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2022-09

1990年代の欧州鉄道旅行・その1-3--1992年4月のベルニナ線と氷河特急,おまけ-ゴルナグラート鉄道

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その1-2から

 今日は1992年のゴールデンウィークのヨーロッパ旅行から,その旅行の白眉といえるベルニナ線と氷河特急について書きます。ベルニナ線は2,253mのベルニナ峠を超えてイタリアのティラノとスイスのサンモリッツを結ぶスイスのレーティッシュ鉄道の路線で,箱根登山鉄道と姉妹提携していることから日本でも有名です。一方,氷河特急のほうはスイスの2大リゾート地のサンモリッツとツェルマットを結び,スイスのなかでも背骨の氷河地帯を走る列車です。こちらはベルニナ線と同じレーティッシュ鉄道(RhB),フルカ・オーバーアルプ鉄道(FO),ブリーク-フィスプ-ツェルマット鉄道(BVZ)の3私鉄を通して走る列車です。なお,氷河特急の走る3社のうちFOとBVZは2003年に統合され,マッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)になりましたが,記事は当時の社名で書きます。

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標高441mのティラノがベルニナ線の旅の起点 1992.4.29(以下,特記あるまで同じ)

 昼前にミラノ着いた僕は,巨大なミラノ中央駅に圧倒されて,昼の列車でティラノに向けて出発します。ミラノ~ティラノ間はIC(Inter-City)列車で2時間半ちょっとの行程です。途中にはコモ湖などもありますが,夜行明けの昼下がりということもあり,大人しく過ごします。14:42にティラノに着けば,15:30のベルニナ線の列車でサンモリッツを目指します。ティラノはイタリアの街ですがスイスと接していて,4kmも走ればスイス領内で,ベルニナ峠が国を分ける分水嶺という訳ではありません。

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ポスキアーボ湖だろうか。ベルニナ線沿線の湖

 ティラノを出て10kmも走らないうちにブルジオのループ橋があります。この橋は石造りのループ橋で高度を稼ぐためのもので,しばしばベルニナ線の写真として目にします。1992年当時は今のように沿線や車窓の情報がなかったので,あれよあれよという間に通り過ぎてしまい,写真がないのが残念です。

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ベルニナ線の車窓から

 ベルニナ線の列車は約1時間半で約1,800mを登って,標高2,253mのサミットのオスピジオベルニナ駅に着きます。旅行のときは気づきませんでしたが,ここは駅舎がレストランやホテルにもなっているようで,今度はここで降りてゆっくりしたいです。また,今般,地図を見て知ったのですが,ベルニナ線の線路はつづら折れになっていて,ティラノ~サンモリッツは直距離では40kmですが,線路の距離では61kmもかけています。

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サミットの一つ下のアルプグリュム駅(標高2,091m)で。よく見ると混合列車のようです

 季節はゴールデンウィークですが標高2,000mの高地ではまだたくさん雪が残っていて,本当に絶景です。箱根登山には失礼ですが,箱根のの山とは比べ物になりません。ベルニナ峠のサミットから小1時間かけて少し下ると,スイス有数のリゾート地,標高1,775mのサンモリッツに着きます。時刻は18:00頃でまだ多少明るいですが,ホテルをこれから段取りしなければならず,心細くなってきます。駅から遠くない3つ星位のホテルを電話で予約し,早々に落ち着きます。駅からホテルの道中ですが,ゴールデンウィークの旅支度で,こんな雪のなかを歩くのは想定外です。

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サンモリッツの夕景。右側はザンクト・モーリッツァー湖

 明くる(1992年)4月30日は氷河特急のルートでサンモリッツからツェルマットへ移動です。当初は普通列車での行程を組んでいましたが,記録によれば氷河特急(グレーシアエクスプレス)に乗ったようです。

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氷河特急の指定券

 記憶が定かでありませんが,氷河特急は夏季運転の臨時列車で,日本で調べた範囲では運転計画がなく,現地に行ったら走っていた...ようなことだったと思います。普通列車なら3回乗換え9時間40分のところ,直通の優等列車なので7時間45分と大分時間が節約できました。後年にもこの近辺には行っていますが,日本人観光客がうじゃうじゃいる氷河特急よりは,地元の足の普通列車のほうがお薦めです。尤も,もう20年くらいヨーロッパ旅行には行っていないので,この辺の景色は随分変わったことでしょう。

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サメダンで見かけた古い機関車。右はその銘板 1992.4.30(以下,特記あるまで同じ)

 朝9:00ちょうど,ツェルマットゆき氷河特急の出発です。10分足らずでサメダンに着き,ここで交換のため暫く止まります。この駅はレーティッシュ鉄道の拠点のようで,いろいろな機関車が休んでいるのが眼に止まります。上の写真の機関車はブラウンボベリ1913年製の銘板があり,日本でいうなら大正2年製です。下の写真でも右のほうには年代物のクロコダイル機が休んでいます。

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サメダンで。RhBの電車とクロコダイル機関車

 サメダンから先はここアルブラ線の白眉の区間で標高1,820mのアルブラ峠でライン川(北海)とイン川・ドナウ川(黒海)の分水嶺を越えます。サミットの5,866mのアルブラトンネルのほか,5つのループトンネルや石造りの橋などの絶景が続きます。またこの構築物が日本なら明治時代の1904年に開通したというのは驚きで,一連の鉄道設備は世界遺産にも登録されています。記事を書いていたら,今度はレンタカーでも借りて写真を撮りに行きたくなりました。

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ランドバッサーの橋のストリートビュー(2021.8.1閲覧)

 アルブラ線ではランドバッサーの橋などが有名なのですが,ここはトンネルを抜けたとたんに橋になっているので,初めから予期していないと上手く写真は撮れません。1992年当時は事前の情報も少なければ,インターネットなどの情報収集もできなかったので,橋からの景観の写真などは夢のまた夢です。最近は鉄道の線路もストリートビューで見られるようになっていて,こんな画像も自宅の机で手にすることができました。ここは冬季は道路が通行止めになり,アルブラ線の車運車が運行されるので,ストリートビューが撮れるのかもしれません。

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アルブラ線での一コマ

 上は自分が撮ったアルブラ線での一コマですが,メーターゲージの小さな客車が沢山つないでいるのと急勾配の様子はお分かりいただけると思います。アルブラ峠を越えると列車はライヒェナウ・タミンズに着き,ここでクール方面から来た編成と連結します。ここからディゼンティス/ミュンスターまでは,レーティッシュ鉄道でもオーバーランド線になります。

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ライヒェナウ・タミンズで。左下は氷河特急のサボ

 ディゼンティス/ミュンスターはちょっと山が開けた所にあるジャンクションの駅で,ここから先はフルカ・オーバーアルプ鉄道になり,機関車も付け変わります。ここからアンデルマットまでの30kmはオーバーアルプ峠越えの区間です。標高1,130mのディゼンティスから徐々に登ってゆき湖の傍らのオーバーアルプパス駅が2,033mのサミットです。

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ネッチェン~アンデルマットの車窓。アンデルマットの街並みが一望

 サミットから1駅下るとネッチェン駅で,そこから標高1436mのアンデルマットまでの1駅間4.5kmで407mを下ります。割ってみれば簡単で90パーミルの勾配です。ラックレールを噛合せて踏ん張りながら,列車はしずしずと下ってゆきます。正確性に欠く憶えですが,このオーバーアルプ峠の区間は長い氷河特急の編成が入れず,ディゼンティスで分割し,アンデルマットで併合のような運行形態だったと記憶します。いずれにせよ,このアンデルマット到着前の車窓は絶景で,後年にも訪れています。

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アンデルマットへの急勾配を下る列車。アンデルマット駅から

 アンデルマットはドイツ方面からイタリア方面へスイスアルプスを南北に貫くゴッタルド峠の麓にあり,古くからの宿場町の風情です。現在は人口1,300人の小さな村です。ゴッタルドトンネル開通前は栄えていたのかと思いましたが,乗合馬車通行のためにゴッタルド峠が整備されたのが1820年代ごろ,ゴッタルドトンネルが開通したのが1881年のため,街道の宿場として栄えた期間は短かったようです。さて,列車はアンデルマットに着くと何分か停車します。行違い列車交換のため,ゲシュネン方面からの接続をとるため,それともオーバーアルプの峠越えのために分割した編成を合体するため,理由は定かでありません。いずれにせよ,ホームに出ると先ほど下ってきた線路を望むことができ,運がよければ列車の写真も撮れます。

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氷河特急はブリークで小休止

 アンデルマットを出た列車は,北海にそそぐライン川水系のロイス川の谷筋を登ってゆきます。3つ上の写真で右上のほうになります。その先のレアルプとオーバーワルドの間にある分水嶺のフルカトンネルを越えると地中海にそそぐローヌ川に沿うようになります。また,ここフルカ峠にはトンネル開通前の旧線が保存鉄道(フルカ山岳蒸気鉄道,DFB)として残っていて,夏場はSL列車が走ります。何年か後にこのDFBにも行ったので,いつかご紹介したいと思います。列車はローヌ川に沿った下り勾配を快調に走り,ブリークに着きます。

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ブリークに休むFOの機関車たち

 ブリークは人口13,000人,標高671mのアルプスの交通の要衝の街です。氷河特急もこの時点ではフルカオーバーアルプ鉄道からブリーク-フィスプ-ツェルマット鉄道に引継がれます。機関車の交換のため列車は暫く止まります,RhBやFOの機関車はいかにも機関車然とした機関車でしたが,BVZの機関車は電動客車といった風情で,機関車にもお客さんを乗せることができます。今日のスレッドの最初のベルニナ線の電車もそうでしたが,交流電化は直流電化よりも粘着上有利なので,大掛かりな機器なしに列車を牽引するだけのパワーが出るようです。その代わり屋根上には大きな機器が載っています。

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ブリークからはBVZの電動客車が牽引機

 ブリークを出た列車は約9km,フィスプまではローヌ谷のなかを走り,この区間にはスイス国鉄の路線もあります。その先は南に折れ,フィスプ川の谷筋をツェルマットまで35km遡ります。ここにも最大125パーミルの急勾配があり,ラックレールを使って登ってゆきます。FOの区間の氷河地帯と違い,陽春の陽を浴びて新緑がきれいです。なお,BVZはユーレイルパスの適用外で,ブリーク~ツェルマット往復のきっぷを買っています。パスが1等なので,ここだけ2等車に移るのも忍びなく,1等で買ったら80SFr(スイスフラン)もしました。

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BVZの車窓。フィスプ川に沿った急勾配を登る

 16:45,氷河特急は終点のツェルマットに着きます。ここツェルマットはスイス有数のリゾート地で,排ガス公害をなくすため自動車の乗入れは禁止,町のなかの交通機関は電気バスです。

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ツェルマットの街中を走る電気バス 1992.5.1

 今日はサンモリッツ~ツェルマット間を氷河特急に乗れたので,計画より約1時間早くツェルマットに着くことができました。ツェルマットにはゴルナグラートへの登山鉄道があり,この時間ならまだ行って帰れそうです。ゴルナグラート鉄道(GGB)の駅に行けば次の列車は17:12です。GGBも観光の登山鉄道なのでユーレイルパスは適用範囲外で,山頂までの往復きっぷを買います。きっぷを見ると往復で50SFr,当時のSFr-円レートは88円くらいだったと思うので,4,400円くらいです。今は運賃が126SFr,レートも120円(2021.8.7)なので,15,120円!!,ゴルナグラートは遠くになりにけりです。

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夕方の陽を浴びて下ってくるGGBの列車

 GGBのツェルマット駅は標高1,606m,山頂のゴルナグラート駅は3,089m,両駅間の距離は9.34kmなので,平均でも159パーミル,実際の最急勾配は200パーミルです。列車は陽の傾いたアルプスの山をぐんぐん登ってゆきます。途中の信号場では山を下ってくる列車と交換です。ゴールデンウィークは日本では連休ですが,世界で見れば普通の日で,平日の夕方にこんな登山電車に乗る人は少ないです。

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GGBの車窓からはマッターホルンが。右はGGBのきっぷ

 今日は朝から天気はイマイチでしたが,夕方になって晴れ間が出て,車窓には名峰マッターホルンがその秀麗な山容を見せてくれます。ほぼ43分間登り続けて,17:55,列車は終点ゴルナグラートに着きます。列車はすぐに折返しますが,せっかくここまで登ってきたのにたった10分の滞在ではもったいないです。ツェルマットへ戻ってゆく列車を見送り,次の列車で山を下ることにします。

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ゴルナグラートで列車1本をおとす

 列車が行ってしまうと,平日の山上駅に僕一人になります。ゴルナグラートの駅裏は展望台になっていて,隣接してクルムホテル・ゴルナグラートがあります。この周辺を歩き回りますが,3,000mを超える高地なので空気が薄く,すぐに息苦しくなります。富士山に登ってもどうということはありませんでしたが,軽い高山病のようです。

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アルプスの山々を背にGGBの列車がやってきた

 山頂の展望台を独り占めにして過ごし,夕闇が迫って少し心細くなる頃,ツェルマットへ戻る列車がやってきます。この時間に山を下りるお客さんはなく,確か,一人だったと思います。帰りも42分かかって山を下り,19:49にツェルマット市街着です。ここもリゾート地で安くはなかったと思いますが,3つ星くらいのホテルを自分で見つけ,落ち着きます。インターネット予約が発達した今ではそういう設備があるのか分かりませんが,鉄道のターミナル駅には周辺の宿泊施設と直通の電話機があり,後ろに掲出された地図とホテルリストから気に入ったホテルを選んでキーを押せばホテルのフロントと直接会話ができ,世話がありません。

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この日の行程表と地図

 今日は旅行中の目玉の氷河特急に乗るだけでなく,ゴルナグラートにも行けました。空気が薄いのが玉にキズですが,ゴルナグラートのホテルは居心地もよさそうで,いつかまた訪れたいと思います。これぞスイス鉄道の旅という1日を満喫しました。明日はローザンヌからフランスに抜け,TGVに乗ってパリを目指します。(2021.8.7記)

その1-4につづく
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