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2021-05

知って楽しいJRの旅客営業制度1--大都市近郊区間と140円旅行

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まさにイメージ。昔は「東京近郊区間路線図」でしたが,今はこの図と東京近郊区間は関係ありません。

 JRの旅客営業制度に「大都市近郊区間」に関する規定があります。今日はこの制度とその応用編の140円旅行について書いてみます。そもそもきっぷ(乗車券)というものは実際に乗車する経路どおりでなければならない(旅客営業規則,以下「規」67条)ものですが,線路網と列車が稠密な大都市近郊では実際の乗車経路を確認しながらきっぷを売るなどということはできません。

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大宮~八王子の経路はいろいろ

 例えば大宮から八王子に行くことを考えます。距離が短いのは武蔵野線経由ですが,その経路で行きたい人もいれば,南浦和,西国分寺と各駅停車しか止まらない駅での乗換えを嫌って,都心の新宿まわりで行きたい人もいるでしょう。ホームに行って時間を見て考える人もいるかもしれません。この区間の運賃をみると埼京線,武蔵野線経由では47.9km800円
(このスレッドの運賃は全てきっぷ運賃),一方,新宿経由では64.5km1,080円です。お客さまに経路を確認しながらきっぷを売るのは現実的でありませんが,経路は最短経路でなければならないとすると,大回りをした善意のお客さまが不正乗車になってしまいます。この矛盾を解決するために旧国鉄の制度担当は知恵を絞ったのでした。

  第157条 選択乗車...(略)
  2 大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は,その区間内においては,その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず,同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。
  3 前項の場合,普通乗車券を所持する旅客が,他の経路を乗車中に途中駅において下車したときは,区間変更として取り扱う。

 ある一定の範囲に限っては,運賃は最短の経路で計算しておきますので,お客さまの好きな経路を通って構いませんというルールを作ったのでした(規157条2)。この一定の範囲が「大都市近郊区間」で,東京,大阪,福岡に設定されていましたが,2004年と2014年に新潟と仙台が追加されて,現在は5つが設定されています(規156条(2))。これらの区間内でクローズするきっぷに限っては,最短経路で運賃計算する代わりに,有効期間は1日限り,途中下車はできませんという制約がつけられているのです。この3つのルールは大都市近郊に住んでいる者からするとほぼ電車利用の常識ですが,制度のたてつけからすると例外なのです。乗車券の通則は,指定された経路どおりにしか乗れない,有効期間は概ね200km伸びるごとに1日加算され1日限りということはない,途中下車もできる,です。この辺については後日,時間を割いて説明したいと思います。

 さて,話を大都市近郊区間に戻して,今度は東京近郊区間について見てみます。現在の東京近郊区間は下のとおりです。

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東京近郊区間(2017.1.20現在)(JR東日本の「きっぷあれこれ」ページから)

以前は東海道線なら平塚,以下,中央線-大月,高崎線-熊谷,東北線-小山,常磐線-土浦,総武線方面-成田,成東,茂原,木更津までの概ね東京駅から70km圏が東京近郊区間でした。ストアードフェアシステム(当時はSuicaはまだなくイオカード)の進展に伴い,1999年に東京から100km圏に拡大されました。大都市近郊区間の,経路を指定しない,当日限り,途中下車できないの3点セットがSuicaの仕組みと親和性が高いので,その後はSuica利用可能エリアの拡大に合わせて,逐次拡大されてきました。そして今では上の図のとおりで,松本とか常陸大子のような,ここが東京近郊か?というところまでが含まれるようになりました。

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八高線まで行くと気動車にも乗れる @高麗川 2016.10.10

 この「大都市近郊区間相互発着の場合は最短経路で運賃計算する」というルールを「大都市近郊区間から出なければ大回りしても構わない」と拡大解釈したのが140円旅行です。例えば,東京駅から140円のきっぷを買って,相模線,八高線,両毛線,水戸線から房総方面をぐるりと回って隣の神田で降りるのはルール違反ではないというものです。大都市近郊区間内ならどう乗っても構わないという訳ではなく,運賃計算には同じ駅に戻ってきたら運賃計算を終了する(規68条4)というルールもあるので,同じ駅を通らない一筆書きのルートである必要があります。規則を作った側からすれば,最短経路で運賃計算するけど,大回りしてよいのはその方が時間が短い,便利である,など順路である場合に限るとの趣旨でしょう。しかし,何をもって順路とするかとか,チェックのしようがないということもあり,このような拡大解釈も可能になっているのです。

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大網今昔。1980年夏頃の大網風景と2014年5月の大網駅。あまり変わらい!?

 僕が高校生の頃は高麗川や大網が当時の80円で行けるmaxでしたが,非電化の相模線や,房総の田舎の東金線などに行ったものでした。この頃は旧国鉄の現場がすさんでいた時代で,車掌に見つかり不正乗車扱いされたとか,不正乗車ではないからお金はとられなかったけど自分の乗務する列車から降りろとつまみ出されたとか,いろいろな逸話があります。今ではJRの接客マナーは格段に改善され,ある駅のお客さま相談窓口のご担当いわく,140円旅行のルールを知らない係員はいません,いたらモグリですという時代になりました。実際,最近は,きっぷに表示の区間とは全く異なる所で車内改札がきても,140円旅行で大回り中ですと答えてイヤな思いをしたことはありません。

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行程表の例(下の5.のときのもの)。これは「やり過ぎ」でメモで十分

 そうはいっても,規則の網の目をくぐるような乗り方には違いありませんので,実際に140円旅行をするときは,こちらもそれなりに準備をして行くのがよいと思います。1つは行程表で,今日はこのようなルートで旅行中ですということを簡単に説明できます。僕の場合は乗った電車の車号を書込んだりするので,これ以上のアリバイはありません。もう一つはきっぷで,Suicaで乗っても規則的にはOKですが,僕のような古い人間はどうも電子では証拠力に劣るような気がします。たった7円の違いなので,紙のきっぷのほうが,後日の思い出や記録に残ること請合いです。

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きっぷの例(下の5.のときのもの。この時は帰りの分も含め往復乗車券を用意した)

 ここで140円旅行の例をいくつか挙げておきます。僕の場合は,大都市近郊区間のルールを使った大回り乗車を140円旅行と呼んでいるので,実際にはもっと高いものもあります。なお,最長ルートは1035.4kmだそうで,この距離になると1日では乗り切れず,俗説では終夜運転のある大晦日から元旦に決行するらしいです。ネットで「大都市近郊区間 大回り」などで検索すると,先人の旅行記がたくさんヒットするので,これらも参考になります。

1.山手線を反対回りに乗って,隣の駅で降りる。--140円旅行の初歩中の初歩です。ちなみに,降りた駅から出発駅に戻るにはもう140円要るので,山手線1周は280円というのはちょっとした鉄道雑学です。
2.ちょっと房総を一回りの140円旅行
3.行ってみたい所へ,ポイントを絞った140円旅行
4.たった3駅だけどSL列車にも乗れる140円旅行
5.朝から深夜まで東京近郊区間を乗りたおす140円旅行(その1その2その3
6.東京近郊区間の最長ルート(周回ルート)の140円旅行(その1その2その3その4追補
7.新潟近郊区間の140円旅行
8.仙台近郊区間の140円旅行

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工夫次第でこんな列車も乗れる。EL&SLみなかみ,リゾートやまどり藤まつり

 最後に「大都市近郊区間」と140円旅行の今後です。ルールの経緯は上のとおりなのでJRとしてはなくしたいのだろうと思いますが,うまい代案もなく,当面はこのまま続くのではないでしょうか。ごく僅かなヒマ人に大回り乗車をされたところで,大きな損失がある訳でもなく,そのためのルールやチェック機構を開発してもむしろ過剰投資になってしまいます。将来,GPSや車内・駅構内LANなどのテクノロジーが進化して,お客さまの乗った経路がトレースできるような時代になると,きっぷのルールも大きく変わると思います。それまでは,鉄道や旅行愛好家へのちょっとしたお楽しみとしてルール存続をお願いしたいところです。(2017.1.20記)(2018.6.16リンクを一部追加)
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コメント

Re: 140円旅行

スカセンさま
コメントどうもありがとうございます。
ご指摘のとおりです。そうは言っても,140円の乗車券で山手線1周ができるのは神田か秋葉原と限られてしまうので,俗説は俗説で有効と思っています。詳しくはこちらに書いていますので,お時間があればご参照ください。
http://kurikomasha.blog.fc2.com/blog-entry-61.html
 ブログ主宰者

> 1.山手線を反対回りに乗って,隣の駅で降りる。--140円旅行の初歩中の初歩です。
> ちなみに,降りた駅から出発駅に戻るにはもう140円要るので,山手線1周は280円というのはちょっとした鉄道雑学です。
>
> どうもこの手の俗説が後を絶たないようですね。
> ちなみに。東京→中央本線→御茶ノ水→総武本線→秋葉原→東北本線→東京の片道乗車券で山手線を一周出来ます。

140円旅行

1.山手線を反対回りに乗って,隣の駅で降りる。--140円旅行の初歩中の初歩です。
ちなみに,降りた駅から出発駅に戻るにはもう140円要るので,山手線1周は280円というのはちょっとした鉄道雑学です。

どうもこの手の俗説が後を絶たないようですね。
ちなみに。東京→中央本線→御茶ノ水→総武本線→秋葉原→東北本線→東京の片道乗車券で山手線を一周出来ます。

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