東海道徒歩き(かちあるき)のおまけで三岐鉄道の写真撮り

2014年夏に始めた東海道徒歩きは2020年秋に三重県に達したことは紹介済ですが,その帰りに訪れた三岐鉄道がとても気に入りました。2021年の徒歩きの際,スタート地点の関への道中で寄り道して写真を撮る計画をたてました。僕は列車の旅は客車党でしたが,客車を使った旅客列車がなくなってしまった今,興味の対象は貨物列車で,三岐鉄道は日本で数少ない貨物列車が走る私鉄です。前回訪問時は雨で写真が撮れなかったので,今回は貨物列車の写真を撮ることを主眼に計画をたてました。

手製の簡易ダイヤ。行違いの待合わせなどは気にせずに引いている
最近では「貨物時刻表」に三岐鉄道の列車が収録されているので,便利になったものです。今回は旅行の準備の時間がたっぷりあったので,手製のダイヤを作ってみました。午後の遅い時間は前回の徒歩きで端折ってしまった関宿を見ることにすると,有効時間帯には上り2本,下り1本の貨物列車があります。これらの準備をする時間がまた楽しいのです。

自宅最寄りの磯子を401Aで出発 2021.10.21(以下全て同じ)
出発は(2021年)10月21日木曜日です。今回も2泊3日の行程ですが,2日のお休みをいただき木金土の3日を使い,日曜日は休養日の計画です。Covid-19禍も少し感染数が減ってきてはいますが,こんな時期に出歩いてよいものか,今度も人目をはばかりながらの旅行です。出発は自宅最寄りの磯子駅を6:03の大船ゆきです。なぜか東海道徒歩きの移動では新横浜に出るのを嫌って,大船から小田原に出るルートをとります。今回も新幹線特急券代節約のため静岡まで在来線利用です。

小田原で。323M(右)は727M(左)に追いつかれる
大船では5分の待合せで,JR東海直通の沼津ゆき323Mに乗換えです。この列車は面白いダイヤで,小田原で11分停車し,品川を14分遅く出た後続の727Mを待ちます。当初は磯子発をもう1本遅い6:12の列車で計画していましたが,目が醒めてしまったので,安全サイドの乗継ぎを選択です。朝の東海道線は下り列車でも結構混んでいて,323Mは大船から乗って空席を探すのに苦労する程度の入りです。

左手の正面には房総半島の島影が
小田原を過ぎると列車は相模湾沿いを走るようになり,左手の車窓には青い海の遠くに房総半島がうっすら望めます。小田原から湯河原にかけてのこの区間は東海道線随一の絶景区間と思います。車内のほうは小田原を過ぎると多少空席がありますが,熱海からは静岡県内の通学の高校生も大勢乗ってきます。沼津では静岡ゆき2745Mに5分で乗継ぐ予定ですが,三島~沼津間で踏切安全確認のための緊急停止があり,沼津には6分遅れての到着です。

今日のきっぷ。当初は熱海から新幹線で計画していたので新富士経由。また,新富士で切れている蘊蓄はこちらを参照
2745Mは,発車時刻を過ぎていますが323Mから乗換えのお客さんを待っての発車で,6分遅れて8:15に沼津を発車です。この先,終点,静岡での乗継ぎもよく,5分の接続で静岡停車の「ひかり503号」に乗換える計画です。ところが静岡まで乗る2745Mは始発駅を出た時点で6分の遅れを抱えており,朝のラッシュ時間帯の列車なので遅れの挽回は難しそうです。通勤通学のお客さんを乗せた2745Mですが,運転士さん車掌さんは挽回する気があるのかないのか,駅々での停車,客扱い,発車の動作は自分が焦っているせいかひどく緩慢に見えます。それでも2分30秒くらいを回復し,静岡には3分30秒遅れの9:05 30"位に到着します。幸い階段も近く,新幹線改札は敢えて有人改札を走り抜けて,何とか9:07の「ひかり503号」に滑り込みます。階段下には駅員さんが白旗を持って立ち,積残しのないようウォッチしているようで,僕のほかにも何人かこの列車に駆け込んだ人がいたようでした。

ひかり503号 @浜松
さて,今日は朝から沼津と静岡で5分の乗継ぎで,リスキーな旅程でした。仮にこの「ひかり503号」に乗れなかった場合,後続の「こだま」で追いかけて,名古屋着は36分遅れ,4分で近鉄電車に駆け込めれば,以降の予定に影響はなし。この近鉄電車に乗れないと,予定していた撮影地まで辿り着けずに,上り下り各1本の貨物はどこか別の場所で撮影ということになります。そんな訳でバックアップがあるような,ないようなの行程でしたが,予定の行程に間に合って一段落です。沼津といい,静岡といい,なかなかJR東海もやるもんだと見直しました。

名古屋ではお約束のきしめんで腹ごしらえ
10:01,「ひかり503号」は時刻表どおり名古屋に着きます。次に乗るのは10:21の近鉄の急行列車です。名古屋の近鉄線ホームはJRの在来線ホームの直下あたりで乗換えは便利なので,その間にホームのスタンドで軽くきしめんをいただくことにします。この後は撮影行になるので,あまり食事の時間はとれそうにありません。今日の目的地は三岐線の三里(みさと)ですが,一つ手前の大安(だいあん)までなら連絡きっぷが売れるというので,これを買って入場します。

近鉄の急行列車はL/Cカー5800系 @近鉄富田
近鉄のホームに行けばほどなく10:21の松坂ゆき急行は出発します。近鉄の電車はあまり縁がありませんが,5800系というのかロング/クロス転換式の座席を備えたL/Cカーです。最近は首都圏で,西武40000系などロング/クロス転換式の座席の電車が急に増えましたが,この仕組みは近鉄の採用が早く(試用ベースでは国鉄・JRに複数の先行例がある),1990年代末からの運用されているそうです。

近鉄富田で。たまたま来たアーバンライナー
快適なL/Cカーで29分の乗車で三岐線乗換えの近鉄富田に着きます。次の西藤原ゆきまで24分あるので,三岐線の情報収集をするつもりでしたが,近鉄富田駅の名古屋方の線路がいい感じにカーブしているので,ここでいくつか写真を撮ります。

手作り感あふれる三岐線のご案内
続いて三岐線のホームに行けば,手作り感あふれる写真付のご案内が目を引きます。今日は藤原岳をバックにした写真を撮りに行くつもりですが,藤原岳登山もしてみたくなります。11:14の西藤原ゆきは元西武新101系の751系で,2009年入線のこの編成は三岐線で一番新しい電車だそうです。

三岐線で一番新しい751系 @近鉄富田
時刻表どおり出発した列車は途中,保々で車両の交換をして,三里には11:39に着きます。今日の撮影地はインターネット等で情報収集した三里と丹生川のほぼ中間地点です。適当にGoogle Mapで目的地設定をし,途中ロケハンしながら歩きますが,結局は誰もが撮るような場所での撮影になります。今日はよい天気の予報でしたが,段々に雲が出てきて,青空の部分が少なくなってしまい,鉄ちゃん(鉄道写真撮影)には少々残念な天気です。以降はこの周辺で撮った三岐線の列車達です。

撮影地へ向かう途中で撮った1枚。電車は801系 @三里~丹生川(以下,5枚同じ)

お目当ての空車返送のセメント列車1。この場所は見通しがよく2カット撮れました

お目当ての空車返送のセメント列車2
その次が今日のとびらの1枚に使った本命の藤原岳バックのセメント列車です。ここには線路をまたぐ陸橋があり,多少俯瞰気味に撮った写真を多く見かけますが,僕は地平から撮ったアングルのほうが好きです。

陸橋から三里側を見て撮った101系の復刻塗装車

線路の反対から撮った751系は先ほど乗ってきた列車の折返し
もう1本の貨物列車は三岐名物のフライアッシュ/炭酸カルシウム用貨車ですが,編成両数が短くなることを失念していて,少々バランスの悪い構図です。

フライアッシュ列車は2両の貨車を重連で牽く
そんなこんなで2時間半の鉄ちゃんを楽しみ帰途に着きます。地図を見ると丹生川への道のほうが真っ直ぐで分かり易いのと,丹生川には貨物列車博物館があるのとで,帰りは丹生川駅に出ることにします。帰り道は線路伝いなので,最後に1本上り列車を撮ります。三岐線の今日運用中の電車が一巡したようで,また復刻塗装の101系です。

最後は再度101系復刻塗装車
丹生川駅に着けば,駅に併設の貨物列車博物館を見学します。博物館といっても古い機関車や貨車を展示しているだけですが,これらを解体せずに客寄せの資源に活用しているのを好感します。

貨物列車博物館の保存車両たち。もと東武39号ほか
上の39のナンバープレートを掲げたSLは1898年(明治31年)英国のシャープ・スチュアート社製,日本鉄道(東北本線の前身)~官営鉄道(国有化による,5650形)~東武(39号)~昭和鉄道高校(保存機)を経て2002年に三岐に来たそうです。一応,屋根付の場所にある一連の展示物のほか,駅に近い側線にもう一群の展示貨車があります。三菱瓦斯化学の銘のある1両は形式タム8000の8000番,もしかするとトップナンバーかもしれません。

貨物列車博物館の保存車両たち。こちらは主に二軸のタンク貨車
貨物列車博物館も見学し,たっぷり三岐鉄道を楽しみ,14:25に丹生川を後にします。やってきた電車は801系の801番,懐かしい西武の湘南顔の電車です。丹生川ではたくさんの通学の小学生が降りてきましたが,彼らのいなくなった車両はなんと僕一人,ちょっとびっくりです。この電車に乗ること32分,14:57に近鉄富田に着きます。

丹生川~近鉄富田の電車。この車両には他に誰もいない
これで三岐鉄道の撮影行は終了ですが,この度の旅行は東海道徒歩きの旅,今回のスタートの関宿へ移動です。まずは近鉄富田からJRの富田へ歩きます。この界隈は去年歩いたので大体様子は分かるつもりです。名古屋のきしめん以来何も食べていないので,コンビニでパンでも買いたいですが,両富田の駅の間には古い商店街はありますが,コンビニは見当たりません。JRの富田駅の向こうには大きなイオンのショッピングモールがありますが,そこまで行っている時間はなさそうです。やむなく,少々ジャンクではありますが,手近なたこ焼き屋でとりあえずの空腹をしのぎます。電車の中での食事ははばかられるご時勢ゆえ,富田駅のホームのはずれで速攻でお腹に転がし込みます。

富田駅の旧三岐線ホーム。電車が来なくなって久しい様子
たこ焼きを食べながら周囲を見ると,かつて三岐鉄道が乗入れていたときのホームが残っています。歴史を紐解くと三岐鉄道の富田は元々こちらで,1970年に近鉄富田との連絡線が開業したそうです。連絡線の開業後も暫くは国鉄・JR駅にも旅客列車が残りましたが,旅客輸送としては近鉄のほうが優勢なので1985年に近鉄富田発着に統一したそうです。歩いて両富田駅間を行き来する人がなくなるので商店街が反対したというのはWikipedia日本語版の記事(2022.1.10閲覧)です。

四日市で見かけたワイドビュー南紀
富田から15:24の四日市ゆきに乗れば7分で四日市着,続いて15:41の亀山ゆきに乗継ぎます。四日市では10分の接続で,地方の緩急接続としてはまあまあと思いますが,この間が結構忙しいです。上りのホームに名古屋ゆきの「ワイドビュー南紀」が来たので,まずはこの写真を撮ります。キハ85はカミンズの350PSエンジンを備えたJR世代気動車と思っていましたが,世代交代がアナウンスされました。この非貫通のほうの先頭車は眺望もよくなかなかの傑作と思います。

四日市で見かけたDD200
反対側の貨物の側線を見ればJR貨物の新しい入替機DD200が午後の日差しを浴びて,写真撮って~と言っています。標識灯が点いていますが申し分ない光線状態で,新しいディーゼル機関車の写真を撮ります。短いほうのボンネットは実は後ろ向きで,公式の写真は長いほうのボンネット側から撮るもののような気もするので,反対(1エンド)側の写真も載せておきます。DD200はDE10似の前後非対称の車体と,ほぼ同じ出力の1,217PSの主機を持ちますが,メカ的には全く違う電気式ディーゼル機関車です。2017年から量産が始まり,現在20両(JR他社,臨海鉄道含む,2021.6現在)が全国で活躍しています。ふと伊勢鉄道のホームを見ると,滅多に見ない伊勢鉄道の気動車がいるので,こちらも写真を撮りに行きます(ただのNDCなので掲載省略)。

亀山~関はJR西日本の気動車
四日市から亀山は所要27分,前回の徒歩きを思い出しながら,ゆっくり過ごします。亀山でも接続はよく,3分で16:11発の加茂ゆきがあります。亀山から関は1駅ですが5.7kmあり,JR西日本のディーゼルカーで7分もかかります。関は東海道の宿場町で,かつては関町でしたが平成の大合併で亀山市に吸収され,今は亀山市の一部です。関町は東海道関宿の街並み保存に熱心で,電線の地中化など徹底した策が奏功し,今では大きな観光資源になっているようです。

関の街並み。志ら玉屋前田製菓前で
さて,僕の徒歩きですが,前回(2020年11月2日)は雨が降ってきたのと関西本線の列車の都合で,関まで辿り着きましたが,東の追分にあたる伊勢街道分岐の一里塚までしか来ていません。その時の情報から関の街並みは見ておきたいと思ったので,今日は夕方ですが,ゆっくり街並みを見学することにします。関駅を出て,駅前の道をまっすぐ進めば旧街道まで5分もかかりません。日本橋からここまで46の旧宿場を見てきましたが,確かにここの街並みは見事です。

関の街並み。御食事処山石前で
僕の興味は街並みの保存状態とか街並み自体で,そこにある名所旧跡などをつぶさに見学する趣味はありません。全く興味がない訳ではありませんが,徒歩きの途次ではそんな時間はとれないことが多いので,それが習慣づいてしまったのでしょう。関の街並みをゆっくり見ながら西へと進みます。今日は平日,夕方でもあるので,地方の町家の店じまいは早く,夕食の支度にかかっているようです。そんななか街道の茶屋のような前田屋さんが開いていたので,ちょっと覗いて名物の志ら玉餅と饅頭をいただきます。片付けを始めようとしていた女将さんも手を休め,二三街道歩きの世間話などをして,休憩させていただきます。

関宿の夜。少しカメラの向きが違いますが上の山石前とほぼ同じ場所で
陽も傾いてきたので引揚げにかかりますが,夕食をどうするかです。亀山の駅前には大したお店がないことは分かっているので,レトロな雰囲気の関で食べたいですが,開いているお店が少ないです。駅近くの山石なるお店に入って3桁の値段のとんかつ定食をいただきましたが,ソースやサラダのドレッシングは自家製のようで満足です。お腹もくちて駅に戻れば満月がきれいで,まだ18:00過ぎだというのに人っ子一人いません。

関駅で。人っ子一人いない構内に満月が光る
18:26,時刻表どおり亀山ゆきの気動車がやってきます。気動車に乗ると入口にはイコカの端末が設置されて,入場記録のタッチをするよう促されます。いつからこのような方式になっているのか知りませんが,自分の周りの京浜地区では見かけない方式です。以前から無人駅の多い線区では,車両の側にICカード端末を置いたらよいと思っていたので,その実現にちょっと嬉しい気がします。

関西本線の気動車は車載型イコカ端末を設置
18:32,列車は亀山に着きますが,ホテルに帰って寝るにはまだ少し早いです。亀山といえば,昔はローソクでしたが,ちょっと前は液晶ディスプレイで世界の亀山でした。鴻海の傘下に入って往時の輝きはありませんが,そのシャープの亀山工場を見に行こうと思います。半導体や液晶デバイスの工場は生産設備がマル秘なので当然中には入れませんが,世界の...と自分で言う位なので,どんなものかと思います。

亀山からはちょっとシャープの工場へ
亀山駅からシャープ亀山工場に行くバスは三重交通の91系統,1日10本の運転は亀山駅発着便で最多の本数ですが,通勤バスなので休日は運休です。亀山の駅前から19:13のバスに乗れば,東名阪自動車道の亀山IC,亀山工業団地内を巡って12分で終点,シャープ亀山工場に着きます。高速道路のインターチェンジから近く物流の便もよい場所で,ここに工業団地をつくりシャープやほかの企業を誘致した行政も慧眼ではあります。バスは駅からの所要時間よりも長い18分で折返しますが,僕もここで18分を過ごします。ちょっと歩けばすぐによそ様の工場の敷地になってしまうので,工業団地内の基幹道路周辺を歩くくらいしかやることはありません。

「世界の亀山モデル」を作るシャープ亀山工場
19:43の戻り便で工場を後にしますが,帰りは亀山IC近くの朝明山という停留所でバスを降ります。今日のホテルはインターチェンジと工業団地の間にあるシティホテルです。目の前にコンビニもあるので夜食と明日の朝食を買って準備は万端です。フロントの担当に聞けば,シャープの工場関係のビジネス客も多いそうです。未だ21:00前ですが屋上の大浴場にゆっくり浸かり,明日からの徒歩きに備えて早寝します。1年前から楽しみにしていた三岐鉄道が曇りだったのが残念ですが,東海道徒歩きの前哨戦としてはまずまずの成果ある1日でした。(2022.1.10記)
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