しい運賃収受という点で制度的に必要なのでしょう。
東京~熱海 JR東海(新幹線)・JR東日本(在来線)
米原~新大阪 JR東海(新幹線)・JR西日本(在来線)
新下関~博多 JR西日本(新幹線)・JR九州(在来線・下関以西)
JR発足時には旅客営業規則にも条文を作って,これらの区間の在来線経由の乗車券を持った乗客が新幹線に乗車する場合は,新幹線改札で「新幹線振替票」を交付し,新幹線下車駅でそれを回収するルールとしました。実態としてはそのようなルールは運用できなかったらしく,1年で廃止されてしまいました。それに代わり,マルスで発券する乗車券でこれらの区間を通過する場合は幹在の別を表示し,在来線経由の乗車券で新幹線に乗った場合は車掌がきっぷの表示を修正する取扱いとしました。これがきっぷに表示される四角マークです。四角マークは4つ(特急券一体型では3つ)で組になっていて,それぞれが左から,東京~熱海,米原~新大阪,新下関~博多を表し,黒く塗りつぶされていれば新幹線経由,枠だけなら在来線経由です。なお,4つまたは3つの組はall or nothingで,1つとか2つで駅単位の区間を示すようなことはしていません。

上は顧客操作型のMV端末なので希望を込めて在来線としたのではないかと思われます。
下はどちらも呉駅発行ですが,どちらも社用なので在来線で行くはずはなく,どうして在来線なのかナゾです。まさかJR西日本としてはそのほうが得だからということはないと思います。
発券時点でもかなりいい加減だし,車掌が表示を塗りつぶしている姿も見たことがありません。また,在→幹は塗りつぶせば済みますが,幹→在はどうするのでしょうか。この仕組みも計画倒れで,正しく運用されているとは程遠い状況です。しかしながら,新幹線・在来線間の変更がそう頻繁にある訳でもなく,幹→在と在→幹で頻度が大きく違うとも思えず,ある面「お互いさま」なのではないでしょうか。また,こういうルールを設けることで,恣意的に一方に有利な発券はさせない抑止力にはなっていると思います。
9.新幹線と大都市近郊区間
大都市近郊区間は第1回でも説明したように,区間内でクローズする乗車券に対してはいろいろな特例があり,まとめると下の表のようになります。新幹線が大都市近郊区間に含まれるか否かで,これらの取扱いが変わってきます。

大都市近郊区間とふつうの乗車券の取扱いの違い
例えば高崎~大船間を全て在来線で行けば東京近郊区間相互発着になりますが,高崎~大宮間を新幹線経由とすることで東京近郊区間でクローズしない,すなわち乗車券の本則どおりの有効期間2日,途中下車も可になります。その代わり,磯子に帰るために運賃計算は遠回りの根岸線を選択,東海道線戸塚経由は使えません。

経路の一部を新幹線経由とすることで乗車券の本則どおり有効期間2日,途中下車可
JR発足時に東海道新幹線がJR東海の営業になったので,東京近郊区間からはずれましたが,2004年3月の制度改訂からは,米原~新大阪と西明石~相生だけが大阪近郊区間に残り,他の新幹線区間は全て大都市近郊区間外となりました。幹在同一原則と選択乗車の制度があるので,新幹線経由とするか否かで乗車券の効力としては変わりはありません。大都市近郊区間とするか否かのどちらがメリットがあるかで買い分ければよいと思います。
10.これからの新幹線に関する制度
毎回,採りあげた制度の今後について書いていますが,新幹線と周辺の制度に関しては,ここをこうすべきという点がありません。ただ,8.や9.の点など多くの矛盾があるので,きれいに整理できるとよいとは思います。本文中では採りあげませんでしたが,次のケースも一つの矛盾だと思います。新幹線で行って,手前の駅に戻ることはよくあることです。静岡の一つ手前の東静岡の場合,新富士(在来線と離れた駅)~静岡~東静岡という経路が成り立ちますが,掛川の一つ手前の菊川の場合,静岡(在来線と同じ駅)~掛川~菊川という経路は復乗になってしまい1枚の乗車券にはなりません。JRの制度ご担当もこれらの矛盾点は分かっているでしょうから,今後の整理に期待です。(2018.10.13記,2019.7.7きっぷの画像追加)
知って楽しいJRの旅客営業制度バックナンバー
1.大都市近郊区間と140円旅行
2.きっぷの有効期間と途中下車
3.乗車券の経路と種類
4.運賃計算の基本と割引き,加算
5.区間外乗車のいろいろ・その1
6.区間外乗車のいろいろ・その2
7.特定市内駅と駅に関わる規則