知って楽しいJRの旅客営業制度3--乗車券の経路と種類

旅客営業制度の解説の3回目は乗車券の経路についての決まりを中心にご紹介します。
乗車券を買うときに起点のA駅から目的地のB駅までの間に同じ駅を通るような経路はNG,当り前のようなことではありますが,規則で決まっているのです。
1.乗車経路と運賃計算の経路(旅客営業規則(以下「規」)67条)
乗車券を買うときA駅からB駅までのルートが複数あるとき,旅客営業規則のルールでは実際に乗車する経路どおりの乗車券を買うことになっています。連載1,2でも書いたとおり,大都市近郊区間では経路を特定して乗車券を売ることが実情にそぐわないためルートは自由に選べますが,規定の建付けからするとこれは例外です。この他にも多くの例外があるので,それらは追々説明してゆきます。
2.運賃計算のルートの構成(規68条)
実際に乗る経路のとおりといっても,ルートの構成の仕方はいろいろあります。規定では「同一方向に連続する限り通算する」となっていて,途中で折り返すようなルートは認められません(復乗)。このようなときは折返しとなる駅で,運賃計算を切るルールになっています。
なお,私鉄各社でもこの辺の考え方は同じですが,東京メトロだけは大都市の地下鉄という特殊性から大きく異なっていて興味深いです(詳細はこちら)。

3.環状ルートの構成と運賃計算の打切り(規68条4(2))
上の図の1のように経路が交差していてもそこに駅がなければ同一方向に連続とみなされ運賃計算は連続します。といっても,線路が交差しているのに駅がないのは川崎駅南方の東海道線と南武支線,大阪駅の周辺くらいのもので,全国的にも殆ど例はありません。通常は同じ駅に2回目に来て,一部が環状のルートになった時点で運賃計算の距離の通算は打切りになります。これは山手線のような純粋なループのほか,「の」の字になった時も同じです。これも後述しますが,乗車券は距離が長いほどお得なので,この「の」の字乗車券は使いでのあるルールです。

ちなみに大都市近郊区間の大回り乗車をするときの「一筆書き乗車に限る」とか「同じ駅を通ってはいけない」という制約は,このルールによるものです。
これらは乗車券の種類でいうと普通(片道)乗車券であり,経路の面で普通でない乗車券には往復乗車券と連続乗車券の2種があります。
4.往復乗車券(規26条(2),90条(1))
いわゆる往復乗車用の乗車券で,往きと帰りの起点と終点が同一です。有効期間は片道の2倍,値段も600km以下では2倍です。片道601km以上になると往復割引が適用になり,往き帰り共に1割引になりますが,次回に詳述します。

最も単純な往復乗車券(山手線1周にも使えます)

一般的な往復乗車券(往復割引あり,地紋が緑の旧様式)

硬券の往復乗車券(京王線との競合から多少の割引があった)
小児断片が真ん中にあるので,小人のときは特殊な形のはさみで切り落としていた
(もちろん2操作でよければ,普通のはさみでも切れる)
またまたJR以外の話題になりますが,京急の往復乗車券は変わっていて往き帰りの指定がなく,いうなれば2回回数券になっています。とくに割引がある訳ではないので合理的な発券法で,実際に2人で1回の片道に使うこともできました。

京急の往復乗車券。どこにも年の表示がないですね...
5.連続乗車券(規26条(3),90条(2))
連続乗車券は復乗の救済のような制度で,経路の一部に往復になる区間があるときに発売され,運賃は各区間の合計です。典型的な例は東京(A)から仙台(B)に行く途中に日光(C)に寄るようなケースです。連続乗車券は普通乗車券を2枚買うのと殆ど変わりはありませんが,有効期間が通算になるところが異なります。しかし,この有効期間の通算はメリットで,2枚目の有効期間の開始日が未確定の時などは使いでがあります。

上のような例の時,A~Bの片道乗車券とD~Cの往復乗車券とするか,A~CとC~Bの連続乗車券とするかは悩ましいです。一般に前者は乗車券の区間が3つなのに対し,後者は2つなので,連続乗車券の方が有利になりそうです。A~B間が601km以上で往復割引適用なら,前者の方が大抵は安くなると思われます。なお,A~Bが大都市近郊区間に収まるか100km以下の時は,前者の買い方はできません。
この他,3.で書いた「の」の字乗車の後,起点の駅に戻る場合にも,連続乗車券は使えます。

連続乗車券の例1

連続乗車券の例2
6.その他の乗車券の種類
ここまでは乗車券の経路による違いでしたが,他の乗車券の種類について触れておきます。一つは回数券で,10回分の運賃で11回乗車することができます。一部の私鉄では,使える時間を限定した12回分や使える曜日を限定した14回分回数券もあります。また,回数券の有効期間は3か月,大人用の回数券1枚を小人2人で使うこともできます。
JRや私鉄の回数券は区間ごとに発売するのが一般的ですが,地下鉄などではバスの回数券のように発駅フリーで金額のみを指定した回数券としている事業者もあります。自分の知る限りでは,東急は金額式の回数券になっています。また,JR東日本は回数券に対して消極的で,時差券,ホリデー券の設定がないどころか,去年の2月10日から短距離の券売機での回数券の発売をやめてしまいました。効力に違いはないのですが,たかだか百数十円のきっぷに印刷発行機の大判サイズを使うのはエコでないと思っています。

JR(東日本)の回数券。今は下の大判サイズしか売っていない

昔は山手線内の各駅相互間で使える回数券もあった

地下鉄の金額式回数券
もう一つは定期券で,発売の区間については1,3,6か月間何度でも使えるものです。1か月の通勤定期運賃は概ね片道運賃30回分の5%引きです。また3,6か月の定期運賃は,1か月の運賃の3倍,6倍のそれぞれ5%,20%引きです。

常備券のころの定期券(随分古いものですがあしからず)
知って楽しいJRの旅客営業制度バックナンバー
1.大都市近郊区間と140円旅行
2.きっぷの有効期間と途中下車
関連記事:日本海&新青森の旅に行ってきました(連続乗車券の例1の旅行記)
「あけぼの」のお名残り乗車に行ってきました(連続乗車券の例2の旅行記)
(2017.6.3記)
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