青春18きっぷでJR東海最長鈍行とおおさか東線,関西本線加太越えの旅・前編

東海道本線3109F @静岡 2019.3.23
今年(2019年)の3月16日のJRグループ全国ダイヤ改正ではおおさか東線の開業や,第3セクターの三陸鉄道の旧山田線部分の復旧・移管開業などのニュースがありました。わが家ではジュニアが西武線沿線の高校に通学していることもあり,ダイヤ改正の日は家族でLaviewで秩父に行ったと書きました。1週遅れでおおさか東線にも行ったので,今日と次回はその報告をします。

出発は前夜の湘南ライナー1号 @東京 2019.3.22(以下,特記あるまで同じ)
僕は1983年4月以来,国鉄~JRの全線完乗のタイトルを維持しているので,JRの新線が開業すると毎回乗りに行っています。今回のダイヤ改正では関西の大阪東郊のおおさか東線,新大阪~放出間が延長開業したので,そこに行くのは必須事項です。春の青春18きっぷシーズン,節約のために横浜から鈍行で往復してきました。ところで,東海道本線に静岡~岐阜間運転の111F(土休日は3109F)という列車があります。前から気になっていたので,今回の旅行ではかなり無理をしてこの列車に乗ってみることにしました。また,単調な関西からの鈍行での帰り道,しばらくご無沙汰をしている関西本線の加太越えを通って帰ります。そんなわけで,今回の旅行は1.東海道本線静岡~岐阜間の3109Fに乗る,2.おおさか東線に乗る,3.関西本線加太越えに乗るの3つが目的になりました。

湘南ライナーの事前販売の整理券
出発は3月22日(金),会社が終わった後に東京駅へ行き,「湘南ライナー1号」です。単調な青春18きっぷでの旅に彩を加えようと少々の贅沢です。今回の旅行の目的1の3109Fですが,始発の静岡発が早朝5:28なので,前夜の静岡での泊りが必須です。泊りといっても,最終列車で着いてネットカフェとか,この時期なら大垣夜行とかの選択もできますが,僕も若くはないので1週間勤めた後はホテルでゆっくりしたいと思います。22日の行程上は「湘南ライナー1号」に乗ることがキーになるので,この整理券を確保しようと思いますが,これが結構難物でした。ライナー券はふつうはホーム上の券売機で買いますが,この機械には前売りの機能がありません。前売りの整理券を買うなら,改札外のみどりの窓口に行ってくださいとの案内でした。それで買ったのが上のきっぷですが,扱いは「特別企画乗車券(マル企)」,何かのイベントの券のような券面で,JR東日本を示す「(2- )」の表示もなく「JR東」と印字されています。東京駅のホーム上の案内係員氏の説によれば,これは月単位のセット券(のばら売り)だそうで,旅客営業規則の規定(140条の3 ライナー料金)に基づくものではないようです。また,ホーム上の券売機の席はマルスに収録されておらず,もっと簡易な販売システムの管理だそうです。機械ごとにx号車と案内されていますが,機械ごとに販売枠を割りあて,機械間の融通もできず,万一,機械がトラブルになるとその分の席は売ることができないそうです(もちろん機械で売れないだけで,ホーム上で係員が売るなどのバックアップはあるのでしょう)。

国鉄テイストをほうぼうで感じる185系のデッキ,洗面所
事前に整理券が買えない場合を想定し,「湘南ライナー1号」の混雑状況も聞いてみました。この列車は夕方のライナーの初列車なので,週の初めや水曜日は18:00過ぎに満席なることもあるが,金曜日は遅い列車に波がシフトし,満席になることはあまりないそうです。ライナーの利用状況にも人々の生活リズムが反映されて,奥が深いものです。さて当夜の東京駅ですが,「湘南ライナー1号」の入線は18:25頃と結構慌ただしいです。廃止まじかの185系の写真を撮ろうと,先頭の1号車付近には多数の鉄道マニアがいます。乗れば定員制の通勤ライナーは天国で,さっそく晩酌に会社からの途上で買ったコンビニの美味しいお弁当(東京駅のような大きな駅の駅弁は口に合わない)でゆっくりします。

小田原~静岡の列車。小田原~熱海 1923E @熱海,熱海~静岡 477M @静岡
この「湘南ライナー1号」は品川から横須賀線の走る品鶴線,鶴見から羽沢貨物線を通って東戸塚に出,その後も平塚の先まで貨物線の線路を走ります。このため,停車駅が藤沢,茅ケ崎,小田原と他の「湘南ライナー」とは異なります。陽があって景色が見られればそれも楽しいのですが,今日は完全に夜なので食事を楽しみます。周りのお客さんは通勤なので,晩酌をしている人は方々にいますが,本格的に食事をする人は自分しかいません。食事が済めばゴミ捨てかたがた車内を見分します。特急型なのに1m幅の広い扉は玉にキズですが,デッキの消火器やくず箱の周囲は国鉄時代の特急電車そのものです。洗面所に目を移せば,ばねで戻る給水栓,角張って肉厚そうな陶器製洗面器など,へんな改造を受けていないオリジナルの造作で懐かしみを覚えます。

静岡では後からくるJR東海の「ホームライナー静岡3号」に追いつかれる
終点の小田原では先行の1923E熱海ゆきに追いつき,たった1分の接続で西下の旅を続けます。大磯から熱海にかけての東海道線は箱根の山が相模湾にせり出した地形で,昼間であれば海がよく見えるところです。以前,ここから目の前に伊豆大島や房総半島が見えたことがあり,密かに幹線の車窓の中では上位にランクすると思っています。会社境界の熱海でも接続はよく,3分で477M静岡ゆきに接続します。毎度,下半身の話題で恐縮ですが,この477Mは211系3両編成2本併結の6両トイレなし編成です。熱海~静岡は1:14の行程,最悪を想定して熱海到着前にJR東日本の電車でトイレは済ませましたが,ライナーでビールをたっぷり飲んだ身には拷問です。21:24静岡着,トイレに行きたくなることもなく,初日の行程は完了です。いつもは見送るばかりの「湘南ライナー」についていろいろ勉強もでき,まずまず楽しい旅行1日目でした。

朝の静岡駅前。JR東海静岡支社が元の鉄道管理局お膝下の雰囲気 2019.3.23(以下全て同じ)
翌23日(土),静岡での朝は早く,4:40に目覚ましとモーニングコールで起きます。プライベートの旅行では,おにぎりやトーストなどの軽い朝食が無料で付く東横インを愛用していますが,この時間ではサービスがなく残念です。コンビニで朝ごはんを仕入れたり寄り道をしますが,5:00頃には駅前に着いてしまいました。静岡駅の南口はいかにも鉄道管理局という感じのJR東海静岡支社がでんと構えていますが,この時間では人気(ひとけ)もなく静かです。改札口でスタンプを所望すると,支社所在地駅に似合わない時代がかったスタンプを出してきてくれました。JR東海はスタンプ文化に消極的なので,これでもよしとします。

静岡駅のスタンプ。JR東海発足後の制作のようだが,かなりの年代物
ここでこれから乗る3109Fを少しおさらいしておきます。この列車は静岡(5:28)から岐阜(9:32)までの216.1kmを4:04かけて走ります。平日は111Fを名乗り,岐阜着が少し遅い9:49です。有名な飯田線の上諏訪~豊橋間鈍行の213.7kmをおさえて,JR東海で最長距離を走る普通列車です。僕独自の運転系統別の長距離鈍行番付でも全国第7位です(興味のあるかたはこちらをご覧ください)。東海道線のJR東海区間の列車は大抵,豊橋か浜松でスジが切れていて,そこを直通する列車は菊川~岐阜間の列車など他に数本しかありません。おまけに時間帯が早くてなかなか乗れない,この区間の運転は下りの片道1本のみの設定と,知れば知るほど乗ってみたい存在でした。帰りの列車で,添乗で車室内にいた車掌さんいわく,20年位前に自分がJRに入ったときからあったそうなので,意外と長寿の列車のようです。

静岡駅で発車を待つ3109F。隣は同じ5:28に反対に向かって出る熱海ゆき
ホームに上がると列車はまだ入っていませんが,ほどなくして据付けられた電車は311系の4両編成です。僕にとって311系は名古屋近郊の快速サービス用の形式で,早朝の時間帯で4連が程よい輸送力,前夜の酔漢の多い時間帯の列車のトイレを確保して,朝のこの列車は回送を兼ねた運用などと勘ぐってしまいます。実際のところは313系の増備の進んだ1999年から静岡地区での運用が始まったそうなので,これはあたっていません。
列車は5:28,定刻に静岡駅を発車します。最長鈍行といっても乗り鉄らしき人もおらず,静かな滑り出しです。311系でトイレがあるのが嬉しく,用意の朝ごパンと共に,何の遠慮もなくコーヒーをがぶがぶ飲みます。311系も登場から30年が経ち,往時の華やかさはなくローカル列車然とした車内の雰囲気です。ふとドア上の停車駅案内を見ると浜松までしかなく,やはり静岡は圏外の感じがします。

ドア上の停車駅案内。東海道本線は浜松,中央本線は南木曽までの掲載
6:00前になり,ようやく空が白み始めます。お天気は曇りがちですが,予報によれば徐々によくなるようなので,回復期待です。

ようやく東の空が白み始める @島田
昔の長距離鈍行列車の楽しみは,単線区間での交換待ち,優等列車の通過待ち,そして荷物車の併結列車だと駅々での荷扱いの時間などの長時間停車とその間のスタンプ収集でした。前にも書いたようにJR東海はスタンプには消極的なうえ,東海道線では名古屋都市圏の快速サービスが始まる豊橋までは通過待ちもなく,車内では大人しく景色を眺めるくらいしかありません。その景色のほうも,東海道線の沿線は人家や工場が途切れることも少なく,菊川あたりの茶畑以外はあまり変化のない景色が続きます。

そろそろ始発の新幹線が走り始める @袋井~磐田
今朝はたまたま海側の席に座りましたが,少し先には新幹線が並行しています。そろそろ始発が来るかと思っていたら,静岡始発(6:07)の下り「こだま693号」と浜松始発(6:20)の上り「こだま702号」が相次いで走ってきました。ちょうど袋井~磐田間は田んぼの景色で,全長400mの16両編成でも遮るものが殆どなく,昼間に来たら絵になりそうです。

同じく袋井~磐田で。どちらがどちらか分かりません...
6:40着の浜松,7:17着の豊橋と少し長めの2分停車のほかは各駅ともすぐの発車で,他の列車で東海道を下っているのとさして変わりません。豊橋の2つ先,7:31着の愛知御津では今日初めての快速退避です。豊橋を4分後に出た特別快速の5105Fですが,今日は眠気と寒さで失敗写真になってしまいました。

愛知御津で特別快速5105Fを退避。トリミングとデジタル編集でごまかしてます
愛知御津の先から三河三谷までの暫くは三河湾の最奥の穏やかな海が見えるところです。基本的に海岸線に並行して走る東海道線ですが,海が見えるのは昨晩の西湘海岸と薩垂峠の近く,浜名湖の周辺とここの僅かな区間です。

三河湾の穏やかな海を臨む @三河大塚~三河三谷
名古屋都市圏のダイヤが稠密な区間に入り,景色の楽しみもなくなり,これからしばらくは快速の通過待ちが楽しみな区間です。愛知御津に続き,7:58着の岡崎では5107F特別快速米原ゆきに道を譲ります。岡崎での停車時間は5分ですが,駅構内は混み始めていて,スタンプどころではありません。

岡崎では特別快速5107Fを退避
お彼岸,行楽シーズンで土曜日でも快速列車はかなり混んでいるようですが,各駅停車のこの列車には空席もあります。次は8:24着の刈谷で5分停車,5307F新快速大垣ゆきの退避です。JR東海の快速列車ですが,ただの快速のほかに特別快速と新快速があり,微妙に停車駅が異なり,ほぼ同じスジでも平日休日で特別快速と新快速が入替ったりで,よそ者には分かりづらいです。

刈谷では新快速5307Fを退避
8:59,名古屋着。ほぼ9:00で乗車時間も3時間半を越え,少々飽きてきます。ここでも5分止まり,5109F特別快速米原ゆきに道を譲ります。この列車は豊橋を50分も遅く出てきた列車で,今日は大阪まで下って戻る行程なので,この列車に乗ればどれだけ早く帰れるか分かりません。自分の鈍行マニアに若干の自己嫌悪を感じつつ特別快速を見送ります。

名古屋では特別快速5109Fを退避
少し眠くなってきたので,気分転換に運転室直後に行ってかぶりつきを楽しみます。あまり苦労をせずに貨物列車を撮れそうな駅はないかと眺めていると,お誂え向きの感じでEF64の貨物列車がやってきました。枇杷島のホーム端もなかなか良さそうなどと記憶にとどめます。

東海道線を上る貨物列車 @名古屋~枇杷島
少し行くと右手に清洲城が見えてきます。この城は織田信長が天下統一への一歩を踏出した城との理解ですが,新幹線から見るのとは違った味わいです。記事を書きながら調べてみると,この天守は1989年に建てられたコンクリート製で,信長の当時の絵図面等も残っていないため想像のデザインだそうです。さらに清洲公園は東海道線と新幹線に分断され,線路の北と南にあるそうです。公園に行けば線路もよく見えそうで,今度は時間を作って出掛けてみたいと思います。

車窓には清洲城が @枇杷島~清洲
さらに進むと列車は稲沢に着きます。ここは元の稲沢機関区,今はJR貨物の愛知機関区が広がっています。ここは昔も今もEF64の一大拠点ですが,JR貨物のEF64全機37両がここの配置だそうです。今残っているのは全機1000番台ですが,奥の方にかつてお召し運用も務めた77号機も色褪せて留置されています。数両のDD51も保留車か廃車待ちのようで,痛ましい景色です。

愛知機関区の奥の方にはEF64-77が見える @稲沢
尾張一ノ宮を過ぎ,列車は木曽川を渡ります。木曽川,長良川,揖斐川はそれぞれ源流域も異なり別の川の認識ですが,昔から合流,分流を繰返し,3つまとめて木曽三川と呼ばれ,木曽川水系に区分されます。その総帥の木曽川を長い鉄橋で渡ると列車は岐阜県に入ります。

木曽川を渡る。東海道線は岐阜市内で直角に曲がるので川の向こうの山は関ケ原方面
線路は左にカーブし,右手に金華山とその頂上の岐阜城が見えてくると,終点岐阜に到着です。

市街地の向こうに金華山と岐阜城が見える
9:32,列車は時刻表どおり終点岐阜に着きます。周囲のお客さんにとっては15分に一度繰り返される全く日常の光景なので,僕もその波に飲み込まれ,JR東海最長鈍行完乗といっても感慨に浸る雰囲気ではありません。写真くらい撮ろうと電車の先頭に行くと,既に方向幕は岡崎ゆきになり,11分折返しのエンドチェンジの作業が進んでいました。

3109Fの終点,岐阜着。既にエンドチェンジの作業が始まっている
次に乗る米原ゆきまで19分あるので,一旦改札を出て終着駅岐阜を楽しみます。そうはいっても,岐阜には昨年末に来たばかりなので,新鮮味はありません。駅前の桜はまだ見ごろには早いですが,少しは季節感が出るかとここで写真を撮ります。

JR東海最長鈍行を完乗し,終点岐阜駅で
さて,3109Fの旅は今回の旅行の目的の一つではありましたが,全体から見ればおまけで,次はメインイベントのおおさか東線を目指して東海道線を下ります。岐阜から乗る米原ゆきは特別快速5111Fで,豊橋を3109Fより1時間20分も後に出た列車です。

岐阜~米原は特別快速5111Fで @岐阜
大垣から先,関ケ原越えの区間はこのブログでも何度か触れたことがありますが,伊吹山を望み東海道線の車窓でもお気に入りの区間です。この区間はJR東海にとっては会社境界近くの末端区間で,4両編成の混雑した列車によくあたります。今日は特別快速のスジがそのまま乗り入れる8両編成なので,輸送力は十分,空いた車内でゆっくり景色を楽しむことができます。

関ケ原駅の古戦場の案内板
関ケ原は天下分け目の合戦場で有名ですが,関ケ原駅では東西両軍の武将の名前を記した大きな案内板が目を引きます。僕は現在,東海道の徒歩き(かちあるき)の旅を進行中ですが,京都にたどり着いた帰りは中山道をまわり,関ケ原もゆっくり歩いてみたいと思います。

関ケ原に続き車窓には伊吹山が広がる @柏原~近江長岡
柏原からは滋賀県に入り,右手には伊吹山がきれいな山容を見せています。手前には新幹線が走り,いつもここで新幹線の写真を撮りたいと思いますが,不思議とここで新幹線の列車を見ることはありません。今日は畑焼きをしているようで,煙がたなびいて写真どころではありません。
10:40,列車は時刻表どおりに米原に着きます。米原では10分の接続で新快速姫路ゆきに乗換えです。今日乗る3251Mは近江塩津~姫路の運転ですが,この北陸本線~米原~東海道線系統で敦賀~播州赤穂間を走る3527M(休日は3327M)は2019年ダイヤの日本最長鈍行です。この系統の列車は米原まで4両で来て,ここで前部に8両を増結するので,圧倒的に前のほうが空いています。ところが,先頭部はホーム一杯に止まるため写真が撮れず,後ろに回ることになり,一番混んだ9号車に乗ることになりました。

東海道線,新快速3251M @米原
新大阪には4分の延着。12:11のおおさか東線には乗れなかった
この先,新大阪でのおおさか東線への3分の乗継ぎが今日の行程のポイントです。この3分乗継ぎをこなすと後の接続がよく,自宅最寄りの磯子に22:43に帰れます。乗継ぎに失敗しても磯子まで辿り着けるのは確認済ですが,今日は朝も早かったので,早く帰るに越したことはありません。新大阪駅の階段の配置を思い出し,京都で席を立って,電車の前の方に移動します。列車はお彼岸と春休みの行楽日和で100%を越えると思われる混雑,各駅での停車時間も延びがちです。ついに東淀川では遅れた先行列車に追いついてしまい,徐行運転になります。3分乗継ぎはこれにて一巻の終わり,新大阪駅に入る前には乗りたかった12:11新大阪発の列車と行き違います。

今日の行程表
僅かに遅れて新大阪駅を走らされるよりは,完全にアウトの方が諦めもついてよい...などと負惜しみを言いながら14分の時間つぶしをします。次回はこの旅行のメインイベントのおおさか東線乗車からをお届けします。(後編につづく)(2019.5.12記)
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西武の新特急車Laviewに乗って家族でちょっと秩父・三峰へ

今年(2019年)の3月16日のJRグループ全国ダイヤ改正ではおおさか東線の開業や,第3セクターではありますが三陸鉄道の旧山田線部分の復旧・移管開業などのニュースがありました。わが家ではジュニアが西武線沿線の高校に通学していることもあり,西武の新特急車Laviewも興味のある話題です。ダイヤ改正の日にどこへ行こうか家族で相談の結果,近場のLaviewに決まりました。2か月近くも経っていささか古新聞ですが,その時の様子をご報告します。

Laview運転開始のちらし(拡大はこちら)
運転初日のLaviewですが,開業1番列車の指定席は相当なプラチナチケットだったようです。指定席券発売の2月16日朝は,ジュニアは通学途中の高田馬場駅に並び--6:30頃着いたら7番目--,奥は携帯サイト,僕はパソコンサイトと10時打ちならぬ7時打ちをしましたが,全滅でした。ちなみに僕はサイトオープンのディレイを考慮し,ひと呼吸おいてアクセスしましたが,未だ日付切替え処理が終わる前でエラーになってしまいました。そこで5秒くらい損をしたら1番列車はもう満席でした。ジュニアの情報では,他にも7:00ちょうどにアクセスして,時間前エラーになり,席がとれなかった人がいたそうです。

1番列車の指定席はあっという間に売り切れ。画面コピーは58秒ですが,実際15秒もかからなかったと思います
その後も旅行当日まで,キャンセルの席があれば変更しようと何度も照会しましたが,結局1か月間で1席もとれませんでした。仕方なく先ずは帰りの最終便の席を確保,ゆっくり秩父観光をして帰りをLaviewで,という計画になりました。そうこうするうち,最初に2席,前日に1席,下り2番列車の席がとれたので,往復ともLaview利用になりました。

運転初日のLaviewの特急券。記載事項は変わらないのに発券した機械で様式が違うのが面白い
3月16日(土),1番列車の指定券がとれなかったので,出発はわが家最寄りの磯子駅を9:43と遅めの時間です。横浜からは東横線~副都心線が順路だと思いますが,定期券の関係もあり,湘南新宿ライン経由です。ホームに上がると湘南ライナーの回送か,185系電車がホームに止まっていました。この電車に思い入れはないのですが,1981年登場の国鉄時代の電車です。葬式鉄の人が集まって大騒ぎになる前に写真を撮っておきます。

横浜駅で。廃車も秒読みの185系と置換えがアナウンスされたE217系 2019.3.16(以下,全て同じ)
池袋でゆっくりしたいので,発車時刻の40分前の10:50に着きます。西武の秩父方面のお得なきっぷは2種類あり,秩父鉄道(野上以西)が2日間フリー乗車の「秩父フリーきっぷ」と温泉やグルメを楽しむ「秩父浪漫きっぷ」があります。浪漫きっぷのほうは,レンタカーが1人につき990円割引きや西武秩父~三峯神社直通バスの片道利用などにも使えますが,なにか中途半端な設定です。西武線のフリー乗降区間もフリーきっぷは高麗以西,浪漫きっぷは芦ヶ久保以西と微妙に違います。どちらも有効期間は2日ですが,値段は池袋発でフリーきっぷは2,320円,浪漫きっぷは2,190円とこれまた微妙に違います。あれこれ付けると発売価格が高くなってしまうし,西武の企画ご担当の苦労の痕が滲みます。今では西武の一人勝ちですが,僕が高校生の頃は東武にも三峰口直通の特急が走っており,競争上あまり高い値付けもできません。悩ましいところですが,わが家はフリー乗車という言葉に弱いので,ちょっと高い「秩父フリーきっぷ」を選びます。

秩父フリーきっぷと秩父浪漫きっぷの案内。2つのちらしから編集しましたが,むしろ分かりづらくなったようです...(拡大はこちら)
常備券を期待して1枚は窓口で,他の2枚はふつうに券売機で「秩父フリーきっぷ」を買います。窓口で買っても差出されたきっぷは印刷発行機のペラ券ですが,上の指定席券と同じで,書いてあることは全く同じなのに,様式が違います。ソフトの違いと言ってしまえばそれまでですが,どうも気になります。

秩父フリーきっぷ。こちらも発券した機械で様式が異なる
そんなこんなで11:00頃に特急ホームに行きますが,既に列車は入っています。新型特急車の運転初日なので先頭車付近は黒山の人だかりです。人混みを避け,少し離れた位置から先頭部の写真を撮ります。Laviewの先頭はとても丸く,アルミの車体は光っているので,露出がとても難しいです。なお,この車体は特殊な塗装をしてあるそうで,アルミ地肌とは違うきれいな輝きをしています。

発車を待つLaview2番列車の先頭付近。脚立に乗っている人がいますが西武の広報のかたです

Laviewの写真は露出が難しい。開くとテカってしまうし,絞ると蔭が暗くなってしまう
Laviewですが,エクステリアは球形の先頭部のほかは,大きな窓が特徴です。ひじ掛けよりずっと下,膝あたりの高さまで天地に長い窓が並んでいます。おかげで車内は明るく開放的な印象です。

Laviewの先頭部と大きな窓 @西武秩父
ホームから新しい電車を眺め回して,11:25過ぎにようやく自分の席に落ち着きます。席がバラバラなので,家族とは別の場所,隣は知らぬ人の通路側です。天気もいまいちなので,今度は車内を一渡り観察します。

明るいLaviewの車内
座席はこれまた明るい黄色いシートで,リクライニングすると座面と背ずりが連動して回転し,ゆりかごのようです。デッキ部分の車内はシートに似た黄色ですが,どぎつい黄色とは違った,爽やかなレモンイエローです。車号や製造所は単に書いてあるだけで,あっさりとした印象です。

1号車の大きなトイレのあるデッキ部分の造作。左下は車内の車号標記(6号車)
景色のレポートは次に回すとして,乗れば1時間18分で西武秩父です。西武秩父は駅舎寄りのホームに着きますが,隣のホームから編成の写真を撮ったりして暫く居残りです。この時間はちょうど晴れ間が出て,今日の扉の写真が撮れました。Laviewについてまとめると,さすが西武の自信作,内外ともによくできた電車です。

西武秩父で。跨線橋の武甲山展望スペースから
さて秩父には着きましたが,夜の帰りの列車まで何をするかです。調べればいろいろあるのでしょうが,家族が勝手に行きたいところを言い出すと収拾がつかなくなるので,こういう時は金魚の糞モードです。奥いわく,秩父に来たらまずは秩父神社でしょと言うので,秩父神社を目指して歩きます。1駅先の秩父駅のほうが近いですが,列車も行ったばかりなので,古い商店街を歩いてゆきます。秩父の商店街はよくある地方都市の商店街ですが,昭和レトロな店構えも多く,味わいのある街です。また,意外とシャッター商店街になっていない印象でした。

秩父の商店街の様子。最近はやりのジビエ料理の店も
10数分も歩けば秩父神社に着きます。天気のせいもありますが,境内は厳かで,自分は感じませんがパワーを感じる人にはパワースポットかもしれません。また,社殿は徳川家康による造営で,日光東照宮の彫刻でお馴染みの左甚五郎の作という彫刻もあります。梟(ふくろう)は学問の神様でもあるので,学問成就のお参りに来る人も多いようです。

秩父神社の社殿と左甚五郎作「北辰の梟」
秩父神社のお参りの後は三峰山の登山バスと三峯神社です。今は13:30過ぎですが,時刻表を見ると13:52に急行の三峰口ゆきがあります。とりあえず秩父駅に急ぎ,奥は隣接の地場産センターで当面のつなぎになるお饅頭などを買います。自分は急行券を買いますが,秩父鉄道の急行券はなんと手売りの硬券です。それならば自分は車内券をと,1人分は敢えて急行券を買わずに乗車しましす。

秩父鉄道の急行券
やってきた電車は西武の新101系改造の6000系電車です。20m3扉車のまん中の扉を埋め,転換クロスシート装備と結構手間のかかった改造を受けています。急行券は車内券を買おうと無札で乗りましたが,この列車は車内券どころか車掌の乗務もないワンマン列車でした。

影森は武甲山産出の石灰石の積出し基地。ホッパー車が並ぶ
西武のLaviewの運転初日ではありますが,車内は空いているので,用意の饅頭を食べてゆっくりします。途中,影森では7分止まりますが,広い構内に多くの2軸ホッパー車が並んでいます。秩父鉄道の急行列車は意味があるのかと前から思っていたのですが,影森を出た後は三峰口まで止まらず,少しだけ急行列車の気分です。途中の各駅に用事がある人や短距離の利用者には使いづらい設定で,窮余の増収策かと思います。

もう1本の6000系は秩父鉄道オリジナルカラー @三峰口
30分もかからず,14:18に終点・三峰口に着きます。急行券無札なので改札口で200円を払って出場しますが,こんなことなら硬券の急行券を買っておけばよかったと後悔です。次のアクティビティは三峯神社まで登山バスの旅+お参りです。西武観光バスの三峯神社ゆきは7分の接続で14:25発です。Laview運転初日で道路やバスの混雑を心配しましたが,遅れは3分程度で,乗った後もほぼ順調に走りました。ハイキングや紅葉のシーズンは大渋滞するそうなので,あっけない位です。

三峰口駅前。昭和レトロを感じる雰囲気です
家にあった古い地図によれば途中の大輪(おおわ)から山頂までロープウェイもありましたが,施設の老朽化(ほかに金属疲労も見つかった)のために2006年に運休ののち廃止になったようです。バスは直線距離では2kmちょっとのところを大遠回りしてつづら折の坂を登ってゆきます。いかにも登山バスの趣で,車窓を見ているだけでも十分楽しい路線バスです。

三峰口駅から三峯神社周辺の地図(日地出版 登山・ハイキングシリーズ1奥武蔵 1984年刊から)
15:20頃,三峯神社着。こういう所は朝から来るものですが,今日はスタートが遅かったので仕方ありません。標高は1,100mあり,今にも雨が降りそうな天気で,少々寒いです。最終の下山バスは16:30で1時間ちょっとしかありませんが,大急ぎで三峯山を楽しむことにします。

神社の参道には苗木寄進の記念碑が立ち並ぶ
先ずは三峯神社のお参りですが,参道を歩いて行くとたくさんの大きな碑が建っています。読めば,ナントカ講という信者団体がヒノキなどの苗木を何万本寄進したという碑です。当時は植林が国策で将来の神社の収入にもなり,碑を建てるほど意義深いことだったのでしょう。今では多くの人が花粉症に苦しむようになり,誰だよ?そんなことしたのは?と思います(苗木の寄進と花粉症の関連は分かりません)。

三峯神社随身門
暫く行くと随身門という大きな門をくぐり,10分も歩けば三峯神社の本殿に着きます。奥のようにパワースポット好きの人ならずとも,深い森に囲まれた神領は厳かで空気もおいしく感じます。

三峯神社本殿
ここは特段,三峰山の山頂という訳でもない所ですが,谷側が見渡せるところに見晴台(奥宮遥拝殿)があり,今来た秩父の街を見渡すことができます。天気がよければとてもよい展望台です。

見晴台(奥宮遥拝殿)から秩父市街の方向を望む
ところで,今日は観光優先で昼ご飯を食べていません。神社からバスターミナルまでの参道のお店で遅い昼食にします。わらじカツとは大きさだけは大きいけど薄っぺらな安いとんかつのイメージですが,所変われば...で秩父ではB級ご当地グルメとなっています。腹が減っているので,美味しくわらじカツ丼を平らげます。このお店のテラスは秩父市街とは反対側の谷が望め,景色もおいしいご馳走です。

門前の食堂のテラスから雲取山の方向を望む
ところで三峰山ですが,正しくは奥秩父山塊の妙法が岳(1,332m),白岩山(1,921m),雲取山(2,017m)の三つの山の総称だそうです。廃止になったロープウェイが神社の前庭のようなこの場所を山頂駅と称していたことから,ここが山頂と誤解されているようです。三峰の一つ雲取山は東京都最高地点でもあり,その標高から一昨年は人気でした。ここにきたら俄然,雲取山に登りたくなり,今年の夏休みのアクティビティはこれと決めた気になりました。

三峰山の案内図。雲取山までは一つながり
神社に参って,景色を眺めて,食事をして,おそろしく慌ただしかったですが1時間ちょっとでこなし,バス停に戻ります。旅行に出たらゆっくりしたい僕とは違って,時間を有効に使う家族との旅行はいつもこうです。混雑を予想し早めにバス停に行きましたが,16:30の最終便のバスは発車間際でも座れる程度の乗りでした。

三峯神社ターミナルで。最終バスが登って来た
バスは西武秩父駅ゆきですが,時刻表では三峰口駅に17:15に着きます。今日は秩父鉄道のフリーきっぷがあるので17:19の列車に乗れると好都合です。幸い渋滞もなく17:16過ぎには駅前のバス停着,走って19分の列車に乗ることができました。列車に乗れば,お腹もくちて,朝からの活動の疲れも出て,一同ひと寝入りです。僕はお花畑で目が覚めましたが,奥とジュニアはぐっすり寝入っています。帰りの列車まで時間はあるし,フリーきっぷも有効に使えていないので,そのまま起こさずに置きます。

上長瀞駅。ここも昭和レトロな雰囲気。まだ18:00だというのに深閑としています
次の列車と交換になる前の上長瀞で降り,すぐ来る18:05の下り列車でお花畑,西武秩父に戻ります。西武秩父の駅前は日帰り温泉併設の物産館が最近でき,施設が充実しました。奥は土産物を買いに,ジュニアと僕はひと風呂浴び,秩父滞在の最後を楽しみます。ジュニアは練馬区内の学校在学の生徒の割引を期待していたのですが,「平日限定」の4文字を見落としていて,がっかりです。

夜のホームにLaviewの銀色の車体が浮かび上がる @西武秩父
湯上り&晩酌のビールを買い込み慌ただしくLaviewに駆け込めば,あとは横浜へ帰途の旅です。後から考えると上長瀞往復は無駄だったようで,叩き起こしてでもお花畑で降りれば,西武秩父で買い物,温泉に食事でゆっくりできたと思います。もう一つ後から考えるとですが,今日の行程ではきっぷは「秩父浪漫きっぷ」利用で,西武秩父~三峯神社の鉄道+バス代片道分は別払いが経済的だったようです。19:25のLaviewに乗れば20:45池袋着で,晩酌の後はゆっくりしていればすぐに着いてしまいます。黄色系のとても明るい車内は行楽には明るくて気持ちよいですが,退勤時の通勤ライナーでゆっくり落ち着きたい気分のときはどうなのだろう...などと思います。

おまけ。品川駅で。クモユニ74をかたどった郵便ポスト
帰りもJRで帰浜ですが,途中品川駅の駅ナカで食事をします。以前から気になっていた,駅構内のクモユニ74をかたどったポストの写真が撮れたので上につけておきます。Laviewの運転開始が契機でしたが,朝から一日中,家族と秩父旅行を楽しみました。秩父はパレオエクスプレス乗車などで何度か行ったことがありましたが,三峯神社はじめ周辺をゆっくり観光したのは初めてです。見るものも多く,古いものはあっても寂れている訳でもなく,よい街でした。また,三峰口から登る関東山地のハイキングも楽しそうです。横浜からならFライナーもあるので,近いうちにまた行ってみたいです。(2019.5.6記)