2020年春のアクティビティ1--青春18きっぷでダイヤ改正のおさらいに福島へ・後編

(前編から)
(2020年)3月14日はJRグループの全国ダイヤ改正でしたが,1週間後の土曜日に今年のダイヤ改正で動きのあった福島県に青春18きっぷで行ってきました。前回に続き,全線復旧開業なった常磐線に乗った後,今日はいわきからの帰りの様子をご報告します。

当日の行程表
話は旅行前に戻りますが,復旧開業した富岡~浪江間に乗った後の行程について,常磐線を突き抜けて,岩沼から東北本線で帰るルートを当初は考えていました。多少時間があるので,蔵王のきれいなあたりで写真を撮ることもできそうです。同じく富岡~浪江訪問を検討していたジュニアいわく,いわきに戻るとぴったりの接続で磐越東線の列車があり,以降の接続はよくないですが,バス代行中の水郡線経由で帰る行程が成立するそうです。郡山と常陸大子でそれぞれ67分の待ち時間は潰しかたに困りますが,磐越東線は多分20年以上行っていません。また,郡山の67分はその間に磐越西線の喜久田まで往復できる--しかも帰りは今改正で指定席車連結になった快速「あいづ」で--ことが分かりました。これが決め手となって,ジュニアの磐越東線,水郡線案採用となりました。

磐越東線737D @いわき 2020.3.21(以下同じ)
話を旅行当日の(2020年)3月21日(土)に戻します。いわきからは13:09の磐越東線737Dで郡山を目指します。僕が初めて磐越東線を訪れたのは1978年(昭和53年)で,DD51が雑型客車や大越のセメント工場へのホッパー車を牽いていました。夏休みに夜行明けで郡山から乗った列車は暑かったのと,キハ58の修学旅行用バージョンの800番台が残っていたのが印象です。その後,1回くらい乗り直しをしていますが,かれこれ20年ぶりの訪問です。

石積みのポータルが歴史を感じる江田トンネル @江田~川前
列車はいわき駅を出ると僅かの間,常磐線と並走しますが,90度以上右に曲がって北,阿武隈山地を目指します。気動車はキハ110系の2両編成,420PS機関は力強く,電車のような加速で登り勾配を駆け上がります。小川郷あたりまではいわきの郊外の景色ですが,その先は山が深まりトンネルも増えます。磐越東線はいわき,郡山の両側から工事が進み,小川郷~小野新町がつながって全線開業したのが1917年(大正6年)です。通過するトンネルのポータルがどれも昔風の石積みで,100年の風格を感じます。

磐越東線は夏井川に沿って上る @江田~川前
小川郷を出ると列車は夏井川の谷を上るようになり,人家も少なくなります。この夏井川沿いの谷筋は国道も並行していませんが,急なカーブは少なく列車は結構なスピードで走ります。この737Dはいわき~郡山間85.6kmを1時間35分で走り切り,表定速度54km/hは単線の地方交通線の普通列車としては上出来です。

夏井千本桜はまだかなり早そう @夏井
夏井は夏井川に沿ってちょっと開けたところですが,左の車窓に川に沿った桜並木が眼に入ります。夏井千本桜というそうで,3週間後くらいの開花シーズンはきれいだろうと思います。夏井の次の小野新町は,川は未だ太平洋にそそぐ夏井川ですが,文化圏としては郡山で,小野新町~郡山間の区間列車も増えます。

神俣の近くで。あぶくま洞の入口,奥の稜線には風車が並ぶ
このあたりの右手は石灰山のカルストで採石場の跡や鍾乳洞の看板が目につきます。神俣の近くのあぶくま洞は釜山採石場の跡地で1969年に発見されたそうです。また,奥の山の稜線には風力発電の風車が並び,現代的な車窓でもあります。神俣の次の菅谷あたりからは釜山採石場の跡が見えます。駅前には入水鍾乳洞の案内板がありますが,これはあぶくま洞とは別の鍾乳洞です。

菅谷あたりからは釜山採石場跡の露頭が見える
郡山が近づくにつれ,お客さんも徐々に増えてきます。三春からは僕のボックスも4人掛けになり,立っている人もいます。

三春では734Dと交換
郡山の盆地に入り阿武隈川の本流を渡って,郡山総合車両センター(元の郡山機関区)をかすめれば,郡山に到着です。陽射しもよく僕の周囲では居眠りしている人も多かったですが,キハ110系のパワフルな走りに夏井川の渓谷と阿武隈山地の山の景色で飽きることのない磐越東線の旅でした。最後につけた地図でも分かりますが磐越東線は意外と南北に走っていて,東西に走るイメージとは随分違うというのも感想です。

磐越西線1229M @郡山
郡山での接続はよく,5分の接続で1229M会津若松ゆきに乗換えます。線路戸籍上は一体をなす磐越線グループですが,東線,西線を直通する列車はなく,お客さんも少なそうです。乗継ぎを早々に済ませ,郡山駅の見分は喜久田から帰ってからにします。

快速「あいづ」用に指定席車を連結するE721系4両編成と指定席エリアの外観 @郡山
1229Mは郡山富田か喜久田のいずれかまで乗車の予定で,折返しの「あいづ」の写真の撮り易そうな駅をその場で決める計画です。1つ目の郡山富田は3年前にできた新設駅で棒駅,写真は撮りづらそうです。2つ目の喜久田に向かうと郡山の市街地も途切れがちになり,進行方向に磐梯山の雄姿が見えてきます。これは喜久田選択が大正解だったようで,それで撮ったのが今日の扉の1枚です。喜久田では滞在8分で慌ただしく,今,写真を撮った快速「あいづ」で郡山へ戻ります。磐梯山の麓を行く磐越西線は以前からのお気に入りで,いつかゆっくり撮影行に来たいと思います。

郡山には只見線での運用を終了したキハ40が集う
郡山に戻ると,東側に見える郡山総合車両センターの写真を撮りに磐越東線の6番線ホームに行きます。ここからは只見線用のキハ40を多数見ることができます。実はこのときはキハ40の活躍が見られるのもあと僅かと思って写真を撮ったのですが,新津へのGV-E400の投入でキハE120が郡山へ移動し,玉突きで只見線のキハ40は運用終了だったそうです。このキハ40は会津若松派出から撤収してきた後,疎開のような形で留置されていたのでした。そうと知っていれば,別の感慨を持って写真を撮ったのですが。

キハ40-2026。2000番台は本来暖地向け形式なのによくがんばった
手近にいた1両を形式写真風に撮ってみます。押しボタン式の扉に乗降口案内の小窓,バス用のクーラー,GPSアンテナに保護柵とよくもまあいろいろ改造されたものです。調べると1987年の水戸を振出しに,新庄,小牛田,郡山と南東北を渡り歩いた車歴の賜物です。1987年製とキハ40のなかでは新しいので,どこかへ転配されるのか,そのまま廃車か気になるところです。

郡山総合車両センターに残る転車台
郡山総合車両センターは元の郡山工場の機能も引継ぐ大きな現業機関です。車両の向きを変えることもあるのでしょうか,転車台がきれいな形で残っているのも眼を惹きます。鉄道の要衝,郡山を十分楽しんだ後は水郡線の旅に備え駅そばで腹ごしらえです。郡山は2階の新幹線改札の中と1階の改札口の外に駅そば屋さんがあり,後者の「そば処あさか」でかけそばを食べます。東北の割に出汁は薄いですが,そばは黒めの平らな麺でまずまずです。

郡山駅1階の「そば処あさか」とそば
郡山駅での水郡線ホームは東北本線の下りホームの切欠きの3番線で,2番線の南側80mにあります。時間がないときは注意が必要などと写真を撮っているうち,自分も発車の30秒前に駆込むドタバタです。

郡山駅の昭和の時代と変わらない地下の連絡通路と水郡線の乗り場案内

水郡線330D @郡山(エンドチェンジ前に撮影)
水郡線の330Dは時刻表どおり発車,最初の1駅,安積永盛までは東北本線を上ります。ここから左にそれて,福島・茨城の県境の高原地帯を水戸に向けて進みます。安積永盛を出ると間もなく阿武隈川の本流を渡り,暫くは川から離れますが,川東あたりから再度,阿武隈川に沿うようになります。このあたりは盆地でもなければ山地でもなく意外と平らで,里山の向こうには福島空港があります。

泉郷~川部沖で。梅の木のきれいな向こう2,3㎞のところに福島空港がある
磐城棚倉まで来ると,峠を越えた印象はなく,福島県のままですが川の向きが変わます。水郡線は奥久慈清流ラインの愛称がついているとおり,ここからは久慈川とともに走ります。

磐城棚倉はJRバス白棚線が白河とを結ぶ
17:08発の磐城塙で下りの337Dと交換,次の磐城石井あたりで西の山ひだ八溝山のほうに陽が沈みます。今日の磯子着予定は24:00前後,まだ7時間の行程が残っています。

ダイヤモンド八溝という訳にはゆきませんが,きれいな日没
列車は矢祭町に入り,矢祭山に止まります。駅の両側が公園になっているようで,駅前には渓流に赤い吊り橋が架かります。

矢祭山駅前のあゆのつり橋
矢祭山と下野宮間に福島・茨城の県境がありますが,列車は峠を越えるわけでもありません。上に書いたように分水嶺はもっと郡山寄りで,東北・関東の境の割には穏やかな地方界です。

水郡線の駅・沿線案内。私鉄のようなカラフルなもの
列車は17:38,常陸大子に着きます。この先は去年の台風19号で橋梁が流出し,バス代行になっています。代行バスのダイヤは茨城県内の流動を主体に作られているため,ここで67分のバス待ちです。

常陸大子駅前に保存されるSL,C12-187。32年の車歴のうち30年は九州で活躍した由
常陸大子は駅近くに水郡線営業所があり,水郡線の営業,運転の拠点です。駅前には静態保存のC12が展示され,鉄道の町らしい佇まいです。日は暮れてしまいましたが,残照を頼りに,水郡線営業所のほうなどをぶらぶら歩きます。

水郡線営業所。JRの車両基地といっても土曜の晩は静まり返っている
また,ここには転車台が残っており,先ほどの郡山と共に,この2駅間であれば新たな転向設備なしにSL列車の運転も可能で,期待が膨らみます。

常陸大子に残る転車台
17:56に下りの代行バスが着き,18:05にそれを受ける339Dが行ってしまうと,いよいよもって周囲は誰もいなくなり,寂しい山の宵になります。商店街のスーパーを覗いたり,駅隣接のコンビニでみやげのこんにゃくを買ったりしましたが,ビールが見つからず寂しい車中になりそうです。

宵闇の常陸大子駅前と代行バス
18:45,時間になれば代行バスは出発です。僕の他は18きっぱー風の旅行者2名,フルサイズのバスにお客さんは3名です。バスは久慈川に沿い,昼間だったら渓谷がきれいそうな国道118号線を快適に走ります。29分で定刻19:14に西金(さいがね)駅に到着です。

代行バス西金着。バスは茨城交通大子営業所が担当
西金は突然の災害で列車・バスの結節点を担うことになりましたが,元々は棒駅で駅舎も細長い小さなものです。駅の玄関前に着いたバスを降りると,駅舎をスルーしてその先の気動車の入口までが見え,教科書どおりの代行バスの到着位置です。

西金の駅舎内。細い駅舎の先には気動車の入口が見える
5分でも乗継ぎ時間は余るくらいで,19:19,定刻発車です。水郡線後半戦はキハE130系の2+1+1の4両編成です。西金からのお客さんも加わりますが相変わらず空気輸送で,前の2両にポツポツ,3両目は僕1人,4両目は誰も乗っていなくて,お客さんは計7名です。ところでこの区間の気動車も常陸大子の車両のようですが,車両運用はどうなっているのでしょうか。日々の給油や仕業点検は水戸でもできそうですが,何日かに一度,常陸大子に戻して入替えをしているようです。というのも昼過ぎの磐越東線でキハE130の回送を見ていて,なんでこんな所で?と思った謎が解けました。

水郡線856D。こちらは通学輸送の戻りで堂々の4両編成 @上菅谷
856Dは水戸から帰宅の足を優先しているのか,玉川村,常陸大宮で交換待ち,上菅谷でも常陸太田からの列車の待合わせと,やたらと止まります。長時間停車は僕にはありがたく,上菅谷では駅前のコンビニに走り,アツアツのお弁当とビールを仕入れることができました。ここもブランドはセブンイレブンで,今日はセブンにお世話になる日です。

常磐線468M @水戸
水戸からの上りは21:00ちょうどの468Mです。週末きっぷだったら柏まで特急利用の計画でしたが,青春18きっぷでは運賃分が勿体ないので30分遅くなりますが我慢です。水戸を出ればガラガラの車内で1ボックスを占拠,用意の食材で晩酌と遅い夕ご飯です。22:49に時刻表どおり日暮里着,22:55の京浜東北線磯子ゆきに乗換えれば,0:03にはスタートの磯子に帰着です。途中,東京駅から東海道線に乗れば1本早く,0時前に帰り着くことができそうですが,横浜での接続が2分なので,ゆっくり鈍行で帰ることにします。

スタートの磯子駅には2269Aで0:03の帰着
さて今日も青春18きっぷ1枚で随分たっぷり旅行しました。復旧開業の常磐線に乗ったほか,久々の乗車の磐越東線は天気もよく満足でした。指定席車連結の「あいづ」はこれまたちょっと事情があり大収穫,水郡線は夜になってしまいましたが,代行バスも含め楽しめました。距離にすれば627.6kmで,青春18きっぷ1日分の距離としてはまずまずです。乗った距離全体でいえば,ひたちに乗った147.5kmを足して775.1kmでした。

この日のGPSログ。青春18きっぷで627.6km,その他に特急利用区間147.5㎞でした
この稿を書いている3月29日時点で今シーズンの青春18きっぷは2人日分の余りがあり,はてさてどこに行こうか悩ましいです。(2020.3.29記)
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