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2021-05

知って楽しいJRの旅客営業制度12--指定席券とライナー券などの乗車整理券に関する規則

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 JRの旅客営業制度の考察,12回目は指定席料金とライナー券などの乗車整理券に関する制度について説明します。今や優等列車といえば特急列車であり,急行列車の指定席車という言葉は死語に近く,指定席料金といえばSL列車料金のような趣です。一方,乗車整理券,ライナー券のほうは列車や乗車する号車を指定する座席定員制から,座席を指定する方式も現れてその差がなくなってきました。今回も歴史的経緯を紐解きながら,制度の理解を深められるとよいと思います。

1.特急列車と急行列車
 既に第9回で説明済ですが,旅客営業規則において特急列車は空調,ゆったりした座席のような設備と速達性を売り物にする列車で,指定席が標準,自由席特急券は指定席の特急券から530円引きするという考えです。一方,急行列車は設備はともかく速達性だけを売り物にする列車で,座席の指定を受けてゆったり旅行をするサービスへの対価は指定席料金として別途付加されるという考えでした。振返って考えると,この辺の制度的違いもモノが豊かになった現代の社会に合わなくなり,急行列車が淘汰される遠因だったのかもしれません。

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特急列車は本来全車指定席であるべき。「あずさ」 @甲府~酒折 2018.9.23

2.指定席券の現代的意義
 今のJRに定期の急行列車は1本もないので,急行列車の指定席は概念だけで,たまに運転される臨時の急行列車でのみ発売されます。快速列車でも指定席を連結する列車があるので,現代的な意義としては快速列車で座席を指定して定員乗車でゆったり旅行するサービスといえます。大した違いはありませんが,これらを敢えて分類すると,以下の3つがあるかと思います。

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臨時列車では急行券・指定席券もまだ現役。「御殿場線80周年号」 @沼津 2014.11.24

(1)純粋な快速列車
 (2)にも(3)にも当たらないふつうの快速列車での指定席車の連結です。後ろの2つは空港連絡,本四連絡という使命を持つ動脈で本数も多いですが,「はまゆり」はたった3両編成のローカル快速で立派なものと思います。また,先頭の「あいづ」は直近の2020年3月のダイヤ改正から連結されるようになったもので,JR東日本は意外と快速列車の着席サービスに積極的なようです。
・快速「あいづ」(郡山~会津若松)
・快速「はまゆり」(盛岡~釜石)
・快速「エアポート」(札幌~新千歳空港)
・快速「マリンライナー」(岡山~高松)(グリーン車も連結) など

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快速「あいづ」 と その指定席ゾーン @喜久田,郡山 2020.3.21

(2)リゾート列車
 各地を走るリゾート列車は,車両もそのために準備したハイグレードなものも多く,せっかくのリゾート旅行が立ちんぼうでは残念なので,事業者,旅客とも指定席料金の徴収は納得感があります。

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快速「リゾートしらかみ」 @北金岡 2019.7.15

(3)SL列車
 北海道から九州まで各地を走る保存SLによる臨時列車に大抵の場合は指定席料金が必要です。SL列車なので速さは求めませんが,SLの保存,運転にかかる手間などを考えれば,追加の料金は合理的です。面白いのはその料金で,会社や列車で料金が異なります。

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快速「SL銀河」 @陸中大橋 2019.7.13

3.会社,列車,繁閑で異なる指定席料金(旅客営業規則139条の2)
 指定席料金には特急券の閑散期と同様の割引き料金がありましたが,JR北海道とJR九州はこの制度をやめてしまいました。また,2.(3)に書いたようにSL列車でも高く売りたい列車は840円の料金が設定されています。この稿を書くために再度,時刻表を確かめたら,SL列車だけでなく,JR東日本では2.(2)のリゾート列車でも一部の列車に840円を設定していました。なお,指定席料金には繁忙期の割増しはありません。これらをまとめると下の表になります。

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4.指定席券の大人と小人
 現在の小人の指定席料金は大人の半額です。しかし,指定席の占有ということを考えると小人でも1席分をとるので,国鉄最後の1986年9月の料金改定までは大人小人同額でした。このため小人の料金は,料金まるまるが半額になる特急券よりも,指定席券に割引きのない急行券・指定席券の方が距離帯によっては高くなるという矛盾がありました。国鉄の制度担当も分割民営化を前にこのような矛盾をなくそうと考えたのかもしれません。同様に,前回書いた乗継割引きで指定席券を割引くようになったのもこの料金改定の時からです。

5.乗車整理券とライナー券
 最近のJRでは関西の京阪神地区にAシートが登場するなど,通勤ライナーの運転や通勤時間帯の着席サービスが各地で行われています。これらの列車は,上野から東大宮の留置線に回送する特急電車を見て,国鉄の担当が何とか活用できないか考えたのが始まりといわれています。その後,東海道線の「湘南ライナー」では専用の電車,215系も登場し,全国各地に広まりました。

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「湘南ライナー1号」 @東京 2019.3.22

 これらの列車は当初は座席定員制でライナー券には乗車駅と乗車できる号車の案内しか書かれていませんでした。このためきっぷの種類としては指定席券ではなく「乗車整理券」の1態様という扱いです。今はマルス(JRグループの座席予約システム)の発達でどうなっているか分かりませんが,当初は指定席券とは違うのでマルスに収容されておらず,もっと簡易なシステムで販売していました。去年,ホームで案内をしていた係のかたに聞いた際も,機械ごとに販売枠が決まっていて,機械が故障するとその枠の席は発券できなくなると言っていました。

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JR東日本のライナー券。湘南ライナーと中央ライナー(現在は特急「八王子」に格上げ)のもの

 また,ライナー券には1か月分をセットにした「ライナーセット券」もあり,朝のライナー用の月曜日から金曜日まで1か月分をセットで売っています。値段は日数分の掛け算で割引きはありません。ライナー券は当日ホームで買うのがふつうなので,ライナー券販売機では前売りはできず,駅のみどりの窓口で買うきっぷは特別企画乗車券扱いです。

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前売りのライナー券。湘南ライナーのもの

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ホーム上のライナー券の発売機 と 残席数の表示

6.乗車整理券のルーツと条文
 ところで,ライナー券は旅客営業規則上はどのような扱いになっているのでしょうか。規定集を紐解くと指定席料金についてを記した第10節があり,続く第11節は特殊料金です。条文の並びでは140条の2,3とすぐ近くですが,制度的には全く別物です。特殊料金には食堂車の貸切料金,専用線料金,暖房料金などびっくりするような規定が並んでいるその先頭です。

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昔の年末年始の臨時列車の乗車整理券

 その昔,昭和の時代,年末年始の帰省シーズンの優等列車の混雑はひどいものがありました。583系のボックス席の中に立っている客が割込んでくるなどという話を聞いたことがあります。この頃,急行列車の自由席でも優先的に乗車できて,着席保証がある整理券を発売していました。これを「乗車整理券」と呼び,以下の条文がありました。

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旅客営業規則140条の2と3

 5.の冒頭に書いた,大宮ゆき回送列車のライナー営業を始めるとき規定集に当たったらこの条文があったので,そのまま使うことにしたのでしょう。140条には「の2」と「の3」があって,値段が違うだけで同じ規定内容,前者は乗車整理料金,後者はホームライナー料金というタイトルです。元々ライナー券は300円+消費税の金額でしたが,JR東日本がライナー券を500円+税にしたため,「の3」が追加されたようです。

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JR東海のライナー券。車内で発売されたもの

7.ライナー券と指定席券の違い
 ライナー券は今は座席定員制が主流ですが,新宿からの中央線方面は上にきっぷを示したように指定席制でした。こうなるとライナー券と指定席券の違いがよく分からなくなってきます。これについて僕は,途中駅から乗車した場合の扱いが異なると考えています。指定席は指定席車とされた区間は最末端のたった一駅であってもその車両に乗るなら指定席券が必要です。一方,ライナーはライナー券を発売する乗車専用駅から乗車する場合にだけ必要で,その他の駅からの乗車はフリー,空いている座席に座ることができます。これは規定の条文の「列車の始発駅等における座席確保の取扱いをする」という記述から自明だと思います。なお,JR東日本は現在,「湘南ライナー」の大船(一部の列車は藤沢)以西をただの快速列車として,途中駅からの乗車はフリーと明示しています。2014年3月のダイヤ改正より前は大船(同)以西を降車専用駅としてこれらの駅からの乗車はグレーでしたが,組合の指摘で改善したそうです(Wikipediaの記述による)。

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JR東海の「ホームライナー静岡」 @六合~藤枝 2017.5.1

8.指定席券,ライナー券などのこれから
 毎々書くこれらの制度これからですが,指定席は今後もリゾート列車,SL列車のように速達性はないが座席指定をサービスとして売れる列車については続くものと思います。列車の席の需給や設備の豪華さなどによって複数の値段が設定されそうです。制度は単純なほうがよいので,列車ごととかあまり細かい制度設計は反対です。

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ライナー専用形式の215系。週末のアルバイト先の「ホリデー快速ビューやまなし」 @酒折~甲府 2018.9.23

 一方,ライナー券は制度的にしっかりしていないので,通勤ライナーの運転も定着したことだし,制度の再設計と整理が求められます。JR東日本の東京圏だけ520円の設定ですが,房総方面,大宮・高崎線方面,中央線方面ともライナー列車は全て特急になってしまいました。東海道線の「湘南ライナー」は専用車の215系がだいぶくたびれてきたし,185系の置換えも始まりました。もう時間の問題と思われますが,今回のダイヤ改正では実施されませんでした。特急格上げは避けられないものとして,毎々書くように特急の格付けを整理・細分化して,通勤特急に見合う割安な料金設定が望まれます。他のJR各社では乗車整理券の制度は変えないとしても,もう少し落ち着きのよい場所へ移行したり,JR東海とJR九州で10円の違いがある点など整理のしどころはあると思います。(2020.4.5記)
 この記事を書いた後アップしないまま温めているうち,11月12日にJR東日本から「東海道線特急が新しく生まれ変わります」というニュースリリースがありました。これによれば,「湘南ライナー」は全車指定席制特急「湘南」に建替え,185系電車は定期運用を終了だそうです。となると東京圏でのライナー列車は全廃,他地区での動向が気になるところです。(2020.11.22記)

知って楽しいJRの旅客営業制度バックナンバー
1.大都市近郊区間と140円旅行
2.きっぷの有効期間と途中下車
3.乗車券の経路と種類
4.運賃計算の基本と割引き,加算
5.区間外乗車のいろいろ・その1
6.区間外乗車のいろいろ・その2
7.特定市内駅と駅に関わる規則
8.新幹線と周辺の乗車券の規則
9.急行券・特急券と周辺の規則
10.新幹線特急券に関する規則
11.急行料金の割引き(乗継割引き)
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