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2019-10

20世紀の鉄道写真(16)--1982~1983(昭和57~58)年のバスなど

 20世紀の鉄道写真といいながら,今日は1982~1983(昭和57~58)年のバスの写真を中心にお送りします。この頃,僕は大学3~4年生,東横線の学芸大学駅の近くに住み,港区三田のキャンパスに通っていました。天邪鬼(あまのじゃく)の僕は電車は使わず,目黒通りを上る東京駅98系統のバスで通学していました。そんなこともあり,かなり偏った内容ですがお付き合いください。

 先ずは通学でお世話になった東京駅98,田町87など三田界隈ほかで撮ったバス達です。

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1.渋谷営業所B-H178の田87系統 1982.5

 この前年のG代から都営バスに冷房車(当時は冷暖房車といっていた)の導入が始まりました。ちなみに都営バスの局番は最初の1桁が営業所,ハイフンに続き2桁目が導入年代を示しHは1980年度を表します。

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2.渋谷営業所B-G460の茶81系統 @渋谷駅 1982.5

 こちらは冷房車初年のG代ですが,渋谷に入った7台のうち462と463の2台が冷房車でした。この2台は冷房車ながら方向幕は従来の狭窓タイプの稀少車でした。この頃,都バスは原則として新車は7台ずつ導入と決まっていて,うち2台が冷房車の配分は各営業所とも同じでした。

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3.渋谷営業所B-H210の田87系統 1983.11

 最初のH178と同じ三菱車ですがこの日は合衆国大統領の来日を歓迎して星条旗と日の丸を掲出していました。

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4.渋谷営業所B-L705の田87系統 1983.11

 上のH210と同じ形式と思いますが,1981年度導入のK代の途中から白と黄緑の塗り分けに変わりました。黄色に赤帯の鈴木都知事カラーは,冷房車なのに暑そうだと思われたのか長続きしませんでした。

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5.渋谷営業所B-H210の田87系統 1983.5頃

 3.と同じバスですが白黒です。交差点で信号待ちするお嬢さんがすてきだな~と思って,暫く勉強机に飾っていました。

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6.東京タワーをバックに三田通りを行く 1983.5頃

 5.の近くの歩道橋から撮ったものですが,東京タワーをバックにした景色は今もあまり変わりません。三田通りが拡幅され,多少ビルが建て込んではいますが。

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7.東急目黒営業所のバスの東98系統 1983.11

 こちらは通学でお世話になった東急バスの東98系統です。今でもこの系統は東急の路線として残っていますが,当時は都営バスと東急が半々でした。この頃は,東82(東京駅八重洲口~渋谷駅~等々力),東90(東京駅八重洲口~品川駅~丸子橋)などもありましたが,今でも山手線の内側を走る民営バスの東98は貴重な存在です。

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8.新宿営業所C-K320の田70系統 1983.5頃

 上の7枚とほぼ同じ場所で撮ったものですが,こちらは新宿営業所のいすゞ車です。クセのない整った形をしていると思っていました。ところで,バスの写真はこのように扉のある側から撮るのを公式側というそうですが,僕はドアのない非公式側からの写真を好んで撮ります。

 次の2点は都営バスの,車両より路線の方に重点をおいた写真です。

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9.杉並営業所のD-K434の宿91系統 1982.11

 撮った場所が分かりませんが宿91系統は環7通りを新高円寺から大森まで延々と走った長大路線でした。今でも王78系統が生き残っているの対し,こちらは世田谷野沢,野沢交番と短縮されたり,ちょっと延びたりして,今は新代田駅止まり,それより南の区間は東急バスの森91系統になってしまいました。

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10.品川営業所のA-X492の海01系統 1983.1

 この当時の海01系統は品川駅東口~門前仲町の運転で,高速湾岸線の海底トンネルを通過する旅客だけ10円の運賃加算がありました。今の海01系統は門前仲町~東京テレポート駅間ですが,わざわざレインボーブリッジ経由で回送して,品川営業所が担当する便も多数あります。品川駅東口(港南口)の駅舎ですがバラックのような小屋で,バスの後ろに隠れています。品川駅港南口もここ30年で大きく変わった駅前の1つです。このX代のバスの窓は上段はHゴム固定で下段のみ開閉可能,バス窓と呼ばれていましたが,昔話です。

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11.青戸営業所のZ-H175の上37系統 1982.12.26

 1982年末,都バスの路線の幾つかが整理され,この上37系統も都心側末端の上野松坂屋~須田町間が短縮されました。左の写真はその最終日に須田町で撮ったものです。

 次の3点は旅先で撮った国鉄バスです。当時の国鉄バスは,高速バスから鉄道では黒字化が到底見込めない閑散路線まで,全国津々浦々を走っていました。

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12.国鉄バス東名高速線 1983.2

 1983年2月四国旅行の時は名古屋までを高速バスで下りました。この当時のワイド周遊券は東名高速線や関西本線が使え,経路選択の幅が広かったです。バスの旅は新幹線に乗れない貧乏旅行によい変化をつけてくれました。写真のバスは国鉄専用形式で,市中では見ないバスでした

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13.国鉄バス松山高知急行線 1983.2

 四国の県都連絡の松山~高知間は「なんごく」号という定員制のバスが走っていました。写真は久万高原近くで撮ったものと思います。今でもこの県都連絡路線は高速道路川之江経由で2時間55分で結んでいて,随分遠回りをしますが所要時間は当時の3時間56分より1時間短いです。

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14.国鉄バス厚岸線 @厚岸営業所 1983.3

 こちらは北海道の厚岸線です。釧網本線の標茶から太田を通って厚岸を結ぶほか,厚岸駅より海側の国泰寺までの路線でした。なんでこんな所にバス路線が?と思うような所ですが,Wikipediaによればかつて植民軌道があったり,鉄道敷設の計画があることから,沿線自治体が誘致したそうです。

 次の3点は旅行などで見かけたバスたちです。16(左),17は三菱のバスで,趣味者からはブルドッグと呼ばれていたそうですが,僕の好みで,あちこちでこの形式のバスの写真を撮っていました。

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15.トヨタ製の山形交通バス 1982.8

 山形交通のバスですが1982年当時としても相当,時代がかったバスでした。そもそも,日野自動車がトヨタグループになって久しく,東京界隈ではトヨタ製のバスなど見たことがありませんでした。「温泉」と書かずに逆さクラゲのマークなのがいいですね。

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16.渋66系統(渋谷駅~阿佐ヶ谷駅)の都営,京王のバス 1983.1

 阿佐ヶ谷駅でたまたま見かけた光景ですが,都営バスは杉並営業所にたった2台しかなかったG代の冷房車,京王バスは高速バス運用に駆り出されることもあるワンロマ車です。

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17.成田空港ターミナルと京成成田空港駅を結ぶバス 1983.11頃

 現在の空港直下の成田空港駅はまだ開業しておらず,京成の成田空港駅は連絡バス--確か所要15分程度でした--で結んでいました。こちらも三菱のブルドッグですが非冷房,代わりに運転席上に軸流換気装置,客室上にファンデリアが4つもあり賑やかです。

 最後の4枚は当時沿線に住んでいた東急線の懐かしい写真です。

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18.青ガエルこと5000系 @多摩川園 1982.1

 5000系は少し前までは東横線でも6連で走っていましたが,大型車の増備に伴い目蒲線に転属し,オリジナルの3連で運用されていました。

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19.目蒲線を走る3450形 @多摩川園 1982.1

 目蒲線,池上線にはまだ吊掛駆動車も残っていて,旧型国電好きの人は盛んに追いかけていました。東急の車両は手が入れられて,ライトを腰部2灯に改造したものや,シルヘッダーなしのすっきりした車体になったもの(2両目のサハ)など,いろいろなバリエーションがありました。

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20.東横線では少数派だった8500系 @都立大学? 1982.1

 今でも現役の車両が見られる8500系です。当時は新玉川線~田園都市線に集中的に投入され,東横線で運用される編成はごく少数でした。食パン顔の電車が好きだったので追いかけたくても,なかなか当たることがなく難儀しました。

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21.田園調布駅の駅舎 1982.1

 最後は田園調布駅の駅舎です。今は地下化され,駅舎はモニュメントとして保存されているそうですが,現役時代の写真です。

 最初にもお断りしたとおり今日はかなり偏っていますが,古い写真を20枚ばかりアップしました。今後もときどきネガをスキャンしては載せてゆきますので,お楽しみに。(2019.10.12記)
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Weblog 2019年9月28日--電車・バス・船,のりものざんまいの土曜日

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 このブログは最近はブログと言うにはheavyな記事が多くなっていますが,今日は簡単な半日の日記です。バスの日(9月20日)に近い9月28日の土曜日は「バスまつりin豊洲2019」のイベントに行ってきました。東京のバスまつりは以前は晴海ふ頭で行われていましたが,オリンピックの選手村が建設が進んだこともあり,今年から会場が豊洲になりました。諸般の事情でこの日の午前中に東京で使える時間ができたので,少しだけの見物です。

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京成佐倉ゆき779H @上大岡 2019.9.28(以下同じ)

 土曜日でも学校のあるジュニア,仕事のある奥を送り出して,8:00過ぎのゆっくりの出発です。緩急接続駅の上大岡で次に乗る列車は特急・京成佐倉ゆきです。珍しい行き先の列車なので構えていると,来たのは京急イエローハッピートレインの1057F,幸先のよいスタートです。

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「バスまつりin豊洲2019」の告知ポスター

 バスまつりの今年の会場は去年10月に開場した豊洲市場の中,足の便がよくないので,築地市場駅,月島駅から臨時のバスが運転されます。臨時のバスといっても築地市場(バス停は国立がん研究センター)~勝鬨橋~晴豊橋~豊洲市場内の会場(バス停名は豊洲市場6街区)~環2築地大橋~築地市場という環状ルートで,系統番号も祭20系統を名乗り,とても芸が細かいです。

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会場近く晴海運河からのレインボーブリッジ風景

 会場に着くとお客さんでごった返したイベント会場より,運河の反対,晴海ふ頭にたたずむ豪華客船に目がゆきます。船名は「SILVER MUSE」,ネットで調べると2017年イタリアのFincantieri造船所建造,40,791総トン,船籍はバハマでモナコのシルバークルーズ社の船です。レインボーブリッジをくぐれなければいけないので5月の連休に報告したクィーンエリザベスより小ぶりですが,シルバークルーズ社のフラッグシップのようです。

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SILVER MUSE 40,791総トン @晴海ふ頭

 対岸の晴海ふ頭を見渡すと「SILVER MUSE」の隣には帆船「日本丸」も来ています。選手村マンションが威圧的な背景と帆が張っていないのが今いちですが,今日,日本丸を見られるとは思っていませんでした。

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日本丸 @晴海ふ頭

 豊洲市場の晴海ふ頭に面した側は運河沿いの散歩道(豊洲ぐるり公園というらしい)になっていて,海風がすがすがしく,朝のジョギングを楽しむ人もたくさんいます。市場の建屋の屋上は緑を植えた展望公園になっていて,市場の見学の合間に運河ウォッチングもできるようになっています。

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豊洲ぐるり公園。左から伸びてきている建物は市場の展望台

 僕は会社が豊洲なのでこの辺は地の利がありますが,それにしてもここの変貌は著しいです。ちょうどネガスキャンが進行中で1983年の元旦に晴海ふ頭に来た時の写真がありました。この辺は鉄鋼ふ頭,発電所,ガス会社の工場が並んでいて,今とは全く違う雰囲気です。

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36年前の豊洲ふ頭。対岸の晴海ふ頭から。2つ上の写真で日本丸が泊まっているあたりから

 豊洲市場と豊洲ぐるり公園を歩いていたら暑さもあり,段々疲れてきて,バスまつりの方は適当でよくなってきました。最近の鉄道・バスイベントは善男善女の家族連れが増えて,マニアの濃い雰囲気が和らいだのはよいのですが,今度は人が多すぎて人に酔ってしまう感じです。

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「みんくる」,「とあらん」のステージショウ

 都バスのマスコット「みんくる」は今年20周年だそうで,都電荒川線の「とあらん」と共にメインステージでショウに出ています。キャラクターを作ってもすぐに放り出すことも多いなか,「みんくる」を20年育ててきた都バスの努力は賞賛できます。

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都内のバス各社の展示はごった返している

 バスまつりのメインといえるバスの展示は各社とも知恵を絞っているようで,じっくり見れば面白そうです。さっと見渡した中では関東バスが富士重工ボデーの2段窓のバスを持ってきたのが眼を引きました。

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臨時バス1,2号車は都バスのフラッグシップ,燃料電池バス。2号車は江戸川のV-D115号車

 今日は時間もないのでこれらはパスにして,臨時バスの乗降場で観客輸送にあたるバスの写真を撮ります。都バスのフラッグシップともいえる燃料電池バスをはじめ,趣向を凝らしたバスがその任に当たっています。今日は乗りませんでしたが,燃料電池バスはディーゼルエンジンを持たずモーターで走るので,本当に静かで一乗の価値ありです。

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3号車は車両後部まで平らなフルフラットバスで南千住のK-D927

 意識してかたまたまか,この臨時バスの乗降場は光線の加減がよいです。一回り全部を撮りたいところですが,時間もなく今日は4号車までで引揚げです(1号車はとびらの写真の燃料電池バス)。

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4号車は北千住のK-L788

 結局,今日は往きも帰りもこのL788に乗ることになりました。現在L代のバスの廃車が進行中なので最古参,L代の各車はサッシの造作がスッキリしていて好もしいと思っているので,それも佳しです。写真を撮りそこないましたが,5,6号車はX代のエルガ,何も特徴がないのでハイブリッドか?と最新のE代のニューエルガでした。

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7号車は「天気の子」協賛の「雨の日は都バスで」ラッピング。渋谷のB-P492

 午後はジュニアの学校の用事があるため11時過ぎバスまつりの会場を出発します。祭20の臨時バスで築地市場駅(国立がん研究センター停留所)に着けば,築地の場外市場はすぐ近くです。せっかくなので,この辺で美味しいマグロ丼でも食べようかと思います。場外市場に着くと狭い路地はインバウンドの観光客でごった返し,バスまつり以上の人混みです。

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築地場外市場の人混みとその場食い用マグロ

 人混み以上に驚くのが物価で,一昔前なら試食でタダでもよいくらいのマグロの切れっ端が3,4切パックに入って500円です。ちょっとした海鮮丼は2,000~4,000円と,通り道にちょっと丼(どんぶり)という値段ではありません。地元ツウのつもりなので,裏路地の更に2階の極めて入りづらそうな店を見つけて,なかおち丼1,300円ナリをいただきましたが,値段相応でした。

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Laoxの送迎バス

 腹もくちて地下鉄の築地市場駅に行くと怪しげなバスが止まっています。インバウンドの観光客がこれだけいるのだから,怪しげなバスの1台2台は驚きませんが,このマイクロバスは少々驚きました。中国語は分からないのですが,どうも秋葉原の電気屋のLaoxが運行する無料巡回バスで,築地-新宿-秋葉原-お台場-銀座-築地を回っているようです。

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大書きしてある「免費接送」の翻訳。会社でも頼りにしているGoogleくんによる

 全て中国語で書いてあるのがミソでインバウンド専用のように見えますが,一般のお客が乗せてくれと言ったらどうなるのでしょうか。また,調べて分かったのですが,Laoxが秋葉原の電気屋というのはアタマが古く,今は中国資本で全国で41もの免税品店を運営する業態に変わったようです。

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今日の〆は京急電車。最新の1225F @上大岡

 午後はジュニアの学校行事をこなして,夕方の京急電車で横浜の自宅に戻ります。たまたま来た電車は1225F,この9月に竣工したばかりの編成です。上の写真でお顔にレールが反射するほどピカピカです。最近の京急の新造車はブレーキが7段ノッチの仕様で,乗入れ規格が厳格な都営地下鉄には入らない運用に充当されていますが,この編成は特別でブレーキが1号線規格の5段ノッチです。なんでも先日の踏切事故(ちょっとした論説も書いています。興味があればこちらもどうぞ)で1本が使えなくなってしまったので,急遽,この1本だけがそのような仕様になった由,先頭にかぶりついていて隣りに居た高校生から聞いた情報です。
 電車に船にバスに今日も楽しい,のりものざんまいの1日でした。簡単な半日の日記のつもりが長くなってしまいました。お付合いありがとうございました。(2019.10.5記)

2019年夏の東北旅行/3連休パスで4時間半鈍行3連発・その3・秋田延長の「きらきらうえつ」

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その2から)
 7月13日(土)~15日(月)の3連休に行った東北旅行,今日は最終日の15日,青荷温泉から「きらきらうえつ(以降,「きらきら」と略すことあり)」に乗って,帰宅までをお届けします。「きらきら」は前にも書いたとおり,この秋に置換えが決まっており,最後の夏です。ちょうどこの日は秋田への延長運転で,距離で273.0km,時間で4時間24分は定期列車なら堂々たる長距離鈍行列車です。今では485系の残党も少なくなりいろいろな意味で貴重な列車で,以前にも家族で乗ったことがありますが,ジュニアが是非乗りに行こうと言ったのでした。

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大館からは普通列車で奥羽本線を上る。1650M @大館 2019.7.15(以降,同じ)

 青荷温泉から秋田へのルートですが,「きらきら」の秋田発は14:07なのでいろいろなチョイスができそうです。鈍行趣味としては,青森発10:40の652Mが魅力的ですが,秋田着が13:53です。今のJRなら14分あればほぼ問題はないのですが,今日の「きらきら」は絶対外せません。弘前に8:48に出れば「リゾートしらかみ」もあるのですが,弘前に出てガソリンを入れてレンタカーを返してとなると,そこそこの早起きが必要です。この2日早起きが続いているので,今日はゆっくり車で大館に出て,男鹿線のACCUMにちょっと乗って秋田へ向かう行程にしました。

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鷹ノ巣ではEF510の貨物列車と交換

 (2019年)7月15日(月),今日はゆっくり温泉で朝湯に浸かり,9:00前に旅館を出発します。温泉からの道路はダートからかなり傷んだ舗装道,国道102号線と段々によくなって,黒石からは東北縦貫道です。東北縦貫道の碇ヶ関から鹿角までのルートは,大館を通らず,小坂を通る直通ルートです。今回通って初めて知りましたが,ルートから外れた大館も,今は秋田道という道路ができて市内中心部まで高速で入れます。10:20過ぎには大館駅前に着きます。駅前の秋田犬の里も興味を引きますが,ジュニアは興味を示しません。後で調べると2019年5月に開館したばかりだったので,話のタネにちょっとでも覗いておけばよかったです。

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白神山地方面を望む

 大館駅でパスを見せて入場すれば秋田ゆきの1650Mは既に入っています。約束どおり足回りの見える位置から写真を撮ったり,花輪線ホームを検分したりでゆっくりします。10:41,時間になれば休日の昼前でガランとした列車は秋田に向けて走りだします。奥羽本線は,この後乗る羽越本線と共に交流電化,単線と複線が混在する幹線です。駅間でのトップスピードは結構速いし,対向列車,駅での待合せも多く,僕の感覚では最も乗って面白い種類の線区だと思います。

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北金岡では「リゾートしらかみ」と交換

 16分走った鷹ノ巣ではさっそく貨物列車と交換です。もと北斗星用のEF510-500牽引のコンテナ列車ですが,なかなかきれいに撮れました。列車は米代川が開いた米どころを進みます。右手には白神山地が見えていますが,この山地はこれという特徴的な主峰がなく,僕にはただの山並みです。4分停車の東能代に続き,北金岡ではハイブリッドディーゼルカーの「リゾートしらかみ」と交換です。

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干拓地の向こうに男鹿の山々,風車が見えると追分

 東能代で90度左に曲がり,進行方向が南を向くようになると,右手は八郎潟の干拓地になります。もともとの陸地と干拓地の区別がつかない広々とした田んぼの中を列車は進みます。男鹿の山々,風力発電の風車が見えてくると,男鹿の入口,追分に着きます。

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男鹿線,往きはDENCHA改めACCUMの1131M。反対エンドは青色の電車 @追分(赤)/上二田(青)

 奥羽本線1650Mの旅は快適でこのまま続けたいところですが,秋田に着くのが早いので,男鹿線でACCUM試乗の道草です。ACCUMは電化区間を走っている間に蓄電池に充電し(駅構内に短い架線を設置し,停車中に充電することもできる),電化区間から分かれた非電化区間もバッテリーの電力で走る新しいシステムの電車です。JR東日本の烏山線が最初ですが,JR九州でも交流版のDENCHAを開発し,男鹿線のEV E801系はDENCHAのアーキテクチャで製作されています。

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EV E801系の車端部の見付

 僕は以前,烏山線のACCUMは乗ったことがありますが,基本的には新しもの好きなので,男鹿のACCUMも体験乗車です。部活や補講の高校生で賑わう追分駅からACCUMに乗ります。ACCUMはJR東日本の蓄電池電車の愛称ですが,基本設計がJR九州なので上の写真の車端部など車内の造作にはJR九州のテイストが漂います。2017年製の電車はまだピカピカで快適ですが,あちこち検分する間もなく約10分で上二田に着きます。

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上二田駅

 上二田は畑の中に設けられた棒駅の停留所です。ホーム下の小屋には簡易自動券売機があるので,ある程度の乗降はあるのでしょう。全ての設備が新しいので新設駅かと思いましたが,開業は1956(昭和31)年だそうです。まだ7月15日ですが,夏空の陽射しの下は暑いくらいです。ほどなく帰りの1132Dはやってきて,今度は古色蒼然のキハ40で秋田に向かいます。海の日・昼前の男鹿線はお客さんも多く,僕は相席のボックスに割込みますが,ジュニアは立ち席です。

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帰りの男鹿線はキハ40 @上二田

 13:14,秋田着。今回の旅行の目的2の「きらきら」は14:07の発車なので小1時間あります。昨晩の食事は川魚に山菜と食べ盛りの高校生向きではなかったので,お昼はジュニアの選択で比内地鶏の親子丼にします。中はがらがらなのにウェイティングリストに書かせ,繁盛店に見せかける手法に騙されましたが,今日は後がつかえているので食事の所要時間が短いのは助かります。

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お昼は比内地鶏の親子丼(と蕎麦のセット)

 30分もかからず食事を済ませてホームに行くと,ちょうど下りの「きらきら」が到着するところです。隣のホームから写真を撮りますが,跨線橋が影になり上手い具合に撮れません。

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「きらきらうえつ」秋田入線

 「きらきら」の秋田での折返し時間は20分で,写真を撮って,飲み物などを仕入れて,指定の席に落ち着くにはちょうどの時間です。朝4時半起きしてとった席は4号車10番BC席で,先頭の展望フリースペースの入口です。列車は14:07,時刻表どおり,成田エクスプレスなどと同じミュージックホーンを鳴らして発車です。3駅走り,桂根あたりから右手に日本海が広がります。何度も通ったことのある区間ですが,振返ると上りの普通列車でここに来るのは久しぶりです。こんな秋田の近くで海が見えたかなと思いつつ,海の景色を楽しみます。

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羽後本荘で。ホームの上屋の影が少々邪魔ですが秋田よりだいぶ良い

 新屋での運転停車のほかは39分間無停車で快適に走り,14:46羽後本荘に着きます。ここでは4分止まりますが,秋田駅での列車の撮影条件が良くなかったのは皆さん同じと見えて,多くの人が電車を降りて写真を撮っています。席の前の展望フリースペースは明るく広く,運転士さんの所作もよく見え,かぶりつきも楽しめます。この電車は485系の改造車なので,6連のメーターの並ぶ運転台は国鉄電車そのものです。ところで,交直流特急型は対応する電源周波数が異なるだけで付随車の形式はどれも481で,制御車はクハ481を名乗っていましたが,この電車はクハ485です。一般のクハ481とこの電車ではメカ的にどんな違いがあるのか興味が湧きます。

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展望スペースでかぶりつけば,運転士さんの所作もよく見える

 金浦(このうら)ではまた5分止まり,下りの「いなほ5号」と交換です。多くのお客さんが「いなほ」の写真を撮りにホームに降りていますが,僕は駅舎へ走り,スタンプ蒐集に精を出します。南極探検の白瀬中尉は知っていますが,この地の出身とは知りませんでした。白瀬中尉のふるさとを謳うスタンプは新しく好もしいデザインです。また,今日のとびらの「きらきら」の写真も金浦で撮ったものです。

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金浦駅のスタンプ。駅のスタンプ蒐集も旅行の楽しみの一つ

 金浦を出ると次は奥の細道にも詠われた象潟です。歌に詠まれた象潟や九十九島は実は線路より山側にあり,なにやら碑が建っているのが見えます。山側の車窓は本来なら鳥海山が優美な姿を見せてくれるのですが,今日は未だ梅雨空でたっぷり雲をいただいています。上空は青空ですが,山の天気は厳しいようです。

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鳥海山は雲のなか @金浦~象潟

 この辺りで海側に目をやると平べったい島,飛島が見えます。ここは酒田市に属し,市営の定期船が1時間15分で結んでいます。

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日本海にうかぶ飛島 @上浜~小砂川

 象潟の次は17分で吹浦です。吹浦には昔,ユースホステルがあり,ここに泊まった後,青森まで日がな8時間も鈍行に乗ったことがありました。山側の車窓には変わらず鳥海山の山裾が見えていますが,上の方は相変わらず雲の中,今日は山全体は見られなさそうです。

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「きらきらうえつ」の旅も半分消化 @酒田

 秋田からほぼ2時間,16:03,酒田に着きます。ここでは運転士,車掌が交代,これより南はほぼ毎週末運転の準定期列車になります。また,ラウンジカーの店員も乗車し,乗って楽しい「きらきら」らしくなります。7分止まって,16:10,「きらきら」の旅の後半戦スタートです。ホームでは先ほど交代した運転士さん,車掌さんが列車のお見送りをしてくれます。ちょっとした事ですが,わざわざ7分待っての心遣いが嬉しい一コマです。

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西鶴岡あたりから見た鳥海山。少し雲が高くなり,それらしい山容が見える

 酒田を出ると陸羽西線を分ける余目,鶴岡とそこそこ大きな駅が続きます。この辺りは最上川河口の低地部を嫌ったのか,羽越本線は幾分内陸寄りを走り,小波渡あたりから再び日本海に沿うようになります。途中,西鶴岡あたりでは海側の車窓の正面に鳥海山が見え,なにか不思議な景色です。ここから村上にかけて日本海に寄り添う風景は「きらきら」の車窓の白眉です。今日は夏でまだ陽が高いですが,ここから夕焼けに染まる日本海に落ちる夕日を見たら,絶景車窓でしょう。

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羽越本線,笹川流れの車窓 @越後寒川~今川

 あつみ温泉,鼠ヶ関と止まり,鼠ヶ関を過ぎれば新潟県です。このあたりもずっと日本海を望む車窓ですが,越後寒川~桑川あたりは笹川流れと呼ばれる景勝地です。桑川駅は道の駅併設で夕日会館と名付けられています。日本海の車窓を随分撮りましたが,夕方5時を過ぎ,どれもパッとしません。「きらきら」に乗って笹川流れなしでは寂しいので,1枚だけを載せておきます。

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粟島の向こうに陽は傾いて @桑川~越後早川

 日本海上には粟島が現れ,車内の照明が消えて交直セクションを通過,村上には17:40の到着です。村上から線路は内陸に入り,越後平野の米どころの田んぼの中を走ります。左の山側には朝日連峰などが見えるはずですが,あいにく雲の中です。行程の9割かたを消化し少し飽きてきたので,車内を見分して回ります。2号車にはスタンプがあり,秋田延長記念バージョンもあります。これらを押して席に戻れば,列車は最終行程です。

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「きらきらうえつ」のスタンプ各種

 18:06着の新発田から列車は白新線に入りますが,運転系統上はこちらの方が特急も走る本線です。東京への配給回送待ちのE235系や準備中の「いなほ」が見える元・上沼垂の新潟車両センターが見えると,新潟まではあと僅かです。

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高架に上がれば,高架化工事の続く終点新潟駅

 高架に上がると列車はスピードを落とし,一番左の5番線に到着します。ちょうど「いなほ」の隙間時間帯にあたるため,上越新幹線直結のホームに到着です。ピカピカのホームでは,列車に乗ってきた人も,通りがかりの人も,たくさんの人が電車の写真を撮っています。秋田から4時間24分,飽きることのない「きらきらうえつ」の旅でした。今年の夏休みは三陸鉄道が目標で,この「きらきら」はジュニアのアイディアを受け入れたものだったので,提案に始まり,きっぷの手配までジュニアには大感謝です。

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新潟駅ではたくさんの人が「きらきら」に集まる

 明日は会社なので当初は直ぐに新幹線で帰る計画でしたが,ジュニアの行程に付合ってもう一仕事です。昨年5月にも新潟には来ているので,勝手知ったるのつもりで駅そばスタンドを探します。今は駅舎建替え中のためこうした設備も日々変わり,改札口の駅員さんに教わって,改札外のエキナカそば屋にたどり着きます。やなぎ庵と号する駅そば屋さんは,値付けは新幹線駅相当ですが,味は上々です。駅そばだけでは夕食に足りないので,駅前のコンビニに走り,おにぎり,ビールに肴を仕入れます。

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夜のひと仕事,先ずは越後線166Mで吉田へ @新潟

 新潟19:00の越後線166Mは新鋭E129系の2+4の6両編成です。平日ならば帰宅ラッシュ時ですが,3連休最後の祝日とあって,車内は余裕があります。この電車はクロスシートとロングシートが混在した造りで,乗客の好みに応じて使い分けもできるアコモデーションです。内野あたりからはボックス占拠状態になったので,持参の肴とビールでゆっくりします。

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弥彦線は115系。それも1001番 @東三条

 吉田に着けば,弥彦線の東三条ゆきに2分の乗継ぎです。この249Mですが,115系の3両編成,それもMc+M'+Tcともに1001番の編成です。どこで調べたかジュニアの情報で,115系ということは知っていましたが,1001番はびっくりです。115系1000番台車は1977年からの6年間に200ユニット以上が製作されましたが,その大半が廃車されるなかトップナンバーが生き残っているのは驚きです。よほどデキが良いか,トップナンバーゆえ関係者に大事にされているか,どちらでしょう。この列車は燕三条で降りて新幹線を待つ予定でしたが,115系が名残惜しくなり,東三条まで往復します。21分到着が遅くなり,乗換えが少々慌ただしいですが,結局乗る新幹線は同じ「Maxとき348号」です。

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帰りは燕三条から新幹線,「Maxとき348号」 @燕三条

 東三条から戻って燕三条に着けば,7分の乗換えで帰りの新幹線です。ここで家への土産に笹団子を買おうとしますが,ジュニア曰く既に1つ買ってある,ならばとビールと肴だけを買って新幹線に乗込みます。地方の20:30は完全に夜で静まり返っていますが,さすがに三連休最終日の上り新幹線,「Maxとき348号」の自由席は105%位の乗りです。とりあえずは3人掛けのB席に分かれて座りますが,長岡までの利用も結構あり,長岡からは並んで座ることができました。この列車は高崎から回送も兼ねた「たにがわ」を増結しますが,既に落ち着いてしまったので,空いた車両への移動はやめにします。

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以降の列車3本まとめて。上野東京ライン1951E,京急2274H,同2202レ

 わが家のお約束どおり,今夜も上野乗換え,上野東京ラインで横浜を目指します。列車が多少遅れていて,乗った列車は予定より1本前の1951Eです。横浜に着けば23:00過ぎ,明日の仕事もあるので早く帰りたくなり,京急利用です。23:25,自宅最寄りの屏風浦駅に到着,ちょっと早いですが夏休み三連休パスでの東北旅行も完了です。

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3日分のGPSログ。ざっと東北1周,鈍行列車の旅です

 この旅行はたまたま「きらきらうえつ」に乗りたいジュニアと,三陸鉄道の全通鈍行に乗りたい僕の利害が一致し,楽しい親子二人旅になりました。「SL銀河」,三陸鉄道の全通鈍行,「きらきらうえつ」と毎日,長距離・長時間鈍行に乗り,大満足です。お仕事の忙しい奥は留守番でジュニアと二人でしたが,いつまでこんな家族旅行は楽しめるのでしょうか。いつとも知れぬ次回を期して,3連載の筆をおきます。(2019.8.18記)

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