東海道徒歩き(かちあるき)(10)-2 桑名宿~石薬師宿

新年明けましておめでとうございます。本年ものりもの大好きのブログをよろしくお願いいたします。新年特大号という訳ではありませんが,写真も50枚以上載せて,2020年11月の東海道徒歩きその2をお届けします。徒歩きは1日に動ける距離は少ないですが,究極の旅行です。ところどころで道草を食って鉄ちゃんもしますので,お付き合いください。
今日は11月1日(日)に歩いた桑名宿~庄野宿のうち石薬師宿までをお届けします。東海道のルートは現在のJR東海道線のルートと異なり,国道1号線に沿うルートで,鉄道でいえば関西本線沿いに関まで進み鈴鹿峠を越えて草津に至ります。今日は三重県内桑名宿を出て,四日市宿を経て,あとは成行きで石薬師宿か庄野宿までの心づもりです。

朝は近鉄電車で益生へ戻る @益生 2020.11.1(以下同じ)
今朝は多少ゆっくりで,ホテルのサービスの朝食を食べた後,7:44の準急列車で益生(ますお)へ上ります。昨夕歩いた道を戻り,かつての桑名宿の南のはずれと思われる福江町に出て,8:00過ぎに徒歩きをスタートします。ここの東海道は住宅街のやや太い道で,車も少なく歩き易いです。また,今回歩いたうちの桑名~関は大体の区間がこのような道で,国道1号線そのものを歩く区間は少なかったです。名古屋以東では旧国道1号線格下げの県道といえども交通量が多い道路が多かったですが,上にも書いたとおり,今は関ケ原越えがメインルートになっているので,鈴鹿越えルートは全般に交通量が少なく長閑です。

桑名市内の東海道
上の写真は益生駅からいくらも離れていない所で撮ったものですが,概ねまっすぐに続く道が,慣れてくると旧街道であることを感じさせます。また住宅街のなかにいきなり常夜灯があったりするのも旧街道の証です。今日も天気は快晴,秋の風が爽やかな朝の徒歩きです。

桑名市内に残る常夜灯
員弁(いなべ)川を渡ると,行政上は朝日町になります。朝日町は桑名と四日市に挟まれた人口11,000人の小さな町です。近鉄伊勢朝日の駅前に大きな東芝の工場があり,小規模ですが企業城下町のようで,その税収で潤っているから独立を維持しているのでしょうか。

員弁川に架かる橋から対岸を望む。大きな変電所が眼を惹く
伊勢朝日の駅前に至ると駅前広場には新しい東海道のモニュメントが建ち,休憩所の整備が進められています。また,近鉄名古屋線はこのあたりで海岸を目指すように曲がっているため,東海道と踏切で交差します。

伊勢朝日駅前は公園整備の工事中。後ろは東芝三重事業所
朝からの道草はよくないですが,今日も鉄ちゃん日和なのでここで数枚の写真を撮ります。

近鉄アーバンライナー @伊勢朝日
朝日町は東芝だけでは食っていけないと考えたのか,東海道に関する施設整備が盛んで,踏切の反対側でも広場の整備が進んでいます。

線路の山側の休憩広場
前回の豊橋~宮の徒歩きから一里塚を確認するよう心がけており,員弁川~伊勢朝日駅の間に縄生(なお)の一里塚跡があるはずですが,見逃してしまいました。代わりにはなりませんが,郵便局巡りのほうは珍発見です。東海道に面して建つこのお宅,真ん前にポストがあり,2階の雨戸は頑丈そうな金属製,もしかして郵便局の遺構?と思うような風情です。違っていたらごめんなさい。

柿の町内に建つポスト
東海道の少し右手にはJR関西本線の朝日駅があります。スタンプとお手洗い期待で行ってみますが,築堤上に設けられた棒駅で,スタンプどころか駅舎もありません。新設駅のように見受けられますが,調べると開業は国鉄時代の1983年でした。時刻表を見ると列車は10分くらい来ないようなので先を急ぐことにします。駅前広場に出たところでいきなり「ワイドビュー南紀」が走り去ってゆき,通過列車も含めて時刻を確認しなかったのは失敗でした。

JR朝日駅
駅では写真を撮りませんでしたが,時刻を調べたついでに線路の見通しがよいところで関西本線の列車の写真を撮ります。ものの1,2分で上り,下りが1本ずつ来るので効率よいです。

JR関西本線の列車 @朝日~富田
上の写真は朝明川の堤から撮ったものですが,堤に沿ってここにも大きな常夜灯があります。

朝明川の堤の常夜灯
朝明川を渡ると松寺ですが,ここから行政としては四日市市です。四日市は伊勢湾沿いの石油化学工業で栄える街ですが,東海道の観光にも力を入れているようです。市域に入ると「ここから四日市/ここは四日市 東海道 北の玄関 松寺」の看板とちょっとした休憩所があります。また,道路脇には現在地からの距離感の分かる案内板もあり,このタイプは四日市の市域から出るまでずっと整備されていました。

四日市市内に整備された案内板

松寺の立場跡
しばらく進むと東海道は富田(とみだ)に至ります。富田は近鉄,JRそれぞれの駅があるほか三岐鉄道も通じ,客扱いはありませんがJRの富田駅に通じる連絡線もあります。高架や踏切が複雑に絡むなかに日本橋から98番目,富田の一里塚跡があります。

富田の一里塚跡(三重県史跡)
一里塚跡を過ぎると東海道はJRと近鉄の間を進みますが,ちょっとだけJRの富田駅に顔を出します。ここは三岐鉄道の貨物輸送の連絡駅なので,電気機関車重連+炭酸カルシウム・フライアッシュ専用貨車の貨物列車が発車を待っています。また,反対側の側線ではDF200も一休みしています。これらを見ただけでも,寄り道した甲斐があります。

JR富田駅で。駅舎と三岐鉄道の貨物列車
富田は五十三次の宿場ではなく間の宿(かんのしゅく)ですが,観光には熱心で富田ふれあいマップが路上のポストにも置かれています。前に三重県は道標に熱心と書きましたが,富田の町内には「津市元標へ拾里」という道標もあります。

「津市元標へ拾里」の道標
暫く歩くと富田小学校に至りますが,学校の脇には「東海道総合案内」と題し,日本橋から京都までの五十三次も書かれた四日市市内の東海道の案内板があります。小学校も明治の開校と思われる由緒ありげな風情です。

四日市市の東海道総合案内。同じものを日永でも見た

富田小学校の正面風景
ふれあいマップを見ながら進めば,常夜灯に3つの戦争(日清,日露,大東亜)の慰霊碑と見どころも多いです。

富田町内の常夜灯と薬師寺の戦争慰霊碑
東海道は富田の町内でも何回か曲がりますが,そのうちの一つの角には力石などもあります。茂福神社を過ぎれば富田の町も終わりです。

力石と茂福神社(入口)
富田の次は羽津という町になり,ここには立看板のふれあいマップが整備されています。

羽津の地蔵堂とふれあいマップ
羽津の町内では東海道は国道1号線となり約1kmの間,国道上を歩きます。町の西端,海蔵川の堤には日本橋から99里の三ツ谷の一里塚跡があります。ここは一里塚の木こそありませんが,一里塚跡として整備されています。

三ツ谷の一里塚跡
海蔵川を渡ると東海道は国道の1本海側の道となり,また歩き易い道路になります。500mも歩くと三滝川の橋になり,これを渡ると四日市の旧市街です。

三滝川に架かる橋から河口側を望めばコンビナートや発電所の煙突がたち並ぶ
その先には「東海道四日市宿資料館」がありますが,今日はお休みのようです。この辺りが四日市宿の中心だったそうで,ガイドブックなどで有名な四日市の道標が建ちます。

東海道四日市宿資料館

四日市の道標「すぐ江戸道」「すぐ京いせ道」(同じものを別の向きで撮影)
更に歩を進めると諏訪神社の近くに至り,ここからは「表参道スワマエ」というアーケード街になります。街によっては東海道が目抜き通りのところはありましたが,アーケード商店街は初めてのような気もします。日曜日の昼前だからか,よくいうシャッター商店街か分かりづらいですが,残念ながらシャッターが閉まったお店が多いです。

諏訪神社と表参道スワマエ
スワマエのアーケードを抜けると駅前大通りになり,これを渡って更に南進します。時刻は昼前ですが,あまりお腹も空かないのでもう暫く徒歩きを続けます。

四日市の駅前大通り
桑名~四日市間が12.6km,次の四日市~石薬師間が12.2kmなので,概ね中間点です。四日市の中心部を過ぎると,市内の案内板も区間が変わり,四日市~采女までの表示なります。

四日市市内の東海道案内板その2。四日市~采女
四日市から先は関西本線はやや南寄りのルートで,代わりに四日市あすなろう鉄道(以下,あすなろ鉄道)内部(うつべ)線とほぼ並行して歩きます。史実を確認した訳ではありませんが,明治時代の鉄道開通のとき煙をモクモク吐いて走る陸蒸気を敵視して街道筋から排除したが,後になってやっぱり鉄道は必要と軽便規格の私鉄を敷いたのだろうと想像されます。のりもの趣味的にはナローゲージの鉄道路線は日本に幾つもなく,興味は尽きません。今日は徒歩きをしなければならないので,乗り鉄のほうは明日にとっておきます。

あすなろ鉄道の列車 @赤堀
あすなろ鉄道内部線は5.7kmの間に駅が6つもあり,駅間の平均は1kmに足りません。街道筋の家が建込んだなかを走るので,写真が撮れるところも少ないです。何とか頑張って踏切から撮った写真が上です。四日市から2つ目の日永は八王子線を分ける分岐駅ですが,この近くに東海道の一里塚跡があります。ここも塚はありませんが,日本橋からちょうど100里で県史跡として標柱と解説板がたっています。

日永一里塚跡。小さい「東海道」の札は四日市市内のそこここにある
時刻は12:30,よいペースで行程を消化しているので,この辺で食事にします。国道に出れば郊外型のファミリーレストランがありそうですが,ここまで来て東京と同じブランドのものを食べるのも如何なものです。国道より手前に大きなショッピングセンター・日永カヨーがあるので,ここで適当に見繕います。食事をして,飲み物やおやつなどを仕入れ,小1時間の滞在で,徒歩き再スタートです。

旧街道上に建つ日永郷土資料館(閉館した由)
暫く行くと日永の追分で,大きな鳥居が建ち伊勢参宮道を左に分けます。この近くの100m位だけ東海道は国道1号線と重なります。キロポストを見れば399.4㎞,日本橋からほぼ400kmです。

日永の追分交差点
追分の交差点右側には四日市追分郵便局があります。ついでにこの日に見かけた郵便局4局をまとめて載せておきます。

左上から左下,右上方向に四日市浜田郵便局,四日市赤堀郵便局,四日市追分郵便局,四日市小古曽郵便局
追分交差点から少し行くと,あすなろ鉄道の踏切があり,追分駅です。あすなろ鉄道のダイヤは平日休日共通でラッシュ時を除き30分間隔です。ちょうど列車が来るので踏切で1本を撮ります。

あすなろ鉄道の電車と追分駅
あすなろ鉄道内部線は追分から0.7kmで小古曽,その先も0.7kmで終点の内部です。東海道と並行しているので,内部の近くで先ほど撮った列車の折返しをもう1本撮ります。内部の駅前に郵便局がありますが,これが四日市小古曽郵便局です。

あすなろ鉄道の電車 @内部
内部の先,内部川を渡る橋の部分だけまた国道1号線を歩きますが,そこを過ぎれば東海道は旧道になります。旧道分岐のところに閉店したマックスバリューの店舗があり,寂しい景色を作っています。ここにも四日市市版の東海道の案内表示がたっています。よく見ると書いてある内容は四日市~采女の上の写真と同じ区間ですが,道路の右用と左用を書き分けているようで芸が細かいです。

四日市市版の東海道案内板その3
この先は采女の台地に上るような線形になっていて,坂道には杖衝坂という名がついています。国道は山を切り崩してなだらかな坂で登ってゆきますが,東海道は久しぶりの急坂が200mくらい続きます。

杖衝坂
坂を登りきると右手に鈴鹿の山並みが望める開けたところがあり,采女の一里塚跡の説明板が建っています。また,その先に暫く行った国道沿いのガソリンスタンドにも史跡 采女一里塚跡と書かれた碑が建っています。

采女の一里塚。元々の一里塚の場所と説明板,新しい碑まとめて
采女の一里塚の先は国道1号線上をしばらく歩き,台地のサミットに国分町という信号があって鈴鹿市との市境になっています。

四日市,鈴鹿の市境
この先は緩い下り坂になって歩き易く,石薬師宿が近づくと東海道はやや右にそれた旧道になります。

石薬師宿江戸側追分?
時刻は15:00過ぎですが,石薬師宿に着きます。石薬師は関西本線からも離れ,とても静かな宿場町です。また,国文学者で歌人の佐佐木信綱の生まれた所で,町のあちこちに歌かるたの札が掲げられています。最初の3,4枚は眼を通しますが先も急ぎたいので,途中からは食傷気味になります。

石薬師宿小澤本陣跡
暫く行くと石薬師宿の小澤本陣跡です。これまでにも本陣が残っている宿場はいくつかありましたが,観光地として整備され,ここのような自然な形で残っている所は少ないです。

石薬師宿の案内板。ここも日本橋から三条大橋までの道のりが書かれている
石薬師宿の中心部で国道を陸橋で渡ると石薬師寺があります。宿場の名前になるほどの古刹ではありますが,真言密寺なので思ったより大きくありません。

石薬師寺
さて,今日はここまで来て15:30です。次の庄野宿は意外と間隔が短く,3.3kmしかありません。一方,明日の天気はあいにく雨のようです。明日の行程を減らすため,今日は頑張ってもう一駅庄野まで行くことにします。2日目の行程はもう少し続きますが,記事のバランスが悪いので,その2はここまでとし,以降の行程はその3でまとめて書くことにします。(2020.11.21記)

2日目,11月1日の行程。この日も概ね30分に1こずつマーカーを置きました
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