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2021-05

知って楽しいJRの営業規則13--特別車両券・グリーン券と寝台券

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 知って楽しいJRの営業規則,今日は運賃と料金に大別したうちの料金券の仲間,特別車両券(グリーン券)と寝台券についての解説を試みます。先ずタイトルの特別車両券という言葉からして馴染みがないですが,一般的にいうグリーン券を規則のなかでは特別車両券と呼びます。以前,鉄道が陸上輸送の主役だった昔は多数の夜行列車が運転され,寝台車にもいろいろな種類がありましたが,今はサンライズエクスプレスだけ,それだけで1稿にする程でもないので,料金券の仲間ということでまとめて扱うことにします。

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昔のグリーンきっぷ。グリーン車が利用できる企画券は大きくGと書かれ地紋が緑だった。国鉄名の常備券ですがJR化後に買ったもの

1.等級制と特別車両券
 日本の鉄道でもかつては等級制で1等,2等,3等があり,車両もそれぞれの等級のものが用意されていました。等級制のもとでは,「A駅からB駅まで1等で」というきっぷの買い方になり,運賃も等級ごとに決まっていました。3等を基本とすると2等運賃はおおよそ2倍,1等運賃はそのまた2倍でした(急行料金にも等級による差があり,2等,1等はそれぞれ3等の2倍,3倍)。A駅からB駅までという形態なので支線のローカル列車にも2等車が連結されていて,2等旅客は起点から終点まで今でいうグリーン車のような上等な設備の車両で旅行できました。貧富の格差が大きい世の中では上流階級と庶民を乗る車両まで区別していた訳ですが,日本総中流の世の中になるとそんな差をつける合理性が乏しくなってきました。車両を用意する国鉄も全ての区間の列車に2等車を用意するのは大変だし,適切な等級の車両がないときの異級乗車の取扱いも煩わしいです。そんなことから展望車を連結した客車の「つばめ」,「はと」から,電車特急「こだま」に変わった1960年に1等はなくなりました。その後,等級制のもとで特別車両制のような特ロを経て,1969年に等級制を廃止し,今のグリーン車=特別車両券が必要な車室の制度になりました。なお,ヨーロッパなどでは今でも等級制が残っています。

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ヨーロッパの列車。前から2両目の前半分と5両目が1等車(窓上の黄色い帯が目印) スイスの氷河特急 1992.5

2.グリーン料金の通則(旅客営業規則(以下,規)58条(発売),175条(効力),12条)
 グリーン料金も急行料金と同じで,基本的には乗る列車単位に買う必要があります,ただし,JR東日本の首都圏と,急行券でも通算が認められる区間では複数列車にまたがって利用することができます。急行券でも通算とはJRの輸送上の都合で列車体系が切れている,岡山~窪川の高知乗継ぎや高松~宇和島の松山乗継ぎなどのことで,当然のことではあります。また,グリーン券の有効期間は当日限りの1日です。グリーン車は大人のための設備という考えなのか,グリーン料金には小人料金の設定はありません。
 グリーン車のように追加の料金が必要な車両には入口にその旨の表示をするルールで,気付かずに乗ってしまったという言い訳はできないようになっています。

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グリーン車入り口のマーク サロE257 2020.12.24

 グリーン車はゆったり旅行するための料金なので,自由席の場合で満席では困ります。自由席のグリーン券を買って乗った列車のグリーン車が満席の場合は,車掌(アテンダント)から不使用証明書をもらえば,手数料なしで払戻しを受けることができることになっています(規290条2)。なお,デッキであってもグリーン車であり,グリーン券が必要です。不使用証明書をもらったら,早々に他の車両に移動する必要があります。また,不使用証明書の様式は見たことがありませんが,規定の文面からは区間が書けるようになっているようです。東海道線や横須賀線の通勤時間帯のグリーン車は混んでいて,満席になるのは日常と聞きます。6.(1)の区間では,グリーン券払戻しの取扱いをしないと聞いたような気がするのですが,いろいろ探してもそれらしい規定は見つかりませんでした。これらの線区の朝夕ラッシュ時のグリーン車は普通車との間の貫通扉を締切りにしますが,この規定との関係で,一歩でもグリーン車に乗ったなら払戻しはさせないぞという意図もあるのでしょうか。

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グリーン車締め切りの案内 東海道線 2020.12.24

 今,そんな運用があるのか分かりませんが,昔は列車の運用の都合で,グリーン車の車両にグリーン券なしで乗れる場合がありました。何十年も前の話ですが,上野から宇都宮ゆきの最終列車は仙台運転所の455系12両編成で,サロ2両連結ですがシートカバーが外され普通車として利用でき,開放グリーンと呼んでいました。一方,サロやキロを連結してはいますが,扉を締め切るなどして営業しない場合もありました。このような車両に居座ることもできましたが,非営業の車両なので車掌が来れば退去を命ぜられるし,基本的には不正乗車です。

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急行「なすの2号」。前夜の宇都宮ゆき最終列車が翌朝にこの列車で戻る

 このほかに元グリーン車を格下げして使っているケースもあり,これらは格下げグリーン車と呼ぶこともありますが,乗ってお得な車両には違いありません。キロ25の格下げのキハ26-400やサロ455格下げのクハ455-600などは結構数もあって,比較的乗る機会も多かったと思います。最近はJR各社とも車両の画一化が進んで,このような変わった車両が減ってきたのは寂しいです。 

3.AグリーンとBグリーン
 特別車両券(料金)は昔から特急・急行用と快速などを含む普通列車用が分かれていて,それぞれAグリーン,Bグリーンと呼んでいます。空調完備で足置きも付いた特急・急行用のサロとシートピッチが広くちょっとリクライニングするだけの普通列車のサロで設備の格差があるから分けたのでしょうか。そうでなければ,距離帯の区分が長距離列車と近郊電車で違うのでテーブルを分ける意図でしょうか。

4.会社別のAグリーン料金(規130条)
 国鉄の分割民営化で全国一律の運賃は崩れましたが,グリーン料金もまた然りで,JR発足時は同じだったと思いますが,今では下のように旅客会社別に3本建てになってしまいました。JR東日本はグリーン料金を安くして利用促進を図る一方,高級志向に対してはグランクラスを用意する戦略のようです(グランクラスは9.に詳述)。なお,グリーン車利用時の特急料金は530円引きで,結果的に自由席特急券と同額です。これはグリーン料金には座席指定を含むので,単純に特急料金とグリーン料金を足し算すると指定席分が2重どりになってしまうとの考えからです。

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JR各社のグリーン料金とグランクラス料金

5.Bグリーン料金(規130条)
 普通列車用のBグリーン料金はAグリーン料金のようなことにはならず,下の表のとおりで,JR東日本の首都圏とJR九州を除き全国同じ体系です。そもそもJR東日本の首都圏以外ではグリーン車を連結した普通列車がほとんどないので,議論にすらならないのでしょう。なお,Bグリーンには指定席(時刻表のグリーン車マークが塗りつぶしてある)と自由席(同塗りつぶしてない)がありますが,値段は原則,同じです。

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Bグリーン料金

6.JR東日本の首都圏のグリーン料金
(1)近郊電車のBグリーン券
 JR東日本はグリーン車の利用促進に熱心で,首都圏の中距離電車の殆ど全ての列車にグリーン車を2両ずつ連結しています。基本編成が6両と短い中央線方面も,快速電車のE233系へのグリーン車連結がアナウンスされました,現在ホーム延伸や車両の製作などの準備が行われていますが,地上側の工事が難航していて,2020年度サービス開始が2023年度末に延期されました。

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首都圏の近郊電車は2階建てグリーン車2両連結が標準

 JR東日本の首都圏のBグリーン料金は平日・休日の別と車内でグリーン券を買う場合と事前にグリーン券を買う場合の2×2のマトリックス形式になり,代わりに距離帯は50km以下と50km超の2種類に簡略化されました。欧米に比べ日本はタダ乗りに対する罰則が緩いので,あわよくば...という輩も多く,実際に車内でグリーン券を買う場合は車掌さん(アテンダントさん)の手間もかけているので,車内料金を割高に設定するのはヒットだと思います。一方,距離帯の方は50km超無制限なので,長距離を利用する場合は割安です。なかには200km超の区間を走る列車もあるので,そんな旅行ではぜひグリーン車を利用したいものです。

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熱海~黒磯間268.1kmを走っていた1586E(2019年ダイヤで消滅)と同区間のグリーン券 @東京 2017.7.31/2015.3.22

 JR東日本の割安なBグリーン料金適用の区間は現在のところ,下の図の区間で自由席の場合です。臨時列車などで指定席が設定される場合は,5.の本則どおりになります。また,この区間内では同一方向であれば複数列車を乗継ぐこともできます。同一方向とは,宇都宮から熱海ゆきのグリーン券で,乗った列車が横須賀線の逗子ゆきであれば大宮から大船のいずれかの駅で高崎線方面から来た熱海ゆきに乗継ぐことができます。

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割安かつ乗継ぎが可能なグリーン料金のエリア(JTB 時刻表2020年3月号)

 上では簡単に同一方向と書きましたが,実際の規定(規58条4)や時刻表の案内では乗継ぎができないパターンを11ケース羅列しています。グリーン券は1こ列車に限るというルールがあるばかりに直通する列車しか乗れないのでは著しく利便を損なうので合理的な規定です。なお,なぜか大船駅での東海道線藤沢方面から横須賀線北鎌倉方面はNGリストになく,乗継ぎ可能です。

(2)全車指定制特急列車のAグリーン券
 JR東日本は首都圏発着の特急列車を全車指定席制に変えてきていますが,これらの列車では普通車利用時の特急料金とグリーン車利用時の特急料金のように案内することが多いです。特急料金は50km刻みで小人半額,Aグリーン料金は100km刻みで小人も同額のため,合計の料金にするとへんに波打ってしまうので,このように案内するようです。初めてこのテーブルを見たときは特別の包括料金を設定したのかと思いましたが,これは全車指定席制特急列車の割安な特急料金にAグリーン料金を足して530円を引いた金額です。

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特急「踊り子」の2021年3月の料金改定案内チラシから。()内はこども料金

7.急行くずれの列車のグリーン券(規58条5,130条3,175条3)
 外房線の特急「わかしお17号」の勝浦以南のように,急行列車が途中から普通列車になることがあり,俗に「わかしおくずれ」と呼んだりします。このような列車に直通して乗るときは,急行列車の区間のAグリーンの料金で,普通列車の区間も乗れるルールになっています。急行,普通の別でそれぞれのAグリーン,Bグリーン券が必要とすると極めて割高になってしまうので,末端区間の分はいただきませんという趣旨です。国鉄~JRの規定のなかで,このようにすっぱり要りませんという規定は少ないと思います。なお,例に引いた「わかしお17号」はE257系でグリーン車は不連結,2020年3月ダイヤをさらっと眺めましたが,全国でもグリーン車を連結したまま普通列車になるケースはないようです。規定は削除されずに残っているので,このような列車が設定されないか,今後に期待です。

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長野~軽井沢間(74.4㎞)普通列車だった「信州8号」の急行券・グリーン券。料金は軽井沢~上野の150kmまで(142.3km)の距離帯

8.お座敷列車などの料金
 お座敷客車やバブル時代のリゾート列車(ジョイフルトレインと呼ばれることもあります)は設備のグレードが高いのでグリーン車扱いのオロやモロなどです。これらの車両に乗る機会は少ないですが,臨時列車で座席を一般販売するときはグリーン車として発売されます。中央線の行楽列車は毎シーズン運転され,特急と遜色ないダイヤで走ることも多いですが,グリーン料金と特急料金が併課されると割高になってしまうので,最近は快速列車として走るようです。また,「リゾートやまどり」などの比較的新しい改造車両は豪華な設備でも普通車扱いです。

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千葉の和風電車「ニューなのはな」で運転の行楽臨時列車 @甲府 2013.10.16

9.グランクラスとプレミアムグリーン
 JR東日本はグリーン車の利用促進に熱心で割安なBグリーン料金を設定する一方,高級志向に対しては新幹線にグランクラスを,在来線特急の「サフィール踊り子」にプレミアムグリーン車を設定しています。
 グランクラスは輸送サービスだけではなく,著名料理人監修の軽食,飲み物のサービスが付いた包括料金です。グランクラスはE5系,E7系で運転される列車に連結されますが,運用列車の拡大で有効時間帯にかからない列車もあるため「グランクラス(飲料・軽食なし)」として運用される列車もあり,時刻表ではグランクラスのマークの塗りつぶしなしで識別されます。なお,グランクラスは乗入れ先のJR西日本の北陸新幹線やJR北海道の北海道新幹線でも同様に営業されます。JR東日本,JR西日本とJR北海道でグランクラスの料金が違ったり,グランクラス非連結の列車との乗継ぎなどのケースがあるため,昔の異級乗車のようなこまごまとした料金が決められていますが,ここでは省略します。

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サフィール踊り子号 @戸塚~大船 2021.1.30

 一方,プレミアムグリーン車はシートピッチ1250㎜,1+1の1列2席配置でゆったりした座席がサービスで,供食サービスはありません。
 通常のグリーン車が駅で利用しやすい4,5号車に連結されるのに対し,グランクラス,プレミアムグリーン車は関係者以外の無用な立入りを避けるため,列車の下り寄り先頭車両になっています。デッキの扉に窓がなく,グランクラス券購入者以外の立入りお断りの掲示もあり,おそろしく入りづらい印象です。

10.寝台券(規60条(発売),136条(料金),178条(効力))
 寝台券は,以前は寝台の設備ごとにたくさんの区分がありましたが,今は寝台の設備を持つ定期列車は「サンライズ出雲」,「サンライズ瀬戸」(あわせてサンライズと呼びます)だけ,設備ごとに5つの区分があるだけです。

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サンライズの寝台料金(JTB 時刻表2020年3月号)

 寝台券は横になって寝るための設備の料金です。このため朝6時を過ぎた後にその列車が運転打切りになっても,寝台料金の払戻しはありません。反対に朝6時を過ぎた後の区間では,俗にヒルネといいましたが,区間を指定して寝台車を指定席車として使用していました。ヒルネの指定席を発売する車両は,それまでに寝台の利用者が降車するよう寝台券の発券もコントロールしていました。なお,「サンライズ出雲」は30分後(出雲市到着では12分後)に「やくも」の始発が走るので,ヒルネの設定はありません(ノビノビ座席を利用することは可能)。

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サンライズ瀬戸・出雲 @横浜 2019.1.3

 また,1つの寝台を大人と小人で利用することが認められていて,そのときの小人には特急券が必要です。わが家では「富士」の廃止直前に14系の70cm幅の寝台に奥と当時8歳のジュニアが添い寝しましたが,20系以前の52cm幅の寝台での添い寝はさぞかしきつかったろうと思います。

 夜行列車が多数運転されていた頃の寝台料金は,グリーン車にあたるA寝台のほかにB寝台が星の数1つから3つで区分されていました。下はその後,客車3段式(星1つ)がなくなった後の料金表です。

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かつての寝台料金(JTB 時刻表2005年1月号)

 また,僕が時刻表を見始めたころの時刻表にはA個室寝台の見取り図があり,いつか乗ってみたいと思っていましたが,実現せぬまま20系ロネはなくなってしまいました。

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1等寝台の見取り図(日本交通公社 時刻表1968年10月号,復刻版)

 昔話をし始めるときりがなくなるので,この辺で今日の解説は納めようと思います。グリーン券,寝台券ともに個室に関する様々な規定もあるのですが,ここでは省略させていただきました。(2020.12.20記)


知って楽しいJRの旅客営業制度バックナンバー
1.大都市近郊区間と140円旅行
2.きっぷの有効期間と途中下車
3.乗車券の経路と種類
4.運賃計算の基本と割引き,加算
5.区間外乗車のいろいろ・その1
6.区間外乗車のいろいろ・その2
7.特定市内駅と駅に関わる規則
8.新幹線と周辺の乗車券の規則
9.急行券・特急券と周辺の規則
10.新幹線特急券に関する規則
11.急行料金の割引き(乗継割引き)
12.指定席券とライナー券などの乗車整理券に関する規則
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