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2021-05

鉄道のイロハ(3)--JRの路線の名前,線路名称公告と線路の戸籍(追補)

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 以前,3年くらい前に「線路名称公告」について書きましたが,今日はその続きで現在の「線路名称」について書きます。
 僕の勤める会社は製造業で,夏の一番暑い時期は屋外作業がきついので毎年1週間の夏休みがありますが,今年はオリンピック対策もあり超特大の11連休の日程が組まれていました。しかし,このコロナ禍でオリンピックは中止,旅行もできず巣ごもりの毎日です。以前から気になっていて,ちょっと時間のかかる仕事をしようと,最新の「線路名称」を集めることに取組みました。

 JR各社はしっかりとしたwebの問合せページを持っているので,以前はここからリクエストしようと考えていました。今回は時間もあったので,他者にモノの送付を頼むのにwebでは失礼だろうと,敢えて文書での依頼にしました。コピー代だってかかるので,返信用封筒のほかコピー代相当の切手も入れて,自分なりにできる限りの準備をしたつもりです。ところが,自分の会社でも在宅勤務が増え会社に行くのは週に2回程度なので,JR各社の背広組も同様と思われ,この時期に文書でお願いをしたのは却って迷惑だったかもしれません。11連休中に回収など夢のまた夢,約1か月を要してしまいましたが,6つのJR旅客鉄道会社とも大変丁寧な回答が返ってきました。こんな場ではありますが,お礼いたします。
 そういえば,添付した切手も6社ともそのまま返ってきました。JR程度の規模の会社になると,へんに手間賃として受け取っても,コンプライアンスや会計処理に困るのでしょう。ちょっと気遣い過剰だったと思われ,勉強になりました。

 さて,各社の「線路名称」ですが,「線路名称」そのものを入手できたのは6社中3社でした。JR東日本を除く上場会社は,有価証券報告書(有報)や事業報告で開示しているので,これを参照くださいとの回答でした。厳密には「線路名称」ではないのですが,各社から正式に得た回答なので,実際は多少違っていても,この記事では「線路名称」と等価として扱います。「線路名称」と似た情報として,国土交通省鉄道局監修の「鉄道要覧」(電気車研究会 年次刊)という資料がありますが,起点と終点が逆のケースがあります。有報を参照しても「線路名称」と一致しているかは分からず,同一事業者でも有報と事業報告で不一致だった例もありました。
 有報や事業報告は通常は決算期ごとに作られますが,「線路名称」は新線の開業や路線の廃止などにより変更されるものなので,その差の期間はどうするつもりなのでしょうか。「線路名称」を出したがらない理由は何なのか,今一つ理解できません。一方,「線路名称」は基本的には線路の名称と区間(起点と終点)の情報ですが,有報などでは営業キロ,駅数,電化方式などの情報も載っていて,「鉄道要覧」に近い情報も開示されています。出せば出したでヒマなマニアからここが不一致だと指摘されたり面倒なのがおちなので,消極的になるのも分からないではありません。

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国鉄時代の「線路名称」の幹線

 次に今の「線路名称」の特徴ですが,会社ごとに変えてきていることがあります。原スレッドで書いたとおり,国鉄時代の「線路名称」は全国の路線を34の幹線グループに分けていましたが,そのグループ分けを踏襲しているのは,JR北海道とJR東日本,JR四国のようです。他の3社は幹線と傘下の支線という区分をなくしてしまったようです。更に,JR西日本とJR四国は線路の名称自体でも本線をやめてしまって,単に山陽線とか予讃線という名称を使っています。残りのJR東海とJR九州は中間で,グループの考えはありませんが線路の名称には本線が残っていて,東海道本線,鹿児島本線という名称です。なお,JR四国は線路名称に「本」は付けませんが,一覧表は昔の幹線グループごとに区切られていて扱いはグレー,JR東海,JR西日本,JR九州は厳密には「線路名称」以外の文書なので,これらも正確なところは分かりません。

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直近の「線路名称」の改訂のあった北海道医療大学駅 2019.12.30

 以下は簡単に会社ごとの感想になります。先ずJR北海道ですが,ここは直近の「線路名称」の改訂があったばかりのせいか対応も早く,1番に3/25付の「北海道旅客鉄道株式会社線路名称の一部改正について」という文書を受け取りました。札沼線の末端区間を5/6付で廃止する計画をたてたが,4/17にコロナ禍の緊急事態宣言を受けての廃止繰上げ(4/18以降は運休扱い)となってしまったのは記憶に新しいです。また,JR北海道の「線路名称」を手にした時の実感は,随分寂しくなってしまったな...でした。僕が道内の国鉄線を完乗した時は確か3,900kmあったと思うので,今はその6割くらいになってしまいました。

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代々木~新宿は誰のもの?「線路名称」上は山手線の区間 2017.11.3

 JR東日本は回答の到着が最後で気を揉みましたが,「線路名称」自体の送付でした。それ以外の点も含めて,僕の依頼内容に一番忠実な回答内容で,さすがJR東日本というところでした。JTBの時刻表では趣味者のための情報か「営業キロと駅数データ」という情報がありますが,僕が「線路名称」から集計した会社合計と0.7km合いませんでした。「線路名称」では代々木~新宿(0.7㎞)を山手線と定義していますが,時刻表の集計はここを中央本線でもカウントしているのではと睨んでますが,正しいところは分かりません(時刻表の会社計は合計しか出ていないため)。

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JR東海の身延線はなぜか甲府を起点側に書いている @甲府 2019.11.24

 JR東海は2番目の回答到着でしたが,有報に記載しているのでこれを参照くださいとの案内でした。2番目の到着だったこともあり,やっぱりJR東海はドライだな...が感想でした。ドライでも何でも情報が得られれば問題はありません。有報の記述ではなぜか左側(起点側)が甲府で,おやっと思います。身延線は東海道線グループの線区だし,JR東海から見ても富士側が起点と考えられます。

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おおさか東線は鴫野~放出間は片町線の扱いで「線路名称」上は切れている @放出 2019.3.23

 JR西日本は,回答は電子でも構いません(むしろ歓迎)として依頼したのに対して,電子で回答をくれた唯一の会社です。別途,切手の返却の郵送もあり,早くの回答を意識してのことで好感度抜群です。この会社は有報のほかに「データで見るJR西日本」という事業報告も開示していて,これを案内されました。一方,有報にも線路ごとの区間や営業キロ,駅数,電化方式などの記載がありますが,これは五十音順の並びで,「データで見る...」と有報で微妙に内容が異なっています。

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内子ルート開業直後の急行「うわじま」 1986.7~8月

 JR四国は非上場なので有報はなく,「線路名称」での回答です。しかし,四国地区は動きが少ないので,随分古い資料のコピーを送ってくれたようです。ざらついたコピーと共に,送付案内状で「四国旅客鉄道株式会社公告第11号」と相違ないとのことで,念の入った対応です。四国では,土讃本線の末端部を土讃本線にせず中村線としていたばかりに収支係数が振るわず土佐くろしお鉄道に転換することになったこと,予讃線の内子ルートは実態として予讃線のメインルートであるにも拘わらず地方交通線の内子線のままであることなど,「線路名称」に翻弄された会社ともいえます。地方交通線に関する法律的な制約もあって簡単ではないそうですが,早くの整理が望まれます。

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肥薩線の急行「えびの」 1987.7~8月

 JR九州は回答の送り方がとても丁寧だったという印象です。有報にも記載はあるのですが,営業データ/線区別ご利用状況での案内でした。この情報は線路名称より細かい区間,例えば篠栗線ならば吉塚~篠栗,篠栗~桂川に分かれているので,線区計にあたる行を明示するなど手の込んだ回答でした。その他,文書の出し方などでも一番手がかかっているのがJR九州でした。「線路名称」自体に関してはとくにコメントする事項は見当たりませんでした。九州は今般の大雨被害が深刻で,球磨川の車窓が美しい肥薩線も大変なことになっていることと思います。随分古い写真ですが,早くの復旧をお祈りして在りし日の急行「えびの」の写真を載せておきます。

 3年越しになってしまいましたが,ようやく現時点のJR6社の「線路名称」をまとめることができました。最近は「乗り鉄」も趣味として認知され,乗りつぶしのための消込み表やガイドブックも書店に多数並んでいます。今更ではありますが,6社分の情報を1表にまとめたので,その一覧もアップしておきます。本来,「線路名称」とは名称と区間だけのものですが,定量的なものがないと乗りつぶしの励みにならないので営業キロをつけてあります。

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JR旅客鉄道会社6社の線路名称(全体はこちら。右クリックで「名前を付けてリンク先を保存」後,接尾辞を.PDFにリネームしてから開いてください)

 新線の開業や路線の廃止はニュースになるし,時刻表にも載るのでフォローできますが,線形改良による営業キロの変更などは全てをフォローするのが大変です。どこまで続けられるか分かりませんが,今後も逐次更新したいと今は思っています。(2020.8.29記)

追補の追です。
 身延線の起点(甲府)と終点(富士)について「おやっ」と書きましたが,その後の情報収集で以下が分かりました。JRの路線の名前の情報源として,鉄道院時代から脈々と続く「線路名称」のほか鉄道要覧について触れましたが,もう一つ大事なものがありました。鉄道事業法に基づいて,鉄道事業者が監督官庁たる国土交通省に提出する「鉄道事業基本計画」という文書があります。この文書では営業線区は単に五十音順に並び,盲腸線以外では東京に近いほうを起点,遠いほうを終点に書くそうです。中央官庁の霞が関至上主義が垣間見える気がします。そのルールによれば,甲府:東京起点134.1km,富士:同146.2kmなので,甲府が起点になるようです。似たような例は他にもあり,田沢湖線(盛岡:535.3km,大曲:奥羽本線経由で519.8km,ゆえに大曲が起点,有報は逆の表示)なども「事業基本計画」と「線路名称」で起終点がが逆転しているそうです。JR西日本は事業報告の「データで見る西日本」は「線路名称」を踏襲するJR西日本改良版,有報は「鉄道事業基本計画」の順のようで,きちんと使い分けているようです。逆に言えば,線路の名前ごときことで,こんな使い分けをしなければならないのは事業者には迷惑な話です。役所が何と言おうが,「線路名称」はコレとJR各社が積極的に開示すれば,徐々に馴染むようになると考えるのは自分だけでしょうか。(2020.9.10記)

更に追です。
 JTBの大判時刻表には黄色のお知らせページの最後に「営業キロと駅数データ」という情報があり,僕が各社の線路名称等から集計した会社別合計とJR東日本で0.7km,JR西日本で1.6km一致しませんでした。とても気持ちが悪いので,勇気を出して版元のJTBパブリッシングに照会してみました。ご担当者はとても真摯に対応してくださり,JR東日本分は上に書いた代々木~新宿ではなく,他の線区での集計間違いであることが判りました。単純なミスがたまたま0.7kmだったのでとんだ勘違いをして,ご迷惑をおかけしてしまいました。
 一方,JR西日本分は,僕はJR西日本の開示情報をもとに鴫野~放出間を片町線だけでカウントしているのに対し,JTB時刻表は鉄道要覧をもとに片町線,おおさか東線の二重戸籍としてカウントしている(注記にも明示)からです。差異の理由がハッキリしたのはよいのですが,ポリシーの違いなのでこの差の解消は難しいです。国土交通省が二重戸籍を容認しJR西日本が追随するか,鉄道要覧--これも国土交通省監修--がポリシーを改め二重戸籍を解消するか,面倒な話です。知れば知るほど線路名称の周囲には厄介も多いですが,興味も尽きません。
 なお,ページの下の方にリンクをおいている一覧表はJTB時刻表とは1.6kmの差をもったままですが修正済です。(2020.9.17記)

もとの記事:鉄道のイロハ(3)--JRの路線の名前,線路名称公告と線路の戸籍
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